【インタビュー】ハナフサマユ、2ndアルバムに描いた等身大の物語「ひとりの人生と結晶の輝きを」

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ハナフサマユが10月19日、約1年ぶりとなる2ndアルバム『結晶』をリリースする。テーマは「1曲目から11曲目まで、ひとりの人生を描くように曲順を選考する」というもの。結果アルバムには、出会いも別れも、喜びも悲しみも、それらすべてが意味深い“愛や涙”として、積み重なる人生のように輝かしい“結晶”として、ここに完成した。という意味では、言葉のひとつひとつ、アレンジのひとつひとつが有機的に絡まり、それらアルバム1枚を通した深いストーリーにこそ、『結晶』の真価があると言い換えることができるだろう。

◆ハナフサマユ 画像 / 動画

“前進”をテーマとした前アルバム『Blue×Yellow』インタビューでは、「今回のアルバムで幅広いアレンジや歌唱に挑戦したんですけど、さらに進むため、また違った曲の書き方をしたり、曲で伝えたいメッセージの向ける先をもっと広くしたい」と語っていたが、その活動が実を結び、ドラマ『今夜、わたしはカラダで恋をする。』主題歌に抜擢されるなど、同世代の女性から多くの共感と支持を集めている。また、『結晶』ではスタイルを一新、髪をロングスタイルに戻し、メガネを外し、赤い洋服に赤い口紅がオトナの魅力を漂わせた。曲作りにも、アートワークにも今のハナフサマユの心情が大きく反映されたという『結晶』について、じっくりと訊いたロングインタビューをお届けしたい。

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■アルバムタイトルの『結晶』は
■私自身のことでもあるんです

──約1年ぶりとなる2ndアルバム『結晶』に向けた制作は、いつ頃からどんなふうに始められたのでしょう?

ハナフサ:去年10月に前アルバム『Blue×Yellow』をリリースさせていただいて、早めのタイミングで「次もまた出したいよね」という話をしていたんです。なので、『Blue×Yellow』を皆さんに届けていく中で曲作りを始めました。



──前作から間を空けずに制作に入ったということですが、テーマも早い段階で決まったんですか?

ハナフサ:出来上がった数曲を私を含めたチームで聴いたときに、「人生を歌っているようなイメージがあるね」という話になりまして。人生をアルバムのテーマにして、それを踏まえて曲を書いたり、「曲の並び方も人生を感じさせるようにしよう」というふうに、いろいろなことが決まっていきました。

──1曲目から11曲目まで、ひとりの人生を描くように曲順を選考したそうですが、大きなテーマですね。

ハナフサ:はい。そうやって制作を進めていく中で、今年2月に戦争が起こったんですよね。

──ロシアによるウクライナへの軍事侵攻ですね。

ハナフサ:前アルバムが『Blue×Yellow』というタイトルで、ウクライナ国旗はブルーとイエローじゃないですか。それもあって、遠い国で起きている他人事とは思えなかったし、なにもできない自分の無力さみたいなものも感じて。これをきっかけにして、世界平和を願った曲をアルバムの1曲目にしたいと思ったんです。ただ、今までも世界平和を歌われた方はたくさんいらっしゃって、世界規模で歌われている有名な曲も多いと思うんですね。最初は私もそういう曲を作りたいと思っていたんですけど、全然駆けだしの新人で、経験も浅いので、説得力がないし、大きなことを言えるわけもないと気づきまして。なので、世界平和とは言えないかもしれないけど、自分の近くの人を大切にすることが、まわりまわって巡り巡って、大きな幸せにつながっていくということなら私でも歌えるかもしれないと思ったんです。「この美しい世界で」はそういう思いのもとに作った曲です。


──楽曲「この美しい世界で」については、「世界平和を唱えるほどの力は無くとも、隣にいる人の、大切な人の幸せをただ真っ直ぐに願うことが未来を繋ぐ。そんな世界であってほしいと希望を込めた曲」とコメントされています。“いつもいつもこの世界のどこかで生まれる命が 誰かの不幸を望んだり傷つけることはないのに”という2番の歌詞に感銘を受けました。

ハナフサ:2番の歌詞は最初に自分が書いたものから大きく変えたんです。「もう少し違う視点で書いてみたらどうかな」という意見がチームの中から出て、何度も何度も曲に向き合いながら選び出した言葉で。なので、2番は自分の中ですごく鍵になっています。

──争いや憂いが描かれつつも、希望に溢れたナンバーです。歌詞に寄り添うアレンジも見事で。

ハナフサ:「この美しい世界で」に関しては、アレンジャーさんに「少ない楽器から始まって駆け上がっていきたい」と要望させていただきつつ、おっしゃるように、どこか希望が射し込むようなものにしたいと思っていたんです。

──「この美しい世界で」もそうですが、アルバム全体をとおして、翳りを帯びていながら温かみがあるという絶妙なエモーションを含んだ曲が多いですね。

ハナフサ:深みというものを意識してアルバムを作った部分があるんです。私自身、すごく明るいわけでもなく、でもネガティヴに染まりたくないという気持ちがある。なので、ポジティヴを飼うように生きているんです。すごく明るい人でもずっと明るく生きることはできないし、暗い人も希望を探して生きていることは確かなわけですから。今回はそういうことをアルバムで表現したかった。私はステージ以外でキラキラしているわけではないので、等身大で音楽を作っていることが、そのエモーションに繋がっているのかもしれません。


──音楽に自身を反映させることはシンガーソングライターとして大事だと思います。その制作についてもうかがいたいのですが、デモ音源はどれくらい作り込みますか?

ハナフサ:ギターで弾き語った状態までです。

──ストリングスアレンジとかはアレンジャーさんが?

ハナフサ:私の曲はストリングスが常に入っているような感じで、それがキーになっているんですけど。今、アレンジをお願いしている方とは結構一緒に作品を作らせていただいていて、私のことを理解してくださっているんですね。なので、先ほどお話ししたようにデモ音源をお渡しするときに言葉でいろいろと伝えます。たとえば、「ここはこの楽器でこういう旋律」というような具体的な要望ではなくて、「こういう感じにしたい」ってイメージを伝えたり。ですから、アレンジャーさんは大変だと思います(笑)。

──弾き語りで制作されるシンガーソングライターの方は、抽象的なニュアンスでアレンジャーに曲の方向性を伝えることが少なくないですよね。“宇宙っぽい感じ”とか“猫のイメージ”とか。

ハナフサ:そうなんですね。実際にどういう楽器を鳴らすとそうなるのかがわからなくても、私の中には明確なイメージや音像があるんです。なので、「こういう世界観がいい」とか、「こういうことを感じさせるものにしたい」ということをお伝えするようにして、アレンジャーさんと一緒に作っていく感じかもしれません。

──丸投げするのではないわけですね。

ハナフサ:丸投げすることはありません。ただ、私がイメージしているものとチームの考えが違うときもあって。今回のアルバムでいうと「スイマー」が特にそうで、深くて重いことを歌っている曲なので、私は暗めのアレンジにしたいと思っていたんです。だけど、「それだとアルバムの中で流れていくだけの曲になってしまうんじゃないか」という話になって。結果、アレンジ的にはわりと爽快な感じにしました。

──たしかに歌詞とアレンジのギャップがフックになっています。

ハナフサ:アレンジャーさんも含めて、チームの意見に耳を傾けるようにすると、自分だけでは気づけない視点が発見できる。一度自分の考えを疑うことで、また新たなテイストの楽曲を生み出すことができたんだと思います。

──柔軟性を持った理想的なスタンスですね。

ハナフサ:私の中には軸みたいなものがあって、それに色づけをしてくれる人がいっぱいいるんです。チームにはそれぞれに持ち場があって、私は自分の曲を作って歌うこと。アレンジはまだできないですし、セルフプロデュースが上手いわけでもない、撮影とかデザインもプロフェッショナルな方々が入ってくださる。そうやって一緒に色づけていただけるからこそ形になるんです。だから、アルバムタイトルの『結晶』というのは、私自身のことでもあって。いろんな人の力が加わり、ひとつの形としてアルバムになっていますから。

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