――'99年にJam Master Jayにインタヴューしたのですが、すでにその時、あなたのことを将来性があると言っていましたよ。Jayとは、どうやって知り合ったのですか?
50 CENT:ある友達が紹介してくれたんだ。ひょんなことからなんだが、オレがヤクをさばいてた頃、音楽業界を知ってる連中とちょっとした知り合いになった。それがきっかけで、Jam Master Jayに紹介してもらったんだよ。つてを通して業界に入り、入ったら入ったで、誰を知ってるかでどこまで行けるか決まる世界なのさ。
――彼のサポートはどんな意味がありましたか?
50 CENT:大いにありがたかったよ。Jam Master Jayはパイオニアなんだ。オレたちはJayを見ながら育った世代だから、一緒にやれるなんて夢みたいだった。初めて会った時なんか、「おい、ほんとにJayだぜ!」って感じだった。分かるだろ? 何しろRun-DMCの中心だったんだから。
――彼から学んだ一番大事なことは何ですか?
50 CENT:とにかくすべてを仕込んでくれたんだ。それまでオレはスタジオでレコーディングしたことも、デモを作ったこともなかった。Jam Master Jと一緒に、初めてブースに入ってマイクの前で曲を作ろうってことになったわけ。だから曲の構成や、小節進行とか全部、Jayから習ったんだ。
――彼が殺されたことはどこで知りましたか?
50 CENT:オレは車でロングアイランドに行く途中だった。世の中、何があっても不思議じゃない……Aaliyahのこともあったし。TupacとBiggieが亡くなり、今度はJayだ。何でもアリさ、誰も例外じゃない。自分だけは違うなんて思ってるやつがいたら、そいつのほうがおかしいのさ。
――どんな影響がありました?
50 CENT:Jayはいいやつだったんだ。オレが引っ張り出されたのは、警察の側からすると、要するに誰かがケガしたり殺されたりすると聞き込みをするわけだ。何の手がかりもない時、刑事ってのは「誰が敵で誰が友人か」に目をつけるものなんだよ。Jayはすごく気のいいやつだったから、敵とおぼしいのはそういなかった。それで、友人は? ってことになったのさ。すると50 Centがすぐ浮かんだ。しかも警察の管区的にも、オレが撃たれたところからほんの3分くらいの場所だったんだ。オレの地元さ。それでオレのいろんな悪事があばかれたんだよ。オレとは何の関係もないことも、オレがやったと言いふらされた。ブリックタウンで女の子を2人殺したという濡れ衣でサツに追われたりしたんだぜ。その同じサツと刑事が、「あいつは品行方性じゃない。いろんな面倒を起こしてる」とかいって、「あいつなら、Jam Master Jayに何かしでかして、思い知らせてやろうってことになっても不思議じゃない」となったのさ。それでオレをメディアに引っ張り出すと、Jayの殺害と結びつけて話題にしたんだ。
――様々な憶測が飛び交っていますが、あなたはどう考えますか?
50 CENT:Jayはドラッグディーラーじゃない。レコード制作が仕事なんだ。レコード制作の仕事があんなことを引き起こすんだとしたら、レコード制作の仕事自体にいろんなことがまつわりついてるってことになる。Jayが直接関わっていなくてもね。Jayが関わっていたとは思えないからね。オレがああいう目にあって、ドラッグが関係してたってことになったって誰も驚きゃしないさ。実際にヤクを売ってたわけだから。でもオレだって、やりたくてやってたわけじゃないんだ。あの頃はあれしか生きてく方法がなかったんだよ。
――あなたは今日、武装したセキュリティと一緒ですが、身の安全のためですか?
50 CENT:そんな理由じゃない。このビジネスの常識さ。誰かに面と向かってけなされて、オレがガツンとやっちまったら、そいつら、オレのことを訴えるだろ。普通のだったらわきまえて行動するようなことでも、いったん、ある程度の地位を得た者に対しては、けなして当然と思ってるからね。何を言ったって、相手がやり返してこないだろうとタカをくくってる。だから、間に何かクッションが必要なんだ。オレに対して、誰もそんなことをしでかさないようにね。
――あなたが「How To Rob」でけなした人たちは、どんな反論をしてきましたか?
50 CENT:反論してきた中では、Jay-Zが一番の大物だったね。それがヒップホップなのさ、競争が激しいんだよ。新人が頭角を現そうとすると、ピシャリとやられる。それでいいんだ。というのも、コツコツ階段を上がっていくかわりに、一気に知名度を上げてくれたようなもんだとオレは思ってる。ありがたいくらいだよ。シャンペンでも贈ってあげたいね。なにしろクイーンズみたいなストリートからぽっと出て、1stシングルを出した途端、Jay-Z ほどの大物が反応してくれたんだぜ! Jay-Zがゴミに反応するもんか。直接自分のことが取り上げられでもしない限りね。EminemやBenzinoにしても、ほんとに言いたいことがあるわけじゃない。単に気を引こうとしてるだけさ。言い争いもケンカもしたことなんかないんだから。くだらないよ。だけど自分のことを言われたら、平気でいられるわけないだろ? 「How To Rob」では30人くらい、取り上げてやった。
――最近は、けなしてなければラップじゃないという風潮です。そういう時に出てきたのは、いいタイミングですか、悪いタイミングですか? それとも、そんなことに関係なく、あなたは自分のやりたいようにやっているだけ?
50 CENT:オレはやりたいようにやってるだけさ。オレは前もってあれこれ考えたりしない。「こんなことは言わないほうがいいな。だってこいつがあいつのことをこう言ってるし、あいつはこいつのことをこう言ってる。だからオレがこう言うと、こんな風に思われそうだからな」なんてことは考えない。そんなのは取り繕ってるんだよ。自分の本当の気持ちを出してないってこと。オレは何か気に入らないことがあるとラップにするんだ。それがヒットすればレコードにするだけ。それ以外はスタジオのテープに残ってる。最終的にレコードとしてヒットしなくっても、それでいい。アルバムを作るために誰かについて何か言ってやろう、なんてことはしない。そんなのはくだらないね。自分の中で本当に言いたいことがないならゴミだよ。誰かに出会って、そいつと考えが違ったり、そいつとソリが合わないってことなら別だ。自分の中で言いたいことがたまってるんなら吐き出せばいい。だけど単に誰かをいびってるだけっていうのは、クールじゃない。
――Ja Ruleは、あなたがマーダー・インクに近づかないよう禁止命令が出されていると言っていますが。
50 CENT:Ja Ruleかぁ……あいつはオレのこと、かわいさ余って憎さ百倍って感じなんだよ。オレにはあれほどプロモーションをするカネはないね! あいつはあちこち出かけてラジオツアーとかやってる。だけどフッドじゃ誰もJa Ruleのレコードなんか買いたがらない。ヒートがないと思われてる。やつのニューレコードはダサいの一言さ。だいたい同じことをやってるだけじゃダメなんだ。気合を入れてもっといい音楽をやらなきゃ、消えていくまでってこと。やつのフォーマットなんか、ポップにすり寄ってる。50 Centみたいにセールスを伸ばしたいってうらやましがってるのがミエミエだよ。できることならオレに取って代わりたいって思ってるのさ。いや、そうじゃないな。あいつは DMXとかTupacみたいになりたいって思ってる。オレの言いたいこと分かるか? やつはTupacとかみたいにレコードが売れたらって思ってるのさ。で、オレの売上げのほうが、やつよりTupacのレベルに近いから、それが気に食わないんだ。
“オレは人殺しだ”なんて自分で言うようなやつだぜ。自分で人殺しだなんて言う人殺しなんか聞いたことがない。人殺しの経験のあるやつが、同じような状況に追い込まれて、また殺ってしまうっていうのは知ってるよ。だけど自分で人殺しだなんて言うような人殺しは知らないね。そんなことを言うやつは、単にスリルがほしいだけさ。人殺しだって言われるスリルがね。それでゾクゾクしたいだけなのさ。そうやって一目置かれたいんだよ。だけど最後には、ギャングスタの世界っていうのは、弱いやつが食い物にされる。いいように利用されるだけさ。ギャングスタは近寄ってきて、利用し尽くすんだ。骨の髄までしゃぶりつくされる。そのあとはポイさ。利用するだけ利用したら、次のカモを探す。それが現実さ。
――Ja Ruleとのライバル意識は何がきっかけなんですか?
50 CENT:あいつ、パクられたんだよ。オレたちのフッドはそれほど大きくないから、オレはあいつをパクッたやつと知り合いだったんだ。で、2人でクラブにいた時、オレがこう言ったんだ。「何かあったのかい? あそこのやつとはちょくちょく会うよ」「知り合いなのか?」「ああ。だけど、あいつがお前をパクッたからって、オレは口出ししないぜ。お前の問題だからな。あいつとカタをつけたいんなら、つけてこいよ。なんだよ、ほら、あいつはあそこにいるじゃねえか」
Ja Rule はそのパクッたやつには何も言わないままだったけど、オレに対する態度が変わった。オレがそいつと知り合いだってことが、気に入らないらしい。まぁ、自分に悪さをした連中と付き合ってるようなやつとは、付き合いたくないってことなんだろ。オレが思うに、ラッパーになると、他のラッパーたちは競争相手だと感じるんだ。みんな違う人生を経験してきてるから、それが個性になる。誰1人として同じやつはいないわけさ。ただ、同じフッドからラッパーになると、立ちはだかるやつがでてきて、いろいろ言われるようになる。ライムに書いたことを、本気なんだぞと言わんばかりに面と向かって言ったりね。だけどそいつらだって、ライムに書いてるようなことをする気はないんだ。そんなことをしたことも、するつもりもね。
ストリートから音楽に移ったオレにもそういう部分がある。大変だったよ、なにしろオレはストリートのやり方から抜けきってなかったから。例えばストリートで誰かがオレについて何か言うと、オレは何を言われてるのか確かめに行く。あれこれ言われる筋合いはないからね。言いたいことがあるんなら、直接言えよってこと。だけど今じゃ、何の理由もないのに、オレのことを話してる。みんな、オレのことを話してるんだ、床屋でも美容院でも、どこでもオレのことを話してる。例えば「50は好きじゃないけど、あいつの音楽はいいね」って具合さ。オレのことなんか知らないくせに。知ってるのはオレの音楽だけなんだ。それでオレのこと好きじゃないってどういうことなんだい? 会ったこともないし、オレと一緒に育ったわけでも、オレと一緒にヤクをさばいたわけでもない。それでオレを好きじゃないけど、音楽は好きだって? とどのつまり、誰かがオレのことを話してるのを聞いて、あいつなんか好きにならないほうがいいって思ったってことじゃないか。それでもオレの音楽が好きだってんなら、オレのことが好きだろうが嫌いだろうが構わない。他の連中にそのことだけ言って、そいつらがオレのことを好きか嫌いかは、そいつらの意志に任せてもらいたいもんだ。なんにしろ、オレのことが話題になってるってことは、オレはまだ人気があるってわけさ。
――子供の頃からはっきりものを言うタイプでしたか?
50 CENT:オレは権威ってものが気に入らないんだ。ああしろこうしろって言われるの好きじゃない。一目置いてる人の意見はオープンに耳を傾けるけど、そうじゃなければ、誰にも聞く耳なんか持たないね。マネージメントであれ、音楽業界であれ、一目置く人からでなきゃ、アドバイスは受けない。「とにかく、オレのいうことを聞いて、こうしろ」とか言われても、その根拠となる事実を出してこないなら、オレはやらない。音楽業界を理解するんだって、オレには裏社会を通して理解したほうが分かりやすいんだ。ストリートでのヤク売りに当てはめて考えるんだ。アメリカ株式会社ってところは、カネが出せなくなると、地位を与える。バーガーキングで仕事するのだって、マネジャーだと気分がいいだろ? だけどバーガーキングで働いてるってことに変わりはない。バーガーを焼く代わりに、指示を出してるだけなのに、それでも気分がいい。ストリートだって同じさ。サツが何度も取り締まりに来て、仲間の半数がブタ箱入りになると、客をよく知ってる仲間は数人しか残らない。そうなったら、クラック売りに励むより、新入りに売り方を教えるのさ。誰に売って、誰に売っちゃいけないかをね。知らずにサツに売ってるってことにならないように仕込むわけ。だから同じなんだよ。音楽業界のことをよく理解するには、オレはストリートに当てはめてみるんだ。
――'99年に撃たれたのは、「How To Rob」が原因だと思いますか?
50 CENT:カルマだと思う。なにしろ撃たれる前には、かなり悪どいこともやったからね。やっぱり回りまわって自分に返ってくるってことだろうな。
――撃たれた時はどんな状況だったのですか?
50 CENT:ばあちゃんの家から出てきたところだった。サウス・ジャマイカの北パークウェイを降りてすぐのところ。狙い撃ちにはぴったりの場所だよ。パークウェイがすぐあるから、角を曲がって、急に70マイルでぶっ飛ばしたって誰も驚きゃしない。1日中みんな70マイルくらいで走ってるところだからね。実際に撃たれた傷は、時が癒してくれるって世間で言う通りさ。こうしてその時のことを話しても、痛みが戻ってくるわけじゃない。痛みの記憶なんて、実際に痛みを経験してる時に比べりゃ、なんてことないんだ。大したことじゃないよ。オレは9発撃たれた。ここで考えなきゃいけないのは、9発も撃たれたのに、死ななかったってことさ。てことは自分の人生には何か使命があるんじゃないかと思う。オレはその、自分に課せられた使命が何なのかと考えてるんだ。何か前向きなことなんだろう。それか、世の中に充満してる悪いことをなくさせるために、こうして生きてるのかもしれない。
――体のどこに9発も銃撃を受けたんですか?
50 CENT:あちこちだよ。小指に顔に、脚もかなり撃たれた。脚を狙うプロだね。あれはプロの仕事さ。
――9発も撃たれて、それでも生き延びたわけですね。
50 CENT:もっとひどいやつも知ってるよ。16発も撃たれて死ななかったやつとかね。そいつは結局、死ぬには死んだんだけど、死因は肺炎だったんだ。だから、神様が運のツキだって決めれば、それまでってこと。16発も撃たれて、肺炎で死ぬなんて、そんなのってあるかい? 人生ってのは、分かんないもんだ。
――おばあちゃんの家の前だったんですよね! その時、おばあちゃんはどうしました?
50 CENT:大丈夫だよ。オレたちのまわりじゃ、撃たれるなんて、そう珍しいことじゃない。テレビでしか見たことないとか、ニュースや映画でしか知らないっていうなら、そりゃあ気も動転して「こんなことってある!?」とか、わめくかもしれないが、オレたちの育ったところは違うんだ。うちに帰ると、「ママ、誰それが殺されたんだよ」とか言って、取り乱したりしないようにわけを説明するんだ。おばあちゃんは、他にも大勢そんな事件に巻き込まれたのを知ってるから、それほどショックは受けてない。ちゃんと手の指も足の指も動いて、大丈夫だってことが分かれば、それで良しとするのさ。
オレが免許を取って最初にしたことは、ベンツを買ったことなんだ。オレって、手の届かないものを欲しがるタイプなんだよ。どうしてもベンツが欲しいって思ったんだ。何か高価なものが欲しかったのさ。そういう高価なものが買えないようなフッドで、14歳のガキに「あと6年頑張って勉強すると、欲しい車が買えるよ」なんて言ったって無理な話なんだ。その子はストリートで、誰かがその車を持ってるのを見て、今すぐ欲しいと思うものさ。それで、6ヵ月ほどヤクを売れば買えるのが分かる。そうなると、もうそれしかチョイスはないって思えるんだよ。そうやって泥沼にはまっていくわけだ。それしか見えないからさ。それが一番当たり前のチョイスに思えるんだ。まぁ、オレはちょっと大人になったけどね。それが買えるようになれば、買いたければ買えるというチョイスもあるんだと分かる。そうなると、実際にカネを使いたいとはそれほど思わなくなったね。
――では、今は持っていなくて、買いたい物はありますか?
50 CENT:今は満足してる。まわりが欲しがる以上のものをすでに持ってるからね。ただ、オレにはまだまだビッグな人生計画がある。それにしても、ストリートのヤク売りから、EminemやDr. Dreと何百万ドルものレコード契約ができるようになるなんて、ガキの頃のダチは思ってもいなかっただろうぜ。
――Dr. DreやEminemとはどうやって知り合ったんですか?
50 CENT:オレの弁護士のテオと、Eminemの弁護士兼マネージャーのポール・ローゼンバーグが古い付き合いでね。ガキの頃から一緒に育って、一緒に仕事するようになったんだ。で、オレは『Guess Who's Back』っていう自分のCDを2人に渡した。ちょうどEmが『The Eminem Show』を仕上げてる頃で、終わった後にオレのCDを聴いたんだ。Emは、いつものクルー、いつものアーティストと組んでやってる音楽に飽き飽きしていて、何か違うことをやりたがってた。それでDreにオレのCDを持ってったんだ。DreにもEmにもウケたらしくて、2人はすぐさまオレを呼び出した。 まったく、バタバタして大変だったよ。金曜の夜9時に電話をもらって、次の日に飛行機でこっちに来てくれなんて言い出しやがるんだからな。
オレだって、他のレコード会社からの誘いがあったんだぜ。ユニバーサルやJ・レコード、ジャイヴ・レコード、ワーナーブラザーズ、キャピトルとか、月曜から金曜まで毎日9時から5時までならお話しますよってな会社連中さ。そういうのとは違う感じがしたから、次の日に飛行機で編集スタジオに行ったんだ。Dreがやって来て、2人で完全にノッちまって、スタジオを出る頃には「交渉成立!」って感じがしたよ。それでニューヨークに戻ったら、契約金が上がりまくってて、一気に160万ドルにまでつり上がってた。大手レコード会社が、Dr. DreとEminemが絡んでると知って一斉に色めき立ったのさ。ムチャクチャな数字だったけど、うれしかったね。結局100万ドルくらいで落ち着いたんだけど、EminemとDr. Dreと一緒にレコード作りしたほうがずっとためになったから、残りのカネなんか別にどうでもいいんだ。今は結構いい感じさ。
――EminemやDr. Dreと一緒に仕事をするのはどうでしたか?
50 CENT:Eminemはウザったいくらい才能に恵まれてるんだ。神様とか運命とかを信じるんなら、あいつは神様の思い描いた通りの人間といえるね。テレビでいろんなことをやってるだろ? 脚本がどうなっていようと、ビデオ監督がどんなセットを用意してようと、あいつはちゃんとそれをこなしてる。だけどあいつをよく知るようになって、一緒に現場にいれば、全然ノッてないってことがわかる。音楽にしか興味がないのさ。それで、その音楽から来るカネとか人気とかで態度がデカくなりそうなもんなんだけど……オレなんか、デカくなりすぎて、そっくり返ってるからね。Eminemはいまやトップアーティストの1人だぜ。でも、あいつと一緒に付き合ってるうちに、あいつにとっちゃ、レコードの売上げなんかよりも、実際に音楽を作ることのほうがよっぽど楽しいんだって、よーくわかったよ。
――Dreのほうは?
50 CENT:あいつも同じ感じさ。どういう状況だろうと、いつもレコードを作ってる。オレから見れば、Dr. Dreほど腕の立つプロデューサーはいないと思うね。あいつはもともとNWAにいた。元祖ギャングスタ・ラップだよ。だから、Dreなら絶対オレのリリックを理解してくれてる。ヤバくなればなるほどエキサイトするようなやつだよ。「これホントに入れていいのか?」とか「ここ変えたほうがいいんじゃねえの?」とかは絶対言わないんだ。コロムビアに「How To Rob」を渡した時は、Ol' Dirty Bastardみたいに見せかけるため、「髪は切るな」って言われたんだぜ。「イカレたように見せるんだよ、誰でも手当たり次第にパクってやるって言ってるヤツみたいにね」って勢いさ。オレには飲めなかったね。Ol' Dirty Bastardがこのレコードを作ったかのようにだって? それじゃ本当のシングル「Thug Love」の時に、オレが誰だかわからないじゃないか。誰に似せるって? どうしようってんだよ? 映画『大逆転』みたいに「よう、モーティマー!」とか言うのかよ? カネを積まれただけで、いきなり別人に変わるなんてオレにはできないね。ただのレコードじゃないか。それをコロムビアの連中は、オレのこと“アーティスト”に仕立て上げたかったんだ。オレは乗れなかったね。コロムビアは最後まで何もわかってなかったのさ。
――コロムビア・レコードが出すと言いながら出さなかったアルバム『The Power Of The Dollar』関しては、どう思ってますか?
50 CENT:どうしようもなかったんだよ。「よし、やるか」って時にトラブっちまったのさ。コロムビアに「How To Rob」を渡したんだけど、本当のシングルはDestiny's Childとやる「Thug Love」だったんだ。ところが、そのビデオ収録の3日前にオレが撃たれた。そんなことがあって、誰からも電話1本かかってこなくなったんだ。手に負えないことに首を突っ込みたくないってこと。結局、全部自分で売り出すハメになっちまったのさ。
――50 Centという名前について教えてください。
50 CENT:この50 Centっていう名前は、昔死んじまったFort Green Projectsのギャングスタから受け継いだものなんだ。オレの名前が呼ばれる時、なんかあいつも生き返るって気がするのさ。アル・カポネやジョン・ゴッティみたいな大物じゃなくて、フッドの中でもあまり活動してなかったやつさ。そいつが殺されちまったから、オレがそれを名乗ってる。顔を合わせたって、「よう!」とさえ声をかけてくれないような連中じゃなく、フッドの仲間の名前なんだよ。
――その名前に反対の声はありましたか?
50 CENT:いや、むしろあいつを知ってるヤツはみんな喜んでると思うぜ。実を言うと、Rakimがアルバム『Paid In Full』のバックカヴァーに、橋の下で撮った写真を使ってるんだけど、そこに元の50 Centが写ってるよ。ちょっと年がいってるほうがやつさ。
――Rakimの他に、あなたの音楽に影響を与えた人物はいますか?
50 CENT:KRS-1は好きだったよ。教師になる前の、ストリートで暴れまわってた時の話だけどね。オレみたいで共感できたのさ。自分が経験してる時はよく分かるものなんだ。それと、神様は信じてる。ゴスペルは書かないし、日曜に教会に行くわけでもないし、悪い言葉も使うけど、それでも神様は信じてるんだ。それがわからないヤツはクソ食らえさ。神様はちゃんとわかってくれてる。オレのやることがすべてあんたたちに理解できるわけじゃないし、みんながオレのことを理解できるわけじゃない。オレの言うことやすることを、みんながわかってくれるわけじゃないってことはよくわかってる。理解してくれてる人たちだけで、充分満足してるよ。
By Billy JohnsonJr (C)LAUNCH.com