フルアルバム『TOP OF THE TOWER』を引っ提げて、5月にスタートしたツアーは各地で大盛況となり、10月17日・札幌Crazy Monkeyを皮切りに追加公演も行われた。札幌、新潟、金沢、広島、大阪、福岡、名古屋、仙台を経て迎えたツアーファイナル、12月25日に開催された公演の会場は、過去最大規模の東京・Zepp Shinjuku。チケットがソールドアウトしたこのライブの模様をレポートする。

「With a Dream」が鳴り響く中、スクリーンに流れたオープニング映像。全国ツアーでの各地の様子を捉えた写真が次々映し出され、剣士（HAGANEファンの呼称）の手拍子が力強く高鳴った。音楽がSE「Top Of The Tower」に切り替わると、JUNNA（Dr）、Sayaka（B）、Sakura（G）、凪希（Vo）──4人が順番に登場。ステージ中央のお立ち台の上で手を振り、歓声を浴びた。

そして1曲目「Start Our Journey」がスタート。メンバー全員が一丸となって疾走するサウンドが早くも強烈。剣士はタオルを激しく振り回しながら興奮を露わにしていた。続いて「天下五剣」と「Catch the star」も連発されたことにより、熱気で満たされたZepp Shinjuku。

正確なピッキングでドラマチックなフレーズを連発するSakura。重厚且つグルーヴィーなプレイでバンドアンサンブルの熱量を着々と高めるSayaka。放つサウンドはもちろん、ダイナミックなドラミングを繰り広げる姿も剣士のトランス状態を加速するJUNNA。爆音に埋没しないパワーを帯びつつ、凛々しさと温かさも感じさせる凪希の歌──各々の華、4人が音を重ね合わせた時に生まれる輝きをたっぷり体感することができた。

「時は遡ること1年前、我々はツアーファイナルの場所の会議をしたんです。私はどうしてもZepp Shinjukuでやりたくて、初めて会議で大きな声で『Zepp Shinjukuでやりたいです』と言いました。勇気を出して発言したから、この1年どきどきしながら過ごしていたんですけど、1年前の自分に『あの時、よくやった』と言いたいです」（JUNNA）

「春からツアーを回っておりまして、その時のツアーファイナルは700人くらいのみなさんにお越しいただいたんです。今日は1000人以上のみなさんにお越しいただいていると思うんですけど……意外とステージから見るとフロアってそんなに広く見えないんです。でも、Zepp Shinjukuやばい！　こんなにも広い、たくさんのみなさんがいらっしゃると思ったのは今日が初めてです」（Sayaka）

「みんな、今日もうるさくていいね（笑）。今日は結構私、冷静じゃないんですよ。久しぶりに緊張しております。みなさん、剣士ですけど、今日は自分の好きなボンゴレだと思ってみんなのことを見ます。最後までよろしく！」（Sakura）

「ツアーを5月からやってまいりました。今日が集大成でございます。みなさんにとって最高のクリスマス、最高の年末になるように頑張っていきます」（凪希）

チケットがソールドアウトしていることへの喜びも滲む各々のMCを経て、曲がさらに届けられていった。

Sayakaのベースが先陣を切ってスタートするや否や、剣士の手拍子が雷鳴のような激しさを帯びた「剣のレコード -Records of TSURUGI-」。和メロを交えながらミステリアスな展開を遂げた「Kagome」。心臓の鼓動を限界まで高めるかのようなスピード感が爽快だった「Hero Time」……3曲が披露されてから迎えたMCタイム。

演奏をしている時は勇者のようなHAGANEだが、小休止では和気あいあいとしたやり取りを繰り広げるのも楽しい。高台に設置されたドラムセットのもとへ行ける階段が組まれているので、「今日はJUNNAちゃんのところに遊びに行けるんですよ！」と無邪気に喜んでいた凪希、Sakura、Sayaka。頂上にあるドラムセットをツアータイトルになぞらえて“TOP OF THE TOWER”と表現した凪希が喝采を浴びた。そんな和やかなひと時を経て「Not Lose」がスタート。凪希がアカペラで歌った直後にギター、ベース、ドラムが合流。溢れ返った流麗なメロディ、ハーモニーによって、会場内は一気に興奮で満たされた。

楽器隊の3人が熱いエネルギーをじっくり交わし合ったインスト曲「Over the fate」を経て「Salvation」「With a Dream」「Heart Scream」……ドラマチックなサウンドが剣士を夢中にさせ続けていた。ステージから押し寄せる爆音が興奮を誘いつつも、フロア内に漂うムードが“穏やか”と言ってもいいくらい平和なのは、HAGANEのライブの独特さだ。沸き立つフロアを眺めながら、ステージ上の4人が嬉しそうな表情を頻繁に浮かべていたのが思い出される。残り2曲であることを告げた後、彼女たちが剣士に伝えた言葉も温かかった。

「ツアー楽しかった！　幸せだった！　追加公演のおかげで、初めてだった北海道とか、2回目の場所のハコも、前半戦よりも規模が大きくなって本当に嬉しかったです。全部で22公演。めっちゃ叩いた。1音1音、全公演、全力でやってきたからこそ、Zepp Shinjukuのステージは自信がいっぱい。自分を信じてここまでやってくることができました。本当にありがとうございました！　2025年のツアーはここで終わっちゃうんですけど、2026年もこの4人でもっともっと大きなステージにみんなを連れて行きたいと本気で思っているので、来年もHAGANEと一緒に楽しみましょう！」（JUNNA）

「去年のクリスマスにHAGANEが何をしていたのかご存知ですか？　そう。生配信をやっていたんですよ。2年前のクリスマスにSakuraちゃんからメリークリスマスのLINEが来たんです。その時に凪希ちゃんとは出会ってはいたんですけど、まだ決定はしていなかったんです。私は『来年こそライブハウスでクリスマスを祝うぞ！』と言って、去年はこのメンバーで生配信をすることができて、『Sakuraちゃん、叶ったね』と言っていたんですね。なんとその２年後、メンバー4人が揃ってステージにいる。そしてここに1000人以上の剣士のみんながいる。なんて幸せなことでしょう！」（Sayaka）

「ゲネリハから思ったんですけど、スタッフの本気も伝わってきます。凪希ちゃんとJUNNAが入ってから勢いよく突っ走ってきた感じがするんです。2年前では想像できないような景色です。谷の底みたいな景色の中にいて、人生にこれ以上の苦痛はないという時期を過ごしたので、今の景色が本当に嬉しい。この舞台に立って改めて、プロとしての意識をちゃん持つ瞬間が今だなと気づきました。今日この瞬間、私たちの意識が変わった。また違う感じに生まれ変わったなという気がしています。来年もこの4人で突っ走っていくので、ぜひついてきてくれー！」（Sakura）

「剣士のみなさん。1年半前に震えた足でステージに立った私を温かく迎え入れてくれて本当にありがとうございます。よく思い出すんです。夢にも見るくらい。今日はその日を思い出すというよりは……「Over the fate」の時に私はいなくなるじゃないですか？　袖からメンバーの真剣な表情を見て、『本当にこの人たちと出会えてよかったな』と。JUNNAちゃん、いつも思いっきり後ろで叩いてくれてありがとね。Sayakaちゃんも、いつも本当にありがとね。お話をいっぱい聞いてくれて。Sakuraちゃん、私の音域まで理解してくれているんです。その上で最高の曲を作ってくれてありがとうございます。そしてみなさん、本当に大好きです。これからもついてきてくれればと思っています。『泣かない』と言ったのに泣いて本当にごめんなさい（笑）」（凪希）

「BlackCult」と「Out of the Darkness」で本編は締めくくられたが、アドレナリン分泌促進ソング2連発を浴びた直後に大人しくしていられる剣士はもちろんいない。「HAGANE！　HAGANE！　HAGANE！」というコールと激しい手拍子が4人をステージに引き戻した。剣士の叫び、突き上げた拳が爆音にさらなる刺激を添加した「Amour Chain」。手拍子がライブならではの活き活きとした躍動感を生んでいた「Wintrysky」……アンコールの2曲を届けると、彼女たちはステージを後にしたが、再び始まったHAGANEコール。すると、スクリーンで新曲「Amour Chain」のMVが公開された。古城で撮影された映像は、ファンタジー作品のようなシーンの連続。演奏の臨場感も伝わってきた。

「2026年2月、新曲配信」「2026年6月23日、HAGANE 8周年記念ワンマンライブ。会場：恵比寿LIQUIDROOM」「2026年冬、アルバムリリース」──活動予定を告げる文字がスクリーンに浮かび上がった直後、ツアーグッズのTシャツに着替えた4人が登場。ダブルアンコールで届けられたのは「Life goes on!」。剣士の間から起こった大合唱を浴びながら笑顔を浮かべた4人。幸福なエネルギーで彩られた渾身のサウンドが、ライブを爽やかに締めくくっていた。演奏が幕切れた後、肩を組んでお辞儀をした彼女たちを包んだ大歓声。2025年がHAGANEにとって実り多い日々だったことを再確認できるライブだった。

取材・文◎田中 大
写真◎Takashi Konuma

◾️「Amour Chain」
2025年11月12日（水）リリース
https://nex-tone.link/A00204796
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