【ライヴレポート】vistlip、始動記念日を当時と同じ会場で祝福「活動開始記念日を、超満員のみんなと過ごせるのが本当に幸せです」

ポスト

「<317>(読み:サンイチナナ)へようこそ! こうして、“もう一つの”記念日としている活動開始記念日を、超満員のみんなと過ごせるのが本当に幸せです。ありがとう!(中略)こういう日は大切にしていきたいと思うので、これからもよろしくお願いします」と智(Vo)がライヴ中に話したように、3月17日はvistlipの始動記念日である。

◆vistlip ライブ写真

これは、vistlipの記念日として広く知られている七夕の結成記念日に次ぐ、“もう一つの”大切な日だ。かつて、海(G)がそれぞれの記念日を知人へ説明した際に「女みたいだなっ!」とツッコまれたとMCで話して笑いを起こしたが、ともあれvistlipはバンドにとって、さらにはファンにとって大切な軌跡を重んじるバンドであることに変わりない。

2007年7月7日に結成し、翌年3月17日に、ここSpotify O-WEST(当時はShibuya O-WEST)にてイベント出演という形で初ライヴを行ってから17年後の今日、過去の自分たちに対峙するようなメニューを用意して、始動17周年を祝す<ONE MAN LIVE[20250317]>を開催した。会場に足を踏み入れてまず目に飛び込んできたのが<317>とシンプルにデザインされたバックドロップだったが、智曰く「バックドロップまで作っちゃった」と言うほど、メンバー自身もこの日を特別と位置付けて大切にしている証拠とも受け取れた。


少々ハートフルな雰囲気でレポートをはじめてしまったが、ライヴのベクトルは初っ端からハードサイドに振り切っていた。ロックテイストなSEに乗せてメンバーがステージへセットし、「声出せ! 久しぶりのライヴ、一緒に楽しもうぜ!」と智の叫びを合図にヘッドバンギングが巻き起こる「EDY」、続いて「the surface」へと間髪入れずに畳みかけていく。客席を見渡しては時折ニヤリとする海や満面の笑みのTohya(Dr)といった、表情を伺い知ることができる距離感で攻めの楽曲たちを並べて繰り広げられるライヴは、否応なしにオーディエンスの熱気を高めていった。

序盤の緊張感が解けた「flash back blanky」の熱をYuh(G)のギターが繋げるように「Sara」へ突入すると、激しい楽曲のボトムを瑠伊(B)とTohyaが抜群の安定感で担っていることが如実に感じられ、さらに「Sara」が秘めたるコーラスワークやユニゾンなど、緻密なサウンドメイクの魅力に改めて気づかされるというのも、記念日という節目ならではの醍醐味でもある。


ここで最初の智の言葉が飛び出したのだが、同時に伝えていたのが通称“WEST”と呼ばれるこの会場がバンドにとって最初に憧れたステージであったことと、そういった会場で今もライヴができていることの喜びだった。のちにTohyaはこの日を“初期衝動”という言葉で表していたが、そういった想いを共有してからスタートさせたミクスチャーロックが炸裂する「FIVE BARKIN ANIMALS」や、記念日には〈“離れない”契約〉のワンフレーズが一際心に沁みる「drop note.」、高速に跳ね上げる「EGOIST」と、どれも初期からvistlipのアイデンティティを支えてきた楽曲が映える。

続いたMCでは、智が「最高ですね、昔を思い出します。思い出させてくれてありがとう!」と告げながら、結成当初から“ミーティングという名の遊び”として深夜帯にも関わらずメンバーで集まっていたことや、まさに深夜のファミレスでTohyaが「Revolver」収録曲を聴かせたという思い出話も飛び出した。「寂しいときに来てくれるのはメンバー。そんな寂しがり屋の曲ですわ」と披露した「alo[n]e」では、アウトロで観客と手を掲げ合いながら空間を共有する中、「俺たちがいる限り、おまえたちを1人にさせない」と智がまっすぐにメッセージする様子が胸を打つ。そして、圧倒的なオーラを纏ってディープに引き込んだ「BLACK-TAIL」から一変、ミラーボールの光が幻想的に彩る中で披露された「Moon Light Snow Rabbits」では、Yuhのクリーンなギターの音色がより一層心地よさを掻き立て、さらに海がアコースティックギターを手にした「アンサンブル」では、文字通り存分にバンド感を押し出したプレイが冴えわたっていた。


ライヴも終盤に差し掛かった頃、メンバーが口々にここまでの流れを振り返りながら「いやー、楽しいっすわ!昔の曲だけで(セットリストを)組めるの、すごいね!」と言ったTohyaに対し、Yuhは「でも、久しぶりとか昔すぎて弾けないっていう曲はない」と話していたが、海も「ウチ、ずっと演るもんね」ということにも頷けるほどに、vistlipのライヴでは過去の楽曲に満遍なく触れられる機会が多くある。これは、先にも述べたようなバンドとファンにとっての大切な事柄をないがしろにしないといったことにも通ずることとして、その時々に生み出してきた楽曲、もとい想いを大切にしているということでもあるように思えた。

思い出話の中には過去のライヴでの失敗談もありつつ、若干ライヴ中であることを失念してしまうほどにラフに展開されるトークから口火を切った智。「未だにこんなバンドなんですけど(笑)、ファンには“大切だ”っていう思いを届けてきたと思います。その中でもこの曲は、一際大切なんじゃないかなと思います」と、壮大なバンドのアンサンブルで「音色 -melody line-」、さらに「Legacy」では惜しみない包容力を持ちながら、酔いしれる程の息の合った演奏で届けていった。極めつけには、至極の幸福が弾ける「Dead Cherry」と、大切な存在同士が分かち合う愛しさに近い感情が溢れかえっていたのも、vistlipならではの空気感だと言える。


ラストスパートは、「BGM「METAFICTION」」のチルアウトな世界観がイントロダクションとなって、冒頭にもあった攻めのベクトルへとシフト。客席が大きく波打った「偽善MASTER」では、瑠伊とYuhが笑顔で背を合わせて演奏したのをはじめ、ステージ上も縦横無尽に動き出す。そして、「LION HEART」で智が曲中の両手・目・背中をしっかりとサインしながら“愛しい君のために”をいつも以上に声を張り上げて“愛しいオマエたちのために”と歌い替えたクライマックスに胸が高まりながら、最後はまるでトドメを刺すかのように「こんなんじゃ終われねえよな!?」とメンバーはドラムセットに集合し、オーディエンスはヘッドバンキングを起こす痛快な光景が冒頭に起こった「彩」で締めくくる。途中、観客が一気に前方へと詰め寄る逆ダイブの応酬を何度も起こす全力投球ぶりを見せ、その振り切りぶりを見せつけるかのように“俺達を見ろ”と堂々と歌い上げる様に思わず感服する思いだった。

アンコールに応えてメンバーが登場すると、智が「今日は本当にありがとうございました。毎回のことなんだけど、ライヴをやると俺たちはみんなから力をもらえるというか、俺たちがそうしてるってみんな言ってくれるけど、俺らも全く同じ気持ちなので、マウント取ってもらって構わないです(笑)。それくらい大きな存在です、ありがとう。いろんな想いと想い出が詰まった“サンナナイチ”なんで、最後はこの曲を聴いてもらおうと思います」と伝え、「DIGEST -Independent Blue Film-」を披露。「最高の夜をありがとう!」という一言でエンディングを飾り、恒例のTohyaによる「お疲れヤンマー!」のコールアンドレスポンスで幕を閉じた。


すべての楽曲を演奏し終わったそこへEND SEとして流れ出したのが、最新アルバム「THESEUS」収録の「Mary Celeste」。これは、想い出に浸るようにしてお祝いした記念日から、“今”へと時を進めていくシグナルのようにも感じられた。

早速4月14日・15日にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催されるワンマンライヴ<Pop Seirḗn & Loud Poseidōn>、5月・6月にはvistlipが主催する<[Party On]-Pizza Slices->と題したメンバーそれぞれに縁のあるバンドとの対バンライヴが控えている。なお、ライヴ中に告知を担当した海の言葉をヒントにすると、<Pop Seirḗn & Loud Poseidōn>は“ギリシャ神話”に登場する“海”の怪物 / 神がタイトルに据えられており、アルバム「THESEUS」を彷彿とさせる部分がポイント。さらに対バンイベントの<Party On>に関しては、東名阪全6公演にそれぞれ出演する3バンドの演奏時間(60分 / 60分 / 30分)を一辺の長さとして例えると二等辺三角形となり、一切れのピザを連想させることが“-Pizza Slices-”の由来になっているという。ここに付け加えるならば、ピザに乗っている具材のように個性的なバンド同士の共演がどんな味を生み出すのか、楽しみにしていたいところだ。

他にも、既に発表されている18周年の結成記念日を祝う七夕のZepp DiverCity公演も含めてトピックスが目白押しである。これからもvistlipは、バンドにとって必要な絆を強く築き上げながら進化を遂げていくことだろう。


文◎平井綾子
写真◎Lestat C&M Project

セットリスト

<vistlip ONE MAN LIVE [20250317]>
2025年3月17日(月)Spotify O-WEST

SE
1. EDY
2. the surface
3. flash back blanky
4. Sara
5. FIVE BARKIN ANIMALS
6. drop note.
7. EGOIST
8. alo[n]e
9. BLACK-TAIL
10. Moon Light Snow Rabbits
11. アンサンブル
12. 音色 -melody line-
13. Legacy
14. Dead Cherry
15. BGM 「METAFICTION」
16. 偽善MASTER
17. LION HEART
18. 彩

EN. DIGEST

ライブ情報

■<vistlip ONE MAN LIVE[Pop Seirḗn & Loud Poseidōn]>
2025年4月14日(月)東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
2025年4月15日(火)東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
チケット一般発売:2025年3月20日(木・祝)10:00〜

■<vistlip presents[Party On]-Pizza Slices->
2025年5月14日(水)東京・Spotify O-WEST w/ダウト・グラビティ
2025年5月15日(木)東京・Spotify O-WEST w/ダウト・グラビティ
2025年6月3日(火)愛知・名古屋 ElectricLadyLand w/零[Hz]・DEXCORE
2025年6月4日(水)愛知・名古屋 ElectricLadyLand w/零[Hz]・DEXCORE
2025年6月7日(土)大阪・ESAKA MUSE w/RAZOR・MAMA.
2025年6月8日(日)大阪・ESAKA MUSE w/RAZOR・MAMA.
[V.I.P. LiSTチケット先行予約受付]
受付期間:2025年3月15日(土)12:00~2025年3月23日(日)23:59
詳細・受付URL:https://www.vistlip.net/posts/pages/evkyur 

[MEMBERS LiSTチケット先行予約受付]
受付期間:2025年4月7日(月)18:00~2025年4月15日(火)23:59
詳細・受付URL:https://www.vistlip.com/posts/pages/gxfhdr 
[イープラス プレオーダー]
受付期間:2025年4月7日(月)18:00〜2025年4月15日(火)23:59
受付URL:https://eplus.jp/vistlip/
[チケット一般発売]2025年4月26日(土)10:00〜

※以下公演の詳細は後日発表※
■2025年6月16日(月)東京・Spotify O-WEST
■2025年7月7日(月)東京・Zepp DiverCity -vistlip 18th Anniversary ONE MAN LIVE-

この記事をポスト

この記事の関連情報

TREND BOX

編集部おすすめ