【インタビュー】YAASUU、宮古島発シンガーのメジャー作に地元愛と新境地「フランス語と方言がコラボした」
■憧れの東京で人と出会っていく中で
■夢を見つけて、進んでいる
──どこか不思議な感覚もあって、YAASUUさんの新しい領域に踏み込んでると思います。そして、これに続いてできた曲が?
YAASUU:2曲目の「プル・トア」です。これはどっちかというと、サウンドもメロディも「エテ」より切ない感じが出てるじゃないですか。それも理由があって……「エテ」で付き合ったカップルが同棲するんですよ。で、ここに出てくる中身汁は、その同棲の味というか。
──つまり中身汁は、普通の生活の中で出てくる料理なんですね。
YAASUU:はい、宮古島ではそうなんです。で、切なく終わっていくんですけど、それが曲の最後のほうになると、これが思い出の味に変わっていく。ということは、うまくいってないということなんですね。自分が求めてるものとは違ってしまっていて、なので思い出の味に変わっていく汁もの、みたいな。メロディとか歌詞を作っていく時に、そこは考えてました。
──ふたりは結ばれたけど、その後に関係が変わってしまったと。「プル・トア」はフランス語で「君へ」という意味らしいですけど、曲自体が「エテ」に比べるとメロウで、そこにホロ苦さも感じますし。このビデオは切ないな~と思いながら見ました。
YAASUU:あ、そうですか? ありがとうございます(笑)。
──そして3曲目の「ファシル」がさらにその後のストーリーですね。これはEDM的なビートの曲で。
YAASUU:最初にフランス語でラジオっぽい女の子の声が入っていますけど、そのあとにちょっとEDMっぽい、ドン・ドン、っていう速い曲調になっていって、サビは明るい感じになるんです。結局このカップルは別れてしまうんですね。そこで最初は彼女のことを思い出したりしてるけど、結局は新しい自分になるために羽ばたいていったと。そういう前向きなストーリーになっていまして。
──タイトルは「簡単」という意味らしいですね。この曲で出てくる、なびぱんびんという食べ物は? 平焼きというものらしいですが。
YAASUU:これはお互いが違う方向に歩いていったあと、また会える日に簡単に食べられるものということです。沖縄でひらやーちーと言うんですけど、宮古ではなびぱんびんですね。どこのお店でも食べられる、簡単に作れる料理なんです。まあタコ焼きパーティーみたいなイメージかな(笑)。だからお互いが振り切って、納得する道へ進んで、また会った時にタコ焼きパーティーしようぜ、みたいな感覚です。
──前向きに? 曲調も軽やかですものね。ほんとは悲しかったけれども。
YAASUU:それはね。最初は悲しいですけど、それを振り切ったあと、ということですね。で、この3曲のミュージックビデオはストーリーが続いてるので、「エテ」から順番に見てもらったら面白いと思います。
──ですね。この一連の楽曲とビデオ、それにYAASUUさんのビジュアルを見て、ちょっと神秘的なイメージを持つ人は多いと思いますよ。どういう人なんだろう?みたいな。
YAASUU:はい。リアクションが楽しみですね(笑)。
──で、さっき、曲が前向きなストーリーで終わっていく話がありましたけど、そこはYAASUUさんらしいと思ったんです。あなたの歌って、基本的に前向きですよね? いろいろな感情が唄われてはいるけども、ポジティヴというか。それはYAASUUさん自身がそういう人間性の人なのかな?と思ったんですが。
YAASUU:うん、まさにそうです! めちゃくちゃ前向きです、僕。ポジティヴだし。
──そうですか(笑)。元からそういう人間なんですか?
YAASUU:ああ、いや、ええと……最初に東京に出てきた時は、壁がたくさんあったんですね。東京って、島の人間からしたら、海外に行く感覚だったんです。言葉もまったく通じなかったので……今はやわらかい言葉で話してますけど、僕も“ザ・宮古の言葉”だったんです。全然聞き取れないような。なので、たとえばバイトしてもスタッフとしゃべれないレベルだったんですね。まあ多少はわかると思うんですけど、何回も「え?」「はい? はい?」みたいに聞き返されるとか、あったし。あとは速さとか……沖縄のゆったりさんとは違うスピード感とか、そういうのも乗り越えなきゃいけなかったし。その頃には、仲間もみんな沖縄に帰ったりするんですよ。「ここではやっていけねえ」と。でもそれを乗り越えたぐらいから、だいぶ前向きになったというか。
──そうなんですね。じゃあ、それ以前の話になりますけど、どんな思いを持って上京されたんですか?
YAASUU:ああ、ただのバイトですね。憧れだけで出てきたんです。
──はい、そのことは以前、BARKSでも話されてましたね。つまり何か目標があったとか、“デカいことをやってやろう”とかではなく。
YAASUU:あ、もう全っ然、まったく考えてないです! 島にいた時は、何もかも雑誌に頼ってたんですよ。服とかも雑誌に載ってた通販で原宿の店から買ってたし、フェスも横浜レゲエ祭とか東京何とかフェスとか、そういうのばっかり雑誌とかで見てたので、“これは絶対に東京に行こう!”と思って。ほんと、憧れのまま出てきたというか。
──東京に出ていくことは、ご家族から何か言われたりしたんですか?
YAASUU:行ってこーい!みたいな(笑)。4人兄弟の3番目なんですけど、ほかの3人は沖縄に残ると言って、僕だけずっと都会に憧れてたんで。それで友達何人かと一緒に出てきたんです。ただ、通ってた学校を卒業したり、4〜5年すると、帰る人が多くて。
──なるほど。あなた自身は何か夢があって東京に来たんじゃないんですね。ミュージシャン志望の子なら“音楽で食べていきたい”と思って上京することが多いですが。
YAASUU:あ、そこは逆かもしれないです。僕は憧れだけで出てきて、東京の人たちと出会っていく中で夢を見つけて、進んでいるので。そこで目指すものが見つかったので、帰る必要がないというか。
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