【速レポ】モンパチフェス＜WWW!!23＞赤犬「トラウマにして帰っていただきたいと！」

そろそろ午後3時になろうとしているのに、これっぽっちも傾こうとしない太陽が照りつけるマングースSTAGEの気温をさらに上げたのが、大阪からやって来た13人編成の大所帯バンド、赤犬だ。

◆ライブ写真

「レディース＆ジェントルメン！　アーユーレディ！？　タカ・タカアキ！　タカ・タカアキ！」

コーラス隊のナイトサパーズの3人が重ねる華麗なコーラスが歌謡ショウを連想させたオープニングから一転、ファンキーに変化した楽器隊のエネルギッシュな演奏に合わせ、声を上げたナイトサパーズのロビンのコールとともにステージに出てきたタカ・タカアキ（Vo）は、「本日はお日柄も良く、あなたの記憶に赤犬を刻み込みたいと思います！　初めて見る人は（赤犬のライブを）トラウマにして帰っていただきたいと！」と言ったが、トラウマなんてとんでもない。いや、もちろん、それくらい記憶の深いところに刻みこんでほしいという意味で言ったのだと思うのだが、この日たまたま赤犬に巡り合った人はラッキーだったと思っていただきたい。




なぜなら、白いジャケットと赤いパンツで伊達男風にキメたタカ・タカアキを中心に青いジャケットでキメたコーラス隊のナイトサパーズ、そして赤いジャケットで揃えた楽器隊からなる赤い犬が得意としている昭和の匂いぷんぷんの歌謡ショウとソウルレビューの合わせ技は、いわゆるロックフェスではなかなか見られないものだからだ。




小林旭、ザ・ドリフターズ、そして氷川きよしも歌った「ズンドコ節」をファンキーにアレンジしながら、タカ・タカアキがナイトサパーズとともに拳をぐるぐると回す振り付きで歌って、観客を踊らせると、「今日は歌いたい気分じゃないなぁ」「……と言いつつも歌いたくなってきました」とナイトサパーズが、彼らが言うところの時事ネタを挟みながら、「初夜」「お蝶夫人」とたたみかけるように繋げていく。前者はこぶしをきかせながらタカ・タカアキが女の一途な愛を歌い上げるムード歌謡。グルービーなリズムに観客が体を揺らした後者は、音頭とファンクを掛け合わせた演奏も聴きどころだ。タイトルからの連想だろうか、タカ・タカアキとナイトサパーズの3人が曲の最後、クイーンの『クイーンII』のジャケ写を思い出させるポーズをキメるという小ネタにも思わずニヤリ。



そして、福井の漁師がワカメを獲る時の掛け声をモチーフにしたという「メントコおけさ」では頭にハチマキを巻き、ステテコ一丁になったナイトサパーズの3人がお神酒と榊で体を清めながら、飛び道具的なパフォーマンスで観客を沸かせると、リズム歌謡の「アンドロメダ将軍」「酔わせてよKOBE」をたたみかけるように繋げ、バンドの演奏は一気にクライマックスに突入していく。後者ではMONGOL800のパーティーダンサー、粒さんが飛び入りして、タカ・タカアキ、ナイトサパーズとともに踊りたおして、クライマックスの盛り上がりに一役買うというフェスならではの光景も飛び出した。



お堅い人がもしいたとしたら眉をひそめたかもしれない、ある意味猥雑なステージングに持ち前の反骨精神を滲ませながら、赤犬の13人は終始エンターテイナーに徹していた。DOBERMANのユースケ（G）をサポートに迎えた楽器隊の演奏はいつまでも終わらず、ステージを降りたタカ・タカアキを三たびステージに呼び戻しては、その度、ナイトサパーズの3人は組体操の技をキメ続け、ダメ押しするようにステージに立つ人間の矜持を見せつけたのだった（ホントか！？）。



文◎山口智男
写真◎macoty