【米米CLUBコラム】変幻自在の40年、<LuckyFes’25>で見せる真骨頂

2025.08.05 10:00

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2025年8月10日(日)、米米CLUBが<LuckyFes’25>についに登場する。石井竜也は過去に2022年、2024年と過去2回出演しているが、米米CLUBとしての<LuckyFes>出演は初。加えて、米米CLUB のライブ自体が2023年8月以来、約2年ぶりである。

米米CLUBは<氣志團万博>には出演しているものの、夏フェスのステージは意外にも初? いや、実は夏フェスという概念がまだなかった1990年8月、富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われた<SOUNDCONIFER229>に出演している。様々なアーティストが出演する同イベント。この年はユニコーン、DIAMOND☆YUKAI、ZIGGYが22日に出演しているのだが、21日は米米CLUBのワンマンという特別待遇だった。この模様はテレビ神奈川で後日放送され、出番前に出演者がお題としてスケッチブックにマジックで富士山の絵を描くというコーナーがあった。皆当たり前のように正面からの富士の絵を描くわけだが、カールスモーキー石井はササッと上空から見た真上の火口を描いたのである。アートワーク、衣装、舞台…を手がけるモダンアートの芸術家としての感性をまざまざと見せつけたことをよく覚えている。

■イケナイコトを教えてくれた米米CLUB

米米CLUBといえば、そうしたアーティスティックでスタイリッシュな雰囲気を持ち合わせながら、ファンク、ニューウェイヴ、ロック、ラテンにムード歌謡など…ごった煮の音楽性に加え、寸劇、コント、落語といったバラエティ要素までも呑み込んだエンターテインメント集団である。様々な音楽もブラックジョークも卑猥な下ネタも、イケナイコトはすべて米米CLUBが教えてくれた。『米米TV ONODA-SAN』(1987年)という、楽曲がほぼ収録されていないバラエティ番組仕立ての衝撃的映像作品があったのだが、現在の倫理観においてはおそらく再販不可能なのではないだろうか…。

西村伊作を中心に与謝野鉄幹・晶子夫妻、石井柏亭らによって創設された専修学校、文化学院の映画研究会の学生たちがトム・トム・クラブをパロディに「コメ・コメ・クラブというネーミングが面白い」とコンパで盛り上がったことが、米米CLUBの始まりだ。そこにロックバンドが夢を掴むサクセスストーリーなど存在せず、宴会での悪ノリのごとく周りをどんどん巻き込んで大きくなっていった結果のエンターテインメントである。

米というシュールなワードを題材に「私こしひかり」「奥さん米屋です」「農林28号」といった“ソーリー曲”(元々は“ウンコ曲”と呼ばれていた)と呼ばれる三枚目曲こそ、米米CLUBの真髄。「I・CAN・BE」(1985年)や「浪漫飛行」(1990年)といった、表立った石井によるハンサムでロマンティックな二枚目路線は、そういったオチのための壮大な伏線でもあって、彼らの全貌はライブに来なければ味わえない。

彼らはそんなライブについて「音楽を演奏するためのライブ」ではなく、「エンターテイメントショーのメインが音楽」というスタンスを持っている。だからこそ為せる妙義が次々と炸裂していく。一般的なアーティストにおける「作品を引っ提げたライブ」は存在せず、作品とは一切関係のないコンセプトとセットリストを用いたライブ展開を行なっていた。ライブでしか演奏されず、音源になっていない曲も数多く存在している。一人芝居やコント混じりの演出を持ったライブ運びや奇抜な衣装が際立ち、1985年のメジャーデビュー当時はイロモノ扱いされることもあった。同じソニー系列所属の聖飢魔II、爆風スランプと並んで「ソニー三大イロモノバンド」とも呼ばれた。

とはいえ、その音楽性は幅広く演奏力もズバ抜けて高く、作品もライブも半端ないクオリティを誇っているからこその説得力があった。初期米米サウンドを支えた女装ギタリスト、博多めぐみのエフェクティヴかつタイトなタイム感のカッティングと、リーダーを務めるBONの巧みなスラップ、ゴリッとしながらもミステリアスで耳に残るベースラインの絡みは絶品。さらにダンサーチームSUE CREAM SUE(シュークリームシュ)や、ホーンセクションBIG HORNS BEE(ビッグ・ホーンズ・ビー)を従えた大所帯編成から繰り出される迫力は他の追随を許さない。音楽のベースにあるのは、キッド・クレオール&ザ・ココナッツとPファンク。さらに初期はトーキング・ヘッズやキャバレー・ヴォルテールといったニューウェイヴ、EBM要素を醸した都会派なニヒリズムが特徴的である。

ド派手な出立ちからハスキーで野太い歌声を轟かせるファンキー担当、顔も体も全身をキャンバス化した人体アートワーク男、ジェームス小野田と、甘く艶っぽい美声で惑わせるメロディアス担当、ナルシスティックと胡散臭さが共存する色男、“テッペイちゃん”ことカールスモーキー石井による、抜群の歌唱力と凄まじい表現力を持ったツインボーカルが観る者聴く者を圧倒しながら煙に巻いていく。デビュー当時の音楽誌に書かれていた「ハクション大魔王とデヴィット・シルヴィアンがいるバンド」とは言い得て妙。稀代のディスコファンクチューン「Shake Hip!」(1986年)と山本リンダのカバー「狂わせたいの」を並べて成立させるスキルとセンスは唯一無二。ライブの定番として、オリジナリティに昇華していたリンダ曲のカバーであったが、「狙いうち」は原曲にない3番を自作したことで、さすがにリンダ本人から説教されたとか…。

■米米CLUB=アート+音楽

「ステージとレコーディングはまったく別モノ」とした戦略であったものの、初期はプロデューサーの意向もあって、自分たちの思い通りにできない部分もあったことも事実である。「Paradise」(1987年)の歌詞が2パターンあったり、「sûre danse」(1987年)のアレンジがライブと音源で異なったりもしている。「Paradise」はシングルリリース時、歌詞の変更に対する皮肉を込めてB面に「Parodise」という替え歌“ソーリー曲”バージョンを収録したり、「sûre danse」はフジテレビ系列の歌番組『夜のヒットスタジオ』初出演時に石井が寄り目で歌ったり、同じくフジテレビ『冗談画報』ではこちらも“ソーリー曲”バージョン「収納ダンス(箪笥)」を披露するなど、彼らなりのコミカルな反抗をしていた。

こうしたライブと作品の差はサブカル的な人気を生んでいたわけだが、メインストリームへのアピールに欠けるところがあったことも否めない。そうしたなか、米米CLUBの魅力、エンタメ性と音楽性の両方をうまく体現したのが「KOME KOME WAR」(1988年)であり、「FUNK FUJIYAMA」(1989年)である。アーティストが作曲の時に用いるデタラメなハメ英語をそのまま採用したような歌詞の前曲、外国人が見た日本を並べた歌詞の後曲、リズムと詞のハマり具合が爽快。両曲ともにファンクをベースに米米CLUBの騒々しいセンスを見事に落とし込んだ名曲である。

さらに石井が監督を務めた両曲のビデオクリップは、アメリカMTVが主催するMTV Video Music AwardsのInternational Video Awardで2年連続グランプリを受賞。さらに「FUNK FUJIYAMA」は、「音楽見物」というそのまま米米のキャッチコピーになりそうな、メンバー出演によるソニーマルチディスクプレーヤーCMでお茶の間にインパクトを与えた。両曲のヒットによって、その人気とともに米米CLUBの「アート+音楽」というイメージが世間に定着したのである。それぞれの楽曲が収録されたアルバムは、立体表紙の豪華写真集付きの『GO FUNK』(1988年)、“O顔DE PATA2 BOX”(ポケットチーフ付き)仕様の『5 1/2』(1989年)と、レコードからCDとなった“初回盤豪華特殊パッケージ”の草分け的存在であったことも「アート+音楽」のイメージを大きく決定づけた。

シングル曲ではないが「Peeping Tom」(1991年)も、楽曲とビデオクリップともに先述の2曲の延長線上にある重要曲。同曲が収録されたアルバム『K2C』(1991年)の初回盤は8cm CD付きである。

1990年には「浪漫飛行」が初のオリコンチャート1位を獲得。「航空会社のCMソングとしてオファーが来ないか」と狙って作った1987年の楽曲が、3年越しにJALの沖縄旅行「JAL STORY 夏離宮キャンペーン」のCMソングに起用されシングルカット。100万枚を超える大ヒットとなった。

名実ともに人気を獲得した彼らが次に取り組んだのは、“改変された楽曲”を元へ戻すことであった。過去曲のリメイクを中心に構成された『K2C』(1991年)では、先述の「Paradise」を原詞へ、「sûre danse」のアレンジ構成とメロディを原曲に近い形でリレコーディングされている。

さらに1992年にフジテレビ月9ドラマ『素顔のままで』の主題歌「君がいるだけで」の累計289.5万枚という超大ヒットにより、さらなる国民的人気を得たが、その反面で彼らの持ち味でもあったディープな側面が失われてしまったところもある。メンバー自身も同曲を「売れすぎた曲」として、ライブでは生演奏ではなくカラオケセットを持ち込んで披露するという彼ららしい茶化しもあったが、そのジョークが通用するほどの規模ではなくなっていったのである。

ヒット曲を望む声に応えるようなライブ構成、膨大化するライブセット、サポートも正式もなくなってしまったメンバー編成……初期のシニカルでマニアライクなエンターテインメントとはかけ離れていき、カールスモーキー石井の“石井竜也”としての文化人としての活躍など様々な要因が重なる中で、1996年11月、ついに米米CLUBは解散発表する。

1997年3月に東京ドームで開催されたラストライブ『THE LAST SYMPOSIUM』は、本編がたった2曲で終了するも、“BONUS SHOW TIME(米米ライブにおけるアンコール)”が2時間以上続くという彼ららしいものであり、脱退したメンバーも集結する盛大なフィナーレを飾った。

■ファンを含めた文化が米米CLUBである

「日本で最も楽しいライブ」と評されるのが、米米CLUBである。今ライブで当たり前に行われていることは米米CLUBが発祥だった!?ということもある。

例えば、アイドルシーンでは当たり前になっている“振りコピ”。ライブで演者と観客が一緒に踊る文化であるが、そのパイオニア的存在であったのは米米CLUBであった。尤も当時は“振り真似”と呼ばれ、シュークリームシュの振り真似をする女性ファンで会場は埋め尽くされた。当時バンドとしては異例だった振付けビデオ『SUE CREAM SUE COSTUME DANCING』がシリーズ化して販売されるほどであり、“ファンレターの100%が女性”だった彼女たちの衣装を自作して振り真似をする。ヴィジュアル系ファンやアニメファンに先駆けて、コスプレの走りでもあった。

1986年3月、グループ初の渋谷公会堂公演中に石井が「米米の客はフェンスが無いからって前に駆け出してくるようなやつはいない。ステージのフェンスを外すことはできないでしょうか?」と提案。以来「ノーガード、ノーフェンス」を貫いた。ステージ前のフェンス(前柵)を設置しない、警備スタッフも配備しないのが常となったのである。再始動後のライブ会場には警備スタッフがいたが、ライブが始まると踊り出し、仕込みの振付要員だったという、米米らしいエンタメを見せてくれたこともある。

そんな彼らであるから、自由なライブの楽しみ方も生まれたのだ。今では当たり前のように行われている観客が頭上でタオルを回す、俗に“タオルミュージック”(元はレゲエ発祥の“プロペラ”という「最高!」の意思表示を表すもの)と呼ばれる行為も、米米のライブではずっと前からみんながハンカチを回していた。客席でタオルなどを“回す・振る”行為が禁じられていた時代のことである。

こうした観客を巻き込んでいくエンタメ性は「ファンを含めた文化が米米CLUBである」(カールスモーキー石井・談)というグループのアイデンティティによるところだろう。

■まさかの再始動、そして40周年

2006年の再始動は、石井の音楽の師匠であり、デビュー当初はドラマーとして米米のライブにも参加、「浪漫飛行」誕生にも大きく関わったCharの50歳バースデーパーティー開催にあたり、息子であるJESSE(RIZE/The BONEZ)の提案でサプライズ演奏することになったのがきっかけである。JESSEは小さい頃から「親父のライブに行かないで米米のライブに行きまくってた」「テッペイちゃんの真似して、リーゼントに白いスーツを着ていた」「カールスモーキー石井になりたかった」と発言している。

再始動後の米米CLUBも相変わらずキレッキレである。むしろ肩肘張らない活動をしている。2017年にデビュー32年目を迎え、3枚組ベストアルバム『LAST BEST ~豊作参舞~』をリリース。「“LAST”って付ければもう最後だと思ってみんな買ってくれるんじゃないかなって」とは石井の弁。2020年にはデビュー35周年を記念した初のオンラインライブを開催し、幕間に本家公認のショートムービー『男はつらいぜ』を上映。新曲そっちのけでやりたいことだけをただひたすらにやっている意味のわからなさは、相変わらず米米CLUBらしいところだ。

そして今年2025年はデビュー40周年イヤーである。9月からツアー<米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい〜>を開催。その幕開けの前哨戦ともいえる<LuckyFes’25>のステージを見逃すな。

文◎冬将軍

<米米CLUB「米米大興行 人情紙吹雪 〜踊ってやっておくんなさい~」>

2025年9月26日(金)
@埼玉/大宮ソニックシティ 大ホール(ファンクラブ会員限定)
開場17:00/開演18:00

2025年10月4日(土)
@大阪/大阪城ホール
開場16:00/開演17:00

2025年10月5日(日)
@大阪/大阪城ホール
開場16:00/開演17:00

2025年10月13日(月・祝)
@愛知/愛知県芸術劇場 大ホール
開場17:00/開演18:00

2025年10月14日(火)
@愛知/愛知県芸術劇場 大ホール
開場17:30/開演18:30

2025年10月18日(土)
@神奈川/ぴあアリーナMM
開場16:00/開演17:00

2025年10月19日(日)
@神奈川/ぴあアリーナMM
開場16:00/開演17:00

・ファンクラブ限定プレミアムシート(プレミアムグッズ付き):¥20,000
・指定席:¥12,400
※小学生以上有料(小学生未満で座席が必要な場合有料)
※FC限定プレミアムシートは、WCV会員のみお申し込みいただけます。
●一般チケット発売日 2025年8月8日(金)

■<LuckyFes’25>
チケットページ:https://luckyfes.com/ticket/
オフィシャルサイト:https://luckyfes.com/