【ライブレポート】ブルーノ・マーズ、35万人が熱狂した“ファンクの祝祭”「今日は一際ラウドだね!」
ブルーノ・マーズが、1月11日から21日にかけて東京ドームで日本公演<ベスト・オブ・ブルーノ・マーズ・ライブ at 東京ドーム>を開催した。2022年10月以来、1年3ヶ月という短いスパンでの再来日が実現した今回は、追加公演を含む計7公演が東京ドームで実施され、見切れ席などを含む全券種がソールドアウト。実に35万人もの動員を記録する、近年の海外アーティスト来日公演としては異例の盛況ぶりを見せた。なお、本稿では5公演目となる1月18日の様子を記す。
◆ライブ画像
筆者がブルーノのライブを観覧するのは、前々回の来日となる2018年4月以来のこと。前回の2022年10月はコロナ禍におけるライブのレギュレーションが現在のような形に戻る直前の、まだ観客の声出しが解禁される前のことだけに、今回は2018年のツアーと比較的近い形でライブを楽しむことができるのでは……と思い、期待で胸を膨らませてライブに臨んだ。
開場時間の途中でステージに突如暗幕が垂らされると、客席からは早くも歓喜の声が湧き起こる。場内に流れるクラシカルなソウルナンバーがオーディエンスの熱量をさらに高め、開演時間を過ぎた頃に会暗転すると会場中から悲鳴にも似た絶叫が響き渡った。そして、暗幕が降ろされたと同時にライブは「24K Magic」からスタート。パイロの連発でライブの幕開けを盛大に祝福すると、ブルーノを中心にバンドメンバー、コーラス隊が息の合ったダンスを交えながら圧巻のボーカルパフォーマンスと演奏で観る者を圧倒させた。
ブルーノの「ただいま、トキオーッ!」を合図に「Finesse」へと続けると、彼はステージ上を縦横無尽に動き回り、軽やかなステップとともに美声を響かせる。サビでは5万人のオーディエンスによるシンガロングも発生し、いかにブルーノがここ日本で愛されているか、歓迎されているかがダイレクトに伝わってきた。グルーヴィーなベースラインとブラスのアンサンブルが印象的な「Treasure」でも、多幸感に満ちたパフォーマンスは引き継がれ、観客もクラップで曲に加わり一体感を高める。また、スローなレゲエのリズムに乗せて「Liquor Store Blues」に突入すると、ギターを手にしたブルーノがエモーショナルなフレーズを奏で始め、さらにそこから「Billionaire」へとつなげてご機嫌なグルーヴで観客を魅了。エンディングでは息の合ったブレイクで客席を煽り続け、早くも会場の熱気を最高潮にまで導いた。
ファンキーさが強調された「Perm」ではコール&レスポンスを交え、オーディエンスとのコミュニケーションを図ると、続くAOR調の「Calling All My Lovelies」では官能的なボーカルワークで聴き手を惹きつける。また、この曲では電話機を片手にした演出も用意され、曲後半ではブルーノが「君に会いたいよ、とても〜」と日本語で歌唱。彼の日本のファンへのサービス精神旺盛ぶりに、客席からは盛大な拍手が送られた。
「Japanese girls get up」の煽りとともに「Chunky」が始まると、直前にムーディーな空気から一変。ミディアムスローのR&Bナンバー「That's What I Like」では、ブルーノが曲中に「カワイイ!」などの日本語を交えながら、腰をグラインドさせるダンスで会場を熱狂させる。また、ギタリストとサックスプレイヤーによるセクシーなセッションからバラードナンバー「Versace on the Floor」へ続くと、会場中がスマホのライトで灯され温かな空気に包まれていった。
人気のアップチューン「Marry You」で、ライブも後半戦に突入。客席から大合唱が沸き起こり、再びドーム内の熱気が高まっていくとブルーノは突然、日本人には馴染みのあるフレーズを歌い始める。すでに今回の日本公演で話題になっていた、AKB48の代表曲「ヘビーローテーション」カバーの登場だ。日本人なら一度は耳にしたことがあるこの名曲を前に、5万人のシンガロングはさらに大きなものへと変化し、ライブはこの日何度目かのクライマックスを迎える。その熱気を引き継ぐ「Runaway Baby」では、ブルーノが「今日は静かじゃないかい?」と煽る一幕もあり、客席からはさらなる大合唱が鳴り響いた。
「Runaway Baby」でひとしきり盛り上がると、ブルーノはピアノの前に座り、お気に入りの曲の数々を弾き語りし始める。自ら“Bruno meets Karaoke”と呼ぶこのコーナーは、ブルーノが弾く曲を観客が歌うことができたら観客側にポイントが入るという内容で、両者の攻防が繰り広げられていった。そして、続く「When I Was Your Man」でもブルーノの美しいピアノと歌声を堪能することができ、会場は優雅な空気に包まれた。
宇多田ヒカル「First Love」のインストカバーをフィーチャーしたバンドピアニストのソロコーナーを経て、ライブもついに終盤に突入する。ファンキーさを伴うロックチューン「Locked Out of Heaven」では金銀の紙吹雪が会場中を舞い、名曲中の名曲「Just the Way You Are」ではこの日一番のシンガロングも沸き起こり、ブルーノから「今日は一際ラウドだね!」とお墨付きをもらうほどの盛り上がりぶりを見せる。そして、「愛してます。トキオー!」と感謝の言葉をプレゼントしてステージを降りていった。
バンドメンバーがステージを去っても、ブルーノを求める歓声は鳴りやむことを知らない。すると、ステージに再登場したブルーノが「もう1曲欲しいかい?」と尋ね、大団円に相応しい「Uptown Funk」で東京ドームを特大級のダンスホールへと一変させ、歓喜に満ちた“ファンクの祝祭”は幕を下ろした。もはや誰も到達することのできない領域にたどり着いた現在のブルーノ・マーズ。コロナ禍という世界中が苦しんだ時期を乗り越え迎えたこの日のライブは、2024年の幕開けに相応しいものだったのではないだろうか。
取材・文◎西廣智一
撮影◎Daniel Ramos
<ベスト・オブ・ブルーノ・マーズ・ライブ at 東京ドーム>セットリスト
24K Magic
Finesse
Treasure
Liquor Store Blues / Billionaire
Perm
Calling All My Lovelies
Chunky
That's What I Like / Please Me
Versace On the Floor
Marry You / ヘビーローテーション
Runaway baby
[Piano Medley]
When I Was Your Man
Locked Out of Heaven
Just the Way You Are
Uptown Funk