【連載】中島卓偉の勝手に城マニア 第115回「大葉澤城(新潟県)卓偉が行ったことある回数 1回」
何を持って最高の城と言えるかは城マニアの中でも人それぞれだとは思うが、オリジナリティーという括りにしたら間違いなく日本の名城の10本指に入る城、それがこの大葉澤城だ。数々のマニアックな城の本の中に必ず紹介されていて、城マニアの間でも「大葉澤城行った?」というやり取りがお約束になっており、大葉澤城に行ってないというのは音楽で言うとビートルズを聴いていないというくらいのものだと私は思っていた。そんな私もずっと行く機会がなく、憧れは憧れのまま終わってしまうのか…と思っていた矢先にとうとうtvkの私の城番組のロケで来城が叶ったのである!この感謝は横浜のtvkの本社の周りを囲むような空堀をプレゼントしたい気分である。
この城の何が素晴らしいか、これはもう言わずもがな、畝状竪堀郡(うねじょうたてぼりぐん)であろう。まず呼び名がエロ過ぎる。うねって、たてで、グンだなんて。これを見る為だけでも行く価値がある。数々の城の本で紹介されていた大葉澤城のぺージに記載されている平面図を見るなり、この畝状竪堀郡の存在に初めてPUNKを聴いた時と同じような衝撃を受けた。え?こんな土塁が連続に作られている城があるの?みたいな完全にフリーズしてしまう凄さが本の写真と平面図からも伝わって来たのだ。どんなものも雑誌や映像ではその本当の素晴らしさは半減してしまうし、本物の肉眼で見る素晴らしさには勝てないものだが、大葉澤城の畝状竪堀郡は城マニアの心を一気に鷲掴みにする強さがあった。もちろん実際に訪れると感無量とはまさにこの事、開いた口が塞がらない状態であった。これは本当に凄い。
大葉澤城の歴史と築城した時期は詳しくは断言出来ない。鮎川氏の城であり、この近辺には名城村上城を含めたくさんの城が転がりまくっている。見学するなら村上城とセットで1日2城の贅沢を味わってほしいものである。おそらく1500年代初頭には築城されていたのではないか?とイマジン。横から見ると裾野がなだらかな山に見えるが、城内のスペースは細く、ウルトラマン、もしくは1977年のハードコアPUNKSのモヒカンくらいの幅、前と後ろが急斜面になった山に建てられている。月形の取手のような感じだ。よって当然ながら城内の曲輪は全部スペースが縦長で狭い。暮らすというよりとにかく戦う為だけに作られた男な城だ。
城は宮山というメインの山と、その山から若干高い寺山という二つの山一体に築かれている。見学する場合は大場沢会館(ここは大葉沢ではなく大場沢とのこと)から宮山へ登り雷神社を目指せば主郭の曲輪に行ける。大手が何処だがわかりづらいが、畝状竪堀郡は登り口の完全な裏側に存在する。主郭から見下ろすとわかるが鳥肌ものである。どうしてここにこんなにたくさんの土塁を作ったんだ?という果てしない疑問、そして圧巻な作りに圧倒される。全部で50近くの明太子のような土塁が連なっているのである。こんな城は日本の何処を探しても存在しない。大葉沢城だけである。これがまた映像でも写真でも上手く伝わらないのだ。これはとにかく肉眼で感じてほしいとしか言いようがない。それくらい半端なく素晴らしい。
ファミコン世代にしかわからないかもしれないが畝状竪堀郡は「エキサイトバイク」のようである。これが伝わったら嬉しい。エキサイトバイクは自分でコースも作れる斬新なゲームカセットだった。こういう畝状竪堀郡みたいな道やコースがいくつもあったように思う。当然ながらこういうコースは先へ進むにはアップダウンがキツ過ぎて困難極まりない。兄貴が作ったコースを2コンで走らされ「お前そこはウィリーばせんと走られんとぜ」と言われたことを思い出す。それでも兄貴のバイクに勝っていたがゴール寸前に大逆転のジャンプ台が作られていて最後の最後に兄貴に頭の上から抜かされるという屈辱を味う、なんてことをしながら盛り上がったものである。1984~5年、BOØWYがブレイク前、ZIGGYがデビュー前、我が地元福岡ではフミヤくん聖子ちゃんの時代。親父が乗っていた車は名作映画「幸福の黄色いハンカチ」で武田鉄矢さん乗っていたハッチバックのMAZDAファミリア。昭和過ぎてノスタルジー。
縦長の城だけに要所要所で堀切が設けられていて、二重堀切になっている場所もある。土塁も高さがある。地元の方々が定期的に整備してくれているのも嬉しい。だが急斜面が多いので転げ落ちないように見学してほしい。戦いの為に作られた城だけに城内の道は優しくない。見学する前日が雨ならヌメってエロい転び方をすること請け合いだ。
寺山の曲輪へ行くと土塁で仕切られた虎口、門の跡があり、おそらく搦手口とも言える虎口もある。城の一番端にも畝状竪堀郡が5~6本作られているので、鮎川氏はとにかくこの畝状竪堀郡にこだわりこの城を守ることを考えて築城したのかもしれない。何処か意地のような強さと信念を感じる。だがそれが唯一無二のオリジナルティーを生み出した。皆と同じような城を築くより、たとえ見つけてもらえずとも誰にも何処にも似ていない特徴を持った城の方が断然格好良い。中島卓偉の音楽活動の信念と同じである。おこがましいわ。「なんなんだ?この連続した土塁は?」と敵が見て思っただろうし、呆気に取られる。そう思わせた時点で鮎川氏の勝ちだと思うのだ。だが残念な程に誰もこの城の凄さを知らない。是非来て見て感じてほしい。日本にはしょうもないのにデカデカと紹介されて、観光地として利用され、名城だの言われている城がたくさんある。だが大葉沢城みたいな城が本物の名城だと私は評価したい。切実だ!
ロケ終了後に大場沢会館の駐車場に戻り、スタッフの片付けを待っている時にどうしても寒かったこともあって、アスファルトで腕立てをしていたら後ろから地元の農家のお爺さんに「ウルトラマンかと思ったよ~」と言われた。へ?と思ったら「ほら、そこにウルトラマンいるでしょ?」と指を差す方を見ると剥き出しになった倉庫にウルトラマンがいた。昭和の時代に薬局の前に置いてあった100円で動くやつだと思う。象の子供のサトちゃんってのも必ず置いてあった気がする。最後に、ウルトラマンをだんだん近づけて見るとなんでか面白いので順に写真を載せてみたい。
あぁ 大葉澤城、また訪れたい…。
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