【対談】Rest of ChildhoodのHAL × 漫画家のふるかわしおり、共鳴する異業種と増幅するシナジー「曲を聴いたときにキャラクターが無理なく動いていく感覚」
Rest of Childhoodにとって三作目の流通盤シングル「MILK」がタワーレコード渋谷店、梅田NU茶屋町店、名古屋パルコ店にて、完全数量限定盤として発売された。自身初の女性目線によるラブソングは新たな試みだが、そのジャケットのイラストを手がけているのは佐藤流司主演でドラマ化もされた学園ラブコメディ『ファイブ』の作者でもある漫画家、ふるかわしおりだ。
◆HAL × ふるかわしおり 画像
Rest of ChildhoodのジャケットはこれまでHAL(G&Vo)の別名義であるペインターYORKE.が手掛けてきたが、漫画家とコラボして作品を発信するのも初めてのこととなる。ライブを通じて出会い、長い時間をかけて交流を深めていったというHALとふるかわしおりに「MILK」によって生まれた刺激的なコラボレーションについてたっぷり語ってもらった。
なお本作のミュージックビデオは、「MILK」のストーリーを漫画に描く、ふるかわしおり書き下ろし作になるという。その片鱗がRest of ChildhoodオフィシャルSNSにて現在公開中だ。
◆ ◆ ◆
■主人公の名前が浮かんでこないのは
■漫画家人生で初めてのことだった
──三作目の流通盤シングル「MILK」のジャケットのイラストは漫画家のふるかわしおりさんの書き下ろしですが、そもそもお二人が出会ったのはいつ頃なんでしょうか?
HAL:知り合ったのは10年以上前だよね。以前、僕がやっていたユニット(OLDCODEX)のライブに来てくれたのがキッカケで。
ふるかわ:そうですね。
HAL:彼女は漫画家で、僕は絵を描くので、「何か一緒にできないかな」っていう話をしていて、確か絵を描いてきてくれたんだよね。
ふるかわ:最初は仕事ではなく、OLDCODEXのイラストを描きたくて描いていたんです。その後、「私が連載している漫画でコラボできたら面白いかも」っていう話をさせてもらったことがあって。
HAL:漫画家と知り合ったのも初めてだったんだけど、話した時のフィーリングが良かったんじゃないかな。で、『カリガリ!』(2013年〜2014年『Cookie』掲載)という漫画で初めてコラボして、物語の中にYORKE.というキャラクターが登場したことがあった。
ふるかわ:そう。『カリガリ!』の中でグッズのコラボもさせてもらったんですよ。Tシャツと時計とイラストだったり。その後もライブを観に行ったり、普通に友達付き合いをさせてもらっていて。『カリガリ!』のときは私のほうからお願いしたコラボだったから、今回、HALくんサイドから話をいただいて、コラボさせてもらったのが嬉しいことだなって。
HAL:レスチャ(Rest of Childhood)を結成してからも、いつもライブに遊びに来てくれますね。渋谷でライブがあった時には打ち上げにも参加してくれたので、メンバーに紹介して。確か、その時に今回の「MILK」の話をした気がする。
ふるかわ:1年ぐらい前だったんじゃないかな。ライブに誘ってもらって、後に電話で「今、こういう曲を作ってるんだけど、一緒に何かできたら面白くない?」とか、話をしたのがスタートだった。
HAL:そうだっけ(笑)?
▲HAL(G&Vo)
──長い付き合いがあっての今作のコラボだったんですね。
HAL:「MILK」は、Rest of Childhoodとして勝負を賭けようと思っている曲なんですよ。女性が主人公の恋愛の歌詞って書いたことなかったし。
──一人称が“あたし”ですからね。
ふるかわ:聴かせてもらったら、失恋ソングをロックと融合させていて、音は前向きなんだけど歌詞は切なくて、そのギャップがいいなって。
HAL:「MILK」という楽曲は、“失恋した女の子がライブハウスでRest of Childhoodのライブを観て、その疾走感で前に進もうとする”ってイメージで作ったのね。恋愛がうまくいかないっていうファンの話をヒントに想像を膨らませて作った曲でもある。曲自体は完結してるから、最初はジャケットを描いてもらうんじゃなくて、「MILK」を題材に漫画家ふるかわしおりが新しい作品を描く、という話から始まったんです。女の子目線で書いた曲だけど、僕は男だから、しおりちゃんに女性の視点で解釈してもらえたら、答え合わせができるんじゃないかなって。
ふるかわ:曲を聴いた時に、自分の中でキャラクターが無理なく動いていく感覚があったし、私もいいものが作りたかったから、イメージを具体的にしたくて、「主人公と男の子は何歳ぐらいなの?」とか、いろいろ訊いたんです。
HAL:曲のイメージは伝えたけど、「何歳なの?」って具体的な質問をされて。自分の中でイメージがふわっとしてたなと思ったし、“漫画ってそういうふうに捉えて描くんだ!”っていう面白さがあった。音や歌詞は完成していたけど、しおりちゃんとのやりとりで、「MILK」の設定がより鮮明になった気がする。それが曲に対する想いや、ボーカルにも影響したんだよね。そういえば、話していく中でしおりちゃんが、「主人公の名前が出てこない」って言ったことがあったんだけど。
ふるかわ:そうそう(笑)。
HAL:漫画のストーリーを考えてると自然に主人公の名前が浮かんでくるんだって。
▲ふるかわしおり
──降りてくるように名前が出てくるんですか?
ふるかわ:はい。浮かんでこないのは漫画家人生で初めてのことだったんですよ。いつもは登場するキャラクター全員に名前があって、家族構成も決まった上で漫画を描いていくんですけど、「MILK」は何回呼びかけても答えてくれなかったんです。
HAL:こういう話、めちゃめちゃ面白いんですよ。
ふるかわ:“なんで答えてくれないんだろう?”と思っていたんですけど、もしかしたら、主人公はRest of Childhoodを聴いている人の集まりなのかもしれないって。
HAL:名前が多すぎたんだね。
ふるかわ:「MILK」をライブで聴いたことがある人たちの分身というか。名前がたくさんあるから答えてくれないのかなという結論に至ったんです。HALくんから教えてもらった解釈は2つあるんですけど、その1つは女の子は本音をミルクを薄めていて、男の子はタバコの煙で本音を薄めているっていうこと。
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