『EVERYDAY』 BMG International BVCP-21140 2001年2月28日発売 2,548 (tax in)
1. アイ・ディド・イット-I Did It 2. 世界が終わる時-When the World Ends 3. 僕と君のあいだに-The Space Between 4. 父の夢、僕の夢-Dreams of Our Fathers 5. ソー・ライト -So Right 6. もしもすべてが -If I Had It All 7. 本当の僕 -What You Are 8. エンジェル -Angel 9. フール・トゥ・シンク -Fool to Think 10. 夢で遭えたら -Sleep to Dream Her 11. マザー・ファーザー -Mother Father 12. エヴリデイ -Everyday |
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| 「あのエアロスミスの新作が初登場1位をとれなかったぞ!」 「なんでもエアロを抑えて1位になったのはロックバンドらしいぞ!」 「しかもランクイン2週目にして1週目のエアロを抑えたって話だぜ!」 「それ誰だよ?」 「デイヴ・マシューズ・バンドっていうらしいぜ!」 「えーーーっっ!」
…という会話が、おさらく日本はもとより世界中のあちらこちらから聞こえてきても決しておかしな話ではない。
そう!今、アメリカのロックシーンをもっともホットに湧かしいるバンドは新作が出たばかりのエアロではなく、デイヴ・マシューズ・バンドなのだ。
なにしろその勢いが凄い。初登場1週目にしてなんと全米で73万枚を売り、2週目に入っても30万枚(エアロは24万)のセールスで早くもミリオン・セラーを突破。出荷数は早くも300万枚を超え、この勢いはもはや“現象”として語られている。
確かに前作、前々作を400~800万枚売ってしまうほどのセールスを挙げたことも10万人規模のアリーナをソールド・アウトにするほどのライヴバンドであることも聞いてはいた。しかし、しつこいかも知れないが、エアロをも遥かに凌駕する勢いであったとは思いもつかなかった。
デイヴ・マシューズ。まるでトム・ハンクスやケヴィン・スペイシーが役作りのために筋肉増強したかのような、この生え際前線後退気味の男、果たして一体何者なのだろう。
南アフリカ共和国生まれの白人、デイブ・マシューズが自身のバンドを結成しようと思ったのは90年代初頭のこと。
この当時彼はヴァージニア州シャーロッツヴィルのジャズ・クラブでバーテンダーをしていたのだが、ここのクラブでプレイする優秀なプレイヤーたちに自分の書いた曲をプレイしてもらおうと思いつきメンバーを集めた。その結果集まったメンツがリロイ・ムーア(Sax)、カーター・ビュフォード(Ds)、ボイド・ティンズレー(なんとバイオリン!)という3人の黒人と、当時16歳の若さで「天才」の名をほしいままにしていた白人天才ベーシスト、ステファン・レッサード。
意気投合した5人は'91年に早速バンドを結成し、すぐにステージに立っていた。
その人種や年齢を超越した珍しいニュートラルなバンド編成や、その卓越した演奏技術、ジャズやブルースをルーツにした渋い音楽性、そして「ビートルズに多大な影響を受けた」と公言するマシューズの類い稀なソングライティングのセンス。これらが話題にならないはずがなく、'93年にインディ盤「トゥ・リメンバー・シングス」を順調に2万枚売り切った後、彼らはRCAとメジャー契約。U2をてがけたことでも知られる名プロデューサー、スティーヴ・リリー・ホワイトをプロデューサーに迎え'94年、デビュー・アルバム『アンダー・ザ・テーブル&ドリーミング』を発表すると早速チャート11位まで上昇。
当時、グランジやミクスチャーなどと並ぶもう一つのシーンとして盛り上がりを見せていた、フーティ&ザ・ブロウフィッシュやカウンティング・クロウズなどの“ネオ・トラディショナル・アメリカン・ロック”のブームにも乗り一躍人気バンドの仲間入りを果たした。
そして'96年には2ndアルバム『激突 / クラッシュ』をリリースすると、たちまち全米2位、800万枚の売り上げを記録。また、その圧倒的でかつ、ロックのコンサートではなかなか見られないバイオリンやサックスをフィーチャーしたライヴがバカ受け。また、その一度興に乗ったらどこまで演奏するかわからないまるでジャズのようなグルーヴィーなパフォーマンスは、“現在のグレイトフル・デッド”の呼び声高いフィッシュとも比較され、“ジャム・バンド”という括りで紹介されることにもなる。
'90年代後半に入ると「ジャム・バンド・シーン」もジワジワと全米規模での盛り上がりを見せるが、その並外れたポップセンスを誇るマシューズの楽曲は明らかに他と一線を画していた。
それを証明したのが、'98年の3rdアルバム『クラウディッド・ストリート』だった。このアルバムで彼らは遂に初登場1位を獲得。全米屈指の人気バンドであることを決定付け、さらに翌年の彼ら初のライブアルバム『リスナー・サポーティッド』もライヴ盤としては破格のミリオンセラーを記録した。そしてマシューズは、全米でリサーチされた「20世紀の最優秀ソングライター」というアンケートで、レノン&マッカートニーやボブ・ディランなどに混じってTOP10にエントリーし、かのニルヴァーナのカート・コバーンを抑えて6位にランクインするという、快挙を成し遂げた。
そして2001年、プロデューサーをスティーヴ・リリー・ホワイトから、アラニス・モリセットのプロデュースで名を挙げたグレン・バラードを迎え、時間をかけて充実したレコーディングを敢行。その結果生まれたのは、なんと全曲マシューズとグレン・バラードの共作という予想もしなかったものだった。
そのアルバムの名は『エヴリディ』。
ここに並んだ曲からはこれまでの彼らからは伺えなかったシングル・ヒットのポテンシャルを持った王道のポップセンスがギッシリ詰まっている。そして、楽器ひとつひとつの録音の仕方は実にソリッドになり、彼ら自身のファンキーでソウルフルな要素も殺されることなく活かされている。
そして、その結果は冒頭に書いた通り。
しかしかえすがえすも、エアロスミスを抑えて彼らが1位になったことは何とも因縁めいている。何故なら、エアロの前作『ナイン・ライヴス』を当初プロデュースしようとしていたのが誰あろうグレン・バラードだったからだ。そのときはエアロ側が「ロックっぽくなくなったから」という理由でバラードを降番させたが、エアロの最新作での脱ハードロックな大人の味と、ポップに一皮向けたデイヴ・マシューズ・バンドを聴き比べてみると意外なまでに感触が近いのである。ドラマティックなメロディ構成、ハイブリッドな音色、そして底に流れるブラック・ミュージックのフィーリング。これは聴き比べてみても面白いかもしれない。
とにかく今、アメリカのロックはデイヴ・マシューズ・バンドを聴かないとはじまらない。これはもう紛れもない事実である。 |
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