【ライブレポート】the GazettE、「REITAは永遠に俺達とここにいます」

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今年4月15日にREITA(B)が急逝してから10日後、the GazettEが5月27日に豊洲PITでREITAの追悼ライブを行うことがアナウンスされた。それを知った時に、なんとも言えない感覚に襲われたことを思い出す。追悼ライブを行うことに関しては残されたメンバー達が決めたことなので、一切異論はなかった。そうではなくて、同公演を観たいという気持ちと観たくないという気持ちが入り混じった状態になったのである。the GazettEのメンバーやファン、関係者といった方々と一緒にREITAを送り出したい……でも、REITAがいなくなってしまったという現実を突きつけられることが恐ろしい。そんな心持ちの日々が始まった。

◆ライブ写真

その後、追悼ライブに参加させていただこうと決めたが、気持ちの整理がつかないまま5月27日を迎えてしまった。当日はやや雨模様で、かつてREITAが語った「the GazettEのライブは雨が多いんですよ。しかも、どしゃ降りとかじゃなくて、中途半端な雨(笑)。the GazettEは“小雨を呼ぶバンド”なんです(笑)」という言葉を思い出しながら豊洲PITへ。場内に入り、ステージを見て、“えっ?”と思う。戒のドラムセットと葵のギターアンプの間にベースアンプが置かれていたからだ。“ベーアンがあるということは、急きょサポートを立てたのか? だとしたら……それは、どうなんだろう?”という思いが湧いてくる。

再び気持ちが不安定になる中、場内が暗転してオープニングSEが流れ、ステージにthe GazettEが姿を現した。ステージに立ったのはRUKI(Vo)、麗(G)、葵(G)、戒(Dr)の4名のみで、ライブはラウドな「LAST SONG」で幕を開けた。ベーシストはいなくてもベースの音は鳴っていて、今回のライブはREITAが遺したベーストラックを同期で走らせることにしたようだ。こういう手法を採るのはthe GazettEらしいなと思わずにいられなかった。

“ビシッ!”としたサウンドで「LAST SONG」を聴かせた後、曲は激しさと抒情性を融合させた「UNDYING」へと移っていく。当然のことながら、何度となく体感させてもらってきたthe GazettEのライブとは空気感が大きく異なっている。REITAがいないという虚ろさは想像以上に大きいし、いつもは怒涛のリアクションを見せる客席も今日は“静かに見守っている”という印象で、さらにライブが始まると同時に泣き出してしまう姿も数多く見受けられた。今日のライブをどう受け止めていいのか分からず、とまどってしまう気持ちもわかる。


2曲演奏したところで、RUKIのMCが入った。「今日ここに足を運んでくれて、みんなありがとうございます。いつものthe GazettEのライブの在り方っていうのは日常でやり場のない気持ちだったり、苦しくて、苦しくてどうしようもない気持ちを吐き捨てて帰ってもらえる場所が俺らのライブなんです。だから、今日お前らは泣いても、思い切り暴れてもいいんです。それがね、ライブだから。いろんな感情の総てをメンバー全員で受け止めて、背負って、全力で引っ張っていく。そういう覚悟で歌います」(RUKI)

RUKIのこの言葉に救われたし、それはその場にいる誰しもがそうだったと思う。彼のMCに続けてパワフルかつメロディアスな「TOMORROW NEVER DIES」やラグジュアリーな「REGRET」、華やかなシャッフルチューンの「ガンジスに紅い薔薇」などが届けられたが、場内の空気はそれまでとは変わり、少しずつthe GazettEとオーディエンスはひとつになっていった。


ライブ中盤ではダークな「痴情」や静と動の対比を活かした「その声は脆く」、the GazettEならではの澄んだせつなさを湛えた「白き優鬱」といったスローチューンを続けてプレイ。追悼ライブでこういった楽曲を極端にエモーショナルに演出することなく、いい意味でシームレスに聴かせる辺りもさすがといえる。今回のライブを“お涙頂戴”の場にするのではなく、いろいろなエモーションでREITAを悼むと共に、ファンの心を癒したいというthe GazettEの思いを感じた。

ライブ後半では洗練感を放ちながら疾走する「SHIVER」や荒々しさが心地いい「Hyena」、ハイボルテージな「VORTEX」などが相次いで演奏された。ステージを行き来して、ファットなシャウトを織り交ぜつつ華やかな歌声を聴かせるRUKI。しなやかなステージングとテイスティーなギターソロでオーディエンスを魅了する麗。アグレッシブなパフォーマンスを展開しながらヘヴィかつソリッドなギター・サウンドを響き渡らせる葵。全身を駆使した大きなアクションでテクニカルなドラミングを紡いでいく戒。そんな彼らを見ているうちに、自分の心持ちが変わっていくことが感じられた。


REITAの訃報を聞いてからは哀しみに打ちひしがれるばかりだったが、力強くステージに立っている4人に触れて、the GazettEの強さを実感。前向きな気持ちになっていく。コロナ禍が明けてからの葵は派手なステージングなどではなく、“シルエットで魅せるギタリスト”を目指したいと語っていたが、今日の葵はデビュー当初、いや当時を上回るような激しいパフォーマンスを見せている。いや、葵に限らず、メンバー全員がREITAが担っていた部分を埋めようという思いのもとに全身全霊で演奏していたように感じた。そんな姿を見て、心に “the GazettEは終わらない”と確信できた。


「未成年」ではREITAのベースソロでRUKIが「オンベース、REITA!」と会場に伝えると、真ん中のお立ち台にスポットライトが。そこにもちろん姿はないのだがが、確かにそこにいたはずのREITAの姿が意識せずとも瞼の裏に浮かんでくる。しっかりと自分たちの心と記憶に、REITAの生きた証は残っている。

《生まれ変わったら また逢おう》

「未成年」の歌詞にグッと胸が締め付けられたあとには、メンバー全員が今の心境を語ってくれた。語弊のないよう、ここではしっかりとその言葉を文字に残しておきたい。

メンバーを代表して、全員の総意として決めたことを言わせてください。このthe GazettEにREITA以外の新しいベースとしてのメンバーはいれません。理由は、絶対あいつが1番寂しがることだから。だから、今までのライブでやったテイクのあるものは、そのまま一生REITAの音をそのまま使うことをやめないし、新しい作品だって、これからもREITAのベースや機材をずっと使い続けて、最大にあいつの意思を尊重していきたいと思っています。
これからも誰がなんと言おうが、俺らは5人のままです。だって、“the GazettEは永遠であってほしい”って、あいつから言われたことだからさ。だから、全力で守るしかないでしょって思ってます。なにより自分達とこうやって同じ想いを感じているみんなのことを思うと、ひたすら守らなきゃって。この気持ちが強くなったから。メンバー全員で、これからも止まらずに、全部乗り越えてやっていこうって決めました。REITAは永遠に俺達とここにいます。──RUKI

俺達の中ではREITAは変わらずかけがえのない大きな存在で、今日のライブでもずっとあいつのことを傍で感じることができたし、こうやって自分達がステージに立ち続ける限り、あいつのことを感じられるんだなって今日はそう確信しました。だから、あいつの想いと、あいつの言葉をこの先の未来につなげていくために、このライブというかけがえのない場所とthe GazettEをこれからも変わらず、みんなと一緒に守っていきたいとそう思ってます。
でもね、総ての人がそうやってすぐに前を向けるわけではないのも分かっているし、急がなくていいから。自分の気持ちと想いをどうか優先してください。ここに帰ってくる場所があるんだということだけは、どうか忘れないでいてください。俺達はこの先も変わらず、5人分の想いでthe GazettEを続けていくので、どうかこれからもよろしくお願いします──戒

ここにいるみんなや、ここに気持ちを届けてくれているみんなとREITAの存在をしっかり感じられるように、こうやってライブという形を採ることができて、今日は本当によかったと思っています。
REITAも今このステージに一緒に立っているんだなということを、あらためて実感することができました。心の中ではちゃんと“5人のthe GazettEなんだよ”ってことを、これからもみんなには感じてもらいたいと思ってます。みんなへの感謝の気持ちは俺達が変わらず突き進んでいくということで返していきたいと思っているので、これからも安心してついてきてほしいです。みんなが支えてくれた分、俺達も全力で返していくので、これからもどうかよろしくお願いします──麗

不思議なものでさ、今日この公演をやっていて、たしかに俺はREITAの存在を感じながらプレイしたよね。実際にみんなの前で演奏してさ、俺にはRUKIや、麗、戒、そしてもちろんREITAもいる。そこには、こうやってライブに足を運んでくれるみんながいて。やっぱ、the GazettE最高だわって。REITAがthe GazettEのこれからを望むわけだよって。俺もthe GazettEは永遠であってほしいって願うから。そのためにも今まで以上にthe GazettEを磨き続けて、いつまでもみんなが安心してこれる場所として守り続けるよ。
もちろん心無い言葉や行動があることも知っています。みんながそれに声をあげてくれていることも知っています。1人で立ち向かうのではなく、俺らメンバー、オフィシャルに投げかけてほしい。必ず、それ相応の対処はするから。REITAを愛してくれて、ありがとうね。今日は本当に、ありがとうございました──葵

REITAへの想い、そしてthe GazettEのこと、the GazettEを取り巻く全ての人々への感謝……メンバーたちの気持ちを支えるかのような温かみに溢れた拍手が起こる中、the GazettEは追悼公演の締め括りとして「春雪の頃」と「UNFINISHED」をプレイ。the GazettEの明るい未来の兆しを感じさせて、メンバー達はステージから去っていった。


20年を超える活動の中で多くの壁にぶつかり、その都度それを乗り越え、決して揺らぐことのなかったthe GazettE。そんな彼らはREITAの旅立ちという最大の悲しみをも乗り越えて、決して歩みを止めることはない。悲しみはすぐに癒えないかもしれないが、REITAの望みと、それを叶える覚悟を決めた今後のthe GazettEに敬意を示し、これからも足跡を追っていこうと思う。

取材・文◎村上孝之

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