【和楽器バンドインタビューvol.7】町屋「貴重な機会で、すごい経験値になった」

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◼︎芸術ってそれだけじゃないだろう

──一旦アルバムに話戻して、リレコーディング曲についても聞きたいです。

町屋:リレコーディングはね、「細雪(Re-Recording)」だけ別物なんですよ。「細雪」は、原曲の段階で僕のアレンジもディレクションも全部入っていて、フルオーケストラを生で録っているから、もう出来上がりきっている豪華絢爛な音源なんですよね。でも楽曲投票では一位だったので、「これをどういう違いで聴かせたらいいのか」というところでアレンジの方向性はギリギリまで悩みましたね。ここでリレコーディングして何ができるかなと考えた時に、逆にカルテットっていう小さな編成の中で少しだけ音数を減らしたりして、日本人の持つ“侘び寂び”の感性の方向に振り切る「細雪」を作ったら、メロディと歌詞の良さがより出てくるんじゃないかなと思って。今回はそういう方向で勝負させていただきました。

──「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」「千本桜(Re-Recording)」「華火(Re-Recording)」あたりは、音が格段によくなりましたね。

町屋:「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」はね、ギターのフレーズもかなり変えましたね。少しボカロの原曲に寄せました。あの曲ってバチバチのEDMの中に和風のエッセンスがちょっと歌詞として入ってるからいいと思ってるんですよ。和楽器バンドで元々出したバージョンって和に寄りすぎて、ちょっと原曲を崩しすぎてるなって思ってたんで、そこを修正できたのはとてもよかったですね。 「華火(Re-Recording)」は元々作りたかったものに近づけたって感じです。元々のデモはこういう感じだったんですけど、当時のディレクターに「もっとギターガンガン鳴らした方がいいから、ギター足して」と言われて前回の「華火」になったんですけど、 僕は和楽器食っちゃうから、ギター足して厚くしていくのがあんまり好きじゃないんですよ。そこをある程度抜き差しして、だいぶ聴こえ方変わったと思うんですけど、元々聴かせたかったのはこの「華火(Re-Recording)」ですね。



──音が良くなったのは、今回新たに取り入れた工夫などもあるのでしょうか。

町屋:今回新たに導入した手法というものはないです。最近のノウハウで作ったっていう感じですね。『TOKYO SINGING』以降、エンジニアさんやその周辺のチームワークも含めて、今の方向性にガチっと決まりましたね。

──「起死回生(Re-Recording)」「雨のち感情論(Re-Recording)」あたりはいかがでしたか?

町屋:この辺はフレーズとかもみんなほとんど変わってないんで、純粋に録り方の違いを楽しんで欲しいです。マイキングとか録音環境とミックスのバランスの違いで、「ここまで音が良くなるんですよ」っていう提示でもありますね。

──ユニバーサルミュージック移籍後の曲に関しては、リマスタリングを。

町屋:毎回アルバムに合わせて、EQとか音の左右の広がり、音圧などを、各曲の前後の曲間をみて決めていってるんですけど、今回もリレコーディングの6曲と新曲2曲とを中心に、流れで聴いて違和感なく聴けるようにリマスタリングしています。

──流れで聴いてこそ意味のあるベストアルバムでもありますもんね。

町屋:我々の世代は、アルバム1枚をゆっくり時間をかけて楽しむってよくやってきたことだけど、今は音楽も全部短くて早くて、移り変わりも激しいじゃないですか。そんな時代だからこそ、腰を据えてゆっくりアルバム1枚聴くとか、音楽をじっくり味わって聴くとかがすごい大事なことだと思っていて。音楽を聴きながら文庫読むとか、ダメだと思うんです。“ながら”はどっちにも良くないので、本読むときは無言で本だけを、音楽聴く時だけは目を閉じて音楽だけを聴くように心がけてます。そうした方が、“足りない足りない”ループにならないと思うんですよね。ショートコンテンツばかりをたくさん食べすぎると、どんどんもっともっと刺激物を求めるようになってしまう。でも、「芸術ってそれだけじゃないだろう」っていう思いが僕の中にあって。

──今回はまさに、作品としてまとまっているベストアルバムなので、じっくり味わって聴いて欲しいですよね。

町屋:そうなんです。最後に出すのがベストアルバムと言われたら、がっかりしてしまう人もいると思うんです。僕もベストアルバムとライブアルバムは、本当にいいものじゃなきゃいけないと思っていますし。でも今回は、いいものを作れた。今の和楽器バンドの音で18曲、10年の軌跡を辿る作品になっています。もちろん曲順で聴いて欲しくはあるんですけど、例えば激しいのが好きな人だったら「Ignite」や「日輪」から聴くのもありだし、ポップスが好きな人だったら「Starlight」や「ブルーデイジー」から聴くのもいいと思いますし。

──和楽器バンドは、本当にいろんなテイストの曲があるんですよね。

町屋:振り返って今思うのは、良くも悪くもジャンルが多彩だということですね。多彩ということはターゲティングできていないということでもあるんですけど、その分救える人もいると思っていて。例えば「Starlight」「ブルーデイジー」みたいな曲がなかったら、ロック好きな人にしか刺さんなかったと思うんですよ。でもそこで「うちはポップスもありますよ」ってアピールできた。本当にいろんな曲があるから、自分の好きな和楽器バンドプレイリストをみんなそれぞれ作ってくれたら嬉しいですね。楽曲の数が多くてジャンルが幅広いバンドは、系統ごとにまとめて聴くのもありかな。



──これを機に、「八奏絵巻」に盛り込まれている曲を探して過去曲を聴き直すとかも面白いですよね。

町屋:そう、ディグってもらえるっていう状況を作るのも大事だと思ってて。我々の世代までって、アーティストをディグること自体もものすごく楽しかったと思うんですよ。インタビューを読んで、「あのアーティストが好きなのか」「このアーティストってあの人のエッセンスになってるんだ。だったら聴いてみよう」と洋楽を聴き始めたり。で、「ピストルズは僕には理解できない。ランシドならまだ理解できる」「ザッパは難しいけど、ザッパが影響受けたのは何だったんだろう」とか。そのディグも音楽の楽しさだと思うんですけど、最近もうみんなディグんないじゃないですか。

──確かに音楽の聴き方は変わってきていますね。

町屋:僕自身、全然知らないアーティストの曲を聴いていいなと思ったら、その人のインタビューやトラックメーカーさんとか関連してる人の音楽もどんどんディグっていくっていうことをしてて。そっちの方が僕は音楽の聴き方としては豊かだと思う。でも流れとか、システムの利便性には勝てなくて。音楽産業自体が今は移り変わりの激しい配信ベースの上に成り立ってるけど、どうしても音楽を消耗品にしたくないって思っちゃうんですよ。確かに、新しいものをどんどん聴けていろんなジャンルの音楽を自分の中に取り入れることができるのは、昔はできなかったことだから恵まれてていいなと思うんですけどね。でも、1枚を深く掘り下げるとか、1アーティストを深く掘り下げるとかって、それはそれですごく楽しいことなんで、今の若い子たちのにそういう聴き方もあるんだよっていうのを知ってもらえたら嬉しいです。

──このベストアルバムも、そういう風に楽しんでもらいたいですね。最後に、そのベストアルバムのタイトル『THANKS』にかけて、ゆう子さんへの感謝のメッセージをいただけますか。

町屋:和楽器バンドに僕を誘ってもらったことに感謝です。ゆう子と出会った時にはもうこの企画が進行していて、最後の「ギター1人欲しい。まっちーお願いします」の一言がなければ僕も関わっていなかったし、和楽器バンドも多分ここまで大きくなってなかったでしょうね。 和楽器バンドはメンバー同士の偶発性がエンジンになったと思うんですけど、そのエンジンの元は何かって言ったら、やっぱり2012年のゆう子の求心力。その時のノリに乗った彼女が声をかけてくれたことには今でも感謝してますね。入ってなかったら何やってたんだろうなってよく最近考えるんですよ。

──町屋さんとゆう子さんは、和楽器バンドの音楽の要だったと思います。

町屋:あとは、音楽的に僕のごそっと欠けてる部分を彼女が持っていて、彼女のごそっと欠けてる部分は僕が持ってたんで、 そういう意味ではお互い持ってないものを埋められたというのもありますね。音楽的な会話も1番できるかな。その辺がゆう子で良かったと思う理由です。

取材・文◎服部容子

『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』

2024年10月9日(水)発売
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15508
CD購入:https://wgb.lnk.to/2024_al_cd
配信リンク:https://wgb.lnk.to/thanks_digital

◆商品形態
初回限定LIVE盤(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回限定Document盤(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
CD Only盤(2CD)税込¥4,290/UMCK-1778

◆収録曲(全18曲)
01. 六兆年と一夜物語(Re-Recording)
02. 千本桜(Re-Recording) ※TBS系バラエティ『ランク王国』エンディングテーマ
03. 華火(Re-Recording)
04. 起死回生(Re-Recording) ※テレビ東京系リオ五輪中継テーマソング
05. 雨のち感情論(Re-Recording)
06. 細雪(Re-Recording)※映画『恋のしずく』主題歌/テレビアニメ『京都寺町三条のホームズ』テーマソング
07. Ignite(Remastered 2024)
08. 情景エフェクター(Remastered 2024)
09. Singin’ for... (Remastered 2024)
10. 月下美人(Remastered 2024) ※NHK「みんなのうた」2020年10月・11月度放送曲
11. Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE (Remastered 2024)
12. 日輪(Remastered 2024)
13. 生命のアリア(Remastered 2024) ※TVアニメ「MARS RED」オープニングテーマ
14. Starlight(I vs I ver.)(Remastered 2024) ※フジテレビ系⽉9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌  
15. ブルーデイジー (Remastered 2024)
16. The Beast(Remastered 2024) ※アニメ『範馬刃牙』2期オープニングテーマ
17. GIFT(新曲)
18. 八奏絵巻(新曲)

◆各形態収録詳細
【初回限定LIVE盤】(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.A 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
Blu-ray:10th Anniversary Best Live Selection
※初商品化となるライブ映像を含む、10周年のライブから厳選された楽曲を収録
収録曲
1. 千本桜 from 2014.1.31 at clubasia   
2. 戦-ikusa- from 2015.5.23 METROCK2015  ※初商品化!
3. 反撃の刃 from 2015.9.10 NHK Eテレ 「Rの法則」  ※初商品化!
4. 起死回生from 2016.8.13 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016  ※初商品化!
5. 雨のち感情論 from 2017.9.13 NHK 「シブヤノオト」  ※初商品化!
6. 千本桜 from 2018.9.22 イナズマロックフェス2018 ※初商品化!
7. 暁ノ糸 from 2019.11.23 和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT〜新章〜 FINAL
8. 儚くも美しいのは from 2020.2.16 Premium Symphonic Night Vol.2〜ライブ&オーケストラ〜 in 大阪城ホール
9. Ignite from 2020.8.16 真夏の大新年会2020 横浜アリーナ〜天球の架け橋〜  
10. Starlight from 2021.5.14 NHK 「SONGS OF TOKYO」 ※初商品化!
11. 吉原ラメント from 2022.1.9和楽器バンド大新年会2022 日本武道館〜八奏見聞録〜
12. 生命のアリアfrom 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I  ※初映像化!!
13. 細雪 from 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I  ※初映像化!!
14. The Beast from 2024.1.07和楽器バンド大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜

【初回限定Document盤】(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.B 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
DVD:本作品レコーディングのBEHIND THE SCENEを収録したドキュメンタリー映像

【CD Only盤】(2CD)税込¥3,850/UMCK-1778
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.C 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
CD DISC2: このアルバムのためにレコーディングされた新曲を含む全8曲のInstrumental をDisc 2に収録
※Instrumental収録はCD Only盤のみ

◆チェーンオリジナル特典
・UNIVERSAL MUSIC STORE:B5クリアカード(絵柄A)
・Amazon.co.jp:B5クリアカード(絵柄B)
・楽天:B5クリアカード(絵柄C)
・TSUTAYA:B5クリアカード(絵柄D)
・タワーレコード:B5クリアカード(絵柄E)
・HMV:B5クリアカード(絵柄F)
・アニメイト:B5クリアカード(絵柄G)
・その他一般店共通:B5クリアカード(絵柄H)

LIVE Blu-ray『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』​

2024年10月9日(水)発売
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15545
購入:https://wgb.lnk.to/2024_bd_dvd

■初回限定盤 Blu-ray(本編 DVD 付き)
¥12,100(税込) / UMXK-9042
ライブCD (2枚組み)+60P フォトブック

■通常盤Blu-ray(本編DVD付き)
¥8,800(税込)/ UMXK-1117

『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』
[Blu-ray/DVD収録内容]※Blu-ray/DVDは、内容共通
Overture〜八重ノ翼〜
愛に誉れ
雨のち感情論
天樂
フォニイ
いーあるふぁんくらぶ
月下美人
細雪
雪よ舞い散れ其方に向けて
生命のアリア
虚夢
破邪の儀

吉原ラメント
オキノタユウ
The Beast
ドラム和太鼓バトル~対決武闘館~
ベノム
星の如く
暁ノ糸
<Encore>
BRAVE
千本桜

※特典映像
BEHIND THE SCENE of 和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜

<和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS 〜八奏ノ音〜>

11/22(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11/23(土祝) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11/28(木) 大阪・オリックス劇場 ※SOLD OUT
12/8(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール ※SOLD OUT
12/10(火) 東京・東京ガーデンシアター

【チケット料金】
VIP指定席:前売 ¥15,000 当日 ¥16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き)  ※SOLD OUT
VIP着席指定席:前売 ¥15,000 当日 ¥16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き)  ※SOLD OUT
一般指定席/着席指定席:前売 ¥10,000 当日 ¥11,000(税込)

【企画/制作】イグナイトマネージメント/LIFE

ツアー詳細はこちら:https://wagakkiband.com/contents/765648


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