【ライブレポート】“ライブの帝王”TILT、ステージに立てる喜び

ポスト

1980年代から1990年代前半にかけて活躍していたジャパメタバンド…別名"ライブの帝王"の異名を持つ事でも知られるTILTのライブが敢行された。

2014年に再始動して以降も勢力的に活動を行い、2019年末にキャリア初となるライブアルバムをリリースし、当初はリリースツアーが3月に開催される予定となっていた。このライブは、8月15日に彼らの地元名古屋で敢行された振替公演となるものだ。




現状未だコロナ禍によりライブを行う事を躊躇うバンドも多い中、「立ち止まるか、動くか」の2択から彼らは後者を選んだ。名古屋の老舗ライブハウスElectric Lady Land(通称E.L.L.)は約600名を収容する会場であるが、今回72名限定とし、フロアはソーシャルディスタンスを保つ1m間隔にて椅子が並べられている。ステージと最前列の距離は1mと、ステージ床内側1mに白線が引かれ、バンドはそこから客席側へは出ないルールとすることで2mの距離が保たれていた。

ステージから見える光景はいつもとは違いやりにくい部分もあったとは思うが、客席からの光景はいつものTILTだ。「Puttin' Down the Whisky」からロックンロールショウは始まり、American Cherry(Vo)の"華"と大原(G)、片野(G)のダイナミックなツインギターで一気にTILTトリックにかかってしまう。TILTの楽曲はシャウトするメタル感も多少はあるが、王道アメリカンハードロックとブルージーな要素が特徴で、ハードドライヴ感に宮崎"Lemmy"(B)、三井(Dr)によるリズム隊のグルーヴも日本のバンドには珍しいノリを奏でる。メンバー全員が主役のバンドサウンドと、終始躍動するパフォーマンスには目のやり場も忙しい。どちらかと言えばスタンダードなサウンドに歌詞もロックライフの日常的なものが多いと感じるのに対して、ライブは非日常的な魅せ方が実に上手いバンドである。





マイクスタンドを華麗に扱いながら、高音だけでなく低音の響きにもレジェンドの貫禄と時にビブラートにはスティーヴ・マリオット(Humble Pie)を感じさせてくれるAmerican Cherry。「Cheap Thrills」や「Turn on Your Radio」でのフロント3人によるキメのフォーメーションはKIXやCINDERELLAあたりを彷彿させ、コーラスワークも秀逸な大原のスライドギターも洋楽感を与えてくれる理由のひとつかもしれない。

「Bloody Mary」でのギターサーフパフォーマンス(観客が支えるギターのハードケースに大原が乗り、ソロを弾きながらフロアを移動する演出)はさすがにソーシャルディスタンスでの客席フロアでは不可能だが果たして?と思いきや、ステージ上に脚立が持ち込まれ大原が脚立へ登っての演出に変わっており、これが大ウケとなる非常にレアなワンシーン。


「Rock You!」での掛け合いもいつもよりは小さめながらマスク越しに精一杯のコールアンドレスポンス、ラストの「Travellin' Band」ではBLINDMANの松井博樹(Key)がゲスト参加しての特別バージョン、鍵盤が入ったTILTはまさにHumble Pieのようだった。

途中換気タイムとして15分のインターバルを挟む2部構成での進行、客席はマスク着用の為、大声での合唱は出来ないもどかしさはあれど生ライブの楽しさは変わるはずもない。"ライブの帝王"がステージに立てる喜びを語った夜、ライブの形は変わっても音楽は変わらない事が伝われば本望だ。


文:Sweeet Rock / Aki
写真:TILT Staff

< TILT ~ TILT 'n' ROLL CIRCUS 2020 ~>

2020年8月15日@Nagoya Electric Lady Land
<Part1>
1.Puttin' Down the Whisky
2.Friday Night
3.Gems and Stones
4.Rock Me Baby
5.Hard Workin' Lovin' Man
6.Belly of the Fish
7.Cross in Love
8.Blackmoon Light
9.Cheap Thrills
10.Blue Jean Queen
<Part2>
11.Room #609
12.Livin' the Dream
13.Turn on Your Radio
14.Hold Me Now
15.All or Nothin'
16.Who's Gonna Win?
17.I Need a Woman
18.TILT Trick
19.Bloody Mary
20.Rock You!
21.Take Me Back
22.Travellin' Band(with 松井博樹 from BLINDMAN)
この記事をポスト

この記事の関連情報