【ライブレポート】SEX MACHINEGUNSとTILTが時空を超えた初遭遇、共闘が意味するものとは?

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▲SEX MACHINEGUNS

2023年、デビュー25周年を迎えるとともに最新オリジナル・アルバム『地獄の暴走列車』を発表し、精力的なライヴ活動を続けてきたSEX MACHINEGUNS。まさにブレーキのかけ方など忘れたかのようなその力強い爆走ぶりは、2024年に入ってからも変わらない。しかもそのライヴのあり方は、これまでにもまして広い視野を伴ったものになりつつある。去る1月27日、東京の渋谷・CYCLONEで行なわれたライヴも実に象徴的なものだった。

◆SEX MACHINEGUNS × TILT 画像

<関東大咆哮撃ツアー Vol.1>と銘打たれたこの公演は、名古屋を本拠地とするTILTとの対バン形式によるもの。80年代、ライヴの帝王と呼ばれていたTILTは、インディーズ時代から年間100本どころではないツアーを繰り広げてきた筋金入りのライヴ・バンドであり、2023年にはメジャー・デビュー35周年を迎えている。かならずしも商業的な意味で大きな成功を収めてきたバンドではないが、同じく2023年には『TILT’N’ROLL CIRCUS』と題された2枚組ライヴ・アルバムがデンマークのライオンズ・プライド・ミュージックを通じて世界リリースされるなど、新たな展開を経てきている。そうしたリリースが実現したのも、ライヴ音源の説得力ゆえであることは間違いない。



▲TILT

当然ながらSEX MACHINEGUNSにとっては大先輩ということになるし、TILTは過去に解散を経ていることもあり、両バンドがステージを共にする機会はこれまでに一度もなかった。筆者自身もまさか2024年にこの2組の対バンを目撃することになるとは思ってもみなかったが、こうした縁が生まれ得たのも、まさしく双方のバンドが続いてきたからこそだといえる。しかも実際、両者の激突は新鮮であるばかりではなく、これまで両者が出会わずにきたのが不思議に思えるほど、有機的な波長の重なりを感じさせるものとなった。

先攻はTILT。長年の経験により培われたステージングの見事さは、彼らのライヴを初めて目撃した観客の視線すらも釘付けにしていたし、彼らの楽曲を知らない観客が過半数を占めていたはずなのに、会場内の熱が途切れることはなかった。バンドの歴史を彩ってきた新旧の楽曲に加え、前述のライヴ・アルバムにも収録されているハンブル・パイのカヴァー曲も盛り込まれた60分間のステージは、まさに圧巻。彼らとは古くからの付き合いである筆者でさえも、このバンドの人を巻き込む力のすごさを改めて実感させられた。




▲TILT

そして後攻となったSEX MACHINEGUNSも、2023年からの好調ぶりにさらに拍車がかかっているのをうかがわせる爆発力のあるパフォーマンスでフロアをさらに熱くし、オーディエンスをひとつに束ねていた。途中、MCからの流れで楽曲の演奏順が入れ替わるハプニングもあるにはあったが、逆にそれがこのバンドの臨機応変な対応力の強さを物語っていたようにも思う。いわゆる鉄板曲の連発でありながら新鮮さが損なわれていないのは、そうした彼らなりのスポンテニアスな魅力があるからなのだと感じさせられた。

今回のような運命的ともいえる対バンが実現したのは、前述のとおり双方のバンドが存続しているからこそだが、同時に、ここにきてTILTの動きが活性化されつつあるからでもあるし、SEX MACHINEGUNSを率いるANCHANGがある種の危機感を抱いているからでもある。発売中の『BURRN!JAPAN Vol.23』に掲載されているインタビューの中で、彼は次のように語っている。



▲SEX MACHINEGUNS

「ジャパメタ感はこの先も出していきたいな、というのがあるんです。というのも、このままだと先輩たちがどんどんいなくなってしまう。だから、そうなってしまう前にどうにかしなくちゃいけないという勝手な使命感を抱えてるようなところがある。実際問題、先輩たちの中には、年を取っていくにつれて徐々に小さくなっていってる方も多いわけです。それに対する“もうひと踏ん張りしてくださいよ!”という気持ちの表れでもあるし、自分たちはまだまだそうなるわけにはいかないという戒めでもあるんです」

実際、彼らの新たな代表曲のひとつとなった「燃えろジャパメタ」という楽曲の根底にもそうした想いがあることを、彼は認めている。そして、デビューから四半世紀を経た今、こうして“まだ手を合わせたことのなかった先輩”のひとつであるTILTとの激突が実現したことの背景にそれがあったことは、疑う余地もない。ちなみにこの両バンドの共闘は単発的なものではなく、3月9日には会場を西川口・Heartsに移しての<関東大咆哮撃ツアー Vol.2>が開催されることになっている。お互いに刺激を受け合ったうえで実現する二度目の対バンは、よりいっそう熱いものになるに違いない。



▲SEX MACHINEGUNS

ちなみにTILTは、この2月3日には<関東大咆哮撃ツアー 総攻撃編>としてSAISEIGA、G.O.T.Yというこれまた新鮮な顔合わせによる三つ巴ライヴを渋谷・GARRETにて行なう。一方のSEX MACHINEGUNSについても、4月5日に川崎・CLUB CITTA’でのワンマン公演が控えている他、5月から6月にかけてはTHE冠との共闘によるツアー<SEX冠2024>が行なわれることも決まっている。まさしく時空を超えての融合を経た2組の強靭なライヴ・バンドの今後に、大いに注目したいところだ。

文・撮影◎増田勇一

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