【インタビュー】ハナフサマユ、4thアルバム『色彩』に12色のアイデンティティ「自分の得意を極めることが今回の挑戦」
大阪発シンガーソングライターのハナフサマユが10月2日、4thアルバム『色彩』をリリースした。アルバムには、12色入り絵具のカラーをそれぞれ当てはめた、文字通りカラフルな12曲が並んでいる。
◆ハナフサマユ 画像 / 動画
イメージカラーが描き出すのは、繊細に揺れ動く感情の数々。可能性を秘めた“白”のきらめきを歌う「彩りキャンバス」、トゲトゲしい感情をロックに乗せて吐き出す“黒”の「憂さ晴らし」、“ピンク”の桜が思い浮かぶ旅立ちの歌「春と門出」、華やかなサウンドで“赤”い情熱を歌い上げる「トリコ」などなど、多彩な人間らしさと愛すべき個性を肯定しながら、誰しもの人生に寄り添ってくれる1枚だ。
これまでの挑戦を経て、改めて自分自身を肯定すべく向き合ったという彼女に、アルバムに込めた想いを語ってもらった。
◆ ◆ ◆
■テーマは“どれもひとつの個性”
■色とりどりの12曲をアルバムに
──それぞれ色をテーマにした12曲が収録されているということですが、このコンセプトはどういうふうに思いついたんですか?
ハナフサ:アルバムを作る前に「春と門出」と「栄光に向かって」をデジタルシングルとしてリリースしたんです。「春と門出」は桜のピンク、「栄光に向かって」はスポーツやオリンピックのイメージで金メダルの黄色、という色が自分の中で見えていたんですね。そのあと、アルバムのタイトルやテーマを考えている時に…前作の『バートレット』は私の好きな緑色をテーマカラーにして好きなものを追求したアルバムだったので、逆に“いろんな色があっていいよね”というところに辿りついて。そこから“色彩”をテーマに作っていきました。
──前作に続き、最初にコンセプトやテーマを決めてからアルバムを作っていったんですね。
ハナフサ:はい。『バートレット』でやってみて、このやり方がすごくやりやすかったんですよね。普段からいろんな主人公目線でいろんな曲を書くんですけど、今回は“どれもひとつの個性”というテーマにすることで、色とりどりの12曲をアルバムにまとめあげる軸になってくれたと思います。
──曲の主人公はさまざまでありつつ、音楽としては全体的にメロディアスで歌を活かしたアレンジの楽曲が多い印象がありました。アレンジ面で意識したテーマはあったんですか?
ハナフサ:今回は、より自分の得意なところを際立たせたアルバムを目指しました。これまでいろいろ挑戦してきて、もちろん勉強になったんですけど。やっぱり改めて自分の個性、ハナフサマユとして良いと言ってもらえるところをより引き立たせたかったんです。だから、音数の多い凝ったアレンジというよりは、あくまでもシンプルなベースに少しずつ色を増やしていくようなイメージで。曲としても、自分の得意なあたりから始めて、少しずつ遊びを加える感覚でした。同時に温かさみたいな部分はずっと意識していたので、今言っていただいたように歌を中心とした全体的なまとまりが出たのではないかなと思います。
──いろいろやってきたからこそ、ある意味原点に立ち返られるという。
ハナフサ:そうですね。デビューしてからいろんな楽曲をリリースしてきた中で、良いと言ってもらえるものの方向性がわりと同じで。それが、自分の中で良いと思うものと同じだったんですね。“私の個性はきっとここだ”ということがはっきりしたから、そこに寄せていけたというところはありました。
──自分の得意なところを伸ばすという選択肢が選べるようになったのは、挑戦してきた結果ですね。
ハナフサ:メジャー1stアルバムの『Blue × Yellow』で挑戦して、2ndアルバム『結晶』で“前進”と掲げて、前作『バートレット』では自分の“好き”を追求して…というかたちでやってきたから、今回ここに行き着けたんだと思います。何も挑戦していないというわけではなくて、自分の得意なところを極めることが、今回における挑戦だったというか。
──1曲目の「エリンジウム」がまさにそこなのかなと思いました。伸びやかな歌とストリングスが印象的で、メロディアスな楽曲です。
ハナフサ:そうですね。ストリングスに関してはずっと大事にしているところですし、それプラス、自分の声の持っている色をなるべくクリアに届けられるように意識しました。
──“君は君でいい ありのままの姿 愛して”という歌詞があるように、アルバムのメッセージを象徴する1曲目でもあるのかなと。
ハナフサ:エリンジウムという花が実際に家にあって、そこから曲を作ったんです。1stアルバム『Blue × Yellow』を出した時にいただいた花束の中にあったんですけど、挿していた花瓶の水がいつの間にかなくなっても咲いていて、勝手にドライフラワーになっていたんですよ。それでもまっすぐ咲いているのを見て、“なんだ、このたくましい花は!”と思って調べたら、エリンジウムという花で。かたちも尖っていて、いわゆるきれいなお花とは違うかもしれないけど、この花だけの輝きがあると思ったんですよね。私自身も“私の個性って何なんだろう”と悩むことがある中で、“そのままでいいよ”と言ってほしかったし、言ってあげたいと思って。そういう気持ちから曲が生まれました。
──なるほど。そこから2曲目の「彩りキャンバス」で“12色の絵の具”というキーワードが登場しますね。
ハナフサ:『色彩』というアルバムタイトルが決定して、このアルバムに必要だと思って書いた曲です。どれだけ色があっても、何を選んで何を描いていくかは人それぞれ自由に選べるから、私も自分の人生を色づかせていきたいという気持ちを書きました。
──メロディアスな曲が続きつつ、4曲目の「Be Free」でグッとポップな雰囲気になります。歌詞に“よく当たる占い 手のひらおまじない/効果がある。ないはわからないまま”とありますが、ここは実体験が反映されているそうで。
ハナフサ:はい。この曲の歌詞は、最初に考えていたものからブラッシュアップして今の歌詞になったんですけど、ブラッシュアップするタイミングで占いに行ったんですよ。“意外と当たってるかも?”と思えることもありつつ、正直“どうなん?”と思うところもあって(笑)、その素直な気持ちが入っていますね。
──ははは。まあ、どう受け止めるかは気持ち次第というところはありますよね。
ハナフサ:占いに興味はあるんですけど、結構疑ってかかるタイプです(笑)。何を信じて何を信じないかは、その人が選んでいいと思うんですよ。だから、自分が何かを変えようとしたら変わるんだ、という力強さを歌に込めました。
──次の「Who am I」から、少しダークな感情に寄っていく切り替えが面白いなと思いました。ポジティヴな面も、ダークな面も両方表現したいという気持ちがあるんですか?
ハナフサ:そうですね。本質的には、私はどちらかというと「Who am I」のような暗いところにいる人間なんです。でも、ステージに立っている人間として、少しでも前を向きたいし、前を向いてほしいという思いを持っていて。そういう意味で、「Be Free」には、こういう明るくて強い自分になりたいという希望が入っているのかもしれません。ポジティヴな歌を歌う時に嘘をついているわけではないし、私がその主人公になってその気持ちを届けられるなら、どんな感情も歌っていきたいと思っていますね。
──「Who am I」や「憂さ晴らし」あたりは、本音の部分に近いんですか?
ハナフサ:「憂さ晴らし」に関しては、半分やけくそで書いたような曲だったので(笑)、100%自分かと言われるとちょっと違うんですけど。でも、顔も知らないような人から言われる言葉や、状況によってコロコロ変わる人の言葉を全部鵜呑みにして傷ついていたら、心が持たないよなと思って。“憂さ晴らしをしてやろう”ではなく、“憂さ晴らしをしてる奴らに贈るぜ”みたいな曲ですね。もちろんどの曲にも自分の想いは乗っているので、抱えている気持ちを吐き出す場所にはなりました。
──言いたいことを言ってくれているし、間奏のギターソロがノイジーに荒ぶっているのもいいですよね。
ハナフサ:ゴリゴリに入れてもらいました(笑)。全体的に温かいアルバムなんですけど、この曲はわりとロックに寄せましたね。あんまりロックな曲は今までなかったので、ちょっと珍しい感じがします。
◆インタビュー【2】へ
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