【楽曲レビュー】ドラマチックな展開に耳を奪われる『FFXIV: 暁月のフィナーレ』主題歌7インチレコード盤
▲『ENDWALKER 7-inch Vinyl Single』
『ファイナルファンタジー』といえば、もはや説明不要なほど、日本が世界に誇るゲームタイトルのひとつ。なかでも、オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)は、2013年に『新生エオルゼア』をリリース以降、2015年『蒼天のイシュガルド』、2017年『紅蓮のリベレーター』、2019年『漆黒のヴィランズ』と、拡張パッケージを2年おきにリリース。全世界の累計登録アカウント数は2200万(※)を突破しており、近年はパンデミックの影響で在宅時間が増えたことにより、さらにプレイヤー人口が拡大しているそうだ。
(※2021年4月時点。日本・北米・欧州・中国・韓国の5リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む。)
長きにわたって全世界のゲームファンに愛され続けている『FFXIV』だが、最新拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』がついに発売されることになった。タイトルに“フィナーレ”と掲げられている通り、これまで紡がれてきた物語がひとつのクライマックスを迎えるということがすでにアナウンスされている。はたしてどんな結末を迎えるのか、そしてここから『FFXIV』の世界はどうなっていくのか──。全世界の“光の戦士”達が、発売日を待ち侘びているという状況だ(光の戦士は『FFXIV』プレイヤーの総称)。
発売を目前に控えて盛り上がりを見せている『FFXIV』だが、『暁月のフィナーレ』の発売に先駆けて、同パッケージの主題歌を収録した7インチレコード盤『ENDWALKER 7-inch Vinyl Single』が、11月17日にリリースされることになった。現在、世界的にアナログ盤の需要が高まっているところから、敢えて7インチレコードという形態で発売される本作。『FFXIV』のアートスタッフによる完全描き下ろしのジャケットは、鑑賞用としても楽しんでもらえるようにと、商品タイトルを入れない形にデザインしたとのこと。また、レコードプレイヤーを持っていないユーザーに向けて、MP3のダウンロードパスコードも封入されている。
『ENDWALKER 7-inch Vinyl Single』に収録されているのは「Endwalker」と「Endwalker – Footfalls」の2曲。なかでも「Endwalker – Footfalls」は、これまで『FFXIV』をプレイしてきたプレイヤーや、ゲームミュージックファンはもちろんのこと、ロックミュージックファンの心も掴む仕上がりになっている。
▲THE PRIMALS
「Endwalker」「Endwalker – Footfalls」の楽曲制作を担当したのは、『FFXIV』のオフィシャルバンド・THE PRIMALSだ。THE PRIMALSは、『FFXIV』のサウンドディレクターである祖堅正慶を中心に、2014年に結成された5人組バンド。アレンジアルバムへの参加や、日本、北米、欧州、韓国、中国で開催された<FINAL FANTASY XIV Fan Festival>でのステージなど、当初は公式の舞台で活動をしていたが、ユーザーから熱い支持を集め、単独アルバムの発売やZeppツアーを開催するなど、着実に活動規模を拡大している。そして今回、『暁月のフィナーレ』で初めて主題歌を担当することになった。
▲FINAL FANTASY XIV at FAN FESTIVAL 2019 in TOKYO
今年5月に開催、全世界に向けて配信された『FINAL FANTASY XIV DIGITAL FAN FESTIVAL 2021』でもライヴを行なっていたTHE PRIMALS。『FFXIV』のゲーム演出を盛り込んだパフォーマンスも見物だったのだが、そのステージは、彼らのことを知らない、ひいては『FFXIV』をプレイしたことのない音楽リスナーにも強く訴えかけるものがあった。
▲※FINAL FANTASY XIV DIGITAL FAN FESTIVAL 2021 – Day2)
それは、メンバーのプレイやスキルはもちろんのこと、『FFXIV』には様々なタイプの楽曲が用意されていて、いわゆるロールプレイングゲームの音楽らしいシンフォニックなアレンジが施されたものもあるのだが、デジタリックな「輝ける蒼 〜希望の園エデン:覚醒編〜」や、4つ打ちのビートが高揚を煽る「ロングフォール 〜異界遺構 シルクス・ツイニング〜」、ラップをたたみかける「ライズ 〜機工城アレキサンダー:天動編〜」など、ロック色が強い楽曲もかなり多い。それらをより肉体に訴えかける生々しいバンドサウンドでぶつけてくるのもあって、ロックアクトとしても非常に魅力的なのだ。前述の原曲達も聴きやすいものばかりなので、気になった方はぜひご視聴いただきたい。
そして、「Endwalker」「Endwalker – Footfalls」においてもうひとつ、メインボーカルにARCHITECTSのサム・カーターが参加しているというのも、大きなトピックだ。デスコア/メタルコアにカテゴライズされていた初期から、様々な変遷を辿って音楽性を拡張していき、今年2月には9thアルバム『For Those That Wish To Exist』を発表。ヘヴィでシリアスな世界を保ちつつ、エレクトロニクスなどを導入した現代的なサウンドプロダクションをより推し進めた同作は、イギリス、オーストラリアで1位を獲得している。今回の主題歌の件について、サム・カーターは「Really proud to have been a part of this」(=参加できたことを誇りに思っている)と、SNSでコメント。UK現役トップクラスのロックバンドが参加するという事実は、改めて『FFXIV』が世界規模のタイトルであることを物語るものでもあるだろう。
▲サム・カーター(アーキテクツ)
その「Endwalker」だが、メランコリックなギターの音色で幕を開ける。そこに絡んでいくサム・カーターの柔らかでどこか物憂げなクリーンボイスと、聴き手を包み込むように繰り広げられる幻想的なアンサンブルは、ドリームポップ/シューゲイザー的な意匠を感じさせるところも。その音世界に恍惚としていると、激しくかき鳴らされるギターが浮遊感を切り裂き、サム・カーターが強烈な咆哮を轟かせる。そして、サビでは力強くもセンチメンタルな空気をまとったバンドサウンドと、前に出過ぎず、それでいて埋もれすぎてもいない絶妙なバランスで組み込まれているストリングスが、壮大な景色を作り上げていくミディアムロックナンバーだ。
もう1曲の「Endwalker – Footfalls」は、『暁月のフィナーレ』のフルトレーラーで使用されていた楽曲。『暁月のフィナーレ』でひとつの終結を迎えるということもあり、「Endwalker」の合間に、これまで発表されてきた各パッケージのテーマソングが引用された構成になっている。女性ボーカルやシンフォニックなクワイアコーラスを加えたスケール感のあるアレンジや、“Footfalls=足音、足取り”という意味の通り、これまでの歩みを振り返りながらも、前へゆっくりと進んでいくドラマチックな展開は、これまで『FFXIV』をプレイしてきたユーザーの期待と興奮を煽り、自然と胸を熱くさせるものになっている。
▲※FINAL FANTASY XIV: ENDWALKER Full Trailer
尚、「Endwalker」は、「Endwalker – Footfalls」から過去のテーマソングを除いた新規テーマを中心にエディットされたもの。そういった点では、「Endwalker – Footfalls」が本来の形と言えるだろう。それもあって、この曲を100%堪能するためには、『FFXIV』をプレイしていないと難しいところがあるというのは否めない。あくまでも、この曲はゲーム音楽であり、そのゲームのために作られた音楽だからだ。「Endwalker – Footfalls」が使用されているフルトレイラーを観て、その美麗ぶりを味わいながら楽曲を楽しむことはできるが、実際にゲームを体験していないと感動の量はやはり減ってしまうだろう。
しかし、映画やドラマを観ていなくとも、その主題歌や挿入歌のことは知っていたり、耳にしていたり、なんなら口ずさめたりするということは、誰しもあるはず。それはゲーム音楽も同様だ。ゲームという枠を飛び越え、多くのロックファン、音楽リスナーの心に深く響く魅力を放っている「Endwalker」。もし、あなたがサブスクリプションサービスのプレイリストを何気なく聴いていたときに、この曲がふと流れてきたら、アンテナや琴線に引っかかる可能性は、かなり高いと思う。それほどまでに耳を奪われる美しさ、そしてドラマ性が、3分間の中に詰め込まれている。
文◎山口哲生
『ENDWALKER 7-inch Vinyl Single』
品番:SQEX-10899
価格:¥2,420(¥2,200+tax)
収録曲:全2曲
仕様:7-inch vinyl
■特典
・封入特典 / 楽曲(収録曲:2曲/MP3形式) ダウンロードパスコード
※FFXIVのゲーム内で使用できるアイテムコードではございません。
※ダウンロードコードは、使用に回数制限がございます。
※将来、事前告知のうえでダウンロードに有効期限が設定される可能性があります。
・早期購入特典 / Amazon.co.jp 「メガジャケ」
※数量限定です。数に限りがございますので、あらかじめご了承願います
※購入特典の有無、配布状況に関しては、販売店様にお問合せ下さい
■発売元:株式会社スクウェア・エニックス
■権利表記:(c) 2010 - 2021 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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