【舞台裏インタビュー】＜山人音楽祭2024＞G-FREAK FACTORY、DAY 1終幕「答えや収穫はちゃんとあった」

レッドとブルーの照明が交錯するサイケデリックな世界のステージ。Leoのドラムと原田のギター、吉橋のベースフレーズが絡みながら、次第に彩り豊かなサウンドがアリーナの空間を埋めつくす。＜山人音楽祭 2024＞のDAY 1のラストを締めくくるのは、もちろんG-FREAK FACTORYだ。

しかしステージに現われた茂木の表情はけわしい。この＜山人音楽祭＞への責任感や様々なものを背負っているためか。曲を重ねながらライブは熱を帯びていっても、真剣味を帯びているが、それ以上にけわしさのほうがめだっている。その表情がゆるやかになったのは、彼自身がある話をしてからだった。

それは今日、この会場で痴漢が5件発生したこと。怒りと悔しさを吐露し、「俺らの力も音楽も足りなかったのか」とも。その話を受けて、オーディエンスのムード全体は変わっていくことに。そして「Too oLD To KNoW」でフロアから起こる歌声。ライブ後半では笑顔をこぼす瞬間もあった。

「信じることを貫いてきた日。これにて大成功とさせてください。ローカルバンドの大傑作、群馬G-FREAK FACTORYでした」

本編ラストは、オーディエンスに、そして自分たち自身に向け、こんな言葉も放った。果たして、ライブ中に見せた様々な表情の裏側にはどんな想いがあったのか。ライブ直後の茂木に話を訊いた。

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──ステージが始まったとき、嬉しさというよりけわしい表情が印象に残っています。ライブ直前はどんなマインドで、楽屋からステージに向かいました？

茂木：いわゆる横綱たちを、なんでこんなに集めちゃったんだろうなという後悔（笑）。

──まず、そこですか？

茂木：そう。この後に俺たちがライブをやるってどういうこと!?という。そんな恐ろしさと重圧はやっぱりあって。あとは、重たいバトンを自らいっぱい作ったことへの後悔と（笑）。メンバーも、いわずもがな、それを感じていたテンションで。重たくて、鋭くて、しっかりしたバトンを、今日のバンドマンたちが繋いで来てくれた。それを落としちゃいけないし、ヌルっと入っちゃいけないなって。そういう空気がメンバーの間にすごくあったなと。またそれは、久しくなかったことだなと。

──他のフェスに出演したときとは、バックステージでのメンバーの雰囲気も全然違ったんですか？

茂木：全然違った。いつもが手を抜いているわけじゃないけど、雰囲気とか色とかが、やっぱり今日は違っていて。それに今日、痴漢が起こったというネガティブな要素もあって。ライブのステージで言うことじゃないかもしれないけど、主催者として俺の口から言わないと。明日がまた同じことになるな、と思ったんです。今日はライブを壊してでも言いたいって気持ちになった。メンバーにもそのことは伝えて、「もしライブ中にそういう痴漢行為を発見したら、演奏を止めるからな」って。メンバーみんなも「分かった」と。

──ライブを思いっきり楽しもうって雰囲気でもなかったんですか？

茂木：去年の＜山人音楽祭＞が終わってから、ずーっと今年の＜山人音楽祭＞のことをメンバーもスタッフたちも考えて、ようやく今日を迎えられた。ところが、ほんの数人がそういうことして。そういう目的で来るヤツなんていらねえのは当然だし、ナメられてんなって思ったっすね、正直。G-FREAK FACTORYだけじゃなくて、俺らの仲間全員を侮辱してるんだなって思った。どうやったら解消できるんだろうって思いを抱えたまんま、俺らは今日、ライブに入っていったんです（苦笑）。

──怒りと悔しさと？

茂木：そう。すごいイビツなまま入っていったんです、今日。目の前にお客さんがこんなにいるのに、この中に犯人がいるんだろ、どうせって。すごい自分もピュアな気持ちでステージに臨めなかった。

──何千人のオーディエンスが、茂木さんの話に賛同して、G-FREAK FACTORYの曲を歌う場面もありました。そういうことで茂木さんの気持ちが、ようやくほぐれていったんですか？

茂木：やっと、ほぐれていきました。ライブ中盤過ぎてからですよね。だから悔しかったですね。高木ブーさんがケガで明日はいらっしゃれないということになって、明日はその時間を埋めるどころか、スイッチを入れて、仲間の力を借りてもっといいものにしてやろうって、すごいグルーヴが生まれていたんです。ブーさんがいらっしゃることができなくなってしまったけど、そのネガティブ要素をエネルギーに変えて、もっといいものになるってのが、今年のテーマになると思っていたんです。

──コロナ禍も乗り越えて、今がある＜山人音楽祭＞だから？

茂木：そう。ところが、まさかライブ中のフロアでそんなことが起こっていたのかと。足りねえんだな、俺らはと。いろんな感情が渦巻いていました。もちろん初日を迎えられた嬉しさも感謝もありますけど、悔しさと怒りがそれを超えちゃいましたね（苦笑）。


──でも明るい話題をすると、ライブのMCでも言っていたように、明日、高木ブーさんが来れなくなったため、その助っ人として茂木さんの相棒とも言えるTOSHI-LOW (BRAHMAN / OAU)さんが代打を務めてくれます。

茂木：ええ、名乗りを上げてくれて。頭が上がらないというか……。

──本当？ TOSHI-LOWさんに茂木さんが頭を下げている場面は、ほぼ見たことありませんけど（笑）。

茂木：あっはっは（笑）。手練れのバンドマンたちが、この2日間で集まってくれて。しかも今日と明日のメンツでは、同じ手練れでもトーンが違うなと思っています。今日も強力だったし、明日は高木ブーさんにリスペクトをしっかり持って、乗り越えられる人たちがたくさんいるなって心強い。偶然にも俺らはついているんじゃないかって、逆にスイッチが入っちゃっています。

──今日、起こってしまったことが消えるわけではないですけど、明日のライブはピュアに楽しむ気持ちで臨みたいし、大成功にさせたいですよね。

茂木：いらぬストレスを抱えたまま臨みたくないし。そのために今日、ちゃんとライブで言わないとなと思ったんです。そうすれば、お客さん一人ひとりが目を光らせてくれるから。その力を借りなきゃ無理だなって。

──だから明日は信頼できるヤーマンたちが、このアリーナ会場を埋めつくすだろうし。

茂木：うん、そう信じている。

──そして強力な仲間たちがステージに集うってことですね。

茂木：そう。なるべくしてなったんだなと思っています。


──では、本日の＜山人音楽祭 2024＞のDAY 1の総括を最後にお願いします。

茂木：やっぱり、手練れだらけのバンドマンと先輩ばっかりだったな。さらに2019年と同じように妙義ステージが帰ってきて、探り探りの始まり方ではあるんでしょうが、そのステージの一番手に上州弾語組合が立ってくれたことは大きい。弾き語りというものに全く精通していなくて、興味を持っていなかった俺に、弾き語りの良さを教えてくれたのは、実はTOSHI-LOWで。

──本当に頭が上がらないですね？

茂木：そうそう（笑）。で、地元のシンガーソングライターに目を向けたら、すごくスキルや想いがある人たちが周りにいて。ところがシンガーソングライターは、なぜか一人でやっているのが好きな人たちが多いんです。徒党を組むのが苦手だったりする。だから上州弾語組合を作って、みんなでやれたらなってのを、コロナ禍に始めたんです。俺は弾き語りはペーペーだけど、いろんな人を集めるからと。だから俺に弾き語りのテクニックと根性を教えてくれないかって。それで活動が始まったのが上州弾語組合。そういう人たちが妙義ステージの一音目を出してくれたことは、俺はすごく嬉しくて。コロナ禍がくれたひとつが、妙義ステージの一音目にあった。こじつけではないストーリーがそこにあったから。しいたげられた3年間だったけど、答えや収穫はちゃんとあったんだよと。G-FREAK FACTORYと上州弾語組合だけなんですよ、この2日間とも出るのは。

──明日も楽しみですね。

茂木：なんの心配もいらないバンドマンたちが赤城ステージにも榛名ステージにも揃っていますから。でも明日はね、逆にダレないか心配なぐらいです（笑）。

取材・文◎長谷川幸信
写真◎野村雄治
ライブ写真◎HayachiN