BMK、5人体制ラストライブ「幸せにしてくれてありがとう」
2014年にBOYS AND MENの2期生オーディションでアイドルの道を一歩踏み出した、中原聡太。BOYS AND MEN研究生の活動を経て、2021年にはBMKでメジャーデビューを果たし、ここまで約10年という長い道のりを走り続けてきた。その歩みに終止符を打つ卒業公演は「全力で最高を更新していこうぜ!」という中原の言葉通りに、5人体制のラストライブとして最高で忘れられない時間となった。
ステージの幕が開くと、目に飛び込んできたのはBMKに縁のあるものたち。メジャーデビュー発表時に披露した“凧”、東海テレビ「BMKのでらヤバいい~旅!!」で着用していた“つなぎ”、ゴリゴリ☆サバンナロードののぼりを付けた“自転車”。その演出に客席からは歓声が湧き、BMKの登場を今かと待つ期待感が満ちる中、暗転しSEが流れ始めた。ステージ中央から米谷恭輔、三隅一輝、松岡拳紀介、佐藤匠、そして最後に中原が姿を現し高らかに開幕を告げた。「さぁ、ビレッジホールはじめようぜ!」。2階席までまっすぐに届く中原の声を合図にして、5人は凧のように両手を広げ定位置につく。1曲目に選ばれたのはメジャーデビュー曲「モンスターフライト」だ。〈ジグザグ上等! サカサマ上等!/ポンコツ上等! ブッチギリ〉とBMKだけでなく、観客も一緒になって大声で歌う。松岡が「1曲1曲が5人ラストだぞー!後悔を残すな!」と焚きつければ、息の合った両者の声が会場いっぱいに響き渡った。続く「BIG RAGE」でも5人は「誰も置いていかねぇから!(松岡)」、「まとめてかかってこいや!(中原)」、「5人はズッ友!(佐藤)」、「やれんのか!(三隅)」、「聡太は俺のマブダチです!(米谷)」と観客に最高のライブにしようと気持ちを伝える。「RED ZONE」では初っ端からの勢いを凝縮させたような好戦的な姿勢をむき出しにして、会場のボルテージを一気に引き上げた。汗の粒を落としながら、全身で歌い全身で踊る。特に松岡と中原のラップパートで互いを刺激していくその様に、観客の熱い視線が注がれた。
イントロから盛り上がった「不肖この俺、イバランナー」からの「ゴリゴリ☆サバンナロード」では各セリフをすべて中原が担当。通常なら米谷が言う「ここ空いてるぜ?」を中原が言うと黄色い声が湧いた。途中で「ついに決着を付ける時が来たな」ジャムパン(中原)とカレーパン(三隅)とのタイマンが始まる。佐藤が止めに入るも2人は殴り合い、お互いに渾身のパンチを繰り出した……!と思いきや、「仲直り!」と満面の笑みで肩を組み一件落着。次の「バリガチタッチダウン!!」では曲の前にVTRが始まり、中原が「1つだけ心残りがあります」と先代より受け継いだぶーちゃんの3代目オーディションが行われ、三隅に決定したと報告した。「最高のぶーちゃんを見せてやるよ、脂多めで……ね」とVTRは終わり、中原は豚の耳を付けて歌い始めた。矢場とんのキャラクター・ぶーちゃんも登場し、豚の耳は中原から三隅へと手渡される。「ルーキーですが、七転び八起きで頑張るぶー!」と三隅が宣言し、「NANAKORO!」へ。中原にまつわる事柄を回収しながら、笑いに包まれたステージングはBMKらしさそのもの。のちに佐藤が「この5人での活動はずっと楽しかった。だから楽しいライブにしたかった」と語っていたように、卒業公演だからこそ彼を惜しむ悲しいライブではなく、最初から最後までBMKらしく楽しく笑いの絶えないライブを——自分たちの魅力を余すことなく届ける最適解を5人は知っているからこその演出だったと思う。
中原の入所から現在までを振り返る“中原ヒストリー”のVTRを経て、5人体制でのラストシングル曲「FLY & GO NOW」を披露し、「ヒカリフル」ではお立ち台に昇りクラップを促した。中原は誰よりもステージ前方へと足を進め、耳に手を当てて観客の声を1つも逃さず受け止めようとする。目に広がる光景を忘れないようにと全身で感じようとしていた。またライブは折り返しを迎えようとしていたが、5人は全力でパフォーマンスを続け、勢いは失速する兆しすら見えない。むしろ曲を重ねていくごとに声量とダンスのキレが増していく。5人で活動してきた年月の長さを噛みしめるように丁寧でありながらも、悔いのないライブをBMKの歴史に刻みたいという並々ならぬ想いがにじみ出ている。各々で秘める気持ちが十二分に発揮されたステージングが繰り広げられた。
「ナガレボシ」を歌い終え、ステージには中原が1人残った。息を整え、彼は話し始める。「約10年僕は芸能活動をしてきましたけど、今日で終わろうとしています。いろんな所でこれまでを振り返ることが多かったんですけど、本当にこの10年は大きくて。高校2年生の時に入って、当時は学校もあんまり楽しくなくて、友達はいたけどそれぞれのコミュニティに上手く合わせられず、かと言って勉強も部活もしたい訳でもない。その時にBOYS AND MENを知って、もともと『テレビの向こうの人になってみたい』という気持ちがあったから、『ダメもとでもいいからやってみようかな』と応募したことが始まりでした。そこから楽しいことだけではなくて、苦しいことも辛いことも悔しいこともたくさんありました。でもそれを含めて考えても、この活動をやってて良かったなって、心の底から思います。僕は活動を始めてからみんなと一緒に楽しい空間をつくることが好きになって、ライブが好きになった。たくさんライブをしていくうちに、自分が表現したいものが出てきて、自分が作りたいライブができてきて、みんながそれに応えてくれる姿がすごく嬉しくて。だから今日もビレッジホールという大きい舞台で卒業ライブをさせていただけて、本当に感謝しかないです」と振り返った。
そして「BMKを応援することが、中原聡太を応援することが、楽しくて生き甲斐になっている方が多いと思います。そういう声をたくさん聞いてきました。僕は5月から新しい道に進みますが、みんなに伝えたいことが1つあります。今目の前にある小さな楽しみでも大きな楽しみでも、これから出会うであろう楽しいことから目を逸らさずに大切にしてほしい。BMKの活動の中で、レギュラー番組や定期公演など活動当初は夢見ていたことが当たり前になっていきました。今年に入ってからいろんな所で最後の現場を感じていると当たり前の大きさに気付いたし、その当たり前なことに今一度目を向けたことで『これから楽しいことが待ち受けてるだろうな』って思えているので、みんなの人生が今よりずっと豊かになることを願っています」とこれまで応援してくれたファンに向けてメッセージを届ける。「約10年活動できて、こんなにたくさんの人に惜しんでもらえて、本当に幸せでした。自分の決めた人生だから5月からは新しい幸せを探しに、自分に嘘がないように、みんなに嘘がないように、これからも生きていこうと思います。長い間、本当にありがとうございました!」と新たな決意を胸に、涙をこらえながら前を向き語った。
中原が自分の想いを託して「ハジマリのMessage」を歌う。〈当たり前だった日々が思い出に変わってく/その時僕らは旅立ちの合図/ともに残してきた足跡は永遠に消えたりはしないさ/ともに過ごした時間が今の僕を作ってるのさ〉という歌詞がそのまま彼の言葉のように胸に届いてくる。ソロで1番を歌い上げて、2番からは三隅、松岡、米谷、佐藤の4人と入れ替わった。落ちサビで再び姿を見せた中原は声を詰まらせる場面もあったが、メンバーが肩に手を当てたり、顔を見合わせることで笑顔になり、阿吽の呼吸で支え合う5人の絆で歌い切った。「ラブエンX」「feel」と続いた後、米谷が「ついに今日が来ましたね」と話し始め、メンバー4人が順に中原とのエピソードを交えながら語った。
まず三隅は「いや~……寂しいね。気を抜くと、5人のBMKはまだ続いていくんじゃないかと思っちゃう。入所した時から聡ちゃんは先輩で、最初は厳しくて苦手だったんだけど、一緒にいる時間が長くなっていくにつれてどんな気持ちでやっているのかが分かってきて、大好きになりました。……いってほしくない!」と寂しさを募らせた。松岡は「僕が発言して聡ちゃんだけが笑ってくれることがよくあるんだけど、それがなくなることが惜しい。聡ちゃんの笑い声をボイスメモに入れたい!」と笑いを誘いつつ、「ラップ担当が聡ちゃんとで良かった。聡ちゃんはいつでも一生懸命だから、それに引っ張られてできてる部分が大きいけど、笑顔で送り出せたら」と話した。佐藤は「これからも聡ちゃんのカケラはみんなの中に残ってる。辛いことがあっても聡ちゃんのカケラがある。たくさんケンカもしてきたけど、聡ちゃんはどんな時でも自分であろうとするから、これからも大丈夫!」とエールを送る。最後に米谷は「ずっと苦楽を共にしてきたから、いろんな思い出がある。数か月しか変わらないのにすごく頑張っていて。でもいつの間にか僕が背中を追い越して……」と話したところで、メンバーから「ちょっと待って!え?追い越しちゃったの?!」とツッコミが入った。涙を流すような場面が苦手だという、米谷らしいコミカルさを交えながら「家族よりも過ごす時間が長ったこれまでの時間がなくなる訳がないので、お互い頑張っていこう」と締めくくり、「ありがとうの音。」へ。松岡が無邪気に「そうたー!」「そうちゃん!」と今日限りのコールをし、本編ラストの曲は「あっちっち!」。「聡ちゃん、あんた最高だったよ!」と三隅が叫び大歓声に包まれる中、5人はステージを後にした。
アンコールにも応え、「HOME TOWN」「Original Future」を披露。メンバー全員が客席へと降り立ち、中原は2階席まで行き観客とハイタッチをした。熱気は収まらずダブルアンコールも実現し、「これが最後だー!」と「RED ZONE」で終わりを迎える。中原の担当してきたラップがふんだんに取り入れられた曲で有終の美を飾った。途中では中原がステージ上の自転車に乗り、その後ろを米谷、三隅、佐藤、松岡が続いて走り回るという微笑ましい場面もあったりして、最後の最後まで5人ならではのパフォーマンスで魅了した。「またどこかでお会いすることがあったら『聡太じゃん!』って声をかけてください。みんな最高だぜ!ありがとうございました!」と深々と礼をして別れを告げた。
中原はBMKの中で10年という誰よりも長い年月をかけて活動してきた。培ってきた経験値が多いからこそ、BMKにとって彼がいることの安心感と信頼感は計り知れなかったと思う。5月からは違う道を選ぶことにはなるが、“これまでの時間がなくなる訳ではなく”、“辛くても心の中には中原のカケラがある”。みんなの道がきっと幸せになるように——中原の願いを胸にして進む、これからのBMKにも期待したい。
セットリスト
M1.モンスターフライト
M2.BIG RAGE
M3.UNITE!
M4.RED ZONE
M5.不肖この俺、イバランナ
M6.ゴリゴリサバンナロード
M7.バリガチタッチダウン
M8. NANAKORO!
M9. FLY & GO NOW
M10.ヒカリフル
M11.ナガレボシ
M12.ハジマリのMessage
M13.ラブエンX
M14.feel
M15.ありがとうの音。
M16.あっちっち!
En1.HOME TOWN
En2.Original Future
En3.RED ZONE
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