世界規模で広がる、【人気】と【名声】と【中傷】

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エミネム旋風必至!
世界規模で広がる、【人気】と【名声】と【中傷】

文●太澤 陽aka沢田太陽

遂にベールを脱ぐ、エミネム史上最大の名曲のひとつ 「Stan」


「STAN」


ユニバーサルインターナショナル
UICS-5007 1.234 (TAX IN)
2001.02.21発売

1. スタン(ラジオ・エディット)<フィーチャリング・ダイド>
2. ギルティ・コンシエンス(ラジオ・ヴァージョン)
3. ハザーダス・ユース(アカペラ・ヴァージョン)*
4. ゲット・ユー・マッド /スウェイ&キング・テク・フィーチャリング・DJレヴォリューション・ウィズ・エミネム
アルバム『マーシャル・マザーズ』から「リアル・スリム・シェイディ」「ウエイ・アイ・エム」に続く3rdシングルで、イギリスをはじめ、世界各国でナンバーワン・ヒットなったエミネム史上最大の名曲のひとつが遂にここ日本でもベールを脱ぐ!

これまでエミネムというと、とかくその暴力的・非道徳的な歌詞ばかりが取りざたされてきたのであるが、エミネムの歌詞を語る際にもう一つ忘れてはならないのが、彼のストーリー・テラーとしての才覚だ。

日本人にはわかりにくい話だが、本場アメリカでラッパーの資質を測る基準として、「話しのうまさ」というのがある。

「俺が、俺が」と、自分のことばかり言うのではなく、あるひとつの物語のひとつの場面を説明するような三人称によるラップのリリックというものはまだ日本のヒップホップではほとんど見受けられないが、本場アメリカではかなり一般的なことである。

しかし、そんな中でもこの「スタン」は群を抜いた作品であると断言できる。

この曲のストーリーは、エミネムの熱狂的信者を自認し、エミネムに対して毎日ストーカーまがいの手紙を送りつけるスタンという男の、なんと「手紙の内容」。こういう視点の歌詞によるヒットは古今東西眺めて見ても太田裕美の「木綿のハンカチーフ」しか思い当たらないが、「手紙」と言ってもそんなほのぼのとしたものとは限りなく遠い、ギリギリの次元にまで切迫したものとなっている。

現実社会の壁にぶち当たり出口のない中にエミネムと出会うことで心の支えが生まれ、あたかも神であるかのように崇め奉るスタン。一目会いたい一心で手紙を書き続けるも、エミネムからの返事が来なければ来ないほど焦燥する思いはつのり、エミネムから遅ればせながらの励ましレターが届く頃には、スタンは彼の子供を身ごもった妻と共に自動車で転落死…。

この内容をめぐっても、「同性愛者差別」の論議が起こり、いつもながらの騒動なっているが、その是非や歌詞の内容の真意はともかく、これほどまでにカリスマ的アーティストと狂信的なファンという、20世紀にすっかりお馴染みとなってしまった「スターとファンとの心理的関係性」をここまで巧みに歌った楽曲というものが過去にあっただろうか。

たとえ、この曲の成果がもし仮にそれだけであったにせよ、「スタン」はそれだけで充分にポップ・ミュージックに残るに値する名曲であることには代わらない。そして、過去に再婚した恋人の連れ子との愛の逃避行など、かなり斬新なシチュエーションによる物語を聞かせていたエミネム自身にとっても、彼のキャリアからは絶対に外せないマイルストーンな作品となることに変わりはないだろう。

そして、歌詞もさることながら、絶妙なのはその歌ごころも同様だ。

ハードコアなヒップホップの中において異例とも言える分りやすいポップなメロディとリズムを持つバックトラックを使うことでも知られるエミネムではあったが、この曲はそんなメロディ使いの巧みなエミネムの中でも屈指の美メロを誇るものであろう。

ここでサンプリングされているはかな気で侘びしいフォルクローレのようなメロディと薄幸そうでありながら癒すような女性の声。これはイギリス出身の“サラ・マクラクランの再来”とも呼ばれる新人女性シンガー、ダイドのデビュー・アルバム「ノー・エンジェル」の中の「サンキュー」という曲。

「スタン」のヒットは、このダイドという女性にも幸運をもたらすこととなった。まず、「スタン」のビデオ・クリップにおけるスタンの妻役としてダイドが出演。これにより「この人は誰?」という声があがり、やがてそのサンプリングの元曲となった「サンキュー」目当てに彼女のアルバムを買う、という一大現象が起こってしまったのだ。そして買ってみたならば、トリップホップとフォークが混ざったようなクールなアンビエント感覚が人気を呼び、それによりダイドの人気が一気に拡大。遂にはアルバム『ノー・エンジェル』は、アメリカでトップ10入り、イギリスに至ってはナンバーワンとなる自体にまでになってしまった。サンプリングのオリジナルを巡ってここまでヒットした曲とアーティストというのも過去にその前例は全くと言っていいほどにない。

今回リリースされるこのシングル「スタン」にはこの曲の他にも、エミネムがメジャー・デビュー以前に出演したラジオ番組からの「ギルティ・コンシャンス」のヴァージョンやこれまでの輸入盤のシングルにしか収録されていなかった曲など、熱心なファンとしても欲しいところの曲も入ってはいる。

しかし、こんな世界的なブームになっているにもかかわらず、いまだに“エミネム不感症”を気取っている今の日本の状況を考えると、聴くべきナンバーはやはり「スタン」そのものだ。

僕がここまで長々と述べて来た理由でもう充分におわかりいただけたとは思うが、どう考えてもこの曲はポップ・ミュージックにおける「21世紀最初の名曲」であることに間違いはないのだから。

そして、この「スタン」が理解されることによって日本でも初めて「エミネム旋風」が吹き荒れることになるだろう。
非英語圏の「英語がわからない…」人たちにヒップホップを聴かせる力 『E』


『E』

ユニバーサルインターナショナル
VHS UIVS-1001 3.990 (TAX IN)
2001.02.21発売

1. スタン
2. ザ・ウェイ・アイ・アム
3. ザ・リアル・スリム・シェイディ
4. ロール・モデル
5. ギルティ・コンシエンス
6. マイ・ネーム・イズ
7. ジャスト・ドント・ギヴ・ア・ファッ*





『E』


ユニバーサルインターナショナル
DVD UIBS-1001 3.990 (TAX IN)
2001.02.21発売

1. スタン
2. ザ・ウェイ・アイ・アム
3. ザ・リアル・スリム・シェイディ
4. ロール・モデル
5. ギルティ・コンシエンス
6. マイ・ネーム・イズ
7. ジャスト・ドント・ギヴ・ア・ファッ*
エミネムという存在の受け止められ方。おそらく普段「アメリカの狂気を描いた歌詞が」うんぬん伝えられてばかりの日本人からするとすごくシリアスなものとして伝わっているのかもしれない。

しかし実態から言ってしまえば、彼の人気は普段バックストリート・ボーイズブリトニー・スピアーズを聴いているようなアイドル好きのローティーンの女のコたちのアイドルであり、リンプ・ビズキットキッドロックがクールだと思うこれまたローティーンの男のコたちの理想のロックのアイドルと果てしなく同列のものである。

まあ、そこからさらに批評家やヒップホップ界隈からの賞賛が絡まるところがほかのアイドルやバンドアイドルとは異なるところではあるのだが、いずれにしても子供達からのアイドルとしての側面をエミネムが多分にして持っているというのは事実ではある。ならば何がエミネムをそういう地位に押し上げているのか。その答はビデオの中にある。

洋楽のビデオクリップがほとんどかかることにない現状からはなかなか伝わりにくいことだが、ビデオの中におけるエミネムは、かなりひょうきんなお兄さんなのである。大きな目をさらに大きく見開いて必要以上のスマイルを見せてくれる気味の悪いお兄さん。この人がクリントン大統領やマリリン・マンソンのコスプレをしたり、変な気ぐるみに身を包んでみたり。

ヒップホップのことなど全く知らなくても、このおどけっぷりから子供たちは知らず知らずのうちにエミネムの世界に引き込まれてしまう。そしてそのビデオで繰り広げられるナンセンスでブラックきわまりないジョークもコミックの「サウスパーク」や「ビーヴァス&バットヘッド」と同じような感覚で笑ってみてしまうのだ。

そしてまた、子供にとって意外にも意味があるのは、エミネムのビデオが、彼のリリックの世界の基本的に翻訳であるということだ。

これまでヒップホップのビデオと言えばとかく自らの不良性やマッチョぶりを誇示したものが目立っていたが、そんな中エミネムはユーモアのセンスをふんだんに使い、画面そのものにラップをさせることに見事成功しているのだ。エミネムの成功の裏にビデオがこのように大きく貢献しているわけなのだ。

その貴重なビデオ・クリップをまとめあげたものが遂にここ日本でもリリースされる。タイトルはシンプルに『E』。収録されるのは『スリム・シェイディ』から「マイ・ネーム・イズ」「ロール・モデル」「ギルティ・コンシャンス」「ジャスト・ドント・ギヴ・ア・ファッ※」、『マーシャル・マザーズ』からは「リアル・スリム・シェイディ」「ザ・ウエイ・アイ・アム」「スタン」の計7曲に、メイキング・シーンなどを取り入れたもの。

英語などわからなくとも画面さえ見れば歌詞の内容はすべてわかる。

エミネムのこの映像こそが本来、非英語圏の「英語がわからないから…」と敬遠している人たちにヒップホップを聴かせる力を持っているはずなのである。

従って、このビデオ集は本来言葉がわからない人にこそ見てもらうべきモノなのだ。日本人がエミネムのことをつかみ損なっているのはこのビデオの数々を見てないからではないか。そういう気さえする。

…と言うわけでエミネム・ファンも初心者もこれは必携! さらには映像マニアにもオススメだ。

こんなに短い時間内でこんな濃密なストーリーを伝えているビデオなんて、今ほかにどこの世界を探してみてもないのだから。

about EMINEM

20世紀から21世紀への転換期の世界のポップ・シーンを賑わせている“狂気の白人ラッパー”エミネムことマーシャル・マザーズは1972年にアメリカはミシガン州デトロイトに生まれた。

自動車工業産業も衰退し荒廃したこの街を、彼は両親の不仲によるたらい回し状態の中で育つことになる。住居が一定せず友達も出来ずにいじめられっ子として育ったマーシャル少年の心を救ったのはヒップホップだった。

やがて彼は、自分の思いついた言葉をメモするようになり、それは彼自身のラップのリリックとなっていった。

14歳から本格的にラッパーとして活動するようになった彼は自身の名前のイニシャルにちなんでM&Mから“エミネム”という名前で活動するようになり、'96年、遂に地元デトロイトのインディ・レーベルから念願の初アルバム「Infinite」をリリース。

このときは自分でも何がしたいかわからなかった。あれはデモのようなものだ」と本人は述べているが、そこからが彼の今に至る道のりのスタートである。

彼は「神をも冒涜する脅威のキャラクター」スリム・シェイディを考案し、スリム・シェイディと化して犯罪やドラッグ・暴力についての過激なリリックを展開。また、数多くのMCバトル・コンテストに果敢に挑戦し、その高速マシンガン・ラップで黒人優位の差別社会のヒップホップにおいて白人ながらも勝ち上がっていき、自主制作テープ「スリム・シェイディEP」は20、000枚の売り上げを記録。その噂は一気に広がり、西海岸一の人気を誇るヒップホップ・ラジオ・ショー「フライディ・ナイト・フレイヴァス」に出演したエミネムはフリー・スタイルMCをこの番組で披露。それが決定的な運命の瞬間だった。

この番組のリスナーには、伝説のギャングスター・ラップグループNWAの元メンバーで“G-ラップ”の生みの親、そしてスヌープ・ドギー・ドッグを育てたLAヒップホップの首領、ドクター・ドレーがいたのだから。

『スリム・シェイディLP』
1999.04.21発売
MVCT-24052 2,541(TAX IN)
このドレーから即座にコンタクトを受けたエミネムはNWAの大ファンであったが故に大喜び。即座にドレーのレーベル「アフターマス」と契約したエミネムは、その出会いの1年後、'99年の3月、エミネムはドレーのレーベル「アフターマス」から、アルバム『スリム・シェイディLP』を発表するや、その不気味なユーモア・センスと過激な歌詞でたちまち話題となり、たちまち全米アルバムチャート初登場2位を記録。

白人だったことも手伝って、エミネムの人気はこれまでヒップホップを聴かなかったような白人層にまで一気に広がった。そして、'90年代半ばから今一つ精彩に欠いていたドクター・ドレーの復権をも証明することとなった。

大統領や有名人に平気で侮辱的な言葉を投げかけ、犯罪や暴力を煽るかのようなその言葉にリスナーは「黒人にもいないクレイジーなラッパーが登場した」と、賞賛と罵声を一気に浴びせ、エミネムの存在は一気に広がっていった。

『Marshall Mathers LP』
2000.06.16発売
MVCT-24081 2,541(TAX IN)
そして、“ときの人”となるにはあまりにもジャストなタイミングである2000年6月に、エミネムはアルバム『マーシャル・マザーズLP』をリリース。

アメリカでは発売1週目で176万枚を売り上げ、半年で700万枚を売り上げ、イギリスでも見事ナンバーワンを獲得しミリオンエラーになると同時に、その人気と名声と中傷は世界規模で広がった。

そして2001年2月現在、グラミー賞最優秀アルバム部門へのノミネートをゲイ団体から非難されるまさに今、全世界の注目がこのマーシャル・マザーズに釘付け状態!
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