【ライブレポート】TOMOO、日常に“何気ない眼差し”を

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TOMOOの全国ツアー<TOMOO LIVE HOUSE TOUR 2024 "Puddles">、7月10日、豊洲PITでの追加公演。開演時刻になると、TOMOOとサポートメンバーの大月文太(G)、勝矢匠(B)、幡宮航太(Key)、河村吉宏(Dr)が登場。観客の拍手に迎えられた5人が、ステージのへりに座ってお辞儀してからスタンバイするというライブのオープニングから、非常にリラックスしたものだった。

◆ライブ写真

TOMOOがピアノ弾き語りで歌い始めた1曲目は「夜明けの君へ」。凛とした歌声が響きわたる中、やがてバンドも合流し、リズムやフレーズのニュアンスをバンドメンバーと共有しながら、楽しそうに鳴らすTOMOO。次は「雨でも花火に行こうよ」とツアータイトル「Puddles」(=水たまり)にぴったりの選曲で、TOMOOの奏でるピアノの音は、跳ねる雫のようでチャーミングだ。なお、この曲から、たかはしちひろ(Cho)、稲泉りん(Cho)、吉岡悠歩(Cho)によるコーラス隊も参加。爽やかな音像が場内に広がった。


前回のツアー<TWO MOON>のファイナルでは、ストリングスやブラスを含む編成でリッチなサウンドで楽曲を奏で、時代のポップスターとしての佇まいを見せてくれたTOMOO。一方、今回は、日頃考えていることを目にした景色の中に見出して曲にすることが多いという彼女の視点、日常の切り取り方を音楽を通じて共有してもらっているような感じがあり、前ツアーとはまた違う良さがあった。また、バンドからいいプレイが出たらしっかりと拍手や歓声を送るという演者とオーディエンスの気持ちいい関係性も健在。1曲目「夜明けの君へ」の時点から熱量の高い歓声が飛んでいた。

軽やかなサウンドに手拍子が起きた「あわいに」のあとにMC。ここではTOMOOが、今回のツアーは梅雨入りとともに始まったがいつのまにか暑くなっていたと振り返り、「みんなと季節を並走してきた感がすごいです」と語った。また、「Puddles」というツアータイトルは、雨が好きではない自分なりに、雨を好きになりたいと思ってつけたタイトルだということも明かされる。そして「ライブ中、この会場は水たまりです。そこに映るものを一緒に観たり、踏み込んだり、飛び越えたり一緒にしたいと思います」と観客に呼びかけてから「夢はさめても」より演奏再開だ。「恋する10秒」ではステージ上を練り歩き、フロアにいる観客に手を振りながら歌う。


東名阪のZeppに豊洲PITと今回のツアーではライブハウスをまわったが、TOMOOはライブハウスと言われると、音楽活動を始めた頃の、年代もジャンルも様々な人たちと一緒にライブに出演するのが当たり前だった時期を思い出すという。ここで、「その人たちの独特な音楽からちょっとずつ影響をもらいながらできた曲とか、その土地土地のものに影響を受けて生まれた曲もあって。せっかくのライブハウスツアーなので、そんな曲も今日は届けたいと思います」と宣言。「初期の曲のことを“泥臭い”ってよく言うじゃないですか。確かに地面を感じる曲は多いかも」と呟きながら披露したのは「地下鉄モグラロード」だ。

その後も「shiosai」「スコール」「泳げない」と10代の頃に作り、ライブハウスでずっと歌っていたという曲を続けて披露。いずれも、忙しなくカラフルな世界から一時でも離れたいと思う心を認めてくれる曲だ。さらに「私にとって大事な雨の曲です」という言葉とともに「雨粒をつけたまま」が弾き語りで届けられる。観客は一音一句を逃さないよう、集中して静かに聴き入っている。


ドラムのリズムパターンが絶妙な「Grapefruit Moon」、ギターを筆頭にエレクトリックなサウンドを前面に出したアレンジによる「Cinderella」を経て、「今からだいぶ元気な曲をお届けしたいと思います。聴いてください。いや、受け取ってください」と「Present」が届けられた頃には、ライブはもう終盤に。「Ginger」「オセロ」でさらに会場を盛り上げたあと、TOMOOが「今日はありがとうございました。楽しんでもらえましたか?」と観客に尋ねると、拍手や歓声が返ってきた。

本編ラストのMCでは、今回のツアーは自分にとって“自然体になっていく旅”だったと振り返ったTOMOO。そして「ツアーをやることが決まって、今似合うムードや景色は何か、最初に考えて。そしたら“道端”とか、身近なイメージがいいなって思ったんですね。(中略)今の私の気分は並んで歩いてるみたいな感じ? 何気ない眼差しを共有したいなと思ったんです。人は放っておくとビルドアップを求められるけど、でも私たちに共有できるのは何気ない眼差しだよって。そんなPuddlesツアーでした。何か届いていたら嬉しいです」と自身の想いを語った。


TOMOOの言う通り、確かに今の時代には“成長しないと脱落する”といった焦燥感を抱えながら生きている人も少なくないように思う。自分自身の内面や、日常の中にある何気なくも素敵な景色に目を向ける余裕を失くしてしまいがちだからこそ、たまにはそういう時間を持てたらいいんじゃないかとTOMOOは提案したかったのではないだろうか。


本編最後の曲は「Super Ball」。〈大通りからそれて細道/この先ゆけば ただの公園〉という、このツアーをどこか象徴するような歌い出しが豊かに響く中、ダンサブルなサウンドや回るミラーボールの下、TOMOOと観客は今この瞬間の喜びを分かち合った。

「Green Days」「HONEY BOY」「POP'N ROLL MUSIC」と3曲を披露する予定だったアンコールでは、「……もう1曲やるって言ったらあり?」と急遽「ベーコンエピ」が弾き語りで披露されるという嬉しい展開。そんな場面からもツアー完走の充実感を読み取ることができた。

取材・文◎蜂須賀ちなみ
写真◎Kana Tarumi

<MTV Unplugged Presents: TOMOO Acoustic Tour 2024 "Mirrors">

9月1日(日)LINE CUBE SHIBUYA  Open 16:00 / Start 17:00
9月15日(日)大阪城音楽堂 Open 16:00 / Start 17:00

MTV Unplugged 特設サイト:https://www2.mtvjapan.com/event/unplugged/tomoo/
主催:東京:DISK GARAGE/大阪:GREENS
企画/制作 : PONYCANYON/IRORI Records、Mueri
企画・プロデュース:MTV Japan
制作:inLYNK

▼チケット料金
全席指定:7,500円(税込)
芝生立見:6,500円(税込)※大阪城音楽堂公演のみ

<TOMOO OFFICIAL FAN CLUB LIVE "Itʼs YOU!" vol.2>

2024年9月16日(月祝)Open 16:15 / Start 17:00
サンケイホールブリーゼ

主催:TOMOO FC “YOU YOU" 企画:TOMOO
制作:PONYCANYON/IRORI Records、Mueri 制作協力:inLYNK

▼チケット料金
【e+】http://eplus.jp
全席指定 6,500円(税込)
※FC会員限定の公演です。一般発売の予定はございません。

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