ゲーム『オクトパストラベラー』シリーズ初のオーケストラコンサート開催
3月23日、ゲーム『オクトパストラベラー』シリーズの発売5周年を記念したオーケストラコンサート<オクトパストラベラー オーケストラコンサート -To travel is to live->が、東京・昭和女子大学人見記念講堂にて開催された。
『オクトパストラベラー』シリーズは、スクウェア・エニックスが手掛ける“伝統と革新の融合”を標榜する王道RPG。昔ながらのドット絵と3DCGを融合させたグラフィックや、登場人物達が織りなす重厚なストーリー、シンプルながらも奥深いバトルシステム、そして、それらを彩る美しい音楽が人気を博しており、現在計3タイトルがリリースされている。
『オクトパストラベラー』シリーズ初となる今回のオーケストラコンサートは、同シリーズ楽曲の作編曲を担当している作曲家・西木康智による完全監修の元、フルオーケストラ構成に新規アレンジされた楽曲達が披露された。指揮は佐々木新平、演奏は今回のコンサートのために編成されたニューデルスタフィルハーモニックオーケストラが担当し、ゲストミュージシャンとして、鈴木広志(サックス)、吉田篤貴(ヴァイオリン)、坂本圭(笛)、塚越廉(ギター)、國土佳音(ボーカル)、村上敏明(ボーカル)、Yucca(ボーカル)を招聘。ゲストMCとして西木、高橋真志(「『オクトパストラベラー』シリーズプロデューサー)、宮内継介(『オクトパストラベラー』シリーズディレクター)も登場し、1日2公演で開催された。このレポートでは、夜に行われた2nd公演の模様をお届けする。
初のオーケストラコンサートのオープニングを飾ったのは、「OCTOPATH TRAVELER - メインテーマ -」。雄大な景色が目の前に広がるようなオーケストラの演奏と、坂本圭が奏でる伸びやかなティンホイッスルの音色が響き渡ると、瞬く間に『オクトパストラベラー』の世界に足を踏み入れたような感覚を覚える。続けて「リバーランド地方」を披露。幻想的で美しい風景が立ち上がってくると、一転、戦闘曲の「バトル1」へ。勇壮な演奏で駆け抜けていき、バトル勝利BGMの「勝利のファンファーレ」に繋げるという構成で観客を喜ばせていた。
この日のコンサートは、作曲家の西木が司会を担当。「本日はここ、ニューデルスタの劇場まで足を運んでいただきありがとうございます」と、ゲームに登場する街の名前を交えた挨拶から出演者を紹介し、次の曲へと移っていった。厳かで神秘的な「記されざる島オルサ」、緊迫感に満ち満ちた「“深淵の覇者”サザントスのテーマ」、温かなピアノと鈴の音色が絡み合った「白雪舞い落ちる街」と、3曲連続で届けられたのが、曲順の緩急はかなり激しめ。それゆえに、各曲の個性とその振り幅が浮き彫りになり、改めて『オクトパストラベラー』」シリーズの音楽のバラエティの豊かさを感じさせられた。
MCでは、西木とプロデューサーの高橋真志が登場。高橋は、今回のコンサートに関する音源を事前に聴くことを西木から禁止されていたこともあり、「1曲目の1音目を聴いた瞬間から感動し続けています」と明かすと、「分かる!」と即答する西木。客席からは笑い声が上がっていたのだが、雰囲気から察するに、2人のやりとりに共感していた観客はかなり多かったようだ。
そして、ステージに鈴木広志を呼び込み、サックスが印象的に使われている3曲が披露された。「薬師アーフェンのテーマ」では優しく柔らかに、「商人パルテティオのテーマ」では咽び泣くようにと、まったく違う表情で楽曲を彩っていく鈴木。なかでも煌びやかでありながらも怪しさが漂う「富を授けし者」では凄まじいソロを吹き鳴らし、激情的なプレイで魅了していた。鈴木が舞台袖に戻った後、続けて届けられたのは「宝物のために ~ ボスバトル2」。『オクトパストラベラー』シリーズを語る上で欠かせない“バトルエクステンド”を再現した演奏が披露された。“バトルエクステンド”とは、バトル直前のイベント楽曲からバトル曲へシームレスに遷移する仕組みのこと。穏やかな始まりから徐々に熱を帯びていくと、演奏を途切れさせることなく曲が切り替え、一気に疾走していくという圧巻の演奏で第1部を締め括った。
15分間の休憩を挟んだ後、「風翔ける、戦場」の勇ましい演奏で第2部がスタート。スウィングジャズのニュアンスを感じさせる「華やかなる都会」では、ゲーム内で描かれている“昼”と“夜”を繋げていくアレンジで魅せると、ステージにはヴァイオリニストの吉田篤貴と、ギタリストの塚越廉が登場し、「理を司る者」が披露された。吉田が情熱的にバイオリンを奏でると、塚越はガットギターをかき鳴らし、途中では2人がソロバトルを繰り広げる場面も。熱いプレイの応酬で客席を興奮させると、ステージには吉田がそのまま残り、「背中を押して」を情感たっぷりに奏で上げた。
曲間のMCでは西木とディレクターの宮内継介が登場。楽曲制作の裏話も飛び出す中、宮内が「楽曲がだいぶ多彩ですよね」と称賛すると、「(そういうコメントを)もっとちょうだい!」と返す西木。息のあった会話で客席を和ませていた。
次のブロックではボーカリストの國土佳音が登場。「旅立ちの唄」では、優麗に奏でられる弦楽器と共に柔らかな歌声で客席を包み込むと、ケルト音楽の意匠を感じさせる「きぼうの唄」では身体を左右に揺らしながら、透明感のある声を伸びやかに響かせていた。続けて披露されたのは「灯火の守り手 ~ 欲望の道に待ち受ける者」。しなやかで、それでいて強い意志を秘めた演奏を繰り広げた「灯火の守り手」から、ハードな「欲望の道に待ち受ける者」へ跳躍すると、再び國土が登場。原曲よりもメロディをフィーチャーしたアレンジが施されており、抑揚を強く利かせたダイナミックな演奏を受けつつ、國土はときに頭を振り乱しながら、エモーショナルなハイトーンボイスを客席へ向けて放っていた。
コンサートはここから怒涛の後半戦へ突入。「決意」を皮切りに、「王道を求めて ~ 決戦2」では、オリエンタルな空気が漂う「王道を求めて」から、鬼気迫るイントロを擁した「決戦2」に繋ぎ、緊迫感のあるアンサンブルを疾駆させていく。そこから「旅路の果てに立ちはだかる者」で、熱量と高揚を極限まで高めた後、クライマックスとして待ち構えていたのは、ゲストボーカルの村上敏明とYuccaを迎えた「魔神の血を継ぐ者 〜 明日を望まぬ者」という、シリーズ屈指のハードナンバーだった。しかも、ここまで披露されてきたような各曲を繋げていく形ではなく、2曲を合体させて1曲にするという大胆すぎるアレンジが施されていて、荘厳かつ熾烈なオーケストラアンサンブルと、村上の大迫力のテナーボイスと、Yuccaの強烈なソプラノボイスが死闘を繰り広げるかのごとく絡み合う様は、ただただ驚愕。ステージには万雷の拍手が降り注いでいた。
アンコールでは、ヴァイオリニストの吉田と、ギタリストの塚越が再び登場し、「踊子プリムロゼのテーマ」を披露。優雅で、力強くて、それでいて哀愁漂うドラマティックな演奏で客席を深く陶酔させた。そして「最後に、人生の経験値をちょっと上げて帰ることにしましょう!」と西木が話し、ラストナンバーとして「キャットリンのテーマ」が演奏された。鈴木、吉田、坂本、塚越の4人の軽快なアンサンブルから始まり、そこへオーケストラが合流。テンポを上げて賑々しく駆け抜けていくと、さらに國土、村上、Yuccaの3人も参加。各々がメインを務めたり、ハーモニーを響かせたりと、豪華共演に惜しみない拍手が送られていた。最後に「またこの旅路のどこかで、みなさんとお会いできるのを楽しみにしております」と西木がコメント。初のオーケストラコンサートは大盛況で幕を降ろした。
初のオーケストラコンサートなのもあって、思い描いているものを徹底的に詰めこんだ濃密すぎるプログラムになっていたが、現在、『オクトパストラベラー』シリーズの総楽曲数は300曲を突破。西木もセットリストを「もうワンセット組める」と話していた通り、同シリーズにはまだまだ多くの名曲たちが存在している。この日のMCによると、今後も継続して音楽イベントの開催を考えているそうで、西木も「みなさんの声を聞きながら、少しずつ輪を広げていって、より大きなイベントができるようになったら」と話していた。
現在、今回のコンサートで演奏した楽曲を収録したアルバム『OCTOPATH TRAVELER Orchestral Arrangements -To travel is to live-』が発売中。3月29日には『オクトパストラベラーII』の楽曲をレトロゲーム風サウンドにリアレンジした『OCTOPATH TRAVELER II 16bit Arrangements』が発売されることになっている。また、今回のコンサート音源も収録されており、いずれ私たちの元に届く日が来るだろう。その続報と合わせて、次回のオーケストラコンサートの開催も楽しみにしていたい。
文◎山口哲生
写真◎関口佳代
(c)SQUARE ENIX
『OCTOPATH TRAVELER II 16bit Arrangements』
価格:2,750円(税込)
仕様:CD1枚
品番:SQEX-11124
詳細:https://store.jp.square-enix.com/item/SQEX_11124.html
『OCTOPATH TRAVELER Orchestral Arrangements -To travel is to live-』
価格:3,850 円(税込)
仕様:CD1枚
品番:SQEX-11117
詳細:https://www.jp.square-enix.com/music/sem/page/octopath/orchestral/
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