【イベントレポート】国内フェスはどこへ向かうのか?フェスの価値を更新する鹿野淳×綾小路翔×DJ DRAGON

2026.02.13 18:00

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2026年1月21日(水)~23日(金)・幕張メッセで開催された『ライブ・エンターテイメントEXPO』。演出機材、グッズ、チケッティングサービスなど、ライブ・フェス・演劇関連の製品を手掛ける多数の企業が出展し、ライブ事業関係者などが多数来場。様々な講演も行われた。

1月 21日(水)の『音楽フェスの未来を語る~TOKYO ISLAND・氣志團万博・LuckyFesの挑戦~』には、TOKYO ISLANDキャプテン/音楽ジャーナリスト/(株)FACT 代表取締役・鹿野 淳氏、氣志團万博プロデューサー/氣志團・綾小路 翔氏、LuckyFes 企画プロデューサー/(株)BARKS 代表取締役社長・DJ DRAGON氏が登壇、各フェスの理念、取り組み、今後の展望について語り合った。その模様をレポートする。

司会進行役を務めたのは、矢島 由佳子氏(音楽ジャーナリスト/Hugen Inc. 代表取締役社長)。鹿野氏の<TOKYO ISLAND>、綾小路氏の<氣志團万博>、DJ DRAGON氏の<LuckyFes>――各々が手掛ける音楽フェスの紹介を経て、5つのテーマに沿った話が繰り広げられた。

最初に話し合われたテーマは、「SNS時代のフェス価値」。昨今、情報発信に関して大きな影響力を持っているのは、やはりSNS。それぞれのフェスも積極的に活用していた。海外のフェスでは観客が自由に動画撮影していることに倣い、基本的に撮影とSNSを通じての拡散をOKにしている<LuckyFes>。フェスに関する様々な対話、意見交換の場としてSNSを活用している<TOKYO ISLAND>。会場内のトイレの空き状況を頻繁に発信したところ、大好評だったのだという<氣志團万博>。観客のニーズに誠実に向き合う各フェスの姿勢も窺われた。

左から、鹿野淳、綾小路翔、DJ DRAGON、矢島由佳子

続いてのテーマは、「音楽以外の体験コンテンツの拡張」。音楽フェスの開催を重ねるためには、新規の観客の開拓も必要となる。音楽関連のイベントへの参加に対して積極的ではない層も楽しめるコンテンツの充実は、大きな課題として挙げられた。恐竜の着ぐるみを着て全速力でかけっこをする「ティラノサウルスレース」は、親子で楽しめる<TOKYO ISLAND>の名物アトラクション。出演アーティストの演奏に合わせて花火を打ち上げる「音楽花火」は、東京湾に面したロケーションを活かした恒例企画。<LuckyFes>は、会場内の様々な場所に出現するオリジナルキャラクター「ラッキーモンスター」が大人気。「食」「空間」なども含む「音楽以外のプラスアルファ」は、ファミリー層への訴求力にもなる。子供たちが楽しめる要素は、未来の音楽シーンに繋がる重要な下地だという旨も話し合われていた。

屋外イベントは、自然現象との戦いでもある。特に昨今の夏季の気温の高さは、観客の肉体的負担を増大させている。「熱中症対策などの安全面のアップデート」というテーマも、各フェスに共通した課題だった。2024年から11月開催となり、会場が屋外の袖ヶ浦海浜公園から屋内の幕張メッセ国際展示場9~11ホールに移った<氣志團万博>。開催時期と開催地の変更は、自ずと有効な対策となった。しかし、屋外での夏季開催が恒例となっているのが<LuckyFes>。会場の国営ひたち海浜公園は海風が吹き込みやすく、芝生や日陰となる木々も多いので比較的暑さをしのぎやすいが、目当てのアーティストのアクトを待つ時間は、強い日差しを避けられない。待ち時間が熱中症に繋がる最大要因であることを踏まえ、<LuckyFes>はステージに近いエリアの観客入れ替え制を導入していた。そして、幅広い層が快適に利用できる設備も、熱中症を含めた様々な肉体的影響への対策として欠かせない。バリアフリーに配慮したトイレ、おむつを交換できるスペース、キッズエリアの確保などの重要性について、鹿野氏も<TOKYO ISLAND>での取り組みの実例を挙げながら語った。

たくさんの人々が集まるイベントを成功させるためには、開催地の住民の理解と協力も必要。地元企業の誘致、地元民を優先した雇用の創出、地元スポーツチームとのコラボレーションなど、周辺エリアの活性化、経済効果を考慮する「フェス×地域の関係性」も各フェスの重要課題として位置付けられていた。そして、最後に話し合われたテーマは「国内音楽フェスの未来」。ビジョンを語る各々の言葉には、熱がこもっていた。

「好きでいてくれる人をどれだけ増やしていくのか? それが重要なのかなと思っています。海外にアピールしていくことも考えています。でも、一番大事なのは自由であること。僕は音楽の自由さが好きなので、フェスは自由でありたいし、来る方々にも自由に楽しんでいただきたいですし、作る側としても自由に楽しんで作りたいです。そして、最後はやっぱり熱量なんですよね。それがフェスの醍醐味だと思っていて、そこがこれからも求められていくのかなと思っています」──DJ DRAGON氏

DJ DRAGON

「僕は音楽に救われた人生なんです。歳が離れた人、住んでいるところが離れている人とかと『音楽』という共通のことだけで仲よくなれました。新しいことを知ったり、音楽にまつわる文化的なこと、歴史的なこと、政治的なことだったりを学んだし、『音楽ってすごいなあ!』って今も思っているんです。日本の音楽はガラパゴス化していると言われることもありますけど、むしろそれは魅力的で、誇らしく思っています。海外のみなさんにも『氣志團万博』に来ていただきたいです。海外のアーティストさんたちに出演していただける力をつけたいですし、お客さんの食わず嫌いを自分たちのフェスでなくしていきたいです。世代、国籍、考え方が違う人たちも1つになれるものを作っていきたいです」──綾小路氏

「『フェスのブームは、そろそろ終わっているんじゃない?』っていうことが、今までに何度も言われてきているんです。僕がそれを一番感じたのは2018年くらい。『日本のフェスは、もう出なくていいんじゃない?』と思っている出演者もいて、『すごくまずいなあ』と感じていました。その後にコロナ禍になったんですよね。あの頃にフェスのあり方、フェスの希少性が再認識されて2026年に至っているのかなと思います。去年、今年くらいから海外のフェスを見据えるアーティストが出てきていて、国内フェスのあり方をシビアに考えていかないといけなくなってきているのかなと。自分がやっているフェスは、韓国のあるフェスと一緒に何かをやっていくことについて話し始めています。出演者を何組か交換したり、お互いの国の音楽をプレゼンテーションする場を作るとか、そういうことを始められたらいいなあと準備を進めています。海外に行くアーティストは増えていきますから、それに対してフェスは何ができるのか? それを考えるのも音楽フェスの未来に繋がっていくのかなと思っています」──鹿野氏

情熱に溢れた言葉は、前向きなエネルギーを聴講した人々に届けていた。国内ライブ・エンターテイメント業界の中で、音楽フェスが存在感をさらに増してくことも予感させられる講演であった。

取材・文◎田中大

◆TOKYO ISLANDオフィシャルサイト
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