【ライブレポート】美味しい曖昧、1stワンマンで「急速に仲良くなって、ケンカもして(照笑)」

美味しい曖昧が8月21日、記念すべき1stワンマンライブ＜美味しい曖昧 1st ONEMAN 「曖昧なワンマン1」＞を開催した。新宿Zirco Tokyoにて行われた昼・夜2公演のうち、夜公演の模様を中心にお伝えしよう。

◆美味しい曖昧 画像

活動休止を経て、今年6月に新体制で再始動してからの約2ヵ月間をとってみても、彼女たちのこれまでの活動は決して平たんな道のりではなかったはず。その中で確実に積み重ねてきたステップアップが伝わる初ワンマンは、結論から言えば、最高のアクトであり、大成功だったと拍手を贈りたい。いつでもひたむき姿に惹かれて多くの人々がこの日も詰め掛け、昼・夜公演共に見事SOLD OUT。これも彼女たち自身が掴み取った成果のひとつだ。


オープニングナンバーは「サプリメ」。昼公演でラストに披露したこの曲が夜公演へ繋ぐ。笑顔を見合わせながら楽しむステージの空気感は、瞬く間に会場中へ広まった。“♪はじまり”と告げる歌い締めをキメると、すぐさま「角砂糖とセイロン」へ。「もっと！」という双詩科なのはの声が手拍子を一層大きくさせ、目線を観客に合わせて指をさすキュートな仕草に心が弾む。「いけるナイトパレード」の心地よい疾走感に手を引かれ、「メがンでドがクで」では間奏中に曲がストップ。昼公演同様、ここからMCタイムへ突入した。普段MCをしないスタイルだけに、貴重な(!?)一面を見ることができたシーンだ。まずは、P(プロデューサー)からの伝達が書かれた紙を手渡された凡やよいが、それを読み上げていく。

「メンバーさん、初ワンマンおめでとうございます。そして、曖昧なオタクの皆さん、美味しい曖昧を見つけてくれてありがとうございます。(メンバー一同：ありがとうー！)これからも、美味しい曖昧をよろしくお願いします。パチパチパチパチ……突然ですが、2022年2月20日、なんと！ Veats SHIBUYAにて、ワンマンライブが決定しましたー！」──凡やよい






2周年を祝う、次回のワンマン決定の朗報に続いたフリートークでは、再始動してからの約2ヶ月間を「駆け抜けたねー」と振り返り、「急速に仲良くなって、急速にケンカもして(照笑)」と話す場面も。ワイワイとガールズトークを繰り広げる様子をメンバー自身が「めちゃめちゃリアル」と言うほど、彼女たちの日常が垣間見られた。さらに、話題は“ワンマンに向けて個人的に頑張ってきたこと”へ。

「ボイトレで感情を込めることを意識した」──幽花はるか
「腹式呼吸ができるように風船を膨らませる練習をして、できるようになった」──双詩科なのは

これに続いた彩負屋ねむりは「さ行が苦手で……」と、練習していたという早口言葉を言い出したところで曲が再開。“これ以上はヤバイ”というPの判断で曲が再開するシステムによってMCタイムが終了したが、彼女のターンで曲が再開する(MCが終了する)という事態は、昼公演に引き続きのことで場内は笑いに包まれた。

ここで、昼公演にて一足先に初披露されていた新曲「さめないワナビー」のファンタジックな空気に包まれると、先ほどのMCで笑いを誘った彩負屋ねむりが、ひとたび曲へと突入すればスマートなダンスと歌でアプローチ。「圧倒」へと続き、拳を掲げたり足を蹴り上げたりして怒りを吐き出す力強さの中で、切兎うずめのキリッとした鋭さも映えていた。等身大の強い感情を後押しするロックサウンドが美味しい曖昧の楽曲の魅力であるが、そこに負けず劣らずの存在感を持った幽花はるかの歌声も頼もしい。「あまあま」では、曲の冒頭でいつも盛り上げる言葉を投げかけてくれる凡やよいが曲中でもしっかり先導。1人ひとりが得意な表情でアプローチする“私だけを見て”なシーンにも釘付けにされてしまうキラーチューンのひとつでもある。


中間のBGMでブレイクを挟み、繊細でポップな「綺麗事スコープ」と、エネルギッシュに全身でハートを描いた「ナチュラルアレルギー」をノンストップに全力で届けていく。気づけば、夜公演のセットリストは8月20日に音楽配信サイトにてリリースされた初のアルバム『曖昧なアルバム1』の曲順にほぼなぞらえる形で構成されていた。そのアルバムの中でも、このライヴのハイライトとしても語りたい2曲をラストに用意。それが「AIMAI」と、夜公演で初披露となった新曲「サイカイノユメ」だ。ワンマンという自分たち自身を色濃く表現できる空間で、このラスト2曲を歌い上げる5人から感じられたのは、胸に抱いているステージへ立つ想いの“真髄”のようなもの。

「AIMAI」に込められた誰にも干渉されたくない“私だけの物語”を葛藤しながらも生きていく決意。そして、歌うことに重きを置いて伝えたバラード「サイカイノユメ」。じっと落ち着いていながらも、“夢を選んだ自分を認めてあげたい”とエモーショナルに歌う姿に、さらに円を作りながら5人が向き合って優しく微笑みあっている姿に、胸が熱くなる。歌い終えたときにそれぞれの目に滲んでいた涙は、美味しい曖昧へ本気で向き合っていることを物語るものだった。

人間誰しも周りに合わせて流動的に、“曖昧”に生きる道を選択したくなることもある。しかし、それを是とすることなく、自分で選んだ妥協のない道をしっかりと歩いて行ける女の子たちがここにいる。そのパワーに照らされ、突き進んでいく美味しい曖昧のもとに集ったメンバーは、とても美しい。

撮影◎うつみさな