【俺の楽器・私の愛機】1661「バンドを始めるにあたり古道具屋で購入した謎のプレベ(タイプ)」

ポスト

【Jagard ブレべタイプ】(福岡→東京 ベニテングタケ夫 45歳)


このベースを手に入れたのは、福岡で大学生をしていた20年以上前の話。音楽好きな友人2人(筆者を入れて合計3人)とダラダラとお酒を楽しんでいたのがきっかけです。音楽好きの若者が3人以上でお酒を飲むと誰かが「バンドやろうぜ」なんて言い出すもの。我々もその例にもれず、酔った勢いでバンドの結成しました。

そこにいたのは全員ギター経験者だったのですが、全員なんとなく自分がギターを弾く気はなく(オルタナティブロックに惹かれる、引っ込み思案な若者3人)、私はベース、残りの2人はドラムを希望。じゃんけんで負けた方がギターという独特なパートの決め方でバンドは転がり始めました。

前述のとおり、ギターは持っていたのですが、ベースは未経験。とりあえずベースを手に入れる必要があります。そこで向かった先は楽器店ではなく、近所の古道具屋さんでした。現代のリサイクルショップのような明るいお店ではなく、薄暗い店内にガラスの大仰な灰皿や木彫りの象の置物など、ガラクタが寄り集まっているようなお店です。

古道具屋には必ずといってよいほど楽器が置いてあるもの。きっとベースが安く手に入るだろうという思惑でした。何せベース初心者ですから音へのこだわりも特になく、なおかつ学生なのでお金も持っておりません。とりあえずバンドを始めるため必要最低限のベースを手に入れたいと思っていたワケです。

そこで見かけたのが、Jagardという謎のメーカーのプレベタイプ(当時はジャズべ・ブレべの違いすら知らなかった)。値段は確か5,000円(90年代らしい合皮のケース付き)だったと思います。「色も黒で無難だし、まあコレにしよう」と試奏もせずに購入しました。今思い返すに、試奏しようにもお店にはまともなアンプが無かったはずです。

飲み会から1週間ほどが経過して、スタジオデビュー。福岡市内では有名なスタジオ「ヒーコン」のCスタ(一番狭くリーズナブルな部屋)でした。つないだアンプはアンペグのSVT Proだったのかな。冷蔵庫ほどの巨大なベースアンプに愛機をつなぎ、ドーンと鳴らしたときの衝撃は今でも鮮明に覚えています。また、ドラム・ベース・ギターと複数人で音を鳴らす楽しさを知った瞬間でもありました。

自意識が過剰すぎる若者3人は既存の曲のコピーをするでもなく、適当に音を出していました。「蝉(福岡が誇る伝説的バンド)みたいやん」など、あまりにも自信過剰な自画自賛を繰り返しながら練習に励みます。活動していた数年間に複数回のライブ・ギターボーカルの増員・メンバーの脱退などバンドらしいことを経験しました。

そんなバンド活動前半を支えてくれたのが、このベースです。

ダラダラとした日々を過ごしている間にも時間は流れ続けます。大学を中退しいち早く社会人となるもの、大学院へと進学したもの、アメリカへと留学を決めたものなど、メンバーはそれぞれの道を歩みだし、いつの間にかバンドは立ち消えることになりました。今となってはなにもかもが淡く、モヤモヤしつつ、それでもキラキラしていた青春の日々です。

そんな青い日々に手に入れたJagardのプレベタイプですが、サドルをどれだけ下げても弦高が高い(12フレットで7mmくらい)という問題を抱えていました。一方で、ネックは比較的真っすぐで問題があるようには見えません。

それまでベースを弾いたことがなく、周りにベース経験者もいない状態。ハイフレットは渾身の力で弦を押さえるモノだと納得し、日々の練習に励んでおりました。情報の少ない2000年代の若者の、若気の至りです。

どこかで弦高が高すぎることに気づきそうなモノなのですが、なかなかそうはいきません。次に購入したギブソンのサンダーバード(大奮発しました)はネックが順ぞりしやすく、ブリッジの構造上弦高を下げにくかったため、12フレットで6mmほどは当たり前。「ベースの弦高って高いよなぁ…」と思いながら渾身の力で演奏する日々はしばらく続きます。

そんなこんなで日々が過ぎ、時は現代に舞い戻ります。インターネットで何でもすぐに調べられる時代。ふと「ベース 弦高」なんてことを調べてみると、12フレットで3mmほどが適正と書かれているではありませんか…。「弦高が7mmもあれば、そりゃ弾きにくいぜ!」とさらに調査を進めると、サドルをどれだけ下げても弦高が下がらない場合、ネックの取り付け角度に問題があるかもという情報をつかみました(インターネットって便利ですね)。

ベースを購入して20年ほどが経過。ネック周辺をまじまじと見てみると、ネジが斜めにささってる、ネックプレートが歪んでるなどなど、いろいろと問題が見つかりました。素人目に見てもよい状態とは言えなそうです(それなりに弾いておきながら、まったく気にしていなかったことも衝撃でした…)。

とはいえ、5,000円で手に入れたベースですし、本格的なリペアショップに持ち込むほどではありません。一方で、20年以上も所有しており、それなりの思い入れもあります。自分でなんとかしようと、ダボやタイトボンドを駆使し、ネジ穴をやり直しました。最終的に、シムで微調整して、12フレットでの弦高は3mmほどを維持しております。

改造の模様は下記ブログにて紹介しています。
https://www.benitengudake.com/bass-repair-02/

当然ですが弾き心地のよさは段違い。20年ほど昔の若かった自分に「このベース、ネックの調整したら弾きやすくなるよ」と教えたい気持ちです。そんなこんなで、再びベースを楽しんでいる日々。改造に興味が出てしまい「プレベ ブリッジ 交換」などと無意識に検索しております。

一方で、ずっと気になっているのが「Jagardってどんなブランドだったの?」ということ。寺田楽器さんがJagardブランドでアコースティックギターを製造していたことはインターネット上でよく見る話です。では、プレベタイプのベースも作っていたのかと問い合わせてみたことがあるのですが、資料がなくて不明とのことでした。

ちなみに、ボディの素材はMDF。現代ではおよそ見かけないボディ材が時代を感じさせてくれます(ベース本体の質量は4.6㎏ほどと重め)。一方で、ネックはしっかりとしており、反りとは無縁。けっこうよい低音が鳴っていると思うのは気のせいではないはずです。

どなたか、Jagardのエレキギター・エレキベースに詳しい方がいれば、詳細を教えてください。

以上、私の愛機Jagardのプレベタイプの紹介でした。



   ◆   ◆   ◆

今回投下されたお話もエモい。バンド経験者であれば「うんうん」とうなづいてしまうエピソードが満載や。とはいえ、バンド結成エピソードはかなりレアケースっしょ。たいがいギタリストだらけでじゃんけんで負けた人がベースの座に就くってのが定番なのに、ギター経験者がみんな腰が引けたってのが笑える。とにかく言えるのは、このJagardもいいオーナーに出会って幸せってこと。古道具屋さんで5000円の値札が付けられているときは、手術しながらもこれだけ長寿で現役をこなすとは夢にも思っていなかったことでしょう。最高っしょ。でさ、サンダーバードの弦高はどうなりました?スルーネックだからこちらは厄介ですね。(BARKS 烏丸哲也)

★皆さんの楽器を紹介させてください

「俺の楽器・私の愛機」コーナーでは、皆さんご自慢の楽器を募集しています。BARKS楽器人編集部までガンガンお寄せください。編集部のコメントとともにご紹介させていただきますので、以下の要素をお待ちしております。

(1)投稿タイトル
 (例)必死にバイトしてやっと買った憧れのジャガー
 (例)絵を書いたら世界一かわいくなったカリンバ
(2)楽器名(ブランド・モデル名)
 (例)トラヴィス・ビーン TB-1000
 (例)自作タンバリン 手作り3号
(3)お名前 所在 年齢
 (例)練習嫌いさん 静岡県 21歳
 (例)山田太郎さん 北区赤羽市 X歳
(4)説明・自慢トーク
 ※文章量問いません。エピソード/こだわり/自慢ポイントなど、何でも構いません。パッションあふれる投稿をお待ちしております。
(5)写真
 ※最大5枚まで

●応募フォーム:https://forms.gle/KaYtg18TbwtqysmR7

◆【俺の楽器・私の愛機】まとめページ
この記事をポスト

この記事の関連情報