ACO material live 2001 1:ASK ME 2:メランコリア 3:真正ロマンティスト 4:空シラヌ雨 5:カナリアは鳴く 6:4月のヒーロー 7:眠れるネコ 8:Interlude 9:雨の日の為に 10:TIME 11:SPLEEN 12:悦びに咲く花 13:ハートを燃やして 14:星ノクズ ENCORE 1:貴方に捧ぐうた |
『material』 Ki/oon Records KSC2-385 ¥3,059(tax in) 1 メランコリア 2 星ノクズ 3 カナリアは鳴く 4 真正ロマンティシスト 5 空シラヌ雨 6 ASK ME 7 THIS WOMAN'S WORK 8 4月のヒーロー 9 Time 10 Interlude 11 貴方に捧ぐうた 12 ハートを燃やして(Special Branch Mix) 13 星ノクズ(dub version)
| | 久々の新作『material』をリリースしたACO。多くの楽曲を手掛けたのは、イギリスで活躍するDJ、プロデューサー、そして先鋭気鋭のダブ・マスター、エイドリアン・シャーウッド。アナログを買いあさったり、クラブに行っている人たちにとっては、人気の高いシャーウッドだが、そんな彼をさらっと起用してしまうところが、ACOらしい。 独特な声質はもちろん“ACOらしさ”であり、たくさんの人たちはその声に吸い寄せられる。そんな魅力はもちろんのこと、個人的には彼女のチャレンジ精神を高く評価したい。 ふつうのポップ女性歌手で終わらず、音にこだわりいいトラックや新しい音へのアンテナが常にはっている。 それは1年半前に出された砂原良徳プロデュース曲「悦びに咲く花」。これを聴いた時は、繊細な砂原のトラックとACOの歌声がぴったりと合わさった完成度の高さにかなりの衝撃を受けた。そこから(というわけでもないが)ACOのトラック・メイカーへのこだわりは、様々な楽曲で実現されていった。 しかも、各アーティストによる個性の強いトラックをACOの歌声は覆ってしまうでもなく、覆われるでもなく、彼女らしい曲に仕上げてしまうのである。 そんなマニアックさを感じさせないACOの歌声は、幅広い層のファンから興味をわかせたに違いない。 そしてこの新作をひっさげての<material ツアー 2001>。会場は女性客が多く、なんとなくライヴ前の熱気は静かで、上品な感じだ。 オープニングの「ASK ME」が始まるとそんな会場の雰囲気はよそに、バックバンドのゆったりとした重たいダブ・ビートに、現実を突き抜けるようなACOの声とエフェクトがこだまし、脳内を刺激する。それと同時にステージ上のゆったりと滑らかに変化する花のVJが、視覚を埋め尽くし、ゆっくりと現実から離れて旅をしにいくような、そんな感覚にもっていかれた。 2曲目「メランコリア」で『material』のジャケに描かれたウサギのような雰囲気のACOが静かに現われる。
本当に小さくてかわいいACO。
でもマイクを握り歌いだすと、瞬く間にACOは力強いオーラを発した。その声はどこから出てくるのかと思うほど、独特な歌声で場内を包み込み、心を打たれるというよりは身体全体にすり込まれるような感じだった。
前半は、『material』の収録曲の中からスローな曲で聴かせる。ダブ基調の太いベース音とドラムが鳴り響く中で、とても説得力のある力強い声。観客はACOの歌声に聴き入るという感じだった。今までのライヴでは体感したことのないようなこの雰囲気。みんなACOに何かを求めているような気がした。
しかし、ACOはオーディエンスよりも攻撃的だった。後半戦にさしかかるMCでは「元気ないねー」ともらす。やはりACOのこだわりはもっとサウンド的にも楽しんでもらいたかったに違いない。トラックは繊細かつ、音の空間が強調された力強いダビー・サウンドで、身体は自然に揺れてしまう音。しかし、そのトラックとACOの声の融合は、その日のオーディエンスにとってやはりACOの歌声というものが先にきたようだった。
後半では、前作『absolute ego』から「SPLEEN」や「悦びに咲く花」を今回のツアー用にアレンジし直したヴァージョンで披露。「悦びに咲く花」は、後半のドラムン・ベースに展開して原曲とはちょっと違う感じだった。そしてアンコールでは「貴方に捧ぐ歌」をしっとりと披露。その最後で強く感じる。
“安らぎ”と“強さ”。
そんな相反したふたつのことをACOの歌声からは感じる。かわいらしさや女性的魅力はもちろんだが、しっとりとした歌い方が、とても落ち着いた気分にさせてくれる。それと同時にACOの独特の声質と自身が持つ世界観が、ポジティヴなエネルギーを与えてくれる。そんな魅力によってオーディエンスはACOの歌声をただただ求めているのだと感じた。 文●イトウトモコ |
|