西海岸ヒップホップ<ゲットーからの逆襲>
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EMINEMに続くスター、50CENTを生み出したDR. DREの“AFTERMATH” と ボスであるSNOOP DOGGが充実したアルバムをリリースした“DOGGYSTYLE”。 かなり大雑把に言うと現在の西海岸メジャー・シーンは、 この2大レーベルの時代に突入したと言えるかもしれない。 そんな隆盛を極めつつあるオーヴァー・グラウンドのシーンへ比例するかのように、 地下でも熱いシーンが形成されているのであった。煮えたぎるマグマの如く…。 BARKSニュースで話題のSUGE KNIGHTと天敵DAZ DILLINGERのバトル、 インディペンデントで活躍するベテランたちの作品試聴と共にお届けしよう。 |
■DEATH ROW帝国の逆襲 |
しかし、ようやくTHA ROW第一弾作品のリリース準備が整った。レーベル名をDEATH ROWへと戻し、リリースされるというこのアルバムは、N.I.N.A.の遺作やKURUPTの新曲、JAY-ZやASHANTIらも参加しているというサントラ『DYSFUNKTIONAL FAMILY』。すでに先行カットされているCROOKED I「Still Tha Row (Remix)」(B/W. KURUPT「I'm Back」)は上々のリアションで、DEATH ROW時代の再到来を予感させている。 |
■D.P.G.人気加熱! |
【DAZ DILLINGER時代到来】 そのSUGE KNIGHTの苦戦を何よりもニヤニヤとほくそえんでいるのは、天敵DAZ DILLINGERだろう。自身のソロ作やKURUPTとのD.P.G.名義でのアルバム、さらに外部でのプロデューサー活動でマイペースながらもシーンに確固たる地位を築き上げてきたDAZは、昨年後半から一気に活動ペースを加速していく。 DAT NIGGA DAZ名義での『I GOT LOVE IN THESE STREET』にDOGG POUND名義での『THE LAST OF THA POUND』は、共にアンダーグラウンド・レベルながらもヒットを記録。さらにはDAZ名義でのアルバム、さらには噂されていた「THA ROW KILLA E.P.」(注)もアナログ・オンリーでリリースの準備が整っているらしい(一応本人なりにDAZ DILLINGER / DAT NIGGA DAZ / DAZと名義を3種類で使い分けているらしい…)。さらにはSOOPAFLY & DAZ、SNOOP DOGG & DAZといった名義でのアルバム計画、THE TWINZやLADY OF RAGE、DADDY Vといったベテラン達とのレーベル契約もほのめかしている。 【DEATH ROW vs D.P.G. :Round ?】 DAZが遂にリリースへと踏み切ったとの噂もある『THA ROW KILLA E.P.』だが、なんとそれへのDEATH ROWサイドからのアンサー・ソングがあるらしい! 筆者は未聴だが、既にL.A.のラジオ・ステーションでも何度かプレイされたらしく、それを聴いたDAZはまたまた激怒! SNOOPと組んで、新たなDEATH ROW攻撃曲をレコーディングしているらしいが、その最中、SNOOPが何者かから銃撃されるという事件が…。またDEATH ROWは毎度恒例(?)、延期中のDAZの新作『D.P.G.C….U KNOW WHAT I'M THROING UP』をオフィシャル・サイトでダウンロードできるようにしちゃってます…。それに対し、速攻でDAZはD.P.G.のサイトで「DYSFUNKTIAL FAMILY」のダウンロードできるようにしちゃうという反撃を開始。さらにD.P.G.は、DEATH ROWの所属アーティスト、CROOKED IのアルバムをD.P.G.から出しちゃうぜ!とも告知しており、ますますこの両レーべルから目が離せなくなっている。 【SUGE KNIGHT as 反面教師】
そもそもSUGE KNIGHTと言えば、DEATH ROW時代はギャラをピンハネするわ、アーティストの音源も自分のモノにしちゃうわで所属アーティストから総スカンされちゃった人(モチロン他にも理由はあるだろうが…)。そんなヤツには誰も付いて行かんわ!とDAZは思っていたのであろう。彼は自分の取り巻きに対してもちゃんとメイク・マネーさせている…。ここ最近西海岸方面から流出している怪しげなアルバム、KURUPT『AGAINST THE GRAIN』(通称赤盤)にDOGG POUND『DPGC : THE REMIX LP』、KOKANE『DON'T BITE THE FUNK VOL. 1』などなどは、D.P.G.周辺の連中が小遣い稼ぎでDAZのマスターを拝借しているのだろう。レーベル名こそD.P.G.ではないものの音源的にはDAZが制作に絡んだモノばかりだし・・・バレバレじゃん! それを全て承知でやっちゃってるんだろうから、さすがは太っ腹! 【KURUPTの逆襲】 勝手にアルバムを出されちゃったアーティストは堪ったモンじゃないわけで、まず反撃を開始したのがKURUPT。早速同内容でアートワークKURUPTフレイヴァに変えてしまった『AGAINST THE GRAIN Vol. 1』(通称青盤)をリリースする。一部でTHA ROW離脱なんて怪情報も流れていたKURUPTだが、自身のレーベル、KUSTAPOを新たに設立し、現在は今夏にリリースを予定しているという新作を準備中とのこと。
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■インディペンデントで活躍するベテランたち |
DAZ以外にも、日本では情報がなかなか入ってこないのだがアンダーグラウンドなシーンでマイペースな活動を続けている連中は多い。まずロング・ビーチを拠点としているFOESUM。SNOOP DOGGやWARREN Gと活動を共にし、'96年にTOMMY BOYから傑作として名高いデビュー・アルバム『PERFECTION』をリリースした彼らは、その後、契約の問題で活動停止を余儀なくされる。しかし地元ロングビーチでの絶大な後ろ盾をもとに'02年、自身のレーベル、PERFECTIONを立ち上げてアルバム『THE FOEFATHERS』を完成させる。当初はオン・ラインのみでの発売だった本盤は、全世界のフリークスからの熱い要望に応えるべく本格的なディストリビューションを開始し、日本でも好調なセールスを記録。 さらには中心メンバーでもあるDJ GLAZEが満を持したソロ・アルバム『ULTIMATE DOLLABORATION』をリリース。こちらも好調な滑り出しだ。彼らはその後、幻の1stアルバム『PERFECTION』のリリースにベスト・アルバム、初のDVDリリースなどなど精力的に活動していくらしく、目が離せない状況だ。
そしてサウス・セントラルからは、あの伝説のSOUTH CENTRAL CARTEL(SCC)が本格始動。かつてはDEFJAMからもアルバムをリリースし、あのCOOLIO『Gangsta's Paradise』に参加し、グラミー賞を獲得したL.V.も在籍するという、西海岸HIPHOP界に重鎮&最重要グループのひとつ。そして、ようやく昨年から完成が伝えられていた6枚目のアルバム『WE HAVE THE RIGHT TO REMAIN THE VIOLENT!!!』のリリース態勢も整ったようだ。これまであまり表に出ることの無かった彼らであるが、中心人物PRODEJEがこれまでになく積極的なメディア露出を展開しており、日本でもBLACK MUSIC REVIEW誌やCUSTUM LOW RIDING誌などで大々的な特集が組まれるなど盛り上がりに火をつけている。古き良きソウルの味を残しつつ、アグレッシヴなギャングスタ・サウンドも聴かせる、という西海岸HIPHOPシーンの二つのトレンドをブレンドした彼らのサウンドは、幅広い層にアピール出来るであろう。しかも夏には、長いキャリア&膨大なカタログを総括した初のベスト・アルバム(ナント2枚組!)を予定しているとか。
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