『Van Halen』 ワーナー・ブラザーズ
1Runnin' With the Devil 2Eruption 3You Really Got Me 4Ain't Talkin' 'bout Love 5I'm the One 6 Jamie's Cryin' 7Atomic Punk 8Feel Your Love Tonight 9Little Dreamer 10Ice Cream Man 11On Fire
『Van Halen II』 ワーナー・ブラザーズ
1 You're No Good 2 Dance the Night Away 3 Somebody Get Me A Doctor 4 Bottoms Up! 5 Outta Love Again 6 Light Up the Sky 7 Spanish Fly 8 D.O.A. 9 Women In Love 10 Beautiful Girls
『Women And Children First』 ワーナー・ブラザーズ
1 And the Cradle Will Rock... 2 Everybody Wants Some!! 3 Fools 4 Romeo Delight 5 Tora! Tora! 6 Loss of Control 7 Take Your Whiskey Home 8 Could This Be Magic? 9 In A Simple Rhyme 10 Growth
『Fair Warning』 ワーナー・ブラザーズ
1 Mean Street 2 "Dirty Movies" 3 Sinner's Swing! 4 Hear About It Later 5 Unchained 6 Push Comes To Shove 7 So This Is Love? 8 Sunday Afternoon In the Park 9 One Foot Out the Door
『Diver Down』 ワーナー・ブラザーズ
1 Where Have All the Good Times Gone! 2 Hang 'em High 3 Cathedral 4 Secrets 5 Intruder 6 (Oh) Pretty Woman 7 Dancing In the Street 8 Little Guitars (Intro) 9 Little Guitars 10 Big Bad Bill (Is Sweet William Now) 11 The Full Bug 12 Happy Trails
『1984』 ワーナー・ブラザーズ
1 1984 2 Jump 3 Panama 4 Top Jimmy 5 Drop Dead Legs 6 Hot For Teacher 7 I'll Wait 8 Girl Gone Bad 9 House of Pain
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| 全能なる愛しき聖母よ!!!
“Diamond”David Lee Rothがラスヴェガスで全曲Van Halenのショウをやっていると聞いたとき、私はすべての予定をキャンセルし、飛行機のチケットを取って、ちょっとウィスキーを飲んでから砂漠の街へと向かった。
そのとき私が心に描いていたのは、地球上で最もグレートなフロントマンが元気いっぱいで筋骨隆々のチープでダーティなロックンロールを、骨を砕き鼓膜を破るようなノンストップのセットで聴かせてくれる姿だけであった。
だが私にはそれが実現した時の心構えができていなかった。ほんの少しも。
この感激をみなさんにどう伝えてよいものかわからないが、とにかくDavid Lee Rothは完全なる絶好調のスタイルで復活を成し遂げたのである。
実際のところ彼が一度は無敵だったVan Halenのフロントマンを辞して以来、これほどの素晴らしいステージを見せたことはなかったのだ。ブルース調のバラードやアダルトコンテンポラリー市場へのクロスオーヴァーを狙ったミッドテンポの曲は姿を消した。ショートヘアの“成熟した”Daveも、ラウンジっぽいマンボのテイストも安っぽいステージマナーも姿を消した。そう、Daveは成長と多様性への試みをすべて削ぎ落として、自身のベーシックへと回帰したのである。
つまり一流のショウマンシップと圧倒的なカリスマ性、そしてロッカー軍団の肉体的なスタミナから繰り出される、椅子ごと観客をブッ飛ばし、尻に鞭を入れ、首をへし折るようなハードロックなのだ。
若いミュージシャンによる爆発力のあるバンドを従えて、ヴェガスのSunset StationでVan Halenの圧倒的な名曲を次々と繰り出したDaveは、ファンが望んでいたものはもちろんのこと、それ以上の喜びを提供してしまった。
ブロンドで筋肉質のDaveがJack Daniel'sのボトルを手に持って笑顔を浮かべながらステージに躍り出た瞬間、観客の誰もが本物の娯楽を享受できることを確信したのだった。彼が世界中のステージを飛び回っていた'80年代からまるで一日も経っていないと思えるくらいにThe Diamond Oneの容貌は衰えを知らず、スリムに引き締まった肉体も最高のコンディションで実際の46歳より一回りも二回りも若く見える。有名なブロンドの長髪は流れるようで、アクションもターン、ジャンプ、スプリット(足を広げて跳ぶ)を何度も見せるなど効果的であった。
『Eat 'Em And Smile』 ワーナーブラザーズ WPCR-2556
| 何にもまして素晴らしかったのは、彼の声がこれまで聴いた中でも最高の状態だったことである。私は『Eat 'Em And Smile』ツアーも、ラスヴェガスでのレヴューも、'99年の何回かのショウも見ているし、大量のVan Halen / Roth関連ブートレグを持ってもいるが、正直に言ってDaveが今回ほどうまく歌ったことは一度もないのだ。
彼はすべての音をアルバム通りに発声しただけでなく、ときどき聴かせるハイピッチのシャウトやハーモニー、ヴォーカルのニュアンスにもスタイルとスムースさが感じられた。
自信と個性に満ちたDaveの歌声は細かい部分にいたるまで全盛期と遜色はなく、それ以上に調子の良い部分も随所に聴かれたのである。
そして、彼の曲間のしゃべりもいつものように愉快なものであった。例えば、ある男の客がステージのドリンクを投げ込んだときも、Daveは「警備員はそいつをつまみ出さないように。ガールフレンドが彼から俺へのメッセージを持って楽屋で待っているからな。彼女が言うには(マイクを口に持っていって楽屋でのブロウジョブの音を再現する)“'Glug, glug, gargle, gargle, gargle!!!”だってさ」とふざけて見せた。
くだらないね。
ほとんど全曲をオールドスクールVan Halenの人気曲でかためるなど、Daveは“ファン向けの”セットを展開したので、オーディエンスはすべてのギターリフやドラムのイントロが始まるたびにワイルドな歓声を上げた。「Hot For Teacher」、「Panama」、「Dance The Night Away」、「Runnin' With The Devil」、「You Really Got Me」、「Atomic Punk」、「Tobacco Road」、「So This Is Love?」、「Unchained」、「Ain't Talkin' 'Bout Love」などを含むセットリストに「Jump」のアンコールが加われば、誰もが熱狂的に叫びださずにはいられないのは当然だろう。
無情の喜びとはこのことだ。
1曲ごとにオーディエンスは集団でため息をついた。
「どうなってるんだ!!! この曲をやってくれるなんて信じられないよ!!!」
Daveは1曲目から聴衆を完全に虜にしてしまい、息つく暇さえ与えなかった。アルバムからの人気曲の間に次々とヒット曲を繰り出し、まるで野球のバットで何度も何度も何度も殴られたような感覚になるまで攻撃を続けたのである。我々は完全にノックアウトされ、燃え尽きながらも、さらなる曲を求めていた。
Daveは客席に向けてJack Daniel'sを吹きかけ、ドラム台からジャンプしてスプリットを披露しただけでなく、「Ice Cream Man」ではアコースティックギターまで弾いて見せた。基本的に彼は私にとってこれまで参加した中で最高の野外バーベキューを取り仕切る総合司会者なのであった。そう、あのBig Bad Diamond Dave様が意気軒高に凱旋し、観客はもちろんのこと、そのガールフレンドまでブチかましてくれたのだ!
だから今年のツアーで必ず彼をキャッチして欲しい。できることならDaveには現在の素晴らしいラインナップでニューアルバムを制作し、ライヴでのマジックを記録に残して欲しいものだが、それまではロックシーンで最高のシンガーのひとりにブチのめされた想い出を大事に抱えていることにしよう。
あの古き良き時代はどこへ行ってしまったのか?
教えてあげよう、それはDaveのヒップポケットの中にあるんだ。丁重にお願いすれば取り出して見せてくれるよ。By Frank Meyer/ launch.com |
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