【ライヴレポート】deadman、結成25周年グランドファイナルとなる初ホールワンマンに未来「ずっとやっていたい」

結成25周年イヤーを迎えたdeadmanが12月21日、東京・大手町三井ホールにて25周年のグランドファイナル公演<deadman 25th anniversary TOUR 2025「to be and not to be final -被覆する造形は人、腫れる風船の奇病-」>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
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思うと思わざると、deadmanは数奇な運命のもとで生き続けることになったということなのだろう。このたび12月21日に大手町三井ホールにて開催された<deadman 25th anniversary TOUR 2025「to be and not to be final -被覆する造形は人、腫れる風船の奇病-」>は、彼らにとって25周年イヤーの最後を飾るグランドファイナル公演であったと同時に、ここに来ての初ホールワンマンライヴともあいなった。
ちなみに、さかのぼること2000年に始動して当時のインディーズ界隈においても際立った異彩を放っていたdeadmanが、O-east公演<endroll>をもって活動休止したのは2006年のこと。その後、13年ほどの間は“きっともう観ることは出来ない伝説のバンド”として認識されていたフシもあったが、なんと彼らは2019年に“1年間限定”という前提を掲げながらも奇蹟の復活を果たすことになったのである。
しかし、あろうことか2020年に行う復活後初の全国ツアーが告知された頃にあの忌まわしきコロナ禍が発生。つまり、deadmanは蘇生の過程でいきなり“腰を折られてしまう”事態に見舞われたのだ。

「1年間活動したら今度は活休じゃなくて解散、って当初は決まってましたけどね。10数年ぶりにツアーをやるって発表したのに1ヵ所も行けなくなって、ちょっと調子に乗った言い方をすれば“全国各地にdeadmanのことを待っててくれた人たちがいる”んだとしたら、そんな悲しい終わり方ってないじゃないですか。だから、眞呼さんと相談して「行くはずだった場所に行くまでは続けましょう」となったんです」──aie
吉凶禍福、とはきっとこういうことを言うに違いない。以前aieがとあるインタビューの中で語ってくれた前述の言葉どおり、deadmanはその後2022年に活休をした当時のメンバーで制作したリテイクアルバム『I am here』を発表したばかりでなく、現在ゲストミュージシャンとして尽力してくれているkazu (gibkiy gibkiy gibkiy)と晁直 (lynch.)を迎えてのライヴ活動を活性化し、さらにはその布陣をもって2023年にはリテイク盤第2弾『dead reminiscence』、2024年には19年ぶりのフルアルバム『Genealogie der Moral』まで作られることになったのだから素晴らしい。
そして、今夏には25周年記念EP『鱗翅目はシアンブルー』をあらたにドロップしたうえで<deadman 25th anniversary TOUR 2025「to be and not to be」-cyan blue->を敢行し、今回の初ホールワンマン<deadman 25th anniversary TOUR 2025「to be and not to be final -被覆する造形は人、腫れる風船の奇病-」>へと着実に駒を進めてきたわけで、彼らがたどってきたここまで全ての道程はつくづくドラマティックにもほどがある。


当然そんなdeadmanが臨んだ初のホールワンマンライヴは、やはり全てが劇的であったというほかない。開演前にステージ上をみやれば、まず両サイドにはボディバッグに拘束具をあしらったオブジェが2体ずつ。しかも、それらの頭部は映像モニターとなっていた。また、ギタリスト・aieの立ち位置より少し後ろにはアンティークな雰囲気の赤い革張りのソファが置かれており、そこはギター置き場として使われている模様。かと思えば、やや下手側にはこれまたかなり古びたデザインのウッドチェアがしつらえられていて、背もたれの上部には金属製の器具が取り付けられているらしく、どうもそのデザインは映画『グリーンマイル』に登場していた“例の椅子”に限りなく近かった。
えもいわれぬ猟奇的な光景が生み出される中、今宵まず奏でられることになったのは、最新音源『鱗翅目はシアンブルー』収録のシューゲイザー風味が濃厚なインストルメンタル「to be and not to be」。25周年記念ツアーのタイトルとしても使われているこの曲タイトルはシェイクスピアの『ハムレット』における名台詞“To be, or not to be, that is the question” (生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ)を彷彿とさせるもので、あの物語が狂気と正気の境界線や生と死の意味、あるいは正義と道徳のジレンマやそこから生じる復讐と悲劇、ひいては人間という生き物の本質を問う内容に終始していることを考えると、今ここでひとつの節目を迎えている“deadmanがこの言葉を掲げる”意義について思いを馳せさせられてしまう。


と同時に、deadmanの描く世界が一度はまれば抜け出せない深淵なる沼のようであることはこれまでもわかっていたつもりだったものの、今回の初ホールライヴではそんな彼らの魅力が充実のステージングを通してより明確に伝わってきた。たとえば「ミツバチ」で眞呼が椅子に座りながら歌ってみせた場面をはじめとして、彼がパントマイム的なパフォーマンスを展開してくれた「溺れる魚」などでも視覚的な演出面がこれまで以上により強化されていたせいか、予想していた以上にdeadmanがホール映えするバンドである、ということをきっとこの場に居合わせた人の多くが感じたはず。
一方、ライヴバンドとしてのdeadmanの底力も今回のホールライヴで観客たちを沸かせていくことになった大きな要素で、多くの楽曲でテレキャスを厳つくソリッドに鳴らしたり、「鱗翅目はシアンブルー」などでは、セミアコギターをエモく響かせたりもしていたaieのプレイのキレと鮮やかさは天晴れの一言。ゲストとはほぼ名ばかりでもはや実質的にはメンバーも同然のkazuと晁直が織りなす鉄壁のサウンドも、もちろん令和版deadmanに今や欠かせない大切なファクターだ。ライヴハウスならではの接近戦で体感するdeadmanも醍醐味たっぷりで面白いが、ホールで味わうdeadmanも実にスケール感があっておもむき深い。




特に、今回の公演においては「蟻塚」を真っ暗に照明を落とした中で演奏してみせたくだりでホールだからこその特性が最大限に活かされており、暗闇の中で眞呼のエクステとメイクの一部分のみがブラックライトで浮き上がるというある種の異様な状況下、鬼気迫る各プレイヤーの音と眞呼の憑依性の強い歌が重なることにより、ホール内に現世とはだいぶかけ離れた異世界が出現。
それに次いでの「dawn of the dead」も、この夜のライヴではdeadmanの真骨頂な音と表現が凝縮されていたシーンで、渦を巻くような渾沌とした音像を背景にスノーマシーンの降らせる雪が舞う中、細部に至るまでの心配りを感じさせた眞呼の立ち居振る舞いと、聴く者の琴線を激しく震わせるような眞呼の染み入るような歌声は観客たちの意識をぐいぐいと惹き込みながら終焉へと向かっていくことになった。

すぐにはアンコールの声もあがらないほどの余韻を場内に残していくところも、ただただ圧巻だったと言っていい。ただし…このあとにはまた別の意味でのdeadmanらしさが炸裂したことも敢えて記しておこう。
「どうもー!deadmanでーーす!!」──aie
急転直下とはこのことか。ダークな空気感が漂っていた本編中にはまるでMCがなかったというのに、アンコールではこうしてaieが明るく元気に挨拶するところから始まり、なんと今夏からスタートしていたという彼の“ダイエットチャレンジ企画”に関する結果発表が執り行われ、観客がその様子を見守るという謎のコーナーが突如として勃発。
aieは食事制限などは特にしなかったそうで、ひたすら腹部に巻くEMS機器を使用していたというのだが、眞呼の計測によると夏に75センチだったというウエストは77センチと逆に増えていたため、残念ながら企画は失敗。けれども、発表の瞬間には“aie 腹回りシェイプアップ 大失敗!!”および“aie 腹回りシェイプアップ 大成功!!”の文字が両方とも印刷された銀テープが大手町・三井ホールの場内を派手に舞い、観衆一同は呆気にとられた…もとい、いつも以上に無邪気なaieの様子を微笑ましく受け止めることになった、というのが今回の初ホールライヴにおける注目ポイントのひとつだった気もする(笑)。なお、aieは2026年に向けて腹回り引き締めダイエットに挑戦するそうで、ゆくゆくは“腹出し”衣装でのライヴも実現したいとのこと。

「締まっていこうぜ!」──眞呼
アンコールでの「70116」と「聖者の行進」を始める前に、しれっと眞呼が口にした“煽り”がaieのあれこれとしっかりオーバーラップしていた点も気になったところで、ふと“なんだか普通に楽しそうだし、やっぱり仲が良いのだなぁ”と思ってしまった次第だ。暗いイメージの写真や、楽曲から感じる激しさはそれとしても、案外deadmanはゆるい“脱け感”も持っているバンドだというのがまた興味深い。
「ずっとやっていたいけどあと1曲だけ。ありがとうございました!」──眞呼
記念すべき初ホールワンマンで最後に聴けたのは、眩しいくらいの明るい光が舞台を照らす中で、“白昼に降る雨 虹は無いけれど 楽園の扉は開けておくよ ずっと ”と歌われた「雨降りの悪い夢」。打ち付けるような豪雨でもなければ、冷たい試練の雨でもない、優しく降り注ぐような恵みの雨として感じられるような音と歌がそこには在った。暗澹たる歌の数々のあとに聴く、あたたかな救いの歌から感じたのはありがたみそのもの。心が浄化されたように感じたのは何も筆者だけではあるまい。
そして、このあと大手町三井ホールを出て外を歩きだすと肩先を濡らしたのはやわらかな実際の雨。演出としてはやや出来過ぎていた気もするが、数奇な運命持つdeadmanだけに天候までが味方をしてくれた可能性もなくはないか?!
ということで、ここでは締めくくりにdeadmanの今後についても少しふれておこう。来春には大阪・名古屋・東京での<Official fanclub FUZ限定公演「予兆飛行」>が行われるというのだが、そもそも「予兆飛行」とは今回の公演で無料配布された新曲のタイトルとなる。いわゆる“名古屋系”というものをキーワードに制作されたというこの曲がライヴで披露されていくことを思うと、今から期待感が募るのは必至。思うと思わざると、などというフェーズを既に超えた次元でここからdeadmanが抉り出していく未来。それをもっともっと見てみたい。
取材・文◎杉江由紀
撮影◎マツモトユウ
■<deadman 25th anniversary TOUR 2025 to be and not to be final -被覆する造形は人、腫れる風船の奇病 ->12月21日(日)@東京・大手町三井ホール ETLIST
01 to be and not to be
02 in the cabinet
03 dollhouse
04 rabid dog
05 ミツバチ
06 blood
07 溺れる魚
08 黒い耳鳴り
09 鱗翅目はシアンブルー
10 宿主
11 additional cause for sorrow
12 静かなくちづけ
13 the dead come walking
14 零
15 through the looking glass
16 受刑者の日記
17 lunch box
18 quo vadis
19 re make
20 蟻塚
21 dawn of the dead
encore
en1 70116
en2 聖者の行進
W encore
en3 雨降りの悪い夢
関連リンク
◆deadman オフィシャルサイト
◆deadman オフィシャルX
◆deadman オフィシャルYouTubeチャンネル
◆deadman オフィシャルFC「FUZ」
◆眞呼 オフィシャルX
◆aie オフィシャルX







