【インタビュー】村上佳佑、松室政哉との共作による心揺さぶるメッセージソング「なんのために」
同学年の二人ががっちり手を組んだ、懐かしくて新しい、大人のポップス。人気バラエティ「ハモネプリーグ」で活躍したアカペラグループ「A-Z」出身で、シンガーソングライターとして着実にキャリアを重ねている村上佳佑。オフィスオーガスタの若き才能としてデビューし、楽曲提供やアレンジなど多方面で活躍している松室政哉。村上佳佑の最新配信シングル「なんのために」は、二つの才能がぶつかりあうスリルと、お互いのリスペクトが生み出すあたたかい共感を兼ね備えた、心揺さぶるメッセージソングだ。平成元年生まれ世代による、時代と音楽と人生と未来についての本音トークに耳を傾けよう。
■ムロくんとは同じ時代を生きているから話が早いとは感じていた
■でも具体的に何を見てきたかは答え合わせをしたことがないんです
――二人は1989~1990年生まれで、同学年ですね。最初に出会ったのは、どんなきっかけですか。
村上佳佑(以下、村上):僕はオフィスオーガスタの大ファンで、山崎まさよしさんとかを聴いていて、ある時にムロくんの名前がホームページに上がっていたんですね。「こんな子が新人で入ったんだな」と思って、ずっと気になっていたんですけど、僕とムロくんが東海ラジオさんでそれぞれ番組をやらせてもらっていた時に、番組担当者が同じ方で、「会いたいんですよ」と言ったらつないでくださったんです。
松室政哉(以下、松室):僕は、もともとCMソングとかで、けいちゃんの存在は知っていました。
――そして、村上さんの作品に、松室さんが初めて参加したのは、2018年の「モノクロ世界」という曲でした。
村上:『CIRCLE』というアルバムを作っている時に、いろんな人と曲を書いてみましょうという挑戦の中で、「ムロくんとこういう曲をやりたい」というものが明確にあったんですよね。最初に参考曲を聴いてもらって、けっこうすんなりと事が進んだ記憶があります。誰かと曲を作ることを始めたばかりだったので、わからないことが多すぎて、ほぼムロくんに頼っていました。
松室:けいちゃんの中に「これがしたい」というものが明確にあったので。それに応えてデモを4、5曲送って、「この中やったらどの方向がいい?」みたいな感じで進めていきましたね。
村上:すごくスムーズでした。
――ちなみに、参考曲というのは?
村上:アレン・ストーンの「フリーダム」です。ロックで、ファンクで、コードがループしていて、それを僕のテイストに合わせて落とし込んでもらった感じです。
松室:「コード4つでずっとループ」というのは、それまでほぼ作ったことがなかったから、僕としては挑戦でした。僕はコードが多い曲を作りがちなので(笑)。もちろん意味はあるけど、むやみやたらにコードが多くなってしまう癖があるんです。それを極限まで少なくすることをやらせてもらったのは、今の自分にもつながっている気がしますね。
▲松室政哉
――性格というか、人間的にも、最初からうまが合う感じでした?
村上:ムロくんが僕をどう見ていたのか、すごく気になるけど。
松室:ステージの上だけを見ていると、ちょっとクールなイメージがあるけど、まあこんなにも真反対の人がいるのかという(笑)。そのギャップが面白かった。もっとクールでさばさばしているのかと思ったら、ふわっとしていて、柔らかい感じ。真面目で天然で、「村上佳佑ってこういう人間なんや」と思いましたね。
村上:僕はまず、ムロくんが関西弁だったことに驚きました(笑)。驚いたというか、「あ、そうか、そうだよな」と思ったのが第一印象です。あとは、映画の話をすると止まらない。ゆくゆくは映画監督になりたいとか、「そういう考え方で音楽をやっている人がいるんだ。面白いな」と思いました。僕はただ歌いたくて、音楽しかできなくて今みたいになっちゃったけど、曲も書いて歌も歌ってアレンジもして、映画も撮りたいなんて、すごい人だなと思ったのを覚えています。確かに、曲の中に映画的なシーンを感じることが多いんですよね。特に歌詞の部分は、いまだにあこがれに近い感覚があります。
松室:メロディもアレンジも含めて、映像的な発想は多いと思う。頭の中で作るにしろ、実際に映像があるにしろ、映像が先にある方が作りやすいというか。
――そして今年の4月に、共同作業の2作目「Alright」の配信シングルが出ました。これは、どんな映像が見えていたんですか。
松室:このあと話すと思うんですけど、時系列で言うと、「Alright」と「なんのために」は、同時期にデモをもらったんです。アコギ弾き語りで、歌を大事にしている人のメロディやなという、それがすごくけいちゃんぽかったし、「Alright」に関しては、僕の曲にはあまりない「外感」「晴れ感」があって、すごく新鮮でしたね。突き抜ける青空と太陽、みたいなイメージが最初にありました。
――「Alright」は、リファレンス(参考曲)でゴスペルの曲を渡したと聞いていますが。
村上:何を渡したっけ?
松室:何曲かあったよ。
村上:ゴスペルは神を賛美する曲で、僕はクリスチャンではないですけど、ゴスペルという音楽が持つパワー感や、ほかのジャンルにはないアレンジを落とし込みたくて。泥くさい感じというか、そんなことを口頭で伝えた部分があった気がします。
松室:レコーディングメンバーには「東海岸ではなく西海岸で」とだけ伝えました(笑)。
村上:面白いですよね。そういう漠然としたイメージを共有できるだけで、同じ方向を向くことができるのは。
松室:何を面白いと思うのか、かっこいいと思うのか、どういう音楽に共感するかが、ある程度一致していることは前提ですけどね。けいちゃんと僕にしろ、僕とレコーディングメンバーにしろ、ある程度共通項を認識している中での、そういう言葉だとは思います。
――そのらへんの話も、聞いてみたかったんですね。同学年の二人に、どんな音楽的な共通点や、かっこいいと思う基準があるのかを。
村上:体感として「同じ時代を生きているから話が早いんだな」ということは感じていて。でも具体的に何を見てきたかは、答え合わせをしたことがないです。
――今からやりますか。
村上:やりましょう(笑)。一体何を通ってきたから、こうなっているのか。
松室:そもそも僕ら以降の世代って、(音楽の)年代はもう関係ないんですね。YouTubeにしろサブスクにしろ、すべての曲を新しい曲として聴けるので。たぶん僕らより前の世代は、ジャンルが分かれていて、それも素敵なことだと思うんですけど、僕ら以降の世代は「なんでもあり」の中で何がかっこいいか?というものを考えることが多いような気がしていて。
村上:うん。
松室:あらゆるジャンルの中で、おいしいところをちゃんとみつけるのが、僕ら以降の世代の特徴な気がしています。
――なるほど。
松室:ただ僕は、小学校から今に至るまで、サザンオールスターズしか聴いてないんです。僕の音楽脳の八割はサザンですね。
村上:それ、言ってたよね。どの曲にも、リファレンスとして出せるものがあるって。
松室:そう(笑)。オールジャンルの音楽マニアではなくて、「桑田さんがこれを聴いていた」ということで、洋楽に行ったり、歌謡曲を聴いたりして、覚えていった感じです。
村上:僕も日本語の曲が入口で、そこから英語の曲を聴くようになったから。ルーツのあり方に親和性があるのかもしれない。
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