【連載】Hiroのもいもいフィンランドvol.125「ロックファンにお勧め!The 69 Eyesのドラマーユッシ69がオーナーのヘルシンキの人気のロックバーThe Riff 8周年を迎える」
フィンランドのロックやメタルファンの方にはすでにおなじみかもしれませんが、ヘルシンキの人気ロックバーThe Riffが今年6月開店8周年を迎え入場無料のパーティがあり行ってきました。バーのオーナーの一人は人気のゴシックロックバンドThe 69 EyesのドラマーでフィンランドのRadio RockのDJでもおなじみのユッシ69!そして今年の8周年記念パーティには何とマイケル・モンローが出演!
マイケルにとってはソロでパブリックに初めてのアコースティックライブだったそうですが、最初は1時間の予定だったのが、マイケルの希望で2時間に延長!それでも終わらなくて「まだ聴きたい?」と結局アンコール3曲という大サービス!これが無料で観れた!というのはなんともラッキーでした。
アンコールではユッシ 69 もステージに登場し、木箱を叩いて音を出す打楽器カホンで参加!平日だったと言え、会場は中も外のテラスも人でいっぱい。最後「Tragedy」や「Up Around the Bend」など盛り上がらないわけないですよね。テラス側のガラス戸が外されていたので、ベビーカー押して通りかかった男性が立ちどまって聴いてたり、フィンランドでは知らない人はいない人気のロックスター・マイケル・モンローのライブがそうやって気軽に聴けるって最高ですよね。
2列目から撮った動画ですが、その時のライブはこんな感じでした。
このライブ前にユッシ 69がこんなエピソードを語ってくれました。
「若かかった頃壁だけでなくて天井にまでいっぱいHanoi Rocksのポスターをはってて、すごくライブを観に行きたかったんだけど、フィンランドのライブ会場は未成年者が入れない会場がほとんどで、ラズルがなくなったことはすごく残念だったけど、そのすぐ後にヘルシンキのKulttuuritaloであったライブを最前でみることができて、そのライブは昨日のことのようによみがえってくる。その日のマイケルのスピーチとかマイケルがアメリカで足首を怪我してたのにまさにロックスターのライブで素晴らしかったこととか、アンディがピアノ弾きながら始まった”Million Miles Away”で、アンディが指2本立てて手を挙げたら当時のクルーだったスペデが火のついたタバコを持ってきたり細かいことまでよく覚えてる。俺は小さい頃からロックバンドでプレイするのが夢だったんだ。女の子やお金が目的じゃなくてただ単にロックバンドでプレイしたかったんだけど、このライブを観て自分のやりたいことがはっきり確信できた。Hanoi RocksがなんといってもNo.1で、他にもNew York Dollsとかのインタビュー記事も読んだりはしてたんだけどとにかく俺にとってとっても重要なバンドでそれは今でも変わらない。マイケルの本の中でHanoi Rocksは自分にとって世界一重要なバンド、たぶんRolling Stonesよりもなんてことを光栄にも語らせてもらったこともある。でももし無人島に一つどのバンドかのアルバムを持っていけるとしたら発売したアルバムの数が多いRolling Stonesかもしれないけどね(笑)。Hanoi Rocksの元メンバーのみんなとはとても良い関係をたもてていることは光栄に思う。マイケルとは”Pirates Of The Baltic Sea”って曲で共演もした。
最初に演奏してお金がもらえたのはアンディがアメリカから帰ってきた時に参加した”Briad Revisited”で、それは俺のロックンロールハイスクールであり、17冊本が書けるぐらい(笑)とても特別な経験ができた。”Tragedy”を演奏し始めると自分が12歳だった頃にフラッシュバックして戻った気がしたよ。アンディ・マッコイについてネガティヴなことはなにもいうことない。彼はとってもスィートハートの持ち主でアンディともとてもうまくいってる。2人とも特別なパーソナリティを持ってて、マイケルとアンディがいなかったらこの世界はつまんなかったに違いない。
ナスティとは何年か前に知り合ったんだけど、サミとは一緒にやったこともあってすごくいい奴だよ。今日マイケルが来て出演してくれるのは俺にとってとっても重大で素晴らしいことなんだ。
The 69 Eyesのメンバーの中では自分が一番新しくて1990年に加入した。きいた話によるとThe 69 Eyesがまだバンドとはいえなかった頃、ユルキ(ヴォーカル)は歌えなくて、漫画を描いてたのでフライヤーを作ってサポートしたかったようなんだけど”Taxi Driver”(Hanoi Rocks)ならどうだって?ってことで、一番最初に練習したのが”Taxi Driver”だったそうだ。俺が最初にバンドと会ったのは加入する前にいたバンドがジョニー・サンダースがなくなった後行われた追悼ライブJohnny Thunders In MemoriamにThe 69 Eyesと一緒に出演した時だったんだ。69の前のドラマーが今日はサウナの日だから練習に出れない(後ろでそれを聞いたマイケル爆笑)とかあったりで、俺が加入することになった。今でもこのバンドを始めたばかりの頃と同じ気持ちでいるよ。」
この8周年記念の日は時間があまりなくて、2週間後にThe 69 Eyesのヘルシンキ公演がありサウンドチェックの前にThe Riffで改めてユッシ69がインタビューに応じてくれました。
──まずはじめにThe Riff 8周年おめでとうございます。自分のロックバーをオープンしようと思ったのはなぜですか?
ユッシ69:ありがとう!偶然にもいろんなロックバーを知る機会があって、最初はハンブルグでクラブ・イブニングのDJやることがあり、そのあとDJする機会が増えてイタリア各地や東京のファッションショーとかベルリン映画祭とか、フィンランドのいろんなナイトクラブにエンターテイメントマネージャーとして招待されて、今ここでやってるような仕事をやる機会も増えて、それなら自分でバーを開いたらどうかという夢を持つようになった。この前にオーナーだったBar Bakkariの他のオーナー2人と3人で2年ぐらい新しいロックバーを計画しながら開く場所を探してたんだ。そして実現することができた。周りの人からこれはリスクの高いビジネスだと言われたりもしたんだけど、それからもう8年が過ぎた。コロナで閉店になってしまったバーもけっこうあったけど、幸いにも噂が広まってこのバーは持ちこたえることができたよ。
──この8年間の間にいろいろな思い出があると思いますが、これまでの中でハイライトはなんですか?
ユッシ69:思い出はいっぱいある。毎晩がハイライトみたいだ(笑)。予定を立ててここに来ても、何かしらサプライズがあったりする。最近だとRammsteinが来たり、マイケル・モンローが8周年記念にライブやってくれたのは素晴らしかった。先週Rock Festに加えてもう一つ別のフェス出演もあったりで、車で夜間走って家に着いた時にはくたくたで日曜でやっと寝れると思ってたらグレン・ダンジグがバーに来たいと連絡があったりで、毎晩何が起こるか想像がつかない。ハイライトはとってもポジティブなフィードバックをもらうこと。最高のスタッフだとかカクテルが最高だったとか、とってもいい雰囲気だったとか。噂が広まって世界中から訪れに来てくれる。ここはロックバーだが、70歳超えてる脳外科医のお気に入りバーでもあるし、銀行員も来てくれるし、Five Finger Death Punchをはじめフィンランド公演のあるロックバンドはみな来てくれる。
──8周年記念にマイケル・モンローの入場無料のライブがありましたが、他にも時々無料ライブあるし、バンドマンのみなさんが普通にこのバーに来て時間過ごしたりもよくあると思いますが、このバーにまつわる何か面白い思い出はありますか?
ユッシ69:いっぱいありすぎるよ(笑)。2015年のことだけど、当時まだよく知らなかったFive Finger Death Punchのクリス・ケールがやってきて、ここのバーに彼のベースを置かないといけない。あそこの壁にと場所を指定されたので、ここにペンがあるから指定した壁に予約しておいたらどうだと言ったら壁にベースの絵を描いて、彼のベースを飾る場所が決まっていたんだけど、それから1年以上たってたと思うけど、クリスがベース持ってやってきてひざまずいて、サー、これを!ってベースを差し出したんだ。それが今壁に飾られてる。そういう素晴らしい思い出がある。
そして今座ってるこの部屋The Hate Loungeにはアレキシが俺にプレゼントしてくれた世界で一つしかないサイン入りのアレキシ・ライホのギターが飾られてる。お返しはなんにしようか?ってことで、この部屋にアレキシにちなんだ名前を付けたんだ。
──このラウンジはレンタルできるんですよね?
ユッシ69: あぁ、できる。ここでプライベートの誕生日会とかする人がいるよ。
──話はThe 69 Eyesに移りますが、この春待望のニューアルバム『Death of Darkness』をリリース、日本盤もWard Recordsから発売になりましたね。この前のアルバム『West End』がリリースになったのはコロナがやってくる直前2019年にリリースになってますが、このニューアルバムを作るにあたって、コロナの影響はありましたか?
ユッシ69:とくになかったと思うよ。2019年にアメリカとヨーロッパで長期ツアーを行って世界をツアーしたことになるんだけど、俺たちがコロナですべてが閉鎖になる前に世界をツアーしてまわった最後のバンドだったかもしれないな。今回のアルバム制作にあたっては2000年代『Blessed Be』や『Paris Kills』を制作した頃のように1曲づつ作っていった。2000年にシングル「Gothic Girl」をリリースした時はまだアルバム制作には取りかかってなかったんだ。今回はその時のようにまず最初のシングル「Drive」を1年以上前にリリースして、昨年秋に先にリリースになったシングルをEPにまとめたんだ。日本の状況は違うかもしれないけど、最近はアルバム発売して1週間もたったらアルバムはもう古くさく感じてしまう。50年代とか60年代のアーティストはシングルを中心にリリースしていた時期があって、ほぼ毎月ニューシングルが出ていた頃があったんだ。エルビスとかRolling Stonesとか。その頃に戻ってきた感じがする。俺にとってはそれはそれでいいなと思う。若いtiktokの世代は長いものを最後まで見る集中力がないというか、15秒ほどがちょうどよいのかもしれない。でも真のファンはアルバムをちゃんと聴いてくれるし、最新アルバムのフィードバックもよかった。俺自身はこのニューアルバムにわくわくしたよ。
──このニューアルバムの中に80年代後半に人気あったフィンランドのバンドBoycottのカヴァーで 「Gotta Rock」が収録されていますが、この曲をThe 69 Eyesが初めて披露したのはヴォーカルのユルキ69がフィンランドの人気TV番組”Vain Elamaa”(フィンランドの人気シンガーたちが生活を共にし、それぞれの曲をカヴァーしあい、ディナーの席で苦労話をしてお茶の間をほろりとさせるTV番組)に出演した時ですが、この曲はその前にもともとアルバムに収録する予定でカヴァーしていたのですか?それとも番組で披露して反応がよかったからですか?
ユッシ69:番組に関連してで、この曲は俺たちみんな好きな曲で、80年代Boycottのライブを観に行ったこともあるし、この曲がはいってるカセットテープも持ってる。とても素晴らしい曲だ。今回この番組にBoycottのヴォーカルでもあるトンミ・ランティネンが出演してて、ならもちろんこの曲をカヴァーしようってことになった。30年以上も前にすでに素晴らしい曲であったし、個人的にこのオリジナルの曲も俺たちのカヴァーヴァージョンもどちらも好きだよ。
──オリジナルの曲は知らないので、私にはまさにThe 69 Eyesの曲に聴こえてライブでやってもぴったりきて気に入ってます。
ユッシ69:そういってもらえて嬉しいよ。
──ニューアルバム収録曲で「This Murder Takes Two」は他の曲とサウンドがちょっと違ってて、アメリカのタトゥ・アーティストでもありシンガーでもあるキャット・ヴォン・Dとのコラボですが、彼女とはもう長年の友達なんですよね?
ユッシ69:そうなんだ。2000年代の初め頃から知り合いで彼女は俺たちのファンでもあり、以前にもコラボでデュエットしたことがあるんだ。今回この曲はちょっとカントリーっぽくしたくて、アーチィ(ベース)がこの曲は女性とデュエットしたらいいんじゃないかとアイディアをだして、すぐにキャット・ヴォン・Dが浮かんだ。個人的にも彼女の新作はとっても好きだよ。
──The 69 Eyesのスケジュールを見ると今年前半はソールドアウト続出の国内ツアー、ヨーロッパツアーに加えて北米ツアーもあり、夏はフェス出演がびっしり詰まってますが、今年のこれまでのツアーで一番素晴らしかった思い出はなんでしょうか?
ユッシ69:まだ発表されてないのもあるよ(笑)。ラス・ベガスであった Sick New World フェスは特別で素晴らしかった。出演バンドの数がとにかく多くて、何かしら起こっていた。例えばフィンランドで最大級のフェスといえばRock Festがあるが、3日間で約5万人が集まったけど、この Sick New World には1日で8万人が集まって規模が違ったよ。ものすごく暑かったけど、ロスの中心部で開催されて、ステージから周りの高層ビルが見えたのは特別だった。
──このフェスにはフィンランドからVVことHIMで知られるヴィッレ・ヴァロも出演してましたよね?
ユッシ69:そうなんだ。フィンランドから出演したのは俺たちとVVのみだった。KornやDeftonesとかSystem Of A Downといった大物バンドも出演してたし、ゴシックバンドではThe Sisters of Mercy、Ministry、Cradle of Filth、Body Countとかとにかく出演バンドのリストはものすごく長かったよ。あれは素晴らしい経験だった。でもとにかく暑くて、観客の中にも熱中症で倒れて運び出される人もいるぐらい暑かった。
──The 69 Eyesの他にもThe Local BandやDJとしても来日していますが、何か特別思い出に残ってることとかありますか?
ユッシ69:日本を愛してるよ!もしライブがはいらなくても日本に行きたいな。それぐらい大好きだ。大阪には2度しか行ったことないけど、東京には何度か行ったことあって、これまで世界のいろんな国を訪れたけど、日本は何か違って特別なものを感じてすごく好きだよ。文化ももちろんだけど、人々がフレンドリーなとこも、ビジュアルも好きだし、自然もいいし、渋谷あたりのハイテク、原宿の通りを歩くのも好きだし、日本料理も好きだし、素晴らしい国だよ。
──次回日本に行った時に時間があればどこに行きたいですか?
ユッシ69:これまでに行った場所にも行きたいし、以前The Local Bandで来日した時マネージャーが来いよって誘ってくれたけど、行きそびれた富士山にもまだいったことなくていってみたいな。マネージャーは朝早く起きて行ったんだ。The Local Bandでは大阪も行ったし東京でもライブやった。もともとThe Local Bandはライブ1回限りの予定だったのに、それからまだそんなに経ってないうちにLoud Parkにも出演となった。大きなステージでとてもいい思い出が残ってる。
──ラジオからブライアン・アダムスの「Summer of 69」が流れるといつもThe Local Bandのライブを思い出してしまって恋しくなります。
ユッシ69:俺もそうだよ。ライブで演奏してた曲を聴くと思いだして恋しくなるよ。
──夏の終わりまでびっしりスケジュールがつまってますが、夏以降の予定は?
ユッシ69:実のところ、このあと最初の休日は大晦日なんだ(笑)。The 69 Eyesもあるけど、ラジオの予定もびっしりでカレンダー見る勇気がないぐらいだよ(笑)。たまには何も考えずビーチに横たわるのもいいと思うけど、そういうのんびりの生活に慣れちゃうとインスピレーションがわかないし、このカオスな生活が好きだ。一日一日を着実に生きるようにしてる。今はまだ言えないけど、今年中になにかいろいろサプライズがあるよ。
── ではそのサプライズを楽しみに待つことにします。最後に日本のロックファンにメッセージをもらえますか?
「コンニチハ!The 69 EyesのJussi 69だよ。俺たちThe 69 Eyesのニューアルバム『Death of Darkness』チェックするの忘れないでくれよ。世界中で一番大好きな国日本に行ける日が早くやってくることを待ちきれないよ。素晴らしい夏を!Much of love & Kisses!Jussiより。アリガトウ!」
The Riffの店内にはバンドの写真や寄付されたギター、訪れたバンドマン達の写真とサインなど飾られてます。
以前このコラムで紹介したこともあるメタルバンドRebellixのヴォーカル&ギタリストのサムエル・ホンカヴァーラがバーカウンターにいたりもします。
この取材の後は観客の後ろにウスペンスキー寺院が見える港のほとりにあるライブ会場Allea Sea PoolでThe 69 Eyesのライブがあり、お天気も良くすごく盛り上がってました!
フィンランドでアルコール飲料が飲める年齢は18歳以上なので、18歳以上のロック・メタルファンの方、ヘルシンキに来ることがあればぜひ立ち寄ってみてください。住所は Iso Roobertinkatu 3です。アレキシ・ライホにちなんで名前が付けられたThe Hate Loungeを借り切って誕生日会を開くのも素敵な思い出に残るかもしれませんね。
最新アルバムから4曲MVが公開になっています。まだの方チェックしてみてください。
文&写真:Hiromi Usenius
◆【連載】Hiroのもいもいフィンランドまとめページ