【インタビュー】RAY「レゲエに引き込みたい」、J-POPとの架け橋目指す

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ばりばりのレゲエ・ディージェイでありながら、アコースティックギターで弾き語りもやってのける、その存在自体がオリジナル。メジャーレーベル3年目、誰もが愛する関西レゲエの「いい人」代表、RAYが放つ3年ぶりのフルアルバムは『オーバーレイ』。知ってる人はすぐわかる、イラストレーター326の書き下ろしジャケットに包まれた全10曲の中身は、19のカバー「卒業の歌、友達の歌。」、映画『癒しのこころみ〜自分を好きになる方法〜』主題歌「癒し」、インディー時代の大名曲「人と心」のリメイクなど、レゲエとJ-POPとをがっちり繋ぐ架け橋になる曲がずらり。ジャンルを超え年代を超え、トップを目指すRAYの胸の内をじっくり聞いてみよう。

  ◆  ◆  ◆

■レゲエに引き込みたい

──アルバム、3年ぶりですか。

RAY:そうっすね。もっと早く出さなアカンと思います。言ったら、3年の間にリリースはいっぱいしてるんですけど、ビクターさんじゃないところからで。レゲエは外仕事が多いんですよ。「あの人がプロデュースするから1曲歌ってや」とか、いろんな曲は出てるんですけど、その曲は入ってないんで。なので、アルバムとしては3年ぶりになります。

──そういえば、寿君と一緒にやった曲とか、出してましたね。僕、寿君とはちょくちょく話させてもらうんですけど。

RAY:むちゃくちゃ仲いいです。今年の頭のツアーも全箇所出させてもらってたし、土日も遊んでましたし(笑)。いろいろ導いてくれてる先輩って感じです。

──何か、スタンスが似てる感じがするんですよ。レゲエが基本にありつつ、J-POPへ飛び越える力があるというか、音楽スタイルにはそこまでこだわらないというか。

RAY:そうですね、一緒ですね。僕も、そういう活動をすることによって「レゲエに引き込みたい」というのが一番で、今回ミュージックビデオを作った「人と心」も、レゲエか?と言われたら違うと思うんですよ。リリックの書き方は、韻も踏んでるし、レゲエマナーに乗っかってるんですけど、J-POP層の人をレゲエの良さに引き込むということを常に意識してますね、音楽を作る時は。



──そのへんの完成度は、前作よりも進歩したと思いますか。

RAY:そうですね。前作もそれは思ってたんですけど、今回のほうがよりできたかなと思います。コモリタカシという、いいリディムメイカーに出会って。ポップス育ちなんですけどレゲエの業界にいてて、ポップスしか聴かない人たちをレゲエに引き込みたいという気持ちがある子なんですよ。今回のアルバムは、その気持ちがより詰まってると思います。

──いい意味で幅がすごく広い。その象徴が、19のカバー「卒業の歌、友達の歌。」じゃないかと。こういう音楽がRAYのルーツにはあるんだということが、面白いなあと思いますね。

RAY:根本はおとんなんです。おとんが学生時代から5人組のフォークバンドをずっとやってて、メジャーで1枚レコードも出してて、自主でアルバムを3枚ぐらい出してて、毎年夏になったらワンマンライブをやってて。ここ数年はやってないみたいですけど。

──すごい。ちなみにバンド名は。

RAY:レイニーブルーです。家でも、ふすま1枚はさんで兄貴がロックのベースの練習してたりとか、おかんはピアノ弾けたりとか、音楽の環境は近くにありましたね。僕は19さんを聴いて「音楽やろう」ってなって、おとんにギターを教わって、というのが始まりです。

──19はリアルタイム?

RAY:どんぴしゃですね。中学生の時です。ラジカセを風呂場に持って行って、19をかけながら歌ってたら、料理中のおかんに「あんた、そこの音ちょっと低いで」とか言われてました(笑)。で、今回カバーを出すことになって、今年の頭にご本人とお会いさせてもらったときに、一緒にこの曲を歌わせてもらって、感動しかなかったです。

──それは(岡平)健治くんと?

RAY:そうです。健治さんがやってはるバーに呼んでもらって、最高でした。まだ現実を受け止めきれてない感じです。

──この「卒業の歌、友達の歌。」をカバーした理由は、特に思い出があるとか?

RAY:卒業式のあとにカラオケに行って、地元の友達と泣きながら歌ったというのもあるんですけど、19で一番有名なのは「あの紙ヒコーキ くもり空わって」じゃないですか。俺はほんまにむちゃむちゃファンなんで、それを選ぶのはなんか許せなかったんですよ。「コイツ、ミーハーやな」と思われたくなかったんです。あれのカップリング曲が「卒業の歌、友達の歌。」で、アルバムにも入ってないし、ファンの子は知ってる名曲なんで、これを選んだというのも理由の一つです。

──歌詞が好き?

RAY:そうですね。歌詞というものに引き込まれたのが、この曲が初めてだったんで、これを選んだというのもあるかもしれないです。しかも僕の卒業と同時に19が解散やったんで、そこらへんも心情にマッチしてたところもありますかね。

▲『オーバーレイ』初回限定盤

▲『オーバーレイ』通常盤

──アルバム全体の話をすると、そもそも、どんなアルバムにしたいかイメージがあったんですか。

RAY:さっきも言ったんですけど、J-POPというか、レゲエを聴かないホワイト層をどう引き込むか?がまずあって。レゲエはもともと黒い音楽ですけど、僕自身がポップスで育ってるんで、そこをどう融合できるか?が自分の中で課題になっていて、それは作れたのかなと思います。『オーバーレイ』(Overlay)って、あるものに対して上からかぶせて一つのものにするみたいな意味らしくて、“レイ”も入ってるしちょうどいいわ、という感じでタイトルを付けましたね。

──中でも一番はっちゃけてるのが、ミュージックビデオも作った「JUMP UP」ですかね。超サマーチューン。

RAY:それはほんまにレゲエって感じですね。あと「MOVING」はちょっとロックっぽい、ラガヒップホップと言う感じでやってます。それは774(DIGITAL NINJA)くんの作曲なんですけど、その人が作るオケは誰が乗ってもかっこよくなるんですよ。前作も前々作もやってもらってるんですけど、かっこいい曲はその人にお願いしようと思って、1000曲ぐらいあるストックの中から選ばせてもらいました。



──あとは「騒ぎな feat HISATOMI」「無我夢中 feat APOLLO」という、近しいレゲエ仲間もがっつり参加してる。

RAY:「騒ぎな」はチョケ気味の、オールドレゲエダンスホールな感じで、90年代ぐらいのジャマイカのレゲエを意識した曲やと思います。曲の最後のしゃべりも、いつもの会話を録音していて。

──「なんでタメ口やねん」って(笑)。あそこ、笑いました。

RAY:HISATOMIくんは、年齢は三つ上の先輩なんですけど、仲良くなりすぎて、酔っ払ってたまに僕がタメ口きくというくだりを再現しました(笑)。あれはほんまに日常会話ですね。こういう曲、アルバムに1曲あるんですよ。そしてAPOLLOは、ただの友達ですね(笑)。APOLLOがやってるYouTubeチャンネルで、1時間で1曲作るという企画があって。一番しかなかったんですけど、ちょうどアルバム出すしちゃんと完成させようやということで、作った曲ですね。

──これって一応、ラブソングなんですかね。

RAY:何なんですかね。ラブソングよりちょっと、アカン感じのラブソングというか、あなたが大好きです一生愛します、という純粋なラブソングじゃないです。

──ああ、禁断の…的な。

RAY:クラブの中の…何て言うのかな。どういう曲かは聴いた人に任せます(笑)。裏の意味を感じてもらえたらと思います。


──話、ちょっとずれますけどね。今出たHISATOMI、APOLLOとか、あとRED SPIDERのJUNIORさんとかもYouTubeやってますけど、めっちゃ笑かしにくるじゃないですか。レゲエやる人って基本陽性というか、社交的というか、悪ふざけが好きというか(笑)。

RAY:関西のレゲエは特にそうやと思うんですよ。盛り上げなあかん、笑かさなアカンとか、そういう気質がある気がしますね。それっていいも悪いもあると思うんですけど、スイッチ入れたらその感じになりますね。関東のレゲエはクールな人が多いイメージです。

──それがステージに立ってお客さんに見せる時も同じマインドだから、見てて楽しいんですよ。

RAY:でもああいう大阪のノリを関東でやって、引かれることはあります(笑)。俺らの中ではいつも通りなんですけど、口調が強く聞こえるみたいで。HISATOMIくん、APOLLOくんとかは仲いいんで、タメ口でいじったりするんですけど、それを見てたお客さんから「なんでHISATOMIくんいじめるんですか」みたいに言われたことあります。「えー、いつも通りの会話してるだけなのに…」みたいな。めっちゃ覚えてます、茨城のフェスで。「ごめーん」って言うしかなかったです(笑)。

──あはは。ですよねえ。

RAY:でも基本的にはみんな笑ってくれるんで。そう思ってもらえたら助かります。

──そのへんの関西レゲエノリ、と言うと大雑把すぎるけれども、そこにはまったら楽しいですよね。クールでかっこいい系レゲエも、もちろんいいけれど。

RAY:それは憧れますけど、僕ができないんで。いいなあ、かっこいいなあと思いますね。やってる音楽は同じものなんですけどね。

──レゲエは幅広くて自由なものだって、知らない人には言っときたいですね。

RAY:幅広いと思いますね。レゲエって、現場がいいんですよ。音楽好きな人が多いイメージです。女の子目当ての人ももちろんいますけど、基本は音楽好きじゃないとレゲエの現場には来れない気がします。そこが楽しいですね。だって40年前の曲とか、普通はクラブでかからないじゃないですか。でもレゲエはかかるんで。80年代だけのイベントとかもあるし、現場はいいなと思いますね。そういうところで、関東のクールな人と一緒になったりとか、そういうのが楽しいなと思いますね。

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