【対談】DAISHI [Psycho le Cému] × RYUICHI [LUNA SEA]、「できないことをやろうとしている」
■去年大晦日に腹筋9000回やったんです
■ステージへのモチベーションも上がる
──ヘッドアンプの問題以前に、それをRYUICHIさんの圧倒的な声量が解消できるからということでしょうね?
RYUICHI:僕自身、声量の大きさについては後で気付いたことで。“誰よりも大きい”と思っているわけでもないというか、“数字上大きいんだな”ということでしかないんですね。僕の歌ってそんなに“ウワーッ!”というものでもないじゃないですか?
DAISHI:RYUICHIさんの声は身体から出ている感じがするんですよ。すごく優しい時もありますし、その抑揚がすごい。まだVHSの時代から僕は、LUNA SEAさんのライヴ映像を観て「身体で出してるようなこの声って、どうやってるん?」って思いながら勉強したんですよ。太い声になるように腹式呼吸を練習したり。でも当時はまだ学生だから、口先だけのペラい歌みたいになってしまって、自分で聴いても“なんか違うよな”と。
RYUICHI:恥ずかしいですけどね。VHSの頃の自分を観たら“下手だな。なんだコイツ?”って思うかもしれない(笑)。
DAISHI:いやいや。メンバーとLUNA SEAさんのライヴを観に行った帰り、ヴォーカルとしては僕、肩身が狭くなりますからね。本当ですよ? 圧倒的ですから。
▲RYUICHI / 河村隆一 (Vo / LUNA SEA)
──お2人とも、日々ヴォーカリストとして研鑽を続けておられますが、ハードな肉体トレーニングもその一環なのでしょうか?
DAISHI:僕がトレーニングジム経営を始めたきっかけは、YOSHIKIさんの番組に出させてもらった時のことなんですよ。番組に出演させていただいた僕ら後輩バンドマン同士で「この後、飲みに行こうぜ」となって。YOSHIKさんをお誘いしたんですけど、「ごめん! 俺も一緒に飲みたかったけど、今日はこの後、パーソナルトレーナーとジムだから」と。僕たち後輩は、“YOSHIKIさんほどの方がこんなに努力されているのに、何を俺らは……”って。その時も酒の味がしなかったですもん(笑)。
RYUICHI:あはは! “これはマズいぞ”と。
DAISHI:はい。トップを走る大先輩が身体を鍛えてるんだから、せめてトレーニングだけは真似しようと思い立って、次の日にパーソナルトレーニングジムの門を叩いたんです。そこからドハマりしちゃって、今や自分でパーソナルトレーニングジムを経営するまでに至ったという。RYUICHIさんもすごくトレーニングをされていると聞いていますよ。
RYUICHI:それほどでもないけどね(笑)。LUNA SEA初期は、サーフィンとかボクシングをしていたんですよ。あとは、ロープで3分縄跳びをして30秒休み、また3分跳んで30秒休み…というのを5セットやってからステージに出るとか。朝サーフィンしてからライヴ会場に行くとかしてたんだけど。
DAISHI:すごい!
RYUICHI:要は身体に血が巡ってる状態にしたいんですよね。ヴォーカリストって寝起きじゃ声が出ないから。常に身体が動いている状態、汗ばんでいるぐらいでステージに出ていくとちょうどいいんですよ。あとね、ジムでは、今日100回できたのなら、明日はもっと重くして100回できるか?とか、もっと速いスピードで走れるか?とか、できないことをできるようにしていくんです。音楽って点数が出づらいじゃないですか。もちろん何万枚売れたみたいな数字はあるけども、そういう話ではなくて。今までの自分の数値を超えていくこと、それを見つけている感じなんです。何年もやっていると、どんどん変な数字になっていくんですけど(笑)。
──つまり、とてつもない数字になっていく、ということですよね?
RYUICHI:去年12月31日に僕、腹筋9000回やったんですけど、9000回って聞くと“馬鹿じゃん?”って思いますよね。でも、そこに至るまでには下積みがあって、50回でヒーヒーしていた自分が200回できるようになって、500回、1000回、そして3000回を毎日できるようになったら、“じゃあ年末は2時間ずっと腹筋やってみるか”っていうふうになっていく。スキルアップしているという自信が自分のなかにできて、ステージへのモチベーションも上がるという作用も絶対にあるもんね。DAISHIもそれに近いでしょ?
DAISHI:そうですそうです。負荷を少しずつ上げていくから、軽すぎるとやっていて気持ちよくないんです。僕は、ステージに上がった時、身体がカッコよくなってたらいいな、歌もよくなればいいな、という思いでやっていました。ただ、ジムの従業員がゴリゴリマッチョなので、一緒にトレーニングしているとちょっと行き過ぎちゃうというか、だんだん分からなくなってくる(笑)。
▲DAISHI (Vo / Psycho le Cému)
──RYUICHIさんは先ほど、「音楽の世界は点数が出づらい」とおっしゃいましたけれども。数値化できない表現の世界で活躍なさっているお2人にとって、数値目標で達成感を得ていける身体づくりに挑むのは、メンタル面でのバランスを図れるからということもあるのでしょうか?
RYUICHI:うーん…僕の場合は、年齢もあるかもしれないけどね。やはり51歳になって、体力がただ下っていくんじゃなくて、51歳だけど“何かできないことをやろうとしてる自分がいる”ということが、自分にとってすごくいいと思ってて。
DAISHI:そうですよね。30代の頃より40代の僕のほうが、全然身体がカッコいいと思ってますもん。歌もよくなったと思いますし。
──年齢を重ねるにつれて何かを失っていくのではなくて、手に入れていくことができるというか。
RYUICHI:うちのジムに…84〜85歳になられるのかな? 操上(和美)さんという、LUNA SEAのアーティスト写真を撮ってくださったカメラマンの方がいらっしゃっているんですよ。トレーナーの皆さんが言うには、80歳になろうが90歳になろうが筋肉はちゃんと応えてくれる、と。
DAISHI:筋肉は裏切らない(笑)!
RYUICHI:そう、筋肉がついて骨密度とかいろんな数値も上がっていく。ということは、ミック・ジャガーじゃないけど、70歳でも80歳でも、きっと走り続ければ5kmとか10kmとか走れちゃうんだよね。そういう体力がなくなって、立ち上がる時に“よいっしょ”ってなってるようでは、70歳とか80歳で「ROSIER」を歌えないと思っているんです。
DAISHI:LUNA SEAさんの曲は歌詞が詰まっていて、カラオケで歌ってても、ブレスも、メロディーの上下もしんどいですから(笑)。
RYUICHI:結構ハードだもんね。仮にキーを半音とか全音落とせば済むという問題じゃなくて、体力的に厳しくなると思うんです。でも今、備えていればあまり衰えずに、その年代なりの良さというのを出せると思うし。
──LUNA SEAの場合、1990年代の曲だけでなく、最新アルバム『CROSS』収録曲も高カロリー消費の曲が多くないですか?
RYUICHI:まずキーが高いですよね(笑)。
DAISHI:鍛え続けたいですね、ステージに立つ以上。
RYUICHI:例えば、その時の調子もあって、いつもと違う感じとか、その時の自分に足りないものって自覚できちゃうっていうこともあるじゃない? ステージ上で声が枯れたり、うまくいかないこともあるけど、その瞬間に何かを失うわけではない。たぶん僕もDAISHIも、調子が良ければ1日2ステージでもできるんだけど、いつでも調子がいいというのはやはり無理なので。1年に1回とか2年に1回とか、必ず谷はやってくるから。でも、そういうことばかり考えて、エンターテインメントとしてのライヴをつまらなくしたくはないよね。その逆境というか、いかに調子の悪い時でも存在感を示して立ち続けることができるか。そこは常に試されているような気がしてて。
DAISHI:調子のいい時は3DAYSでもいけるんですけど、体調の調整もできているのに、良くないというか苦しい時があるんですよ。
RYUICHI:ヴォーカリストはみんな、その苦しみを何度も味わっているよね。ライヴ前日もお利口さんな生活をして、早く寝る。完璧な準備をしてステージに上がるわけだけど、“あれ、ダメじゃん! どうする? まだ2曲目だけど……”みたいな時もある。だけど、やっぱりファンがライヴに来てくれている以上、納得のいくものを残したいから。自分の納得というものを、歌の精度だけに求めないように、という切り替えは大事だと思うんだよね。そうすることで、歌の精度が復活してくることもある。怖くなっちゃうとどんどん後ろ向きの考え方しかできなくなっちゃうから。
──なるほど。お2人の場合、母体となるバンドとソロ活動は、それぞれどのような影響を与え合っていますか?
DAISHI:今年1月に解散しちゃったんですけど、僕はSiXXというバンドをやっていて。サックスプレイヤーがいる5ピースで、全然ヴィジュアル系じゃないからメイクもしないし、もちろん多少のステージングはするんですけど、Psycho le Cémuをやっている僕からしたら全然エンターテインメントじゃないんです。やっぱり音だけの世界で勝負してみたいという想いがあったので、化粧をしていない人たちとの対バン経験は、Psycho le Cémuとしてシーンに戻って来た時、すごくタメになりました。そのバンドでは、ソロのRYUICHIさん(河村隆一)とライヴをご一緒させていただいたことがありまして。袖からRYUICHIさんの歌を聴いたんですけど、途中からオフマイクで歌われたり、LUNA SEAでのRYUICHIさんとはまた違って、すごく感動しました。
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