Dido JAPAN TOUR 2001/10/18 Zepp Tokyo
Dido Vincent Miranda:guitar Keith Golden:bass Alex Alexander:drums Pete Ho:DJ John Deley:keyboards Jody Linscott:percussion |
1: Worthless(instrumental) 2: My Lovers Gone 3: All You Want 4: Here With Me 5: Isobel 6: My Life 7: Honestly OK 8: No Angel 9: Slide 10:See The Sun 11:Take My Hand 12:Thank You 13:Hunter
Encore 1:Do You Have A Little Time 2:Don't Think of Me
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『No Angel』 BMG International 発売中 BVCA-21083 ¥2,548(tax in)
1 Here With Me 2 Hunter 3 Don't Think of Me 4 My Lover's Gone 5 All You Want 6 Thank You 7 Honestly OK 8 Slide 9 Isobel 10 I'm No Angel 11 My Life 12 TAKE MY HAND(US Bonus Track) 13 Worthless(Bonus Track) 14 Me(Bonus Track)
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| 「2001年、世界でもっとも注目を浴びた女性シンガーは?」
仮にこういう質問があったとしたら、その答はダイドだ。
あのエミネムの代表曲「スタン」にサンプリングされたことで、その哀愁溢れる楽曲と、囁くような癒し系を地で行く声が注目され、デビュー・アルバム『No Angel』が本国イギリスでのリリースから1年以上たったにも関わらずジワジワとチャートを駆け上がり、全英アルバムチャート1位、全米ビルボード5位の大ヒットとなったのをはじめ各国でミリオン・セラーを記録。
残念ながら、日本は世界的な動きと比べると若干乗り遅れた観はあるものの、それでも都内一の広さを誇るライヴハウス、ZEPP東京はほぼ満員の売れ行き。会場には、おそらくラジオで“癒し系”として彼女の音楽を耳にしたタイプの、普段エンヤやコアーズといった辺りを聴いていると思しき落ち着いたイメージのリスナーの方々が多く集っていた。こうした会場の雰囲気に対して、僕も当初はそれほど違和感はいだかなかったのだが…。
pic by Yuki Kuroyanagi | しかし、いざ蓋を開けてみると、その“癒し系美女”の正体は想像以上にアグレッシヴだった。
ダイドのステージ衣装は、左肩だけを出したほぼヘソ出しのタンクトップといった出で立ち。ステージ上には通常のバンド編成に加え、DJ1人にパーカッション2人。ベーシストはかなり体のガッチリした明らかにファンク系の黒人でもある。その演奏自体もヨーロピアン・テイストのアンビエント感覚という、アルバム『No Angel』からダイレクトに伝わる感覚を残しながらも、そのリズムは実に力強く躍動感に溢れている。
「えらく元気のいいお姉さんだな」と僕は思って最初観ていたが、そのうちにある事実をふと思い出した。
そう。彼女はイギリスを代表するハウス・ユニット、フェイスレスを率いるDJ、ロロの妹であり、彼女もかつてはフェイスレスに所属していたことを。そしてアメリカではこのバンド編成で、あのトラヴィスと共にツアーを廻っていることも。どうやら、日本人が一般に想起するややもするとコンサバな感じに映りがちな“癒し系”の人では、どうやらないようだ。
そしてそれをさらに証明するのが、その“声”の存在、これにほかならない。そのかすみがかったスモーキーな声こそ、ダイド最大の持ち味であるのだが、この声がとにかく大きく芯が太い! これには本当に驚いた。繊細な表情を見せつつ実は骨太な声。こんな貴重な声にはなかなか出会えるものではない。彼女がイギリスとアメリカという、その性格が全くことなる国で共に大成功を果たした秘訣はどうやらその辺りにあるようだ。
ライヴの選曲自体は当然のこと『No Angel』の曲がほとんどなのだが、このアルバムをひっさげてもう2年以上ツアーをしているためかアレンジはよりバンド色の強いパワフルなものに変り、そしてこのツアーの間にできたと思しき新曲も数曲披露していた。そして、ハイライトはやはりダイド自身が「ツアーメンバーにこの曲を捧げます」と語った、あのエミネムでお馴染みになった彼女最大の代表曲、そう「サンキュー」で、大人しく見ていた観衆も大歓声をあげて盛り上がった。そして、最新シングル・チューンの「ハンター」で一度引き上げると、当然のように熱いアンコールの拍手が。そして、ダイドが一人でピアノの弾き語りという珍しい姿を披露した後、アルバム内の人気曲「ドント・シンク・オブ・ミー」で幕を閉じた。
オシャレなラジオ・リスナーにも、クラブ系のファンにもロック・ファンにも受ける懐の深い優れたポテンシャルを持っている。今回の来日でダイドは改めてそのことを証明してくれたような気がする。
「ここまでの才能があるのなら日本でももっと多くのリスナーが飛びついてもいいのになあ」と、僕は思わず悔しがってしまったが、まあ、それは次のアルバムのときのツアーまで課題としてとっておくことにしようか。
この日本公演は、彼女の2年以上に渡るツアーのどうやら最後だったらしく、この後、ダイドは2ndアルバムのレコーディングに入るのだという。…と言うことは待望の新作はそう遠い日ではないということでもある。
よりグレードアップしているであろう実力派シンガー、ダイドのさらなる成長を早くこの目で見たいものだ。 |
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