【インタビュー】SG(ソギョン)、SNSを駆使し国境もジャンルも超えるオリジナル曲を連続リリース
YouTubeやTikTokを中心に活動する、韓国人の父と日本人の母を持つシンガーソングライター・SG(ソギョン)。2020年6月にTikTokへ初投稿した動画“韓国人が日本の曲を本気で歌ってみた”がいきなり多くの人々の目に留まり、その後も投稿する動画が軒並みヒットを続ける。同年末にはオリジナル曲のデジタルリリースを開始。2021年4月にリリースされた3rdシングル「僕らまた」は、別れの切なさと再会を願うポジティブな思いを綴った歌詞が、世代を超えて共感を集めた。2022年6月からは彼が信頼するアーティストをフィーチャーした楽曲をリリースする“#SGproject”を始動。SNSを駆使し、国境もジャンルも超えた活動を精力的に続けている。音源リリースだけにとどまらず、次々とアップデートしながらコンテンツを発表し続ける彼の目指すもの、音楽への思いを探っていった。
■僕は100%日本人だし100%韓国人という2つのアイデンティティ
■だから“Music has no borders.(音楽は国境がない)”を掲げています
――お名前の表記は“SG”ですが、お呼びする場合はエスジーさんとソギョンさん、どちらがいいのでしょう?
SG:どっちなんだろう。まだ僕の中でも定まってないんですよ(笑)。そうですね、アーティストとしては「エスジー」、愛称として「ソギョン」って呼んでほしいです!
――わかりました(笑)。せっかくなのでこれまでの活動を振り返るところから始めさせてください。TikTokに動画をアップしたきっかけは2020年のコロナ禍だそうですね。ライヴハウスで活動していたSGさんにとって、SNSはどんな空間として映っていましたか?
SG:最初はSNSには否定的だったんです。というのも、その当時は“ライヴで音楽を届けてこそアーティストでしょう!”という思いもあったんですよね。でもどんどん動画のSNS媒体が増えていくのを見ているうちに、自分もやってみたいなという気持ちが湧いていって。実は初投稿の前に一度、お試しでアップしてみたんですよ。
――どんな動画だったんですか?
SG:4、5人分のヴォーカルをひとりで録音して、ひとりアカペラカヴァー動画を作ったんです。でも全然観てもらえなくて。ものすごく時間を掛けて良いものを作ったのに……とムキになってあらためて違う方向性からトライしてみたら、ありがたいことにいきなり2回バズったんですよね。
――“韓国人が歌ってみた”シリーズですよね。韓国語で自己紹介をしたあと、流暢な日本語でYOASOBI「夜に駆ける」やOfficial髭男dism「I LOVE...」といった難易度の高い楽曲のカヴァーをする。
SG:ちょうどその頃、noryさんの“喋り声ブスな俺でも歌ったら大優勝”という動画が流行っていたんですよね。そこから着想を得て、日韓ダブルで、韓国生まれで韓国で育って、10代半ばで日本に移り住んだという自分の経験を生かした動画を作ってみたら結果が出たんです。ちゃんとnoryさんにもDMでその件を伝えて、“大丈夫ですよ。頑張ってくださいね”と言っていただきました。せっかくバズったので、もうちょっとちゃんと動画づくりを研究し直すことにしたんです。自分だからできることをいろいろ試してみた結果、たどり着いたのが“日本の曲を韓国語で歌ってみた”でした。
――瑛人さんの「香水」の歌詞を、韓国語に翻訳してカヴァーした動画ですね。
SG:当時こういうことをやっている人はいなかったから、パイオニアになれるかもしれないなと思ったんです。そこから韓国語の曲を日本語に、日本語の曲を韓国語に、英語の曲を日本語や韓国語に……というのをやり始めたことで新しいバズを作ることができました。
――歌詞の意味がわからなくて外国の音楽を敬遠している人も、韓国語や英語がわかる日本の人も、それこそ海外の人も楽しめる動画だと思います。
SG:やっぱり世界には、母国語以外わからない人も多いと思うんです。歌詞の意味がわかるからこその楽しみ方はあると思うし、それなら僕は日本語も韓国語も英語もできるし音楽もできるから、それを聴いてもらえたらなと思ったんですよね。僕は世界中のアーティストの訳詞を作る仕事もしていきたいから、そのアーティストが何を伝えたいのかを自分なりに汲み取るのはすごく勉強になっているんです。あと、日本のZ世代の子たちには韓国語を勉強していたり、韓国語を勉強したい子がたくさんいるんですよ。
――そうですよね。高校だと選択科目に韓国語がある学校も多いですし、K-POPが日本で聴かれるようになってもう10年以上経ちますし。
SG:K-POPアーティストも、韓国語の曲をジャパニーズヴァージョンとして日本のシングルに収録することが多いので、そこから着想を得たところもあります。“SGさんの訳詞を公式にしてほしい”みたいな肯定的な意見もいただくし、“この曲は日本語のほうが良い”とか、“日本語のままが良い”みたいな意見もあって。そういう賛否両論あって盛り上がっていったところも大きいですね。いろいろな意見があって良いと思っているんです。
――SGさんはどの言語も発音がしっかりしていることも、支持を集めている大きな理由だと思います。
SG:小さい頃から日本のアニメが大好きだったので、発音とかはそこで覚えたんですよね。母が日本人なんですけど、韓国に住んでいたときはあまり日本語教えてくれなかったなあ(笑)。だから初めて日本に来たとき、日本語は敬語しかしゃべれなくて。でもギャル男と仲良くなってしまったおかげでチャラい日本語を覚えていきました(笑)。その影響が和訳にも出ている気がする……。
――(笑)。生きてきた過程が表現に生かされるのはとても健全だと思います。小さい頃には人種差別に苦しんできていた経験もおありとのことですが、そんなSGさんから見てもだいぶ時代も変わってきているのでしょうか。
SG:はい、だいぶ変わったと思います。「君に会いたいと願ったって」のMVに出てくれたらんさんも韓国の方なんですけど、彼女も日本人の友達が多いし日本語で発信していたりと、SNSで積極的に国際交流をしているんですよね。影響力のある人が日常的にしている行動は、見ている人にとっても自然なことになっていくし、好意的に思っている人も増えていると思っていて。ちょっとずつ人種間の壁は開けてきていると思いますね。それに、差別する人に“なんで差別をするの?”と理由を聞いてみたとして、それをはっきり語れる人は少ない気がするんです。“誰誰さんが嫌だって言ってたから”とか“あんまり良いイメージがないから”みたいな意見は、差別する理由になっていないと思うんですよね。
――そうですね。
SG:確かに日本と韓国は昔いろいろあって、その時代を生きていた人が思うこともいろいろあると思うんです。でも今の10代20代は、そこから良い方向へ発展させていきたいという思いを持っている人が多い気がしています。だから僕も「“Music has no borders.”―音楽には国境がないことを証明する」を掲げているんです。僕は半分韓国人で半分日本人なわけじゃなくて、100%日本人でもあるし100%韓国人でもある。2つのアイデンティティを持っているからこそ歌えるもの、書けるものがあるんじゃないかと思っています。
――それはSGさんがライヴハウスで活動していた頃から、一切変わっていない信念ですよね。
SG:まったく変わっていないですね。昔のインターネットは住んでいる国のことしか閲覧できなかったりしたけど、今はどんどん広くなっているから、昔以上に国境がない。YouTubeやTikTokというツールだからこそできることがたくさんありますね。
◆インタビュー(2)へ
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