エンジェル、47年ぶりの日本公演がいよいよスタート
2024年7月12日、東京は代官山UNITにてエンジェルのジャパン・ツアーがついに幕を開ける。本来ならば2020年4月に「43年ぶりの来日公演」として実施されるはずだったこのツアーは、長引くコロナ禍の影響により複数回にわたって延期措置となり、一時は開催自体が危ぶまれていたが、このたび結果的には「47年ぶりの来日公演」として実現することになった。
1977年の初来日時には、当時の招聘元のトラブルにより、ツアーを途中で切り上げて帰国せざるを得なくなるという悲劇に見舞われており、当時からのファンには辛い記憶も残っているかもしれないが、今回こうしてついにバンドとファン双方にとっての悲願が実現に至るわけである。
47年ぶりの来日とはいえ、バンドは当時からずっと存続してきたわけではなく、その歴史には1980年代メタル隆盛期の到来を待つことなく、一度はピリオドが打たれている。1980年代半ばには、創設メンバーのひとりだったキーボード奏者のグレッグ・ジェフリア率いるジェフリアが活躍していたが、同バンドもそもそもはエンジェル再結成プロジェクトの発展形というべきものだった。以降の紆余曲折についてはあまりに長くなるのでこの場で説明することは控えておくが、エンジェルがエンジェルとして本格復活への道を歩み始めたのは2010年代に入ってからのことで、現在はツイン・ギターの6人編成となっており、2019年には『リィズン~華麗なる復活~』、2023年には『ワンス・アポン・ア・タイム~禁断の天使~』といったアルバムを発表しながらコンスタントな活動を続けている。
6人のメンバーのうち、いわゆるオリジナル・メンバーはパンキー・メドウス(G)とフランク・ディミノ(Vo)の2人のみだが、驚くべきは、今なお彼らがデビュー当時のコンセプトを引き継ぐように白い統一感のあるコスチュームでステージに立ち、当時を思わせるメロディックかつドラマティック、そしてポップでキャッチ―な側面も持った多面的なハード・ロックを体現し続けていることだろう。筆者は昨年、『ワンス・アポン・ア・タイム~禁断の天使~』の発売に際し、ZOOMを介してパンキーに取材する機会を得たが、画面の向こうの彼はまさしくパンキー・メドウス然としたたたずまいを保ったまま、次のように語っていた。
「新作アルバムはとても気に入っている。これまで常々言ってきたことでもあるんだが、エンジェルはひとつのことにしか能のないバンドではない。ありとあらゆるタイプの音楽をやってきたし、実際、俺にはありとあらゆる音楽に好きなものがある。だから往年のアルバムはそれぞれ感触の違うものになっていたし、それは今も変わらない。このアルバムにはエンジェルのファンが好んできたはずのものすべてが詰まっていると思う」
エンジェルがデビューしたのは、ここ日本でクイーン、キッス、エアロスミスが三大人気バンドとされていた当時のことで、彼らはその3組に続くべき存在のひとつとして注目を集めていた。そして興味深いのはエンジェル解散後のパンキーにはキッス、エアロスミスに参加する可能性があったという逸話だ。こうした件についてはどこか都市伝説めいた部分も多く、なかなか確証を得難いところがあるが、筆者が話を聞いた際、パンキーはどちらについても実際に可能性があったこと、ほんの少しでもタイミングが違っていたらいずれかのバンドに加入していた可能性があることを認めていた。ただ、1970年代当時の彼が最大級の共鳴をおぼえていたのは、キッスでもエアロスミスでもなく、実はクイーンだった。彼は同インタビューの中で、次のような発言も残している。
「エンジェルを始めた当初、俺がリスペクトしていたのはクイーンだった。何よりも彼らの音楽の多様性に惹かれていたんだ。アルバム全体がすべて同じ調子で、1曲目を聴いたところですべてが想像できてしまうような作品が好きではないんだ。とにかくクイーンには心酔していたし、それ以外は“ただのハード・ロック・バンド”か“ただのポップ・バンド”だと思っていた。もちろんそれが悪いという意味ではないけどね」
これはエンジェルの音楽の多様性のあり方を裏付ける発言だといえるし、実際、その言葉に嘘がないのは彼らの作品自体が証明している。そして2024年、エンジェルがライヴ・バンドとして今なお現在進行形であり続けていることがここ日本で実証される機会が到来したというわけだ。今回は東名阪で計4回の公演が行なわれるが、近年発表の2作品からの楽曲ももちろんのこと、往年の代表曲の数々も盛り込まれたセットリストが用意されているようだ。各公演とも当日券が販売されるとのことなので、47年間にわたり喪失感をおぼえてきた方々ばかりではなく、1970年代のエンジェルを知らない世代にも、是非会場に足を運んで欲しいところだ。
文◎増田勇一
<エンジェル日本ツアー>
7月13日(土)東京・代官山UNIT
7月14日(日)名古屋・大須LEGEND HALL
7月15日(月/祝)大阪・梅田am HALL
※13日、14日、15日の各公演にはオープニング・アクトも出演
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『リィズン~華麗なる復活~』(2019年)
『ワンス・アポン・ア・タイム~禁断の天使~』(2023年)