みんな何かを期待してるわけで、 こっちは大抵その期待に応えることができる。 観客の反応を見てると、そう思えるね。 |
――あなたたちは海外での人気が先行し、ことにイギリスではアメリカより先に脚光を浴びていましたね。バンドの音楽のどういう点がイギリスであれほど注目されたのでしょうか?
NIKOLAI:さあね。でもイギリスは違うんだよ。新しい音楽やちょっと変わったものに対して、もっとオープンなんだ。だから受け入れられた。
NICK:最初にリリースしたのがイギリスだったから、先に名前を知られるようになったってのもあるけど、すぐに飛びついてくれたね。それに世界中どこへ行っても、オレたちが初めてプレイするところでさえ、観客の反響は同じだよ。イギリスだけ特別ってことはないんじゃないかな。みんなオレたちの音楽を気に入ってくれてる。
――ではイギリスもアメリカもライヴの客はまったく同じだと?
NIKOLAI:違いはあるよ。でも初めての時はどっちも同じなんだ。誰もオレたちの音楽を知らないし、アルバムも出ていないという状況だから、観客の反応はどこもそう変わらない。こいつら何だろうって感じで、じっと聴いている。でも大抵プレイが終わる頃には、みんなエキサイトして楽しんでくれてるね。
――あなたたちは最高のライヴバンドですが、そうやって耳の肥えた観客や、自分たちのことを知らない観客を振り向かせるほどのプレイをすることで、腕を磨いているわけですか?
NIKOLAI:オレたち最初、友達の前でプレイしてたんだ。そしたら友達の友達もやってくるようになって、だんだん膨らんでいった。知ってる人だろうが知らない人だろうが、同じことなんだ。みんな何かを期待してるわけで、こっちは大抵その期待に応えることができる。観客の反応を見てると、そう思えるね。
――観客という面では、ニューヨークの客はかなり耳が肥えています。あなたたちはそのニューヨークから始めたわけですが、やはり難しい観客だと思いますか?
NICK:最初はそう思った。でも、ニューヨークはプレイするには最高にクールな街だ。オレたちのショウにはいろんな客がやってくる。年配者もいれば若者もいるし、インテリも体育会系も、黒人も白人も、男も女もいる。ニューヨークではロックファンじゃない連中も聴きにくる。音楽好きじゃない連中まで来てくれるってことはオレたちが結構いい線いってるんだと思うよ。
――最近はニューヨークからクールなバンドがたくさん出てきていますが、どういうバンドが好みですか?
NICK:今ニューヨークで一番気に入ってるのはMoldy Peaches。Realisticsもいいし、French Kicksもすごくクールだ。他にはそうだなぁ、何しろたくさんバンドがいるから……へぼバンドがね。まぁどこだってそうだけど、バンドの97%はひどいもんだよ。その中で光ってるのは片手で数えられるほどさ。そういうバンドは独自の音楽をやっている。
NIKOLAI:“音楽シーン”と呼べるほどのものはないよ。でもMoldy Peachesは一緒にプレイするのが楽しい。とにかくオレたち、自分の音楽に懸命で出かける暇はそんなにないんだ。
――それほど頑張っているところをみると、あなたたちは完璧主義?
NIKOLAI:そうじゃないけど、できるだけのことをしたいんだ。
自分たちの記事を読むこともあるけど まるで物語の登場人物みたいな感じがする。 誰かが自分のことを物語に仕立てたっていうか。 |
――デビュー早々にして大々的な宣伝に恵まれたわけですが、それを妬む声はありますか? 足を引っ張って引きずり下ろそうとする人とか?
NICK:ああ、そういうのはどこにでもいるよ。だからってわざわざこっちが実力を証明してみせる必要なんてないと思ってる。やるべきことをやって、くだらないことを言う連中には耳を貸さない。オレたちのことを疑う連中は無視するに限る。
NIKOLAI:そうさ、オレたちは自分のために頑張ってるわけで、他の連中のことなんかどうだっていい。どんな世界だってそうだけど、ちょっと成功すると妬みを買うんだよ。最初は大抵、なんだってこいつらが、っていう目で見られるんだけど、オレたちのことを知ってくれると、そういう目はなくなる。
――では、反動などは懸念していないと?
NICK:オレたち、頭は悪いほうじゃないと思ってる。結構ものごとを見る目はあるし判断もできる。これまでだって正しい決断を下してきたつもりだ。だからこの調子で怠けずにやっていけば、自然と道は開けると思ってる。これまでもそうだったからね。今まで通り努力して、バンドとして腕を上げ、いい曲を書いて、誤った決断をしないようにするよ。
――あなたたちに関する最大の誤解は何だと思いますか?
NIKOLAI:1つどころかたくさんありすぎてね。
――あえて1つ挙げるなら?
NICK:ケンカ好きと言われてること。それに、オレたちの人気は単に親の七光りのおかげと言われてることもね。いろんな誤解があるんだ。
NIKOLAI:オレは特に気にならないね、根も葉もない噂なんだから。一番言われてるのはケンカ好きってことだろう。毎日やるわけじゃないのに、ロックとくればケンカというわけで、色眼鏡で見たいのさ。だけどオレたちの音楽とは何の関係もない。
――そのケンカ好きという評判は、具体的にどこからきているんですか? なんでも、NME誌のインタヴューの最中にケンカを始めたという話ですが?
NIKOLAI:インタヴュアーはその場に居合わせもしなかったんだ。NME誌の写真撮影の途中で言い争いが始まったんだけど、すぐにケリがついた。たまたまちょっとハメを外してただけなんだよ。
――自分たちの記事を読むことはありますか?
NICK:そりゃ、読むこともあるよ。まるで物語の登場人物みたいで、作り話を読んでる感じ。誰かが自分のことを物語に仕立てたっていうか。現実感がほとんどなくて、自分のことを読んでる気がしない。誰かの目を通した自分を読んでる感じなんだ。
NIKOLAI:正直言って、結構笑えるね。自分たちのことが書いてあるんだけど、全然別人のことみたいなんだ。だからなんだか可笑しくって笑っちゃうんだ。
NICK:カッコつけるわけじゃないけど、オレたち、音楽以外興味はないし、他の連中がどう言ってるかなんて大したことじゃない。音楽が第一で、それ以外のことは二の次で、どうだっていいって感じ。「いろいろ言う人がいますが、どう思いますか?」なんて訊かれるけど、オレの知ったことかよって言いたいね。オレたちはバンドとして腕を磨いて、クールで一味変わった音楽をやることに専念してるんだ。
――そんなふうに落ち着いた態度で他のことに気を取られずにいる秘訣はなんですか?
NIKOLAI:何が大事で何が大事じゃないかを見極めることさ。オレたち5人はお互いを認め合っているし、今一番大事なことは何かってことをいつも考えている。
ヒットメイカーのプロデューサーと組んで、 StaindやFoo Fighters、Sugar Rayみたいなサウンドを レコーディングするなんて、全然オレたちらしくない |
――あなたたちのアルバムのすごくクールなところは、サウンドがオーヴァープロデュースされてない点です。そういう意味ではEPとほとんど同じですよね。アルバムのレコーディング中に、もっと売れ線をねらったサウンドにしたほうがいいというプレッシャーはありませんでした?
NIKOLAI:全然なかった。レコーディングを始めた時はまだ契約してなくて、純粋に自分たちのためだったんだ。レコード会社はオレたちを信頼してくれたから、こっちも向こうの意見を取り入れた。結果、今の仕上がりになって、みんなハッピーだよ。
NICK:あのEPは、本当はデモテープとして作ったものなんだ。それが成りゆきでリリースされて、しかもヒットしたってわけ。アルバムのほうはレコード契約の前から、EPと同じ場所で同じ担当者とレコーディングを開始してた。ローワー・イーストサイドにある地下のスタジオだよ。彼の手にかかると、オレたちが頭の中で考えるだけで実現できなかったサウンドが、ちゃんと出来上がる。こういうふうにできたらいいなと思っていたサウンドが、スピーカーから出てくる。それで、「何もいじることないじゃないか、うまくいってるんだから!」となったんだ。彼とは一緒にやってて波長もぴったり合うし、クールなサウンドに仕上がった。'60年代や'70年代のサウンドに近いんだけど、同時に新しさも感じさせる、オレたちが目指していた仕上がりだよ。
――どうやら、なかなかいいレコード契約となったようですね。あちこちのレーベルから声がかかっていましたが、契約にあたって何を規準に選んだのですか?
NIKOLAI:まずオレたちの自由を尊重してもらうこと。RCAでは大勢の人と会って、会社の雰囲気や仕事のやり方、社員どうしの態度なんかを観察したんだ。それで大手の中ではRCAがオレたちに一番しっくりくると思った。あそこなら、他の大物アーティストの片手間じゃなく、オレたちが一番手厚いケアを受けられるってことだった。そういう申し入れだったから同意したんだ。
――大手と契約するにあたって、何か信用が置けないというような感じはしませんでしたか?
NIKOLAI:そんなことは思わないけど一応気をつけてはいる。何しろ、いろんな話を聞くからね。そうやって学んでいくんだよ。
――今の時代は、ティーンポップやニューメタル全盛ですが、その中であなたたちの音楽はどういう位置に当てはまるんでしょう?
NICK:どういう位置に当てはまるかって? 当てはまるもんか。オレたちの音楽は他のどれとも違う。オレたちが音楽をやり始めた理由もそこなんだ。今流行ってるものと違うのをやりたいってことだったんだ。もちろん影響は受けてるけど、まったく違うフレッシュな音楽だと思ってるよ。今回のアルバムのサウンドだって、今までどこでも聴いたことがないものさ。とにかく他とまったく違うオリジナルというのがオレたちなんだ。スタジオ入りして、ヒットメイカーのプロデューサーと組んで、StaindやFoo Fighters、Sugar Rayみたいな今風のサウンドをレコーディングするなんて、全然オレたちらしくない。それこそオレたちが一番やりたくないことさ。
――でも、他のバンドにたとえられたりしていますよね。それについてはどう思います?
NICK:まぁ、お世辞のつもりなんだろうね。批評家は自分たちがクールだと思っているバンドにたとえているわけだから。でも、そういうバンド自体、オレたちは聴いたこともないし、聴いたことがあったとしても大した影響を受けているわけじゃない。よくVelvet Undergroundみたいだとか、あのバンドの影響が大きいとか言われる。他にもたくさんあるけど、そういう批評は大抵は見当違いなんだ。『Marquee Moon』にしたって、みんなに「Televisionみたいだ」って言われるまで聴いたこともなかったんだぜ。
――では、実際にTelevisionを聴いてみて、Strokesのサウンドは似ているという意見に同意しますか?
NICK:しない。だいたいオレのCDコレクションには入ってないし、メンバーの誰も持ってないと思うよ。
――どういうのがあなたのコレクションに入ってるんです?
NICK:いろんなのだね。Bob MarleyやBob Dylan……Bobのは多いね。それにFreddie King、John Lennon、Beach Boys、Cars、Pixies、Guided By Voicesとか……Freddie Kingはもう言ったっけ?
――レコードがリリースされてからほんの1年で、すでにかなり有名になりましたが、Strokesがアメリカ征服を成し遂げる計画はどういうものですか?
NIKOLAI:さっきニックが言ったように、オレたちは今ある音楽に合わせようとは考えてないんだ。今の時点では、みんなをエキサイトさせ、オレたちの音楽に耳を傾けさせたい。最初からそうやってきたし、そのやり方でみんなを振り向かせてきた。ブレイクするっていう意味では、狙ってた人々が振り向いてくれればそれでいいんだ。静かに口コミで広がってくれればいい。
NICK:はっきり言って、「ブレイク」するかどうかは問題じゃない。ミリオンセラーもね。本当にいいバンドでいるっていうのが大事なんだ。別にカッコつけてるわけじゃないし、みんなそう言うってことも知ってる。だけどそれが本音なんだ。オレたちが頑張ってるのもそのためなんだよ。
By Lyndsey Parker (C)LAUNCH.com