【インタビュー】緑仙、にじさんじ所属ライバーの覚悟と決意「自分はこうありたいという願い」

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■これからについての曲を作りたい
■「ジョークス」は覚悟の曲です


──そして2020年5月には、にじさんじ内ユニットRain Dropsとしてメジャーデビュー。1st ミニアルバム『シナスタジア』が各チャートで1位を獲得するなど、大きな注目を集めましたが、ユニットの活動で得られた経験値はかなり大きいのでは?

緑仙:すごく大きいですね、もちろん。ふだんはYouTubeでの配信がメインだったから、本格的なレコーディングや全編通して出演するライブは初めてだったんですよ。ネット超しではなく、リアルにお客さんがいる前で歌うことって、やりたくてもなかなかやれないじゃないですか。メンバーやたくさんの大人(スタッフ)と一緒に作品を作れたことも大きかったです。人と何かをやるのはすごく難しいし、すごくやりがいがあるんだなって。もともと友達がいなかったから、 コミュニケーションは大変だったんですけど(笑)。

──メンバーと一緒に活動することで、“自分の強みはここだ”という発見もあったのでは?

緑仙:技術面などは当時も今も“まだまだだな”と思うんですけど、Rain Dropsで強く感じたのは、“自分はたぶん、ずっとがんばれる”ということで。それまでは“どこまでやれば、もういいかなという気持ちになれるんだろう?”と思ってたんです。でも、そこにたどり着くのはまだまだ先なんだなって。Rain Dropsに参加して、「すごい話題じゃん」「めっちゃ売れてるね」みたいに言われても、どうしても脳みそが“納得しない”という方向に行くんですよ(笑)。不満というわけではないけど、まだいけるというか、“我々のことを知らない人って、たくさんいるんですよ”ってかわいくないことを考えてしまう。それは自分のいいところだし、これからもなくしたくないと思ってます。


──上手くいっても、“まだ先がある”という気持ちが先に立つ。

緑仙:そうですね。自分は、すべてにおいて甲子園を目指しちゃうところがあって。部活動とかクラス活動でも1位を取りたくなるというか、“やるならしっかりやろうよ”と思ってしまうんです。“やれることは全部やるし、120%で取り組まないと、いつか後悔する”という謎の信念もあったり(笑)。でも、部活とかって全員がそう思ってるわけじゃないから、どうしても温度差が出ちゃってたんですよね。Rain Dropsはそうじゃなくて。自分が大人になったのもあるけど、“こうしたい”と言えば受け入れてもらえるし、良いとされる。それがすごくうれしかったんですよね。“自分はこのままでいいんだ”って思えたし、受け入れてもらえた気がして。ずっと幸せですね、それ以来。

──2021年2月に1stミニアルバム『It‘sLie』を自主制作で発表しました。

緑仙:ソロとして出していた曲をまとめた作品なんですが、“自主制作の域を出ていないな”という気がしていて。自分が楽しいと思うこと、やりたいことをやってるだけというか。コンセプトや全体の雰囲気はまとまってるんだけど、それだけなんですよね。自分に音楽的なプロデュース力はないし、経験値もぜんぜん足りない。ミニアルバムの手ごたえとしては、正直、“……”という感じですね。



──では、緑仙さんの誕生日4月16日にリリースされた「ジョークス」について聞かせてください。久々の新曲ですが、これは「イツライ」の続編として制作されたそうですね。

緑仙:はい。どこから話せばいいかな……まず、さっき言ったように“自分の音楽は自主制作の域を超えてない”という意識はずっとあって。ミニアルバムを出した時期までは“自分はこんな人です” “こんな歌も歌えます”というアピールしたい部分もあったんだけど、それも必要ないなと。実際、曲を出すペースも遅くなっていたんですよね。去年の6月にシングル「エンダー」をリリースしたんですけど、その後もずっと出していなくて。ただ、デビューして5年になってしまうし、新しい人たちがどんどん出てくるなか、ここで改めて腹を括って、覚悟を決めてやらないといけないと思い始めたんですよね。ぼろまるさんにそのことを伝えて、「これからについての曲を作りたいです」とお願いして。「ジョークス」は覚悟の曲ですね。

──「ジョークス」は、「イツライ」と同じく、“期待してもしょうがない”というフレーズではじまりますが、楽曲のベクトルはかなり違いますね。

緑仙:そうですね。この前、ぼろまるさんがラジオ(緑仙がパーソナリティをつとめるラジオ番組『AuDee CONNECT』)に来てくれて、「この曲は僕の願いです」と言ってたんですよ。「2020年から緑仙さんと一緒にやってきて、今、改めて曲を作ることになったときに、“緑仙さんにはこうあってほしい”という願いを込めた」って。“そうなんだ!”と思ったし、すごくうれしかったですね。

──グッとくる話ですね…。“退路も無用 イバラに塗れて ちゃんと歩くから”というフレーズも印象的でした。

緑仙:今までは、そのときの現状しか歌えなかったんです。“もがいている、苦しんでる、でもがんばってる”という。「ジョークス」はそこから踏み出して、“いくぜ!”という決意表明なんですよ。ちょっと話が戻っちゃうんですけど、YOASOBIのAyaseさんに作っていただいた「エヴァーグリーン」も“自分はこうありたい”という願いを込めた曲だったんです。“こういう形で進んでいくから、みんなについてきてほしい”という。「ジョークス」を作ったことでやっと1曲目に戻れたというのかな。こういう曲を自分を持って出せたのはすごくよかったと思うし、ちょっとずつ自分の理想に近づけているのかなと。


▲「ジョークス」

──「ジョークス」のレコーディングにはどんな気持ちで臨んだんですか?

緑仙:レコーディングは…難しかったですね。「イツライ」の続編と明言してますけど、「イツライ」自体も当時と今ではかなり歌い方が違っていて。ちょっと余裕が出てきて、あまり辛そうじゃないんですよ(笑)。いや、辛いことは辛いんだけど、辛さの中身が違うというのかな。「イツライ」とつながっている部分、成長しているところを表現するのは本当に難しかったです。

──ボーカル表現の幅も広がってますよね。

緑仙:まず音域が広がりました。以前は出せなかった高さの音を出せるようになったり、裏声から地声の移行もスムーズになって。それはシンプルにボイトレのおかげですね。

──「イツライ」から「ジョークス」までの3年間で、緑仙さん自身が変化した部分、変わらないところを教えてもらえますか?

緑仙:そうですね…。結局、自分という人間は変わらないと思っていて。一生、辛いんだろうなと思うし、根っこは同じですね。ただ、上の部分はすごく変わった気がしています。「ジョークス」の一行目で“期待してもしょうがない”と歌ってますけど、周りに期待することをやめて、自分でできるだけ足掻くようになったというか。“勝手に期待するから裏切られる”と理解してるつもりでも、これまではどうしても諦めきれなくて。つい“こうしてほしい” “何で気づいてくれないんだろう?”と思いがちだったんですけど、良くも悪くも、そういう期待を完全にシャットダウンしました。人にはそれぞれの立場や考えがあるし、“自分はこう思うけど、相手はそうじゃない”と考えられるようになって。“緑仙のことが嫌いな状態で、自分に関わっている人なんていない”というところに落ち着けたのも本当に大きい変化だなと思います。

──ファンの方との関係性も大事だと思いますが、先ほども話に出たラジオ番組も大きいんじゃないですか? リスナーのみなさんとのコミュニケーションの場になっているというか。

緑仙:そうですね。ずっとYouTubeのアナリティクス(アクセス解析)の数字やコメントでしかリスナーさんを把握できてなくて。でも、ラジオには小学生から60歳の方までメールを送ってくれるし、自分の音楽を聴いてくれてる人たちを具体的に認知できるんですよ。ライブをやるたびに“みんな、本当に存在してたんだね”って思うんですけど(笑)、ラジオも近いところがあって。“みんな、いるんだね”ってホッコリするし、元気をもらってます。

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