【ライブレポート】エンジェル、47年ぶりの来日公演でみせた全く衰えぬ眩しい現役感
1975年にデビューしたアメリカのエンジェルが、47年ぶりとなる2度目の来日公演を果たした。2020年に決まって以降、コロナ禍での二度の延期を経てようやく実現したのである。
エンジェルは全身を白いコスチュームでまとい、中性的な美しいルックスとキーボードを前面に押し出したファンタジックなハードロックサウンドが魅力であり、特にパンキー・メドウス(G)は、当時の音楽界で最もハンサムな男性の一人とみなされていたようだ。そして彼は、その"パンキー・メドウス"という職業を今も素晴らしい仕事ぶりで観客を魅了してくれた。
現在は、オリジナルメンバーであるパンキー・メドウス(G)とフランク・ディミノ(Vo)を中心に、2018年の再結成後からのメンバー、ダニー・ファロー(G)、チャーリー・カルヴ(Key)、ビリー・オリコ(Dr)、そして最新のメンバーであるトミー・カラドンナ(B)がエンジェルである。かつて在籍していたグレッグ・ジェフリア(Key)もルディ・サーゾ(B)もいないが、それを嘆くよりも今このバンドが活動してくれている事に感謝しかない。
再結成前から、パンキーとフランクのそれぞれのソロアルバムも聴いていたし、エンジェルも2019年リリースの『Risen ~華麗なる復活~』、2023年の最新アルバム『Once Upon a Time ~禁断の天使~』ともに素晴らしい出来栄えだった事や、本国のアメリカでも勢力的にツアーを行っていたので、どうにか機会があれば観たいバンドのひとつだった。
ツアー初日、バンド紹介のイントロテープが流れ、バックドロップに初期のエンジェルアートワークが映し出される。そのステージ上にメンバーが並んだ瞬間からオーラは眩しく、バックドロップのエンジェルの翼と、かがんだフロントマンのフランク・ディミノ(Vo)がまるで彼に翼があるように見えた。ドラムセットも白で統一されており、特殊なキットを使う彼らの為にプロモーターが用意していたようだ。
「On the Rocks」の冒頭から驚いたのは、まずフランクの歌唱だった。よくベテランバンドに衰え知らずと言ったりするが、彼の場合はCD音源よりも遥かに生の歌声が素晴らしい事、そしてフロントマンとしての観客を惹きつける魅力がこんなにもあったのだ、と。もちろん、パンキー・メドウスもかなりギターも弾きまくっていたし、イメージ通りの彼がそこに居るわけだけれど、これまで今のエンジェルはオリジナルメンバーが二人で、多くの人はその二人のうちのひとりであるパンキーのみが主役だと思っていたのではないだろうか?しかし、実際のライブではフランクの存在なくてはエンジェルのライブは成立しないと強く感じたし、他のメンバーも再結成後からとは思えぬほどしっかりとまとまったプレイをしていた。
ライブの内容としては、「Can You Feel It」や「Mirrors」「Wild and Hot」とクラシックアルバムから満遍なく披露され、個人的には「Cast the First Stone」や「The Fortune」のキーボードソロではチャーリー(Key)をじっと見つめていたが、きっちりとグレッグ・ジェフリアの役目を果たしていたし、「Got Love If You Want It」のベースソロからのキーボードソロも感激ものだった。ポップセンス溢れる「Don't Leave Me Lonely」、ハードな「Pressure Point」、パンキーが「一番心酔したバンドはクイーンだった」と言う通り、彼らの楽曲もまたどれもが違うバラエティに富んだものばかり。それをほぼ全曲に渡り、フランクは曲紹介とコールアンドレスポンスをしながら丁寧に進行していく。
直近2枚のアルバムからの「We Were the Wild」「It's Alright」も挟む事で彼らが現役バンドである事と、どの楽曲も観客が歌えるのは青春時代だけでなく今もエンジェルを好きで居続けていた事の証。もうひとりのギタリストであるダニー・ファローを始めバンドも大興奮でプレイしている姿にメンバーも皆、エンジェルの大ファンなのを確信した。
彼らの最大のヒット曲であるヤング・ラスカルズのカヴァー「I Ain't Gonna Eat Out My Heart Anymore」は他界した元メンバーに捧げる曲のようであったし、「Feelin' Right」でパンキーとチャーリーの掛け合いもテンション高く終盤のハイライトであった。そして1stアルバムから「Rock & Rollers」とアンコールでの「Tower」。前回47年前の初来日公演ではオープニング曲だった「Tower」が今回はアンコールで披露され、あの印象的なアルペジオ部分ではパンキーの指弾きも見せてくれた。
時代のタイミングさえ合えばグラムロックのスターダムになっていたと思うし、今もファンが求めるもの以上のものを見せる事に注力してくれているのがよくわかるステージで、夢に見た47年ぶりとなる日本公演はようやく現実のものとなった。2025年はデビュー50周年となる彼ら、スペシャルな何かがある事を期待して三度目の来日も願う。
文 ◎Sweeet Rock / Aki
写真◎Rubicon Music Official / Towy
< ANGEL ~ Once Upon A Time Japan Tour 2024 ~>
1.On the Rocks
2.Can You Feel It
3.Mirrors
4.Wild and Hot
5.Bad Time
6.Cast the First Stone
7.The Fortune
8.We were the Wild
9.Got Love If You Want It
10.Don't Leave Me Lonely
11.It's Alright
12.Pressure Point
13.I Ain't Gonna Eat Out My Heart Anymore(The Young Rascals Cover)
14.Feelin' Right
15.Rock & Rollers
16.Tower