【インタビュー】Rest of Childhood、<10代無料ライヴ>開催に踏み切った本当の理由「大人が責任取らないでどうするんだ」

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元OLDCODEXのYORKE.ことHAL(G&Vo)、元Hysteric BlueのTakuya(Dr)、元RIZEのu:zo(B)からなるトリオバンドRest of Childhoodが、全7公演の全国ツアー<The Terminal “Tour '23”>に続いて、4月8日の名古屋ハートランドを皮切りに東名阪ツアー<The Terminal Tour '23 追加公演 “CA$H BACK” >を開催する。タイトルに冠された<CA$H BACK>は、その言葉通り“お金を払い戻す”というものであり、10代に限りチケットが実質無料(前売りチケット5,000円。19歳以下を対象に学生証持参で5,000円キャッシュバック)になるというものだ。このアイデアは、前回のBARKSインタビュー終わりのメンバー同士の会話の中から生まれていた。

◆Rest of Childhood 画像

Rest of Childhoodの活動初期から幼稚園や学校をまわって生演奏をしていたTakuyaとHAL。そしてこのコロナ禍での現状を打破したいと思っていたu:zo(B)もキャッシュバック企画に即座に賛同。社会活動『子ども食堂』の取り組みをテレビで見たことがあるというTakuyaがそれをヒントに実現することになった。「結果、“レスチャ好きじゃない”と思ってくれてもいいんです」とはこのインタビューで語られた言葉だ。コロナ禍によって選択肢が失われた時代に、光を灯す企画でもある。

この3年間の未曾有の事態を客観的に振り返り、音楽そのものの持つ力で、ネガティヴな要素をポジティヴに上書きするべく気持ちを新たにしたというRest of Childhood。逆境の時もライブハウスに立ち続けた3人だからこそ、その発言は葛藤も含めて時に生々しく刺さってくる。三作目の流通盤シングル「MILK」の取材時からまた未来に向かって進み始めた3人の現在地を刻んだインタビューは、マスク着用を条件にようやく声出しが解禁になったツアー<The Terminal “Tour '23”>のリアルについて、そして<The Terminal Tour '23 追加公演 “CA$H BACK” >についてじっくりと語ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

■心から音楽が好きかどうか
■こういう時こそ試される

──現在<The Terminal “Tour '23”>の真っ最中ですが、マスク着用にて声出し解禁となった今、ステージで感じている変化や手応えは?

u:zo:単純に、俺はレスチャ(Rest of Childhood)に加入して客席の声が聞けるのは初めてだし、新鮮ですね。今までは声が出せない状況の中、早く解禁になればいいなと思っていたんだけど、いざツアーに出てみたら、今度は声がひとつの反応のバロメーターになるわけで、それってシビアだなって。コロナ禍真っ只中のときは気づかなかったけど、何か失ったものがあるんじゃないかと思ったんです。

──失ったもの?

u:zo:逆にいうと、動員や会場規模を含めて、もっと上にいきたくなったのかもしれないですけどね。声援があるからこそ、さらに演奏に集中しようと。もっとみんなに感動してほしいという気持ちが強まりました。


▲HAL (G&Vo)

──ツアーに出る前はそんなことは思っていなかったんですよね。

u:zo:全く。“声出せる! やった!”っていう気持ちで臨んだんですけど、もっともっといい声が聞けるように、しっかり音楽に向き合っていかなきゃいけない。

HAL:今、u:zoが話したことがバンドのマインドそのものですね。コロナ禍で、マスクしてイスを並べてやっていた時には、みんなが声を出せないから、今思うと俺も、必要以上に煽っていたんですよ。ライブハウスは本来「跳べ!」とか「声出せ!」って言わなくても勝手に声出して騒ぐ場所のはずなのにね。

──お客さんは所定の位置から動かずに、声を出さずに、ということが義務づけられていましたから。

HAL:だから、今のツアーは俺も、自分たちの楽曲をどう届けるかというところにフォーカスを当てていて。結果、前より演奏が上手くなった気がするし、出来ていないところも見えるようになった。それまで音楽に向き合ってなかったわけじゃないけど、振り返ってみると、この3年はけっこうストレスだったなって。みんなが声を出せないからMCも長く喋ってたし、それが正解なのか、答えがわからなかったよね。

──コロナ禍はライブバンドにとって試行錯誤の期間でしたか。

HAL:それが声出し解禁となって、“イエーッ!”って俺も思ったけど、急にコロナ前の状況に戻るわけではないから。理想は音楽をしっかり届けること。キャパシティっていう目標の達成は、その結果だっていうこともわかってる。今はそこに向き合いながら、ツアーをやってます。当然、1本1本のライブは充実しているし、今しかできないことをやっている気持ちはもちろんあって。ただ、もっともっと楽しめるし、もっともっとフロアと一体になれる。そう思っている時期かな。

──ひとつ前へ進めている感覚も?

HAL:コロナ禍ではぶっちゃけ動員を気にしなかったというか、とにかく“乗り切ろう”っていう気持ちでやっていたんだよね。だけど、今は動員とか現実的なことがある。そういうことも考えつつ、まずはメンバーを信じて、この瞬間を届けようって。ネガティヴな状況があったとしても、ポジティヴに上書きしていくために、自分たちができることはまだまだあるなって感じですね。

Takuya:今、HALくんが言ったことは、無茶苦茶わかるんですよ。特に、動員だったり、声援というレスポンスだったりって、フロントで歌っている人間が一番ダイレクトに肌で感じるわけじゃないですか。まだ声出し解禁になったばかりで、お客さんの熱量も上がりきらないところもあるかもしれない。もともと日本人ってシャイだからライブハウスで“うおおおお!”って叫ぶのって自分の中のハードルを超えた先にある行為だと思うんです。それがコロナ禍のマスクで、より壁を作ってしまった気がするんですね。


▲u:zo (B&Cho)

──マスクが心理的な壁も作ったということですよね。

Takuya:せっかくフェス文化が盛り上がっていたのにねっていう。今はライブハウスの日常を取り戻す第一歩の段階だから、“ここまで騒いでもいいんだ”とかタガを外してあげる手伝いが僕らの演奏やパフォーマンスを通してできたらいいなと思う。サービス精神じゃなくて音楽の力によってね。

u:zo:みんな音楽が好きなのにね、壁が出来ちゃったことは間違いない。

HAL:それも目に見えない壁だからね。

u:zo:その壁を壊すのには、自分自身が心から音楽を好きじゃないといけないと思ってるんです。だから、ライブを観に来て、“レスチャ好きじゃない”と思ってくれてもいいんです。“音楽が好きだな”と思って帰ってくれたら、それでいい。

HAL:こういう話って、3人でよくするんだよね。

──ライブハウスの現在だったり、バンド活動のリアルだったりですか?

HAL:イベントで名古屋に行った時の昼間、3人で今みたいな話をしてたんだよね。u:zoが言うように、こういう時こそ音楽が好きかどうか、が試される。いざ、ライブが始まったらすごく楽しかったから、“まだまだ絶対にやってやる”と思ってるんだけど。

u:zo:観に来る人たちも音楽が好きだし、音楽に敏感なんですよね。だからこそ、バンド側の音楽に対する姿勢が問われるんですよ。

Takuya:u:zoの思考ってポジティヴというよりも、ミュージックラバーズなんですよね。いつでも音楽を愛しているから、ないがしろにしない。僕は関西人やし、ステージで盛り上がってお客さんとぐっちゃぐちゃになりたいし、笑いもあっていいし、弾けたいっていう考えだったから。だけど、u:zoが「一緒に最強のリズム隊になりたい」っていう気持ちを教えてくれたんですよ。振り返ると、まだHALがYORKE.名義だった時期に僕が“u:zoくんとやってみたい”と思ったのがキッカケで、そこからこの3人になったわけで。

HAL:そう。以前からu:zoと知り合いだった僕からじゃなく、Takuyaが「連絡をとったほうがいい」と言ってて。

Takuya:その後、このメンバーになって、BARKSに“鉄壁トリオ”って書いていただいたじゃないですか。そうありたいし、たとえ音源と同じことをやっても、ドラムとベースだけになったときはもちろん、HALと3人でバーンと鳴らした時にどれだけ音の立体感を出せるか。どれだけ厚みやエモみやロマンが出せるか。そういうことを意識しながら1本1本のライブがやれるようになりましたね。

──実際、ツアー前半の川崎 Serbian Nightでライブを観せていただいたときに、“エモい”という言葉が何度も頭の中に浮かんだんです。それに、ライブハウスの大切さも再確認した。自分自身の中にあった壁も取っ払ってくれた気がして、行ってよかったと心から感じました。

u:zo:そういう人が増えてくれるなら、どれだけ辛くてもバンドやっててよかったと思いますね。

HAL:ホントにそうだね。チャート1位を獲るより、今の言葉のほうが嬉しい。

Takuya:そう言っていただけたら、まだまだやれますね。

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