【インタビュー】ENTH、セルフタイトルを掲げた3rdアルバムに新機軸「やっとENTHになれました」

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名古屋を拠点に活動中の3ピースバンドENTHが3月27日、自主レーベルGutz Ballより3rdフルアルバム『ENTH』をリリースする。1stフルアルバムは『HENT』(2017年7月発表)、2ndアルバムは『NETH』(2020年11月発表)と、これまで“ENTH”のアナグラムをアルバムタイトルに用いてきた彼らだが、最新フルアルバムは、ずばりバンド名を冠したセルフタイトルとして届けられる。

◆ENTH 動画 / 画像

メロディックパンクに軸を置きながらも、あらゆるジャンルを行き交うサウンドは、ハイブリットでミクスチャーでエクストリームそのもの。『ENTH』の音抜けは素晴らしく、『NETH』で確立したサウンドが、発展と成熟を増した仕上がりだ。実質的オープニングナンバー「"EN"」に凝縮された彼らの今は新しく、ボーナストラック「☆愛♡醒☆(鬼ボンバイエMix)」には彼ららしいユーモアも忘れない。

BARKSでは改めて、ENTHというバンドスタイルを掘り下げると同時に、3rdフルアルバム『ENTH』収録13曲について、ダト・ダト・カイキ・カイキ(Vo, B)、ナオキ(G, Cho)、タクミ(Dr, Cho)にじっくりと語ってもらった。


▲3rdフルアルバム『ENTH』

   ◆   ◆   ◆

■正直なところ前アルバム『NETH』から
■作品として残ることを意識するようになった


──3枚目のフルアルバムが完成しました。

ダト・ダト・カイキ・カイキ(※以下、ダト):だいぶ楽しみにしてたんで、早くみんなに聴かせたいなって。

ナオキ:最高傑作というか、ちゃんとこれまでを更新できたし、内容も素晴らしい。

ダト:ありがとうございます(一同笑)。

タクミ:音源としてもいいし、早くライヴでやりたいっすね。

──これまでBARKSの<SATANIC CARNIVAL>や<京都大作戦>の速レポ含め、ライヴレポートの掲載は数あれど、インタビューとしてはBARKS初登場ということで、どういったバンドなのかも紹介したいと思います。が、ENTHは説明が難しいバンドだなと思ってまして。

ダト:そうですね。

ナオキ:オレらも掴めてないし(笑)。


▲ダト・ダト・カイキ・カイキ(Vo, B)

──2010年にダトさんを中心に結成されましたが、キャリアを重ねる中で音楽的にフォーカスする部分も変わってきましたよね。初期はメロディックパンク色が強く、その中で外すところもあったりという。ただ、だんだんと幅に広がりが出てきて、オルタナテイストのロックナンバーもあり、新作ではまた新たな匂いも。

ダト:ストレートなメロコアだけじゃない音楽をやろうっていうのはもともとあったんですけど。そこから自分の遊びに行く場所が広がって、自然と聴く音楽の幅も広がっていったのが大きいですね。

ナオキ:個人的には緩いパンクというか、オルタナが入ってる感じのオーストラリアのバンドにハマったり。ちょっとバカっぽくて全然下手なのにカッコいいっていう。

──そういうフレーズを取り入れてみたり?

ダト:サブスク、インスタ、YouTubeからちょっとずつ掘ったりもありますね、現代っぽい感じで。そのオーストラリアの若いガレージパンクのシーンもそうですし、そこからアメリカのガレージパンクも掘ってみたり。

──気になったら掘っていって、それが広がっていく?

ダト:そうですね。今はSNSとかサブスクを使えば、本当に調べやすいから。好きな音楽の中で自分らに合うことやできることをやろうっていう感じ。

──タクミさんが気になった音楽は何かあります?

タクミ:曲がっていうことではないんですけど、好きなスタイルやドラマーとしてはターンスタイルとかですね。でも、最近なんですよ、いろいろ聴くようにしたのが。それまであんまりディグったりしてなかったから。

──いい音楽を見つけたらメンバー間で共有したりも?

ナオキ:そうですね。機材車で移動中に「これ、誰?」って言われたいんで(一同笑)。

──たとえば、メロディックパンクだけをやってたら、飽きていたようなところもありますか?

ダト:あぁ、そうですね。初期からいろんな曲をやってたんですけど、1stフルアルバム『HENT』…いや2ndフルアルバム『NETH』を出す前までは、結構実験的な感じで作ってたところもあって。だから、まったくライヴでやってない曲もあるし、“バンドに合わないからやることねえな”と思う曲もあって(笑)。

ナオキ:弾けない曲もありますからね(笑)。

──それ、リクエストされたらどうするんですか?

ナオキ:やりません。

──即答(笑)。

タクミ:だからやったことがない曲、いっぱいありますよ(笑)。


──雑食的に手を伸ばして、2ndフルアルバム『NETH』ぐらいでようやく定まったということですが、生き残った曲のポイントって何かありますか?

ダト:ライヴで楽しいっていうのが一番ですね。ライヴでどう響くのかっていうことに重きを置いてて。“家でアルバムを聴いて救われました”みたいな反応とかは自分でまったく意識してなかったから。正直なところ、前アルバム『NETH』から作品として残るということを意識するようになったんですよ。

──たしかに『NETH』の前後でENTHのイメージが変わったところもありました。とにかくはっちゃけてたバンドというイメージが『NETH』前だとしたら、『NETH』後はそこからヤンチャさが滲み出るぐらいの自然なバランスになったと感じたんです。

ナオキ:ライヴで言えば、SHANKと初対バンしたときに「頑張ります」って(庵原)将平くんに伝えたら、「頑張っちゃダメだよ」って言われて。その言葉が結構残ってるんですよ。無理に頑張らないというか、「いつも通りやれよ」ってことだと思うんですよね。で、「そうだよな」って。

──それが数年前?

ナオキ:ですね。コロナ禍のちょっと前だから、『NETH』の前ぐらいかな。

──楽曲制作は当初、「実験的な感じで作ってた」ということですが、どうやって進めてるんですか?

ダト:基本的にオレがひとりでスタジオに入ってやってるんですけど。

──それは日常的に?

ダト:いや、あんまり曲を作るのが好きじゃないんで、“録らなきゃ”とか“制作しなきゃ”って思いながら(笑)。今回の『ENTH』収録曲は一昨年ぐらいから作って貯めていったものですね。で、去年3月ぐらいからちょっとずつレコーディングして、それを繰り返した感じ。


──アルバム制作期間としては結構長かったんですね。

ダト:めちゃくちゃ長いっすね。去年1年はアルバム制作もあって、自分らのツアーをやってないんです。

──ライヴ大好きなENTHがそれだけ音源制作と向き合ったという?

ダト:『NETH』で何が一番変わったかというと、スタンスがはっきりしたんですよね。コロナ禍に入って、音楽をやる人だけじゃなく、みんなが自分のやるべきことや、好きなことに向き合ったじゃないですか、外出自粛とかがあったから。ライヴもなかったし、自分も例外なくそうなった。そういう中で、どういう活動や音楽をENTHとしてやっていくのかがくっきりしたんです。

──なるほど。

ダト:それに、コロナ禍でもライヴができるようになってから、フロアの純度も仕上がってきてるなってことを自分ら的に感じてたし。フルアルバムのタイトルはこれまで全部、“ENTH”のアナグラムだったんですけど、3rdフルアルバムはそのまま(セルフタイトルの)『ENTH』だなって。そのつもりで制作したんですよね。

──やるべきことが見えたとき、出てきたキーワードはありましたか?

ダト:広い意味でも狭い意味でもいいんですけど、そもそもは人がやってないことをやりたいということは変わらず。たとえば、“自分ら界隈だとやってないよね”ぐらいから始まってもいいんですよ。そういうアプローチを考えつつ、ゴチャゴチャとルールは作らないことですかね、結局は遊びなんで。お客さん同士のやり取りにも口は出さないし、こっちからルールを提示しないし。

──画一的なものは性に合わないみたいな?

ダト:僕らがルールになっちゃうのも違うから。結局、ライヴハウスはその場の空気で遊ぶものだし、暗黙の了解でギリギリ成立するものだと思ってるから。

──コロナ禍が落ち着くぐらいの時期、バンドマンがよく言ってたのが「お客さんから“今日はダイブOKですか?”っていう問い合わせがくる」ってことで。

ナオキ:まさに今、それを言おうと思ってました。それに対しては「知らん。勝手にやれ」って。

ダト:ただ、結構みんなが規制を守らせてたところもあるし、その時期に初めて入ってきたお客さんにとっては、バンドがルールだって思っちゃっただろうから。でも、オレらに関して言えば、一貫してそこには踏み入れなかったんですよ。もちろん、呼ばれたライヴでは最大限そこのルールに則ってやってましたけど。でも、“ルールを守ってくれてありがとう”とか思ったことなくて。

ナオキ:やっちゃってるヤツを観てアガったりもしましたからね。

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