【インタビュー】メメメメ「自己防衛のための自己否定」から生まれるポップス、⌘ハイノミがFOIFOIと目指す夢

2026.10.22 17:00

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2026年7月、突如「メメメメ」というユニットが登場した。

7月27日にYouTubeにて公開された初投稿動画「ニセモノ」は、1か月で100万再生を突破。メメメメのメンバーは、ドラマーとしてバンド活動を経験したのち、2021年にボカロPとしてデビューし、近年は柴咲コウ、にじさんじ、MAISONdes、ナナヲアカリ、asmiなどに楽曲提供を行う⌘ハイノミと、⌘ハイノミが何千本もの「歌ってみた」動画を視聴した中から選んだ歌い手・FOIFOI。

メメメメの作詞・作曲・編曲を手掛ける⌘ハイノミが、このタイミングで自分のユニットを立ち上げたかった理由とは。どのようにスタートし、この先どんな音楽を表現していきたいと思っているのか、メメメメにとって初のインタビューとなるこの機会に語ってもらった。

──まずは結成の経緯について聞かせてください。

⌘ハイノミ:音楽を始めてからずっと応援してくれているおばあちゃんとおじいちゃんが見る『紅白歌合戦』に出ることと『レコード大賞』を獲るという目標を立てて、そこに行くためにはどうしようかというところで、メメメメを結成したのが始まりです。おばあちゃんたちも高齢なのでタイムリミットがあると思っていて、もちろん簡単な道ではないので時間がかかると思っているんですけど、そこになるべく早く行きたいという気持ちがあります。

──「『紅白』に出たい」「『レコ大』を獲りたい」というのは、ミュージシャンがよく口にする夢だと思うんですけど、⌘ハイノミさんの言葉にはすごく重みがあるなと思っていて。ただ夢として語っているのではなく、本気で叶えたいという気持ちが伝わってきます。そういった大舞台で活躍するアーティストやクリエイターを身近で見ているからこそ、自分も目指したいという野心が芽生えたところもあったのでしょうか。

⌘ハイノミ:まさに、そうですね。去年、2曲も『レコ大』と『紅白』に出た作曲家の先輩がいたりして、身近に感じるものがありました。

──⌘ハイノミさんもこれまで名だたるアーティストたちに楽曲提供していて、ご自身の作った曲が『紅白』や『レコ大』に出ることはそう遠い夢じゃないと思うんですけど、作家の道を極めるのではなく、あえて自分のプロジェクトを立ち上げたのは、どういう思いがあったからですか?

⌘ハイノミ:おじいちゃん、おばあちゃんにわかりやすく伝えるためには、やっぱり僕が画面に映ったほうがいいだろうなと。あと楽曲提供だと、リファレンス曲があって「こういう感じでお願いします」ということに応えることがほとんどなので、自分のやりたい音楽をやりたいという気持ちがありました。

──⌘ハイノミさんがやりたい音楽、メメメメで表現したい世界観やメッセージとは、どういうものでしょう。

⌘ハイノミ:僕は、普通のことがあまりできないというか。バイトしていても、一緒に入ったやつはめっちゃ上手くできるのに自分は失敗する、みたいな。「今だったらあの時の自分にこういうことを言える」「あの時に困っていた自分みたいな人に届けたい」という思いが一番強いかもしれないですね。

──『紅白』、『レコ大』、つまり日本の大衆音楽のトップを目指すとなると、歌がとても重要ですよね。インターネットに上がっている歌い手をたくさん聴いた中からFOIFOIさんを選んだそうですが、日本で多くの人に届けるためには、どういう声が必要だと考えていたんですか?

⌘ハイノミ:3か月くらい張り付いて「歌ってみた」を上げているいろんな人を聴きまくって、その中から見つけました。選ぶ基準は色々あったんですけど、一番は表現力。FOIFOIはいろんな歌い方ができる、プラス、ハイトーンを出せる。僕の曲にはどういう人が合うのかを考えると、「内側からの叫び」みたいなものに合う声と、そういう歌い方もできる技術のある方がいいなと思っていました。ネットに上がっているものだと加工もできるので、実際に会ってレコーディングしてみて、どれくらい歌えるのかを見た上で選ばせていただきました。あと、ふたりでずっとやっていくとなると人間性も大事だと思うので、ちゃんと努力できる人なのか、破滅しそうな人じゃないかとか、そういうところも含めて、すごくいいなと思いました。

──⌘ハイノミさんがDMを送った時、FOIFOIさんはどんな活動をしていたんですか?

⌘ハイノミ:1週間に1本、「歌ってみた」を自分でレコーディングからミックスまでやって、しかも動画まで自分で作って投稿していたので、地道なことができる人なんだなと思いました。

FOIFOI:14歳の頃から「歌ってみた」を投稿していました。友達に誘われたのがきっかけで、最初は趣味だったんですけど、だんだん自分の歌で誰かが感情を大きく動かしてくれることが生きがいになっていって。たとえば椎名林檎さん、藤井 風さん、Vaundyさんとか、第一線で活躍している人たちと並んで活動したいという目標を持つようになりました。実際に⌘ハイノミさんと会って話した時、⌘ハイノミさんは「音楽で食っていけるようになる」「『ジャンプ』のアニソンをやる」とか、自分の立てた目標を次々と実現する能力が高いから、「『紅白』に出たい」と言われても「え、無理だろ」じゃなくて「いけるかも」と思っちゃったんですよね。だから自分でも色々考えた結果、「一緒にやろう」と言って活動がスタートしました。

──何歳くらいの頃から、歌うことが「趣味」ではなく「これを本気で仕事にしたい」と思うようになったんですか?

FOIFOI:19、20歳とか。実はけっこう最近です。普通に大学へ進学することも考えたんですけど、こんなに歌が上手いのに、毎朝会社に通って夜帰るという生活をする人生でいいのだろうかって。歌が得意だから、この才能を活かさないと意味がないなと思って。

──自分のことをそこまで信じ切れるのはすごいですね。かっこいい。

⌘ハイノミ:本当にすごい。

FOIFOI:今こうやってプロの世界に踏み込むことができたのは、本当に周りの人たちのおかげです。

──「メメメメ」の名前の由来は?

⌘ハイノミ:言葉遊びが好きなのもあって、少ない文字数にどれだけ意味を詰め込めるかを意識しました。「memememe」「〆」「芽芽芽芽」という意味があるんですけど──「memememe」は、さっき言ったように「自分ばっかり失敗しちゃってるな」とか、逆に「自分だけが頑張ってないか」みたいな、視野が狭くなって自分しか見えていない状態のこと。それを終わらせるという意味で「〆」。さらに、そこから「芽」を出して花を咲かせるという意味で「芽芽芽芽」。それらを「メメメメ」には込めています。

──初投稿の「ニセモノ」と、この先リリース予定の新曲を一足先に聴かせていただいて、全曲に通ずるものがあるなと思ったんですね。それは一言で言い切れるものじゃないんですけど、あえて言葉にするなら、「自己防衛のための自己否定」。そういうマインドは、⌘ハイノミさんからこぼれ出ちゃうものなのかなと思いました。

⌘ハイノミ:ああ、確かに。昔はすごく…いや、今もなのかな。FOIFOIは、アーティスト名を考える時に、自分たちを卑下するような名前にはしたくないと言っていて。自信や自己肯定感を持っている部分は、僕と違うところだなと思いました。僕は、全然自信がないので。

FOIFOI:確かに自己肯定感が高いんですけど、もともと低かったから、高くしようと思って自分に思い込ませていたらこうなったという感じです。自分たちを素敵だって思ってあげられるのは自分たちしかいないから、アーティスト名で自分たちを卑下するのは違うなと思ったんですよね。自分のことは自分が一番信じていたいという気持ちで生きています。そこに関してふたりは、対極の位置にいるかも。

⌘ハイノミ:そうですね。僕は基本的に、自分も他人もあまり信用しないようにしていて。だから最悪を想定して動く。人を信用して動くと裏切られた時に悲しくなっちゃうから、裏切られる前提で動いて、裏切られなかったら「おお、やったー」ってなったほうが嬉しい。

──今の会話はすごく面白いですね。そういうマインドが「自己防衛のための自己否定」を感じさせる表現になっているんだなと思ったし、⌘ハイノミさんとFOIFOIさんがそれぞれ影と光になっているからこそ、メメメメは器の大きいポップスが表現できるんだなと思いました。FOIFOIさん、もともとは自己肯定感が低かったんですか? なぜ変われたんですか?

FOIFOI:思春期の頃は、Twitterでネガティブなことばかりをつぶやいていたんですよ。でもネガティブな感情って、人に伝播しやすいじゃないですか。友達のネガティブなツイートを見て自分もネガティブになることがあったから、逆につらいことがあっても「自分天才すぎる」みたいなことを言うようにしたんです。一番落ち込んでいたのは「これから人生どうしよう」と思った高校生の頃で、一回メンタルを壊しちゃったんですけど、そこから立ち上がる時に自己肯定感も上げていった感じで、今があります。

FOIFOI

──そういったふたりの人間性の対比が、メメメメの音楽に表れているんだなと思います。具体的に曲作りについても聞かせてください。⌘ハイノミさんは最初にMVを考えて、次に曲を作っていくそうですね。

⌘ハイノミ:そうですね。MVのプロットを作って、それに合う音、メロディ、歌詞とかをあとからつけています。最近の音楽の傾向として、動画も含めて、目でも耳でも楽しめるものが多いなと思っていて。MVと曲にめちゃくちゃ整合性があって、2つ合わせていろんな意味が汲み取れるということをしているアーティストはあまりいないなというところから、このプロジェクトではこういったやり方を始めました。

──その結果、初投稿から1ヶ月で100万再生いくという驚異の広がり方をした「ニセモノ」が誕生しました。この曲のエンディングについては、曲だけを聴いていると希望を与えるようなハッピーな終わり方になっていると思ったんですけど、ミュージックビデオを見るとバッドエンドとも捉えられる内容になっていますよね。

⌘ハイノミ:この曲は、「周りに順応してしゃべる」「本当はこうしたいけど、でも周りがこう言ってるからそっちに流される」とか、共感していただけるところがあるんじゃないかなと思っていて。MVは、そういった人間の内面のメタファー的な内容になっています。心の形を削って周りに順応する、というところを書きたいなと思っていた中で、最終的にどっちへ持っていくべきかはめっちゃ悩みました。結局、見た人に反面教師にしてほしいなと思って。最終的に破滅する悲しい終わり方をしたほうが、「こうなりたくないな」と感じられて、そういう方向に進んでもらえるのかなと思って今の形にしました。

⌘ハイノミ

──MVの最後では、心を削った主人公が倒れたあと、心を削る前の自分の形をした影が4つ映り込んでくるんですよね。そこがドキッとさせられるポイントでした。

⌘ハイノミ:最初に、MVを作っていただいた中絲(悠)さんから送られてきたものは、最後に出てくる影が1人だったんです。でもそこは集団にしてほしいとお願いしました。1人だと、その影の人がまた同じ運命を辿るというふうにも見えちゃうなと思って。複数人の影にすることで、自分が属せたはずのコミュニティや場所が本当はあったのに、それに気づけないで、自分は別のところで順応しようとしてしまった、みたいなことを出したかったですね。

FOIFOI:曲だけ聴いたら、最後の《世界は色が変わる》で、未来に向けてちょっと光が差してきたような、「これから明るくなっていくのかな」みたいな意味がありますよね。

⌘ハイノミ:そうですね。勝手に光が差してくるというよりは、自分でそっちに行くという方向性ですかね。歌詞だけ見るといい感じに終わっていると思いきや、MVと一緒に聴くと逆の意味になるというコントラストも面白いかなと思ってます。

──Dメロの《幸せの定義は/何処にも書いてなんかないから/目の前のこれが/そうだと思い込むしかない》も、ポジティブに捉えることもできれば、悲観的にも捉えられる4行だなと思いました。FOIFOIさんはここをどう捉えて歌っていますか?

FOIFOI:ここは、悲観的に解釈して歌っていますね。「絶望」という感じの雰囲気です。ポジティブではない。

⌘ハイノミ:まさにどんな捉え方もしてほしいんですけど、MVを見ながらだと悲観的になっちゃう気はします。でも、結局幸せだと思うかどうかはその人次第なので、ポジティブに捉えてもいい。僕としては、いろんな気づきを与えられたらなという気持ちで書きました。

──この曲でコーラスを歌っているのは、⌘ハイノミさんですか?

⌘ハイノミ:そうです。メメメメは「ツインボーカルユニット」です。今僕は歌の練習中で、FOIFOIと並べるくらいになったら、もうちょっとしっかり自分が歌うパートも作ろうかなと思っています。自分で言うのもあれなんですけど、僕の声はそんなに悪くないので、使えるものは使っていこうかなと。やっぱりYOASOBI以降、作曲家と歌い手のユニットが増えたので、差別化を図りたかったのもあります。男女ツインボーカルも、いるにはいるんですけど。男女ツインボーカルだとレンジがめちゃくちゃ広くなるので、もともと聴くのが好きというのもあります。

──10月31日には初ライブが控えています。しかもいきなり大型フェス<NIGHT HIKE>で、場所は幕張メッセ。ライブはどういうふうにやっていくんですか?

⌘ハイノミ:僕がDJで、FOIFOIが前で歌って、サビでは僕も歌います。ステージ照明が逆光になって、あまり顔が見えない感じになると思います。<NIGHT HIKE>は出演時間3分という短いステージですが、ワンマンライブの準備も進んでいるので楽しみにしていてほしいです。

FOIFOI:<NIGHT HIKE>では、「メメメメはこういうライブパフォーマンスをするぞ」というのを、ちょっとでもわかってもらえたらいいなと思います。なんせまだライブの経験値がないので不安ですけど、自分の肝を座らせられるライブにしたいですね。

──他に聴かせていただいた新曲2曲が完成し、世に出ていくことも楽しみにしています。「ニセモノ」が好きな人は、この2曲も刺さるだろうなと思います。

⌘ハイノミ:そうだったら嬉しいです。次に出そうと思っている曲は、「ニセモノ」っぽい感じを残しつつも若干ロック寄りで、MVの方向性は「ニセモノ」と似たような感じになると思うので、ぜひ楽しみにしていてもらえたら嬉しいです。

FOIFOI:その先で、長く長く愛されるアーティストでありたいですね。

取材・文◎矢島由佳子

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