【トークセッション】みのと語る、オーディオとしてのマーシャルの魅力

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ピート・タウンゼント、ジミ・ヘンドリックス、デュアン・オールマン、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、リッチー・ブラックモア、ジョー・ペリー、マイケル・シェンカー、AC/DC、そしてエディ・ヴァン・ヘイレン、スラッシュ、ノエル・ギャラガー、ジョン・フルシアンテ…枚挙に暇がないとはまさにこのこと。マーシャルを愛用し、ロックの歴史そのものを生み出し、塗り替え、ギターサウンドを世に響かせてきた巨匠たちだ。彼らのサウンドを支えてきた立役者が、すなわちマーシャルのアンプ群だった。マーシャルがこの世になければ、今のようなロックミュージックは生まれてこなかったことだろう。

ジム・マーシャルが最初のマーシャルアンプを設計した1962年、そこからすでにミラクルは始まっていたようだ。ドラマーのジムが優れたギターアンプを作り上げることとなったのも、自分の耳を信じるジム自身のミュージシャンシップと、周囲に集まっていた研ぎ澄まされた感性とセンスで良し悪しをジャッジするトッププレイヤーたちとのコミュニケーションだった。

マーシャル・サウンドは世のギタリスト達を理屈抜きにノックアウトした。圧倒的パワー感、ぶん殴るようなレスポンス、動物の咆哮のように噛みつくトーン、そしてリニアに反応するピッキングニュアンスと暴れるサステイン/フィードバック。渦巻く思いと訴えをギターに叩きつけるギタリスト達は、その感情を文字通り何倍ものパワーにアンプリファイして空気を震わせるマーシャルアンプに、一発で恋をした。そしてそのサウンドはギタリストのクリエイティビティを更に刺激した。このサウンドならば、こういうリフだ、こういうメロだ、こういうボイシングだ、こういう展開だ、こういう楽曲だ、こういうステージパフォーマンスだ…。ロックは大きなうねりとなって世界中を席巻することになる。その後のマーシャルアンプの発展は、多くの人が知るところだ。

ギタリストの感性とシンクロし、ロックサウンドの雛形となったマーシャルの存在は、ヘヴィサウンドの雄としてロックシーンのアイコンとなったわけだが、そのマーシャルが2010年代後半から2023年現在にかけて、新たな存在感を発揮し始めていることはご存知だろうか。おしゃれアイテムのように「Marshall」ロゴがキュートなヘッドホンを耳にかけた女子大生やOLを目にすることも少なくない。TikTokやインスタでも、おしゃれ家具にちょこんと置かれた「Marshall」のBluetoothスピーカーが写っていることもよく見かける光景となった。







ある意味汗臭く、ロックの現場感が強かったマーシャルが、ロックとは無縁の一般家庭や若者の生活環境に馴染み始めている。いったい何が起こったのか。今、マーシャルは世の中にとってどのような存在なのか。

ここでは音楽そのもののみならず、オーディオ、ギター/ギターサウンドにも造形の深いクリエイターのみのにコンタクト、マーシャルの今を紐解くべく、意見交換の場を設けてみた。



──みのさんもギタリストですから、マーシャルは避けて通れぬ存在でしたよね?

みの:やっぱりクリームとかそういうのに憧れてスタートしてるんで、エレキを買ってあの歪んだ音を出したいみたいな欲求が原体験にあったと思います。最初フェンダーのアンプを買ったんですけど、サスティンの感じが「これ、俺が求めてるのと違うわ」ってなったんですよ。サステインなんて概念もなかった頃ですけどね。

──でも、なんか違うと感じてた。

みの:ブルースとか演ってても、ボリューム7ぐらいまで上げてもなんか違うな、みたいな、多分この2大巨頭とされるマーシャルの方が絶対俺が欲しいやつなんだろうなって、直感的に来たんですよね。

──そういう直感って大事ですよね。

みの:で、自宅練習用のちっちゃいマーシャルを買ったんですけど、多分それが人生で1番弾いたアンプだと思います。日本でもそれを弾いていたし、アメリカに渡ってからも買い直して、自宅の練習用はもうそれでもう決まり、みたいな。

──さすが。

みの:当時はSGをよく弾いていたんですけど、ブリッジの下のボディに手のひらを置いてるだけで、なんかロック的なサウンドが出てくるような感覚。ピッキングする前からニュートラルな状態で音が出てるような感じがするというか、マーシャルはそこから音を引いていくみたいな感覚っていうか…めちゃめちゃニュアンスの話なんですけど。

──マーシャルには、自分のコンディションがモロに出てしまうというシビアさもありますよね。

みの:そうですね。多分、それが好きだったんですかね。僕のギターサウンドの基準値というのは、他のアンプを弾く時もマーシャルと比べてこう、みたいな感覚です。

──あの歪みは、意図して設計したものなのかな。それとも偶然の産物なのでしょうか。



みの:どうなんですかね。僕は理系がてんでダメなんで感覚的な話になっちゃうんですけど、50’sとかの小口径アンプの音もあれはあれでいいし、例えば「いとしのレイラ」のサウンドもいいんだけど、クラプトンで言えばデレク・アンド・ザ・ドミノスでも全然違うじゃないですか。あの歪みの爆発力みたいなものはハードロックそのもののインスピレーションだと思うし、マーシャルのサウンドがより多く出てくるのは1960年代中後期ぐらいですよね。そしてその10年後にヴァン・ヘイレンがマーシャルで新しいサウンドを生み出した。なんていうか、普遍性みたいのがありますよね。

──マーシャルの不思議さのひとつにスペックがありますよね。例えばスピーカーはセレッション製ですが、もっと高品質のJBLやALTEC、Electro-Voiceなどに換装しても、逆に音は悪くなっちゃうんですよね。

みの:オーディオ的な意味での音の良し悪しって、楽器の世界だと全く通用しないというか、エフェクターもそうですけど、理論値みたいなのじゃなくてXファクターみたいなところが大きいですよね。ストラトにしても、後ろに穴が開いてるのって普通に考えたら楽器としておかしいわけですけど、あれじゃないとあの音にならないってのは、誰しもわかっていることだと思いますし。

──確かに。

みの:しかも音をどれだけ汚せるかみたいな時代の中心だったアンプだと思うんで、そこの不完全性みたいなところが、逆に完璧だったっていうことなんじゃないですかね。

──今でも使用アンプはマーシャルですか?



みの:今、フェンダーのチャンプは集めているんで、ブースに突っ込んでレコーディングで使ったりはしますけど、プレイヤーとして長時間弾くとなるとマーシャルが気持ちいいですよね。

──モデルは?

みの:いや、やっぱスタジオにあるやつなんでJCM900とかですかね。ずっとビンテージが欲しいんですけど、なかなか手が出ないんです。大きいし家に置いとけないし…でもやっぱピンテージの音、えぐいですよね。昔、ランディ・ハンセンっていうジミヘンに最も近づいたというトリビュート系の最高峰みたいな人がシアトルにいたんですけど、その人の出してるマーシャルの生のサウンドがもうえぐくて。バーの最前列のテーブルでビール飲みながら観ていたんですけど、僕があんまりにも盛り上がってたからなのかわかんないですけど、アンコールの「パープル・ヘイズ」でギターソロを弾きながら僕の丸テーブルの上にドンって乗ってきて、僕のビールジョッキを奪って飲み干して、そのジョッキでスライドギターを弾いて、最後にストラトを天井にバーンって突き刺して、そのまま帰ってったんですよ。

──(ぽかん)

みの:で、アンプも当然フルテンみたいな状況だから、ハウリングがものすごくて、でも、あそこまで暴力的になれるのもマーシャルの持ってるキャパというか、そこも含めて「マーシャルすげえな」みたいな。めちゃめちゃノイズに浸りながら「すげえもの観た」みたいな。

──そんな原体験があるんですね。

みの:そうなんですよ。マーシャルって、そういういろんないい思い出があります。

──理屈を超えて最高のサウンドを生み出してきたそんなマーシャルが、今、オーディオ製品として突き抜けた存在感を見せ始めているというのが、面白いところですよね。



みの:いや、僕はそれ、知りませんでした。

──感度高い女子が、いきなりマーシャルのヘッドホンやBluetoothスピーカーを買ってたりするんです。Marshallロゴがずいぶんオシャレに見えてくるんですよね。

みの:オーディオに関しては、僕はレコードを買ってハイエンドのスピーカーとかケーブルを繋いで…みたいなタイプだから、自分のレーダーの範囲外だったんですけど、女の子たちがマーシャルに手を出すっていうのはなんか面白いですよね。そういえば、雑誌のインテリアのレイアウトとかでよく見ますよね。オーディオ各社色んな考え方あって、色をつけるところがあったり、ものすごくストレートに出したりとか、各ブランドに設計思想があるんですけど、マーシャルはどういう設計なのか気になるなあ。



──楽器として気持ちいい・心地よい・楽しい・カッコいいサウンドを追求してきたブランドですから、オーディオになっても思想はそこですよね。決して数字では測れないものも含めて。

みの:そうですよね。そこは変わるわけがない。

──今、マーシャルは「プレイヤーのもの」から「オーディエンスのもの」へと変革している時なんです。

みの:ロックのアイコン的なブランドイメージを保ったまま、違う領域に入っていくのはすごい素敵だと思いますよね。アンプが小型化したデザインだから、ちょっとロックテイストを取り入れたい人が買う感じなのかな。デザインで言ったら、やっぱりちょっと無骨でロックな感じは残ってますよね。



──それを女子が採り入れちゃうというマーシャルのカッコよさ。おしゃれな子の家にマーシャルが入って来るなんて、昔には考えられなかったけど。

みの:今までだったら、散らかってる男の部屋にあるやつだったんですけどね。僕はもう、練習用のマーシャルアンプの上に灰皿がありましたから(笑)。女の子でいえば「けいおん!」とか「ぼっち・ざ・ろっく!」とかでもマーシャル使っていますよね。可愛い女の子がレスポールを弾くような、ちょっと無骨めな楽器を選択するフェチズムみたいなものは、サブカルチャーの中にあると思うんです。女の子がそういうちょっとハードめなオーディオアイテムに手を出したくなるというのにも、何か相関があるのかな。

──ギターアンプよりもオーディオブランドとして知名度が上がっている時代なのかもしれません。

みの:確かに。「あれ?昔のギタリストって、みんなうちのヘッドホンと同じやつ使ってる」みたいなこともあり得ますよね。そういう汗臭い話とすごい遠いところにあるっていうのが面白いですね。でもね、このポータブルスピーカー(編集部註:WILLEN)、かわいいです。手に持った時に気持ちよくて、さっきからずっと触っちゃっているんですけど、このぐらいの重さが「いいものを買った」って感じがしますね。


Marshall Willen

──どんな音がするのか、音を出してみましょうか。

みの:まずこのホームスピーカー(Acton lll)を聴いてみたいな。(iPhoneで音楽を再生)あ、いきなり沢田研二ですいません(笑)。歌謡曲は下が全然出ないからあんまよくないな…何がいいかな。(サンタナを再生)あ、結構パワーありますね。音量は十分すぎますね、ちょっともうベタベタのやつ聴こうかな(ドナルド・フェイゲン『ナイトフライ』を再生)。


Marshall Acton lll

──それは定番のリファレンス音源で。

みの:ベタすぎるけど絶対これで聴いちゃう。そうですよね。(さらにドクター・ドレー~羊文学を聴いて)時代が近くなる方が相性がいいみたいですね。すいません、めっちゃ素直な感想で(笑)。4万円台なんですよね?だったら結構いいな。この金額でオーディオ買いたいっていう人にはめっちゃいいと思いますけどね。







──こちら(Emberton ll)はどうでしょう。ポータブルで全方位360サウンドなんですけど。




Marshall Emberton ll

みの:(「ハイサイおじさん」を聴きながら)すごいな、これいいねえ。これは売れるわ。20代の子とかの家にありそう。で、こっち(Willen)は携帯型なんですよね?

──かなりコンパクトですよね。ストラップが付いていて腰にもぶら下げられますし。


Marshall Willen

みの:昔ラジカセ持って肩に上げてパブリック・エナミーかけてたラッパーの令和バージョンですね(笑)。スケーターの子とかありそう。でもこれくらいが手に取ったときにスポーティーでいいなあ。これだけ小さいと、逆にマーシャルらしさというか結構色が付いてほしいな…なんて変な期待をしてしまうというか、多少なんか濁りがある方が熱いってなりません(笑)?

──わかります。キャラが立つと可愛いですよね。



みの:せっかくなんでこれでパブリック・エナミーを聴きますか。(「ファイト・ザ・パワー」を再生して)お、めっちゃパワフル、すごい。これすごいな。これはいくらですか?

──定価で15,980円(税込)みたいです。

みの:もし自分が高校生だったら、クリスマスに1番欲しいの、これだな。マジで。

──「触り心地がいい」って、第一印象でも好印象でしたよね。

みの:(パブリック・エナミー「ドント・ビリーヴ・ザ・ハイプ」を聴きながら)、持ったときの振動もいいんですよ。「音を持っている」という感じが最高っす。



──(Willenを受け取って)あ、ホントだすごい。音が暴れてる。これは紛れもなきマーシャルのDNAですね(笑)。

みの:いやー、めっちゃイイ。これは気持ちいい。いやー、今日でマーシャルの印象が僕の中でだいぶ変わってきているな。こうなるとヘッドホンやイヤホンも気になりますね。


MarshallWillen

──マーシャルは、時代とともに新たな価値観で常に音楽を支えていたんですね。

みの:マーシャル、最高だと思います。特に僕はこれ(Willen)。惚れましたね。

──私もWillenの暴れっぷりにマーシャルの凄さと新時代を再認識しました。ありがとうございました。



取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)
撮影◎大橋祐希

マーシャル・ホームライン、ポータブル、イヤホン

●Acton lll
¥43,980(税込)
Homelineシリーズの中で一番コンパクトなサイズのBluetoothスピーカー。前モデルよりもさらに広いサウンドステージを持ち、没入感のあるホームオーディオ体験のために再設計されたサウンドを提供。ホームスピーカーに期待される、部屋を満たすマーシャルのシグネチャーサウンドを余すところなく楽しめる。
◆Acton lll商品ページ

●Emberton ll
¥28,980(税込)
Emberton IIはMarshallだけが実現できるコンパクトながらもヘヴィーで力強いサウンドを兼ね備えたポータブルスピーカー。ユニークなマルチディレクショナル(全方位)サウンドを採用。すべての方向で厚みのある絶対的な360サウンド。最大約30時間の連続再生で、Marshallの優れたサウンドを何時間も楽しむことができる。
◆Emberton ll商品ページ

●Major Ⅳ
¥20,980(税込)
Marshallの象徴的なヘッドホン。最大80時間の再生時間、ワイヤレス充電に対応、そして新たに改良された人間工学に基づいたデザインを兼ね備える。3日の外出中、電源がなくても充電切れの心配は不要。カスタム調整されたダイナミックドライバーは、うなるような低音、滑らかな中音域、鮮やかな高音域を再生、豊かで比類のないサウンドを再現。
◆Major IV商品ページ

●Motif ll A.N.C.
¥29,800(税込)
コンパクトながらも迫力のMarshallサウンド。充電ケースを使用して最大約30時間の音楽再生が可能。新世代のテクノロジー、LE Audio に対応し、接続性は更に進化。アクティブノイズキャンセリングを使用し、満員電車や騒がしい街中でもノイズを遮断して、音楽に没頭できる。
◆Motif ll A.N.C.商品ページ

●Willen
¥15,980(税込)
手軽にどこでも持ち運べるように設計されたポータブルスピーカー。ユニットは2インチのフルレンジドライバーと2つのパッシブラジエーターで構成され、重厚なマーシャルサウンドを鳴らす。象徴的なマーシャルデザインに加えて、クラス最高のIP67防塵・防水機能を施した頑丈な設計。1回の充電で最大約15時間のリスニングが可能。マウンテンストラップが背面に配備され、アウトドアでの使用にも最適。複雑なセットアップも必要なく、簡単にデバイスとペアリングして、音楽再生が楽しめる。アプリのイコライザーとマルチディレクションコントロールノブを使用して、自分好みのサウンドを簡単にコントロール。内蔵マイクが付属し、クリックするだけで通話のコントロールが可能。スタックモードを作動すれば複数のWillenを繋げて、マルチスピーカーで迫力のあるサウンドが楽しめる。
◆Willen商品ページ












◆みのミュージック(YouTube)
◆マーシャル・オフィシャルサイト
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