【ライブレポート】Crossfaith主催フェス<HYPER PLANET 2025>前編「ボーダーレスで自由な遊び場」

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■【NOVA STAGE / Jin Dogg】



「30分、殺す気でかかってこい!」──DJとともに文字にすることが憚られる物騒な言葉を使って、観客を煽りたおしながら、「ボケ死ね (Remix)」をはじめ、感情を剥き出しにしたリリックをロウなビートに乗せ、大阪出身の韓国人ラッパーJin Doggはフロアをバウンスさせていった。

ひょっとしたらアウェイかも!? そんな思いをMCに滲ませながら、ハードコアバンド顔負けのアグレッシヴなパフォーマンスは、ラウドロックと通底するところがあるのだろう。ラウドロックファン達の好リアクションに「めっちゃいい感じ。何も言うことはないくらい完璧です!」と気をよくしたDoggは、それならと「ロック畑の人達と大暴れしたい。ラッパーだけど、お邪魔してもいいですか?」と言い、「Tom Cruise」からリフティング、ウォールオブデス、モッシュ、サークルピットを観客に求め、ラウドロックのマナーを巧みに自家薬籠中の物としながら、さらにフロアを掻きまわす。


「ヒップホップも負けてないでしょ? めっちゃがんばってます。応援してください(笑)」──軽口を叩きながら、Jin Doggが渾身のパフォーマンスを繰り広げていたことは、「ゲロ吐きそう。でも、ゲロ吐きそうにならないと、本物のライブとは言えないでしょう」という一言からも伝わるはずだ。

そんな前半戦から一転、後半戦は「ここからは本人と一緒に歌えるカラオケだと思ってください。デュエットしてくれる人、どれだけいますか?」と、バラードと言える「雨の日の道玄坂」やチルなラップナンバー「MOGURA -裸足のままで-」も披露して、観客のシンガロングとともにアグレッシヴなだけじゃないメロウな魅力もアピールしてみせる。



そんなふうに硬軟使い分けながら作り上げた一体感をさらに大きなものにしたのが、Koshy、Young Cocoら、盟友達と作り、千葉雄喜がヒットさせた2024年の話題曲「チーム友達 (REMIX)」。満を持して、最後の最後に披露したこのアンセミックなラップナンバーを、ここにいる誰もが待っていた。


「一緒に歌え!」──Jin Doggに促されるまでもなく、“俺たち何?え?”というJin Doggのコールに応え、観客全員が上げた“チーム友達!”というレスポンスがNOVA STAGEに響き渡った。

文◎山口智男
写真◎SHOTARO(@shot.row)


Jin Dogg セットリスト

01. ボケ死ね (Remix)
02. PSYCHO
03. 黙 (SHUT UP)
04. Tom Cruise
05. 糞 (FUCK YOU)
06. ベルセルク
07. PRADA (feat. DADA)
08. Blue
09. 雨の日の道玄坂
10. MOGURA -裸足のままで-
11. 街風
12. チーム友達 (REMIX)


   ◆   ◆   ◆



■【HYPER STAGE / SiM】



持ち時間30分というシステムはいい。どのバンドも各々の一番強い部分をギュッと絞って出してくる。「Blah Blah Blah」「Amy」「The Rumbling」「KiLLiNG ME」「f.a.i.t.h」……いや、もうベスト盤じゃん。そこに新作からの人気曲「DO THE DANCE」が入ってくる。しかも時間がタイトだからこそ、一番言いたいことを短く詰め込んで、初期衝動感、バンドの基礎体力で一気にぶっ放す。だからこそ、バンドの実力がよりくっきりと見えてくるのだ。




もちろん、観ている側も一点集中で暴れることができる。矢継ぎ早に楽曲が放り込まれた前半、「TxHxC」でMAH(Vo)がサークルピットを煽り、フロアに左回りの渦が生まれる流れは非常に小気味よかった。

唯一のMCでは、「パーネット、開催おめでとう」とMAHが一言。ちなみに、パーネットとはHYPER PLANETの略称、のようだ。MAHはCrossfaithのメンバーから「自分らにしかできないフェスをやろうと思ってるんですよね」と10年前から打ち明けられていたという。いろいろ悔しい気持ちもあったと思うけどそれをぐっとこらえて、これまで溜めに溜めた分をこの2日間で出している思う、と近くで彼らのことを見ているからこそわかるコメントにMAHの優しさが垣間見えた。


しかし、その直後、「でも、そんなのは関係ない!」と叫ぶMAH。「幕張ごとプチッと潰しにきたぜ!」と絶叫し、「The Rumbling」に入っていくのだが、演奏が始まり、スクリーンに炎が燃え盛りはじめた瞬間、「Wait wait!」と演奏を止めるボーカリスト。観客によるシンガロングは大音量のはずだったのに気に入らなかったかと思ったら、「ここでやればカッコいいと思ってたのに忘れてた」と、曲に入るときの自らの立ち位置を間違えたことを告白し、2階ステージの中央に移動し、最初から仕切り直し。笑った。



「KiLLiNG ME」では間奏で観客を座らせ、音までいったん止める。そして、MAH曰く、“生き別れた弟をステージに召喚するための魔法陣”を描くと、DJ KiLLiNG MEことCrossfaith・TeruがMAHのコスプレで登場(黒の半袖ワイシャツに赤ネクタイ、MAH風の眉毛も描いていた)。そしてTeruはギターを手にし、SiMの演奏陣とともにヘヴィリフを奏でるのだった。SHOW-HATE(G)が嬉しそうにTeruにマイクを向けてコーラスを歌わせている「KiLLiNG ME」が終わると、「うちのTeruがお世話になりました!」とCrossfaith・Koieがステージに現れ、「時間がない! 短いやつ!」とMAHに急かされてはじまった「f.a.i.t.h」で、2人のグロウル合戦を繰り広げるのだった。終始重い音で牽引しつつも、しっかりとヘヴィ・ミュージック・エンタメへと昇華したのはさすがとしか言いようがない。

文◎阿刀“DA”大志
写真◎cazrowAoki(cazrowAoki)

SiM セットリスト

1. Blah Blah Blah
2. Amy
3. TxHxC
4. The Rumbling
5. Do The Dance
6. KiLLiNG ME
7. f.a.i.t.h


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■【NOVA STAGE / ralph】



格闘マンガ『刀牙』シリーズ30周年企画で、Crossfaithとラッパー・ralphは「Gimme Danger」という曲でコラボレーション。また、両者は過去にツアーを一緒に回ったことがある間柄。そんな深い繋がりもあり、NOVA STAGEの四番手に現れたralph。

彼はドスを効かせた低音ボイスを矢継ぎ早に連射する。規則正しく、一縷の隙も見せない完璧なフロウで観客の心をこじ開け、気づけば自然と体が動く熱きステージを展開する。


中盤には「Crossfaithと一緒に回ったツアーで刺激を受けて、それを曲に出した」と伝えてくれ、「Ridin’ Mode」を披露。“Ridin”とはイギリスのスラングであり、敵地に乗り込み襲撃するという意味がある。《番狂せ喰らわす その繰り返し》というリリックには虎視眈々と獲物を狙う獰猛性を感じさせる。そのエッジーな感情にロックファンも激しく共鳴したのだろうか、場は過熱する一方である。後半の「Get Back」では観客全員が飛び跳ね、「DOSHABURI」においてはシンガロングを巻き起こすなど、ステージとフロアの境界線が崩壊する盛り上がりを記録。


宗教がかったトラックを配したラスト曲「Selfish」は、最初こそ聴き入る人たちが多かったけれど、前のめりのラップにフロア全体が異様な活気を帯びてフィナーレを迎えたのだ。


昔話をするつもりはないが、00年代前後はバンドとヒップホップアーティストが対バンするイベントがたくさんあった。その意味でNOVA STAGEに出演したJin Dogg、ralphという2組のラッパー、AREA BLACK HALLでフロアを沸かせ続けたDJ陣が出演した本イベントは、素晴らしい音楽やカルチャーを教えてくれる最高の遊び場と言っていい。お世辞抜きでかっこ良かった。

文◎荒金良介
写真◎SHOTARO(@shot.row)

ralph セットリスト

01. Intro
02. Zone
03. Piece of cake
04. Assassin
05. Roll Up
06. Back Seat
07. ALI BABA REMIX
08. Ridin’ Mode
09. Get Back
10. Get Back (Double Clapperz Remix)
11. Hougou
12. DOSHABURI Remix
13. Selfish


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