【インタビュー】10-FEET、5年ぶり9thアルバムを語る「25周年の集大成みたいなことで言うなら“コリンズ”」
■バンドとしてすごくいい状態
■3人ともお互いに頼りにしていた
──それで新作『コリンズ』の話なんですけど、いろいろ吹っ切れた感じがする。
TAKUMA:ホンマですか。あんまりね、計算して作れなかったんで。レコーディングスタジオに行ったその日に発案して作って録った曲もあったし。聴いたときにどんな作品なのか、あんまり俯瞰で見れてなかったかもしれない。でもアルバム作りも今回で9回目なんで、3人とも、なんとなく分かってたと思うんですよ。“あそこにこういう曲あったらいいな”とか“こんな曲が来たらおもろいな”とか。それを感じながら3人ともやってたから、新しい案が突然出てきても、誰も驚かないというか。“そうやな”って感じでやってましたけどね。
──既発シングルの曲(表題曲5曲+カップリング2曲)も入っているから、かなり前からアルバムを見据えて走り始めていたんですか?
TAKUMA:いやいや、そんなことはない。でもシングルを2枚か3枚出したら、次はアルバムってのは感覚としてあったんで。なるべく違った曲を出していたほうがいいなっていうのは、3人ともあったと思うんですよ。シングルのカップリングでさえ、3人の感覚は共有できていたと思いますね。突拍子もないことが出てきても、“それぐらいせなあかんよな”って。共有できている部分が増えたうえで意見が分かれたりするから、バンドとしてすごくいい状態じゃないかなって思いますね。
──暗黙の了解がずっと存在しながらスタジオに入っていたという?
TAKUMA:暗黙の了解ってものが増えつつ、意見を交換できているっていう。「それはちょっとどうかと思う」って言うときもあれば、「そうは言ったけど、そういうことならいいか」みたいに素直になったというか。ただただ楽曲のことを考えて話しているなって感じでしたね。それぞれの好きとか好みも含めて。
▲NAOKI (B, Vo)
──スタジオでは実際にどういうやり取りが?
KOUICHI:デモで形があるやつは、いつもみたいにスタジオで音を出して合わせていって。デモを基本にやっぱりやってたか。
NAOKI:そうやな。
TAKUMA:そこまでは早くなったな。一旦、バンドで形にして、そこからグワーッと話そうかって。だって今回は時間がないのを3人とも体感的に分かってたから(笑)、そこまではむっちゃ速かった。
NAOKI:シングル的なものが5曲も入っているってのが初めてやったんですよ。TAKUMAが言ったように5曲とも全部カラーが違うし。“そこに新しく入れる曲はどういうものがいいのか”って、今回は肌感で分かってたというか。
KOUICHI:構成やアレンジはみんなで考えてやりましたけど、けっこうデモに忠実というか。どうやってやってた?
NAOKI:アレンジの時点で、「こういうアプローチしたらこの感じになるから、逆へ行ったほうがいいよね」とか。そんなやり取りはあった。アプローチ次第で曲の感じが変わるんで。
KOUICHI:「今までの10-FEETの曲のパターンならこうやけど、ちょっと変えようか」とか。
NAOKI:「コード進行は変えずに、アプローチを変えよう」とか。
──けっこう時間も掛けられたんですか?
NAOKI:いや、掛けられたというよりも、時間はなかった(笑)。“ここまでに絶対に仕上げなあかんっ”ていう意識もあったし。
──<作戦>の速レポを書いているこっちの気持ちに近い感じが(笑)?
KOUICHI:完全にそれ(笑)。限られた時間の中で精一杯やるという。それやと思う。
NAOKI:あと今回は、曲ごとにいろんなレコーディングエンジニアさんとお仕事させてもらったんで、いろんな意見をもらえたのが、いい感じでできた要因になっていると思う。「この方向性ならこういう感じの音のほうがいいんちゃいます」とか。そういうやり取りができたのも大きかった。
──それを求めて、いろんなエンジニアを起用したんですか?
NAOKI:時間がなかったというのもありますけど、新鮮でした。初めて一緒に仕事をさせてもらえたエンジニアさんばかりだったんで。
▲KOUICHI (Dr, Cho)
──吹っ切れたなと感じたのは、衝動とかバンドの熱が全曲に入っているからなんですよ。
KOUICHI:今までのは、それ、あんま感じなかったですか(笑)?
──考えすぎなところもあったかもしれない。でも今回は、楽曲それぞれの顔つきがハッキリしている。
KOUICHI:うん、そうですね。
──で、生まれたときの衝動をほとばしらせながら形になっている。なにかが起こってるなと、バンドに。
KOUICHI:限られた時間で一生懸命にガーッとやって、その感じが曲にも全部出てるんでしょうね、多分。
──気の迷いがない感じがしますもん。
TAKUMA:気の迷いはなかったと思いますね。例えばお互いに意見が分かれたとき、これまでの固定観念とか先入観、メンバーのお互いの個人的な関係などを踏まえずに話ができていたんじゃないんですかね。“この音楽をどういうふうにしたら良くなるか”ってことに対して、自分の意見や思いを50%、相手のアイデアに対して“確かに”って思うことを50%、というのをけっこうキープできていたように思う。レコーディングの時期や時間的な制限と、全国ワンマンツアーや<太陽が丘ワンマン>もあってというのが、いい形で作用したんじゃないかなと。必要な分だけ入り込んだり、必要な分だけ感情的になったりして、余計なものなしに伝えられたから、すごく良かったと思う。
──時間も限られていたのもあって、純度が高いまま突き進むことができたんですか?
TAKUMA:うん、純度は高かったと思いますよ。話し合う量とか迷ったり考えたりする時間は前のほうが長かったけど、それが短くなった分、純度が上がったと思いますね。余計なこととか、余計な思いとか、抱いている暇もなかったから、けっこうシャープやったなって思ってるんです。手っ取り早くという感じではなく、思いをグッと伝えて、“そうやな”って思いで突き進めたから。けっこう、3人ともお互いに頼りにしていた分、頼りになれたレコーディングやったんちゃうかな。任せられるところは任せていたし、得意なところをそれぞれ任せられたんちゃいますか。
──それがいわゆるバンドのケミストリーが形としても現れて、曲の熱の高さにつながってるんでしょうね。アルバム聴いていて、久々にギターをクローゼットから出したからね。
TAKUMA:えっ、なんかアレンジ考えてくれるん(笑)?
──いや、アレンジは考えない。いいなと思って耳コピしようと。そうやって、弾かせようとするぐらいの熱量ある曲たちってことです。
TAKUMA:嬉しいこと言ってくれますね、ほんま、ありがとうございます。
──収録曲「まだ戻れないよ」など、卓真ソロにも通じるアンプラグド的な曲を、10-FEETの作品にも放り込んできたのはどんな考えからですか?
TAKUMA:「ギター1本で歌う楽曲があってもええんちゃうの」って、最初にKOUICHIが言って。どのバンドさんやどのアーティストさんの作品にも、よくあるじゃないですか。アルバムの中にアコースティック1本の曲が1〜2曲入っていることが。“そういや、そういう感じではあんまやってこなかったな”と。でも10-FEET的には珍しい手法やったから、“NAOKIはどう思うんかな?”と。“それちゃうやろ”ってなるんかなと思ったら、意外とそういう感じでもなく、なんも言わへんかったから。新しいアイデアとか普段やらへんことが出てきて、それに対してNAOKIがなんも言わへんときって、たぶんいいんですよ。一言ぐらいあっても良さそうなのに、ないのは珍しいから、“これはやったほうがいいな”って。そういうちょっとした基準があるんですよ(笑)。
NAOKI:“まず、やってみてから”と思ったんですよね。やってみてバンドっぽくなかったから「やめといたらええやん」というぐらいの感じ。だから、まずやってみて、と。それで黙っておきました(笑)。
TAKUMA:ああ、今回はよう言ってたな。「とりあえずやってみて決めようや」って。
KOUICHI:たぶん、今回は全てそれやったと思う。
NAOKI:やってみて“違う”と思ったらやめておいたらええし。
TAKUMA:何回も言うてたな、その感じで。フレーズとかもそれやった。「とにかく一回、それやってみよう」って。僕らは今まで、やる前から“どうせこうなるから”って、やってもいないのにやめたり、揉めたりすることも多かったから(笑)。「まずやってみよう」って。けっこう制作の最初のほうからそういう感じでした。今回の合言葉は「やってみて、聴いて決めよう」ですね。
──やってみると“どうかな?”と思ってたものも、意外に良かったりしたわけですか?
NAOKI:そうです。やってみて、フレーズやアレンジもいい感じで、曲もいい感じで、やる意味もしっかりしていたら、10-FEETがやる価値があるなって感覚でいました。
──なんか起こってるなと思ったら、そこでしたか。やってみて決めようってのは、無邪気にバンドってものを楽しんでいる感じがするし、まずやってみるというのが、推進力にもなっている気がするんですよ。
TAKUMA:うん。
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