【インタビュー】あみゅり、『名探偵コナン』新オープニングテーマに起用された正体不明な現役高校生の決意「見返したい。音楽を失ったら私じゃなくなる」

2025.08.02 12:00

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■自分はヒロインじゃないって分かってる
■その負けヒロインが勝ちに行く

──そして、2025年5月に発表したデビューシングル「花いちもんめ」がバズりました。

あみゅり:私の曲の中でも一番パンチが効いてる、自己紹介的な曲なんですね。“私、かわいー”から始まる曲なんですけど、これは私を肯定しているのではなく、世間に向けて最大限の皮肉を込めていた言葉なので。一番私らしい曲かなと思います。

──トラックはヒップホップですよね。そのルーツはどこにありますか? 一番影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか?

あみゅり:日本で言えば、ちゃんみなさんの影響が大きくて。もともと昭和歌謡を聴いて育ったんですけど、中学校3年生の時にTHE FIRST TAKEで「美人」を歌ってるちゃんみなさんの切り抜きがTikTokに流れてきて。自分と重なったし、世間に対する皮肉や美に対する概念をこんなにソウルフルに伝えられる人がいるんだ?ってすごく衝撃を受けて。ちゃんみなさんは、もちろん音楽も好きなんですけど、人間としても本当に尊敬してますし、憧れですね。私もちゃんみなさんの音楽に救われた一人です。

──「花いちもんめ」のトラックは和と洋の楽器が混じってるのも特徴的ですね。

あみゅり:常に今まであまりなかったもの、新しいものにしたくて。私は日本の女の子で、日本人ということに誇りを持ってるし、歌にこぶしを入れることもできるので、その強みを生かして、1作目(「花いちもんめ」)は和にしたかったんですね。そこで、バイオリンと琴の組み合わせが面白いなと思って。聴きなじみのあるものと、新しさを追求した曲になってると思います。

──またラップもしてますが、この曲は歌メロ部分でもブロックごとに声色も変わっていきますよね。とても多彩なので5人組かと思ったくらいです。

あみゅり:私的には一人で歌ってるつもりです。あえて声をぶりっこみたいにかわいらしくしたりして、自分で聴いても、ちょっとムカつくから、それがいいのかなって思ってます。あと、みんなできることじゃないので、そこは自分の強みかなと思います。

──リリックでは“負けヒロイン”が玉座に登り詰める逆襲が描かれてます。負けヒロインがあみゅりさんってことですよね?

あみゅり:そうです。アーティストってことだけじゃなくて、日常生活においても、自分はヒロインではない。仮にストーリーに置き換えたときに、好きな男の子がいたとしても、結局、報われないとか、譲っちゃうとか、取られちゃうとか、そういうタイプなんですね。自分はヒロインじゃないっていうのが分かってる。でも、その負けヒロインが勝ちに行くというか、報われるストーリーがあってもいいと思ってるので、そういった意味を込めてますね。

──この曲には決意も込められてますか?

あみゅり:そうですね。私が来た!って感じがある(笑)。やってやるし、絶対に負けないって思ってるし。“こんなんじゃ終われないわ”っていう歌詞の通りに思ってる。私、歌手としてやっていくよっていう、自分に対する決意表明という意味もありますね。

──“やってやる”とは、何をやってやるって気持ちですか?

あみゅり:負けヒロインの逆襲をしてやるっていう。過去の自分を救ってあげたい。ずっと歌手になりたいと思ってたから、その自分のためにも簡単に投げ出したりしたくないし、絶対に自分の持ってる夢は全部叶えてやるっていう。

──その夢っていうのは何ですか?

あみゅり:東京ドームを埋めたいっていうのが一番大きな目標ですね。東京ドームを埋められるってことは、それだけの人がいるってことで。きっと私の音楽が好きで、救われたっていう人がたくさんいるってことだから。そうすれば、きっと自分も影響力のある人になれてると思うので、自分が今まで世間に対して感じた違和感や古い常識、いらないルールとかを変えていけたらいいなって思います。そこが最終目標ですね。

──デビューするにあたっては、アーティストとしての理想像みたいなのは思い描いてましたか?

あみゅり:あみゅりは私の理想像でもあるんですよね。今は、本当にやりたいことをやりたいようにやらせてもらってるし、まずは自分の世界観は大切にしたいと思います。2作目の「りなちゃん」で言えば、無闇に頑張れとか、無責任なことは言いたくない。それに、“大丈夫、コンプレックスを武器にすればいいんだよ”とか、“諦めないで、頑張れば報われるから”とか、そういうことも言えない。自分はまだコンプレックスがあるし、そこに向き合ってはいるけど、まだ完全に乗り越えたわけでもない。それなのに偉そうなことは言えないから。この活動を通して、今世の中に対して、生きにくいなと思ってる同年代の女の子たちと一緒に変わっていけるようなアーティストになりたい。ゆくゆくは、自分がみんなの人生を変えられるくらいの姉貴みたいなアーティストになれたらいいなって思ってるんです。だけどまずは今、自分が変わらないといけないよなって思ってる感じです。

──「りなちゃん」はルッキズムに対する曲ですよね。

あみゅり:コンプレックスに悩んじゃう時期は誰にもあると思っていて。特に今の若い女の子たちはそうだと思うんです。情報社会が良くも悪くも発達して、簡単に人の情報を知れるようになっちゃってて。

──みんなずっとInstagramやTikTokを見てますもんね。

あみゅり:TikTok見てますね。それは「花いちもんめ」にも関連してくるというか、言いたいことは同じなんですけど、人と比較しやすくなってるし、美の正解が決められちゃってる。本来、正解なんてないよなってことはわかっていつつも、気になっちゃうんですよね。私もこの曲を作ったとき、もう限界だったんですよ。部屋を真っ暗にして、ノートに頑張って書いてた感じです。

──“りなちゃん”とは誰ですか? 自分のことなのか、何かの象徴なのか?

あみゅり:これは私のことではなくて、実在する人ですね…中学校の時の同級生。すごく綺麗で優しい、本当にいい子で。“あの子は全部に恵まれてるから幸せなんだろうな”って思ってたんですよね。いい子だからこそ、自分に対する劣等感や嫌悪感を覚えたんですけど、結局は歌詞にもある通り、それは自分で自分を否定してることにつながっていて。無理に変えろとは言わないけど、そのことに気づけたら少し変わったりするのかなと思って書いた曲です。