【速レポ】＜LuckyFes'24＞THE BACK HORN、「ここに生きているという実感を一緒に味わえたら」

2日目のGARDEN STAGEを締め括るのはTHE BACK HORN。雨予報を覆し、ここまでなんとか天気が持っていたが、いよいよ雨が降りだし、待機中の観客がレインコートを用意し始めた。

◆ライブ写真

しかし雨夜のTHE BACK HORNというのもなんだか乙である。開演時刻になると、青に染まったステージにメンバーが現れた。観客は手拍子して4人を歓迎。バンドの音出しとともに照明が明るくなると、薔薇の咲く壁に彩られたステージの全体像が明らかになる。なんてドラマティックなオープニングだろう。

そんなシーンの直後、ステージが真紅に染まり、「ブラックホールバースデイ」からライブが始まった。緊張感溢れるＡメロと開放的なサビのコントラストが印象的な楽曲だ。天に手を伸ばす山田将司（Vo）の絶唱。菅波栄純（G）による重量感のあるギターソロ。刺激的な音色で鳴る岡峰光舟（B）のベース。終盤にかけての松田晋二（Dr）の連打。メンバーの誰かが叫んでいるのがステージから聞こえる。1曲目からかなり濃密だ。


特徴的なリズムのキメとともに、次の曲「シンフォニア」が始まれば、観客が拳を上げて反応する。ただ上げているのではない。空を叩かんとする勢いの、力強い拳だ。バンドの演奏を受けて、観客が心から熱くなっているのが分かる。そして観客の熱量を受け取ってか、山田が曲中の歌詞を「帰る場所なら＜LuckyFes＞にあるから」と替えた。この日ならではのパフォーマンスに、あちこちから歓声が飛ぶ。

ここで松田によるMC。「やっと出演することができました！」と＜LuckyFes＞初出演を喜びつつ、「ちょっと雫がパラついてきましたが、みなさん最後まで残ってくれて、集まってくれてありがとうございます」と観客に感謝を伝えた。さらに、「このGARDEN STAGEの最高のフィナーレを飾りましょう」と意気込み、観客にも「俺たちがここにいる、ここに生きているという実感を、一緒に味わえたらと思ってます」と投げかける。


その後披露されたのが「修羅場」。ジャージークラブをはじめとした様々なジャンルのハイブリッドである刺激的なバンドサウンドと、人間の業を歌った歌詞を掛け合わせた、最新鋭にして純度100％の楽曲だ。この曲をサイケな照明が飛び交う夜の野外で浴びる快楽ったらない。これがバンドの最新曲であるというのも痛快なポイントである。バンドが演奏を終えると、観客が「フゥー！」とテンションの高い歓声を上げる。


《ひたちなかあたりで酩酊状態》と歌詞をアレンジした「コワレモノ」を経て、5曲目はバラード「空、星、海の夜」。ボーカルとギターの二重奏から静かに始まるが、曲が進むにつれてドラマティックに展開し、最終的には、歌を凌駕しそうな勢いを見せるギター＆ベース＆ドラムと、吞み込まれるどころかむしろバンドが鳴るほど存在感を増す底なしのボーカルが拮抗する状態になる。生命力の漲るサウンド。これこそTHE BACK HORNの本質だ。


松田のビートに焚きつけられて、観客が「オイ！　オイ！」と声を上げ始める。菅波が中央のお立ち台からリフを繰り出せば、「コバルトブルー」がスタート。さらに「刃」が続く黄金の展開により、ラストスパートがかけられた。山田によって一際強く発音された《火花が散るほどに心をぶつけ合う》という「刃」の一節が、THE BACK HORNのライブを象徴するフレーズとして輝く。山田がマイクを天に向けると、観客が大きな声で歌う。魂の合奏だ。


「どうもありがとう、また会いましょう」とラストの「太陽の花」まで、今の自分たちの全てを出しきるように鳴らしきったTHE BACK HORN。バンドも観客もともに燃焼し、駆け抜けるようにエンディングを迎えれば、終演後の余韻はどこか爽やかだ。メンバーがステージを去る前に感動を届けようと、観客が「イェーイ！」「フゥ―！」「ありがとう！」などと叫んでいる。フィールドからステージへ飛ぶ声の多さが、バンドの熱演を証明していた。

文◎蜂須賀ちなみ
写真◎大峡典人/team SOUND SHOOTER