【ライヴレポート】J、恒例バースデイ公演で新曲披露も「大好きな音楽を求めてまだまだ全速力で突っ走っていける」
この春、コロナ禍による規制が撤廃された中、Jは約3年4ヵ月ぶりとなる“声出し解禁ライヴ”をいち早く開催した。7月1日からはショートツアー<J LIVE TOUR 2023 SUMMER -ENDLESS SUMMER 2023℃->がスタート。そのファイナルとして辿り着いた東京・Shibuya Spotify O-EAST公演が、8月11日および12日の2日間にわたって開催された。
◆J 画像
Jの誕生日である8月12日のライヴは、公式ファンクラブF.C.Pyro限定公演として開催されたものだ。開演を待つフロアで絶え間なく飛び交う男女混声の熱い「J!」コール。SEが鳴り始めるとそれは「Oi Oi!」という掛け声に変わり、masasucks(G)、ゴッチンこと溝口和紀(G)、有松益男(Dr)らメンバーに続き、スラリとした体躯で軽やかな風のように主役が姿を現すと、どよめきが起きた。Jはそれを笑顔で受け止め、両耳に手を当てて更なる声を求めていく。
「東京、待たせたな! 飛ばしていくぞ!」という勇ましいシャウトから「Twisted dreams」を歌い奏で始めると、ヘヴィなリフでたちまち空気を掌握。絶妙のタイミングで合の手を入れるファンの掛け声と共に、一気にドライヴしていく。続く「Evoke the world」で更にフロアを盛り上げて、序盤から一体感を醸成した。
「会いたかったぜ、東京! 毎年こうやってたくさんの人に誕生日をお祝いしてもらえるなんて、本当に幸せな奴だなって噛み締めてます」──J
生配信で参加している画面の向こうの仲間たちにも呼び掛けて、「全員で今日は騒ごうか!?」と扇動すると、ここで早くも「PYROMANIA」を投下。ファンクラブ名の由来であり放火魔を意味する挑発的な暴れ曲だが、曲調が一瞬凪のような静けさへと変わるパートでは、一斉にライターを灯し幻想的な光の光景が広がる。「歌ってくれるか!?」というJからのリクエストに応じてファンは歌唱。本来のライヴの姿、会場が一つになる瞬間が戻ってきたのだ、という感慨が胸に込み上げてくる。間髪入れず「RECKLESS」を放ち、暗闇から視界が晴れていくような開放的なメロディーに酔いしれた。2曲共に、日常を走り抜くガソリンとなってくれるアンセムとしての強度は圧巻である。
「この2~3年間は、“声を出しちゃいけない”とか、もっと言ったら、ライヴに皆がいなかった時(※無観客配信ライヴ)もあったし、いろんなことがあった。でもそれを経て、みんなが本当に大切な音楽を守り続けてきてくれたからこそ、今日こうやってこの場所があると思ってます」──J
熱気に満ちたフロアを嬉しそうに見渡しながら、ファンに語り掛けたJ。感銘を受けたのは、声出し解禁ライヴではあるのだが、声を出したり暴れたりすることを一律に求めるのではなく、個々人のペースを尊重する言葉を選び、投げ掛けていた点である。
「“久々にライヴに来たんだ” “声出しライヴは今日が初めてなんだ”みたいな仲間たちもたくさんいるし、だから、それぞれのスピードで飛ばしてってくれ。俺たちは、騒動を経ていろんなことも学んだし、自由っていうものを、改めて手にしたと思うんだ。だから、みんなの自由をこの場所で表現してほしいな、と思ってます。みんな、今日はそれぞれの想いで、それぞれのスピードで、全力で突っ走ってください」──J
これが用意した“道”である、と紹介して放ったのは、「Route 666」。幕開けの「Twisted dreams」もそうだが、2001年リリースの2ndアルバム『BLOOD MUZIK』に収められているナンバーだ。アグレッシヴなリフとドラマティックなアンサンブルに乗せて、ここはどこだ? 俺は誰だ? 出口はどこだ? と暗中模索する歌詞に、20年以上の時を経た今、改めて惹き付けられる。続く「SIXTEEN」からもまた、Jが真摯な自問自答によって進むべき道を見出して来たことが伝わってくる。激しさ、荒々しさ、力強さを裏打ちするそういった深い内省があるからこそ、Jの音楽には説得力が宿り、人を鼓舞するのだろう。
ショートツアーを振り返り、「みんな待っててくれて。最高のライヴの連続でした。“やっと自分たちのフォームに戻って来たな”って」と、全国各地でファンと過ごした熱い時間を評した。「徐々に取り戻していけたらいいな」と焦らず構えていたところ、「各地、のっけからノッキング起こすんじゃないか?というぐらい、みんなフルスロットルで来てくれた。自分にとって大切なツアーになったな、と改めて思います」と手応えを語った。
「みんなにお返ししたい」という言葉に続き、「未発表の新曲を披露する」と告げると、フロアは大いに沸き立った。新曲は、テンポはややミディアム寄り、伸びやかで爽快なメロディーを持つJらしいロックナンバーで、疾走感に満ちて瑞々しい。お披露目を終えるとJは、これ以外にも新曲を「ガンガンつくってる」と明かし、「今年中に次の作品をつくり始めようと思ってる」と嬉しいコメントも飛び出した。
「今回のツアーに参加してくれたみんな、今日来てくれたみんな、そして、この歳になるまでサポートしてくれたみんなに贈りたい」との言葉に続いて届けたのは、「ACROSS THE NIGHT」。青い光に包まれながら、ギターイントロに続いて艶やかな低音で歌い始めるJ。“壊れたらまた最初からつくり始めればいい”──そう慈しむように歌うサビは、地の部分から1オクターブ上の高音をパワフルに響かせる。ソロ始動時から歌い続けてきた名バラードだが、「歳を重ねていくごとに、当時つくってた想いがどんどん色づいていくような、濃くなっていくような……そんな曲」だとコメントし、「これからもみんなの傍にこの曲があってくれたらいいなと思います」と願いを言い添えた。
「配信組も、会場組も、全員でとことん行くぞ! と煽りながらスタートしたのは「Die for you」。ロックの初期衝動をパンキッシュなサウンドに乗せて炸裂させ、間髪入れずに「BUT YOU SAID I’M USELESS」へ。「Go Charge」「NOWHERE」を立て続けに放ち、ファンに合唱を求め、これでもかと結束を緊密にしていく。不穏なアラートが鳴り響き始め、スタートしたのは「Gabriel」だ。重厚かつ刃物のように鋭利に刻まれるリフ。ブレイクでお立ち台に飛び乗り、眩い光の下、顔を手で覆うJの姿は彫刻的な美しさで浮かび上がった。激しさと神秘性でフロアを攪拌、酩酊、魅了してステージを去っていった。
余韻冷めやらぬ中、聴こえ始めた「J!」コールはやがて「ハッピーバースデー」の合唱へ。オーディエンスは再びライターを灯し、美しい“星空”をフロアに用意してJを迎えた。
「毎年、自分の誕生日をこんなに多くの人たち、仲間たちに祝ってもらえるなんて、本当に俺は幸せ者だなと思います。心から感謝します、本当にどうもありがとう!」──J
一瞬考え込むように眼を細め「53歳だぞ? 自分でもちょっと笑えるんだよな(笑)。自分がこんな歳になるなんて、想像してなかった時代もあって、我武者羅に突っ走ってきて今があって」とこれまでの道程を振り返ったJは、「こうしてみんなに祝ってもらえて、大好きな音楽を求めてまだまだ全速力で突っ走っていける、追求していけるのは本当に幸せだなと思ってます」と喜びを噛み締めると、「やればやるほど、いろんなことをやりたくなる」と尽きない欲求に目を輝かせた。
「自分自身しかできないこと、自分しかできない音楽、Jしかできない音をこれからも追求して、みんなと一緒に最高な景色を見ていけたらなと。いや、俺が最高な景色を見せたいなと。こんな奴のために今日は来てくれてどうもありがとう。53歳も今まで以上にブッ飛ばしていくんで、ぜひよろしくお願いします」──J
メンバーを呼び込もうとしたところで、「毎年恒例の、例のヤツが向かっております(笑)」とJがステージ袖を見遣ると、大きなバースデーケーキがワゴンに乗せられて登場。メンバーも揃ったところで、「俺のわがままに付き合ってくれて、ありがとうございます」と感謝を述べた。ロウソクの火を吹き消した後はいよいよ恒例の、そしてコロナ禍では封印してきたケーキ投げ。Jが腕をケーキに“入刀”し、スワイプさせてフロアに滑り投げる形なのだが、前列には紙皿やタッパーを持ってスタンバイしているファンの姿も。「配信組にもご利益があるように。VR、最新の技術です」とJは真剣な口調で語りながら、アクリル板をかざしたカメラに向かってケーキ投げ。「“最新のVR”の裏側を見てしまいましたね(笑)」といたずらっぽく笑った。「ケーキ食べて!」の声がフロアから飛んで試食すると、「おいしい!」とJ。終始楽しそうに笑い声を立てながら、「こういうのができるのも、コロナの騒動が終わったから。いいね」と感慨深そうに呟いていた。
温かなムードで場が和んだ後、「燃え上がってってくれ!」とJは再度焚きつけて、「Feel Your Blaze」を披露。曲間で「歌えるか!?」とシンガロングを求め、フロアのあちこちを指さし、微笑み掛けて、ファン一人一人と目を合わせるようにして歌い、プレイする。「幾つになっても俺は、この気持ちでいこうと思います!」という言葉に続いて、最後に届けたのは、1997年のソロデビュー曲「BURN OUT」だった。
フロアをゆっくりと見渡し、大きな歓声を浴び続けながら、高く掲げていたベースを外し身一つになったJは、「今日はどうもありがとう! 最高なライヴになりました」と挨拶。秋には東京で次のライヴを開催することを伝え、「全員、一つだけ約束しよう。次会う時まで、何があってもくたばんなよ!」とシャウト。「また会おうぜ!」と再会を誓いステージを後にした。
2020年初頭、コロナ禍でライヴは悪者とされ、不要不急と断じられもした。しかしJは同年6月、早々に無観客配信ライヴに挑戦した。以来立ち止まることなく様々なトライを重ね、音楽を守るために、熱心な活動を貫いてきたアーティストの一人である。配信画面の向こう側にいるファンを明確にイメージし、投稿コメントをピックアップしながらコミュニケーションを図っていた姿が思い出される。有観客での開催が実現しても、2023年春までは声出しが禁じられてきた状況下、ルールをしっかりと守りながら、Jとそのファンは熱いライヴを着実に積み上げてきた。その結果、ようやく“本来のフォーム”を取り戻すことのできたこの場所で、喜びを噛み締める時がやってきたのだ。暗闇の中でも存在を信じ抜き、Jがその仲間たちと共に大切に燃やし続けてきた炎、つまり、音楽への熱い想いを目の当たりにする、格別な一夜だった。
取材・文◎大前多恵
撮影◎田辺佳子
■F.C.Pyro.限定公演<J BIRTHDAY LIVE 2023>2023.8.12(sat) Shibuya Spotify O-EAST セットリスト
02. Evoke the world
03. PYROMANIA
04. RECKLESS
05. Route 666
06. SIXTEEN
07. NEW SONG
08. ACROSS THE NIGHT
09. Die for you
10. BUT YOU SAID I'M USELESS
11. Go Charge
12. NOWHRE
13. Gabriel
encore
en1. Feel Your Blaze
en2. BURN OUT
■<J LIVE TOUR 2023 SUMMER -ENDLESS SUMMER 2023℃->2023.8.11(fri) Shibuya Spotify O-EAST セットリスト
01. break
02. Wake Up!
03. PYROMANIA
04. RECKLESS
05. Route 666
06. SIXTEEN
07. Twisted dreams
08. ACROSS THE NIGHT
09. OVER DRIVE
10. BUT YOU SAID I'M USELESS
11. Go Charge
12. NOWHRE
13. Gabriel
encore
en1. Feel Your Blaze
en2. Endless sky
■<J LIVE 2023 FALL INCREDIBLE 4 NIGHTS -TOKYO LIVE CIRCUIT->
10月29日(日) 東京・新宿BLAZE
11月23日(祝) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
11月24日(金) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
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