【ライブレポート】SNSから世界へ。新たな挑戦を始めるSG「なんとなくの僕を終わらせます」

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日韓ダブルのシンガーソングライター・SGが3月22日に開催した<SG 1st Concert “FINALE” #SGproject>。この日は彼が信頼するアーティストとのフィーチャリング楽曲を制作する「#SGproject」の集大成であり、“このアルバムが人生のフィナーレになっても悔いはない”という思いで制作された1stアルバム『FINALE』のリリースライブであり、新しい世界に飛び出していくための分岐点でもあった。セットリストはシングル曲15曲に新曲1曲を加えた『FINALE』の曲順どおり。曲間やMCタイムもほぼ設けず、アルバムをフルで再生していくのと同じような没入感を味わうことができた。

◆ライブ写真

ステージの幕が中央から両開きになると、スツールに腰掛けたSGが現れる。ギター、ベース、ドラム、DJのサポートメンバーを引き連れ、夜の似合う洒落たピアノのフレーズがシンボリックなセンチメンタルなチルナンバー「Instagram」でこの日の始まりを飾った。「ひとくちのキス」では甘い空気に包み、「Way Back Home」では強い意志を感じさせるひたむきな歌声で魅了。1stシングル曲の「Lily」はステージの背景全体に、街の雑踏や雪が降り注ぐシーンが映し出され、そこに歌詞が映像作品の字幕のように流れる。観客一人ひとりを楽曲の物語により深く引き込んでいった。


アルバムの世界を現実世界に立ちのぼらせつつ、ライブという生演奏ならではのグルーヴを用いながら楽曲を映画のようにドラマチックに表現する。ロックナンバー「断捨離」は、もやもやとした感情を吐き捨てるようなパワフルでひりついたボーカルもさることながら、赤と黒を大胆に用いた照明もエキサイティングだった。楽曲、映像、ステージ、照明など様々な手法を効果的に使用することで、枠にとらわれない立体的なライブを実現させていく。様々な文化や音楽ジャンルをクロスオーバーさせながら理想の表現を追求してきた彼の生き様が表れているようにも感じさせられた。


中盤からは「#SGproject」の楽曲が多く続き、フィーチャリングアーティストが代わる代わる登場する。「LOVE JENGA」ではスウィート&ビターな吉田凛音の歌声とともに艶やかな空気を作り、ダークでヘヴィなトラック「Lotto」ではNovel Coreとシリアスかつユーモアに富んだパフォーマンスを披露。Aile The Shotaを招いた「閃光」は観客もシンガロングやクラップで参加し、感傷的なメロディも相まってロマンチックなムードを高めていく。ギアが上がるなかなだれ込んだ「東京パラダイム」は、鳥居と摩天楼をミックスした斬新なアートワークのムービーと、SGの挑発的なラップに目を見張った。




場内が暗転すると、波の音とカモメの鳴き声に乗せてSGと鈴木鈴木がステージに登場。夏のアバンチュールを軽快に歌い上げるハイテンションナンバー「Y.O.L.O」を届ける。サビでタオルを回すなど観客を巻き込んでいくと、曲中で鈴木鈴木がSGに花束を手渡すという小粋な一幕が。SGも予想外のサプライズだったようで、ふたりをハグして見送った後に「こんなことしてもらえると思わんかったわ」と驚きと喜びの表情を浮かべた。「CHOA」では頭の上でハートマークを作るなど飾らないムードで歌唱したり、バンドのソロ回しとともにメンバーを紹介したりと、観客とライブならではのコミュニケーションを取る。歌い終えた後、あらためて「この5人で絶対に忘れられない1日にします!」と意気込んだ。



信頼関係にスポットを当てたステージが続くがゆえに、友情をテーマにした楽曲がよく映える。「Friends」でRude-αとともに情熱的かつピースフルな空間を作り、桜の映像とノスタルジックなピアノの音色が卒業式を彷彿とさせた「心友」では熱くストレートな気持ちを歌に込めた。暗転から再びライトアップすると、SGとNovelbright・竹中雄大のふたりがアカペラで「死んでもいいや」を歌い始める。時代を超えて胸に響く正統派J-POPバラードと、交流が深いふたりだからこその息の合ったハーモニーに、間奏でのたびにフロアから大きな拍手と歓声が起きた。



大輪の花火をバックにポップナンバー「君に会いたいと願ったって」を歌い上げたSGは、「夢の中にいるような感覚です。楽しすぎて話そうと思っていたことが全部吹っ飛んじゃった」とこの日の充実を語ると、いま思う気持ちを率直に口に出していった。


13年前に韓国から日本に留学をし、そこで「歌の才能があるから歌ってみたらどうか」と声を掛けられ、自分に才能があるのかわからないままなんとなく音楽をやっていたという。3年前もコロナ禍でなんとなく動画をアップしてみたところ好評だったからなんとなく続けていたが、自分の音楽を愛する人のことを考えると“なんとなく”では続けられないと話す。そして「この『FINALE』というアルバム、この公演で、なんとなくの僕を終わらせます」と力強く語り、「3年前から画面の向こうから応援してくれて本当にありがとう! これからは俺がちゃんとこの足で君たちに会いに行くから!」と叫びながら呼び掛けるとヒットソング「僕らまた」へ。観客一人ひとりと目を合わせるように歌う姿が印象に残った。


サポートメンバーが去り単身ステージに残ったSGを、雨音と青いライトが包み込む。アルバムを締めくくる、彼がひとり宅録で制作した「rainy day」である。最高の仲間たちとカラフルなステージを届け続けたこの日のラストは、非常に内省的なものだった。ひとり広いステージでマイクスタンドにもたれかかりながら歌う。だがこの寂寥感や孤独感こそ、彼を新しい世界へ突き動かしていくパワーの源なのかもしれない。切ないけれど凛とした佇まいは、新しい出会いを切に願うようにも見えた。



深く頭を下げてステージを去ると、ステージの背景には感謝を綴った彼の直筆メッセージが映し出される。そして終演後からほどなくして、様々なメディアを通じて彼がLDH Recordsとタッグを組んで自主レーベル「SUPERGENIUS Entertainment」を設立すること、今夏メジャーデビューを控えていることが発表された。強力なパートナーがついたことで、彼が掲げる「“Music has no borders.──音楽には国境がないことを証明する」というテーマも規模を大きくすることだろう。SNSから世界へ。彼の新しい挑戦が始まる。

取材・文◎沖さやこ

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