【インタビュー】友成空、「鬼ノ宴」と湖池屋「ピュアポテト」がコラボ。いま思う自己表現

◼︎曲を作る時間が一番、自分の未来が見渡せるような感覚がある
──そして友成さんはこの秋に待望の1stアルバムを配信リリース予定。それに先駆けてNHK総合のTVアニメ『キングダム』第6シリーズEDテーマ「咆哮」を10月19日にリリースします。『キングダム』の世界を反映した楽曲だと感じました。
友成空:曲にしっかりと『キングダム』の古代中国という時代背景を反映させたいというのが大前提としてありました。大勢の兵士が砂漠や草原で雄叫びを上げているシーンが最初に浮かんだので、兵馬俑が生身の人間になったイメージをそのままサウンドとメロディと歌詞に落とし込みたかったんですよね。
──公式コメントによると、鎧の擦れる音、叫びなどをいちから録り下ろしたそうですね。
友成空:僕の大学の友達にアメリカンフットボール部に所属している子がいて、その子に頼んで大学のアメフト部の子たちに協力してもらいました。フィールドレコーディングができるスタジオを貸し切って、身長180から90cmくらいの子たちが15、6人ぐらい集まって、足踏みや叫び声、シンガロングを録ってくれたんですよね。
──現役のアメフト選手だからこそ、あのリアリティのある無骨さが出せたと。
友成空:アメフトは鎧を着て草原を走ってぶつかり合うスポーツなので、『キングダム』にぴったり合うと思ったんです。彼らの防具を床に落とした音を録ったり、みんなが持っていたチェーンを揺らしてもらったり、お互いのヘルメットをぶつけ合う練習の音も録らしてもらいました。雄叫びも彼らのもので、「全国大会で優勝したときの気持ちを思い浮かべて」「人生で一番うれしい瞬間を思い浮かべて」とお願いして叫んでもらったんですよね。そしたら迫力があるのに不吉な感じが一切しないものになって。
──確かに。ポジティブで清々しいイメージを与えます。
友成空:本来戦場は命を奪い合うような禍々しい場所だけれど、そういうところをよくも悪くも削ぎ落として、エネルギーの部分だけを抽出したかったんです。アメフト部の子たちの荒削りかつポジティブな高揚感が、それを作り出してくれたなと思います。彼らがいなかったら、「咆哮」は完成しませんでしたね。
──「作り手の性質や人生、そのときに抱えていた気持ちは作品に影響を及ぼす」が、「咆哮」でも立証されていますね。大学生活の賜物ではないでしょうか。
友成空:まさか自分の大学生活がこんなところでも活きてくるなんて思わなかったです(笑)。コンタクトスポーツをやっている男の子たちに『キングダム』ラヴァーは多いので、もともと観ていたアニメに自分たちが参加できたようですごいうれしいと言ってくれて、本当にありがたかったです。
──「未来電話」についてのインタビューを行った際にも感じたのですが、友成さんがそこまで効果音のディテールを追求しているのは、どんなことがルーツにあるのでしょう?
友成空:いくつかあるんですけど、ひとつはもともと僕が趣味でインスト曲を作っていたからだと思います。
──友成さんは小学1年生からピアノを始めて、小学4年生から電子ピアノで楽曲制作をするようになって、高校1年生までインスト曲を作っていたんですよね。
友成空:「音だけでしっかり聴かせるには、フックとなる効果音みたいなものが大事だな」と思ってから、そのあたりを掘り下げるようになりました。もうひとつは、ミュージカル的なアプローチが好きなのも大きいですね。それは幼少期に観ていたディズニーアニメがルーツにあると思っていて。ディズニーアニメにはミュージカルの要素が多分に含まれているので、自然とそれが自分に根付いたんだと思います。あともうひとつの理由は、効果音は0.何秒くらい鳴るだけで瞬時に情景を思い起こさせるすごいパワーがあると感じているんですよね。香りで情景や思い出が蘇るような感覚が、効果音にもある気がしていて。だからいつか、劇伴を作ってみたいんです。
──友成さんと劇伴、合いそうですね。今回の「咆哮」然り、TVアニメ『暗殺教室』再放送 新オープニングテーマの「黄色信号」然り、友成さんは書き下ろしタイアップ曲の振りかぶりが大胆だなと思うんです。作品の世界を細部まで踏襲している。
友成空:もともと存在している世界に合わせて曲を作るのがすごく好きなので、書き下ろしは本っ当に毎回楽しいんです。音楽でディズニーランドみたいなことがしたいなと思っていて。
──と言いますと?
友成空:ディズニーランドはそのエリアごとのムードを引き立てる楽曲が選ばれているだけでなく、音響の工夫によってそれぞれのエリアが箱庭として存在していると同時に、シームレスにリンクしている。僕はそれがテーマパークだと思っていて、その箱庭づくりを音楽で存分にできるのがタイアップ曲の書き下ろしなんですよね。自分になかったものを無理やり引っ張ってきて、それを曲に落とし込むことでどんどん自分の引き出しが増えていくのがすごく面白いんです。
──新しい要素を取り入れることを面白がれるのは、大きな強みですね。
友成空:僕が元来、自己表現として音楽をやっていなかったからかもしれない。自分の胸の内に溜まっている感情を発出していくというよりは、これまでもずっと自分の思い出やイメージみたいなのをどう工夫して再現するかを重んじているので、もともとある世界に合わせて作ることは、僕の音楽をやっている理由とつながっている気がしています。タイアップ曲を書き下ろすならその作品の世界観を第一に考えたいし、引き立て役になりたいんです。自分らしさは意識して出すものじゃなくて、どうしても滲み出ちゃうものだと思うんですよね。
──実際にどの楽曲も友成さんの美学が貫かれているので、それもある種の友成さんらしさだと思います。書き下ろしタイアップ曲は新しい要素を取り入れてゴールに近づけていく制作が多くて、オリジナル曲は「鬼ノ宴」のように最初のイメージからどんどん広がることで新しいご自分のアウトプットを見つけているようにお見受けするので、友成さんにとって楽曲制作はまだ見ぬ世界へ旅をするようなものなのかもしれませんね。
友成空:ああ、そうかもしれないですね。僕にとって曲を作る時間は瞑想に似ている気がしているんです。どうやらマインドフルネス瞑想には、いま目の前にあるもののありのままを受け入れるという定義があるらしくて、自分も曲作りをするなかでふと弾いたフレーズにじっくりと向き合って、その結果どんどん生まれてくるものに意識を集中させていくんです。そうすると「あれもやりたいな」「こういうこともしてみようかな」とイメージが湧いてきて、自分の心が軽やかで、精神が自由な状態だなと感じるんですよね。曲を作る時間が一番、自分の未来が見渡せるような感覚があるんです。
──となると秋にリリース予定のアルバムも、11月に開催予定の東名阪ワンマンツアーも、とてもバラエティ豊かな内容になりそうですね。
友成空:はい、きっとそう思います。アルバムはいま制作中で(※取材日は9月上旬)、それこそ箱庭がいっぱい集まったようなアルバムになるんじゃないかなと。
──お言葉を借りると、テーマパークのようなアルバムになるんだろうなと。
友成空:そうですね。アルバムを出すことは高校時代からの目標なので、完成して自分がどんな気持ちになるのか、今後アルバムという表現物に対してどのような考えを持つのかが楽しみです。ワンマンツアーは世界観がしっかりとわかりやすく伝わるものにしたいと考えているので、アルバムのコンセプトを落とし込めるライブにはしたいなと思いつつ、等身大の自分も出してもいいのかもしれないなといま試行錯誤しているところです。ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
取材・文◎沖さやこ
◾️<友成空 1st ONEMAN TOUR>
2025年11月23日(日)大阪 梅田Zeela
開場/開演 16:30/17:00
2025年11月24日(月・祝)愛知 新栄シャングリラ
開場/開演 15:30/16:00
2025年11月27日(木)東京 WWW X
開場/開演 18:00/18:30
チケット
一般チケット 4,000円(税込)
学生チケット 2,000円(税込)
※スタンディング
※未就学児童入場不可






